やりなおスイッチ!~最速最強・無傷無敗の異世界英雄?~

竹井アキ

文字の大きさ
4 / 5

(4/4) 尾ひれのない伝説はない

しおりを挟む
 妖精さんによると、ぼくは世界七大ドラゴンと世界五大魔獣、魔王軍三騎将、魔王直属親衛隊、そして魔王を倒さないといけないとのことだ。

 レッちゃんはそのなかでも最弱だったらしい。先が長いのに、こんな戦い方ではいくら不死身と言っても精神がもたないことは明白だった。

 聡明なぼくは戦い方をかえることにした。正面から戦いを挑むのではなく、相手の寝込みを襲うスタイルだ。
 事前の徹底した情報収集により、敵が寝ているところを狙って何人かの傭兵や軍隊を引き連れ、総攻撃で一気にカタをつける。
 
もちろん敵も強いし、寝込みを襲っても一回の挑戦で倒せることはなかった。

 効果的な時間、武器、戦い方を試す必要があって、実際のところ、それ以降の相手は、レッちゃん戦以上の回数の挑戦が必要だった。

 しかし、他人にはその苦労は認識されていない。ぼくは、一気に相手を木っ端微塵に片付ける無慈悲な戦い方で知られるようになった。

 いつしか、ぼくの二つ名は「ミンチのミッちゃん」に変わっていた。

 ちなみに、世界七大ドラゴン、世界五大魔獣、魔王軍三騎将、魔王直属親衛隊を倒した後で、魔王を倒すには、世界七大ドラゴンをある順番で倒したときのみに手に入る道具が必要だとわかったときには、「やりなおしの部屋」に引きこもった。自分の感覚では、一週間ぐらいずっとむせび泣いていた。

 まぁつまり、あの村人が言っていた伝説は半分ぐらいあたっていたということだ。

 ドラゴンを倒す順番が変わったので、もう一回レッちゃんを殺すことになった。

 一応、もう一度墓は建てたが「もうお前の顔は見たくないぜ」と言ってすぐに立ち去った。

 そんなこんなで最初から全てをやり直して、攻撃のパターンもすべて変わってしまった強敵たちを相手にしていると、魔王へのリベンジの前には、ぼくの精神も完全にすり減っていて、感情もなく攻略パターンを見つける機械のような人間とかしていた。

 あの綺麗だったぼくの涙はもう流れない。


 魔王との再戦がどれだけの長さに及んだかは、あまりにも長すぎて覚えていない。「やりなおしの部屋」には、今までの攻略ノートが全ておいてある。

 魔王に勝利したときには、ノートの冊数が十万三千冊を超え、どこかの魔導書図書館にも負けない数となっていた。これだけは自慢したい。

 この世界の人からは、ぼくは全ての強敵の全ての攻撃をかわし、楽勝で勝っているようにみえたので、ぼくは最速最強・無傷無敗の英雄としてこの世界の伝説的な存在となった。

 その裏には、ぼくの長きに渡る苦労の日々があったのだが。

 魔王を倒してしばらくすると、ぼくをこの世界へ転移させた女神様のところへ、妖精さんと一緒に呼ばれた。

 何も説明しないでこの地獄の異世界冒険をさせた女神様に、ぼくはずっと怒りを覚えていたが、既に精神力が尽きていたので、死んだ魚の眼をしながら女神様の話を聞いた。

 女神様は、
「大変ご苦労様でした。この功績により、あなたはもとの世界で生き返ることができますが、どうしますか?」
と聞いてきた。

 正直どっちでも良いというか、全てが面倒くさくなっていたので適当に、
「オネガイシマス」
と答えた。

「分かりました。」
女神様はそういうと、ぴろぴろりーんという効果音と主に、世界が暗転して自分がもとの世界に戻っていくことを感じた。

 別れの瞬間に女神様は
「根気があればぁ~、なんでもできる!」
などと脳天気な声で叫びながら、ガッツポーズをしてきたので、ぼくは流石に頭にきて、
「てめぇ~」
と殴りかかろうとしたが、拳が届く前に、ぼくはもとの世界にもどっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...