異世界転生者と始めるギルドづくり~稼げるギルド目指します~

フクロウ

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第7章 コーヒーは世界を回すかもしれない

第106話 たぶん、世間知らずが一番最強

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「──ってわけで、改めて言うけど私はトーヴァが事務員をしてくれているクローバーギルドのギルド長。そして、スペシャルヒーラーのブラックウェル家の一人娘、エルサさんもギルド員なんだよ」

 長い説明を一息で言い切ると、私はしまっていたエルサパパの手紙をリリアに渡した。

「あとこれ、エルサさんのお父さんからの手紙」

 流れでリリアと名乗った女の子は、ぶるぶる震える手で手紙を受け取ると、めちゃくちゃ早く視線を動かして手紙を読む。

 首のあたりで切りそろえた綺麗な紫色の髪を真ん中分けにしているリリア。その印象は、間違いなく真面目だ。だけど同時にこの子は、なんというか、そう、私が言うのもおかしいんだけど、ものすごい世間知らずでもあるような気がする。

 トーヴァの悪口でキレたのはまあいいとしよう。こっちも悪かった。

 だけど、ギルドセンター長の孫娘かつ(たぶん)有力なギルドのマスターであるマリーのことを知らなかったり、一生懸命止めようとしてた受付嬢を無視したり、けっこうその毛を感じるんだ。

 天然と言えばエルサさんだが、それとはまた違うヤバさを私の嗅覚は嗅ぎ取っていた。

 手紙を読み終えたリリアは今にも泣き出しそうな目で私、チハヤ、そしてマリーと順々に見る。あっ、これはフォローした方がいいかな。

「あの、だいじょう──」

「どうもすみませんでした!!!!」

 ギルド中に大声が響き渡った。でけぇ! 声がでけぇんだ、この子!

「私! 昔からわからないことばっかりで!! 今もこうしてこんな失礼なことを!? ま、まさかトーヴァ先輩のギルド長だとは思わなくて!! ああ、あの私なんでも、なんでもしますから!!」

「ああああ、落ち着いて! 大丈夫だから!!」

 みんな見てるから! ざわざわしてるから!! この構図は、3人よってたかってギルドの事務員をいじめているように見えるから!!

「とにかく、リリアさんにはその手紙に書いてあることをお願いしたいんだよ! うちのギルドの第2事務員として、そしてスペシャルヒーラーとしてコーヒーを調べてほしい!」

「第2事務員? コーヒー?」

「うん、そうそう! ほら、もう一度ゆっくり手紙を読んで?」

 リリアは鼻をすすると、力を込めすぎてぐしゃぐしゃになってしまった手紙のしわを伸ばして、改めて内容を確認する。

「……親愛なるリリアへ。諸々の事情から、アビシニア村にあるクローバーギルドのサラさんの元で、新たな任務を依頼する。ギルドの事務員として働きながら、異世界の飲み物というコーヒーの調査をお願いする。つきましては、エルサをよろしく頼む……ですか?」

 合ってるんだけど、最後だけ違うな~。「つきましては」じゃないよ!

 手紙を折り畳むと、胸ポケットにしまい込むリリア。

「わかりました。このリリア、なにができるかわかりませんが、サラ様のギルドのお供をさせていただきます! トーヴァ先輩もいるんですよね!!」

 ギルドのお供よりもトーヴァといっしょの方が乗り気だ。

「うん、うんうん。トーヴァもいるよ! 先輩と後輩同士みたいだから、よろしくお願いするね! あと、私のことは様付けとかいらないから!」

 私は苦笑いを浮かべた。この先起こるさらなる嫌な予感を払しょくできずにいながら。







 で、チハヤの魔法で瞬く間にアビシニア村に戻ってきたわけだが。

「先輩! なんで逃げるんですか!?」

「どうもこうもねぇ! なんでお前が来るんだよ!!」

 案の定、ギルドの中は荒れていた。追いかけるリリアに逃げ回るトーヴァ。狭いギルドの建物の中をよくもまあ、あんなスピードで転ばずに走れるなと感心しつつ、建物が壊れないか心配しつつ。

「おかしいな……さっきの話だと、トーヴァと仲が良さそうだったけど」

「この様子だと、話が違いますわね。いずれにしても落ち着いてもらわないと話が進みませんわ」

 これは、マリーに同意。二人の事情は知らないけど、ギルドとしての仕事をしてもらわないと。

「チハヤ」

「はい。場を静めればいいのですね? 手段はいかがいたしましょう。時空魔法、四属性魔法、他にもいろんな手が──」

 チハヤが低い声で脅すような台詞を吐いたもんだから、トーヴァもリリアも同時に足を止めた。

「執事の話は冗談に聞こえねぇって!」「……時空魔法? いったい何者ですか?」

「止まりました」

 鮮やかに場を静めるとチハヤはコーヒーを飲んだ。そういう意味じゃなかったんだけど、まあいいや。

 私は咳払いをすると、リリアに話しかける。

「トーヴァのことは後にしてもらって、まずはコーヒーの調査をお願いね。ひとまず、コーヒーノキを見に行こうか」

「コーヒーノキはすでにわたくしのギルドから錬金術師が調べに入っています。一緒に調査するといいのではないでしょうか」

「コーヒーノキ……?」

 ぽかんとした顔のリリア。わけわかんないよね~。私も意味がわからなかった。コーヒーノキだのコーヒーチェリーだの、コーヒーだの。……なんだったら、今でもわからない。

 今でも心のどこかで疑問があるよね。これがギルド長の仕事なのかって。

「あっ、もちろんチハヤも来るよな?」

「もちろんです! コーヒーとあればどんなことでも知らなければ。同行させていただきます。サラ様が嫌だと言ってもついていきますから」

 あまりにも熱意あふれるチハヤを見るリリアの目がどこか引いているように見えた。
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