緋雲村殺人事件

藤原 龍斗

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種案山子

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 小高い山々に囲まれた盆地の


 西側の小高い場所に村の集会所がある


 そこで車を降りて組合員と落ち合って


 集会所の中に入って行った


「お世話になります。」


 早百合さんが言葉を切った


「お世話になっています。」


 組合員の三島順二が言ってきた。


「早々で御座いますが、米の作付け具合と


収穫量の予測を報告お願いします。」


 早百合さんが経過報告を聞き出した


「今年の作付けは10町歩になります


収穫予想は、順調に行って30㌧の収穫になります」


早百合さんが業務的に話を進めて、


今後の流通を含めて細かい調整をした。


「城瀬さん、この後、農家の皆さんに


話を聞く為に移動しましょう。」


そう、早百合さんに言われて


農家さんの入る場所に移動する事にした。


広大な畑が広がる風景の中


農家の人を見つけるたびに


車を止め農家さんに話を聞いて回る。


「今回の作付けは上手くいくよ」


「ありがたいよ、眞島商会の方には。」


「本当に感謝しています。」


など、色々な感謝の謝意の声が聞こえてくる。


『早百合さん。農家の方々と仲が良いですね』


そう、早百合さんに言うと、


「ふふふ、結構、緋雲村には来てるのよ」


少し笑いながら早百合は答えた。


「そうそう、今日はこの村の集会所に泊まって


明日、畑の方を見て廻りましょう。」


『わかりました。』


と、短く答え集会所に向かって行った。


その夜、組合員達によるささやかな宴が披露された。


「お疲れ様でした。」


組員の三島が話しかけて来た



「ささやかですが郷土料理を堪能して下さい。」



組合員の田所正寛が話に割って入って来た。



「ありがとうございます。」



早百合さんがお礼を言ったあと、自分も



『ありがとうございます。』



そう、言ったあと、ささやかな宴が始まった



組合員の方々が変わるがわる話に来て



宴は厳かに終わった



明け方、三島が集会所に飛び込んで来た



「眞島さん、田所が、田所が・・・」



ものすごい慌てようで集会所の入口で



息を切らしながら必死に喋ろうとしている



僕はすぐさま水をコップに水入れ



三島に渡した



三島が少し落ち着いたのを確認して



早百合さんが語りかけた



「三島さん、そんなに慌ててどうしたのですか?」



三島は、ひと息置いて呟いた



「田所が死にました・・・」



早百合さんと僕は顔を見合わせてから



驚いた



「田所さんが、死んだとはどうした事ですか?」



早百合さんは少し口早に言っている



三島は、答えることが出来ず



少しまだ肩で息をしている



『三島さん、田所さんの所へ案内お願いします』



僕は埒が明かないと思い、案内を促した



三島は、少し頷くと



「こ、こちらです」



と言い集会所を皆んなで出ていった



田園風景を北に少し行き



それから、北東にある蒼幻寺を目指して



歩いてといると



田んぼのあぜ道を埋める様に



人々が集まっている



人々の間をかき分けて、田んぼの中を見ると



「かかし?」



早百合さんが不思議そうに呟く



僕は何が不思議かもわからず



案山子らしき物を見た



『?!』



「?!」



早百合さんも僕も言葉がすぐには出ず



時が止まったかような衝撃を受けた



案山子に見えたその物は、田所さんだとは



すぐに判断出来なかった、



頭には麦わら帽子をかぶり、頭を垂れて、



両腕の肘からは見るからに、変な方向に曲がり



体は2メートルの杭に縛られていた



「田所さんなの?」



早百合さんは半信半疑で呟いた



『たしか・・・



昨日の田所さんの服装ですね』



僕はふいに何かがひっかかる思いになった



『でも・・・』



考えがつかず言葉に詰まった時



早百合さんが悲鳴をあげた



「きゃー」



「顔が・・・、顔が」



そう、言いながら駆け寄って来た



『早百合さん、どうしたんです?』



「顔が・・・顔が潰れて・・・」



早百合さんが必死に話そうとしているが



言葉に出来ない



わたしは田所さんであろう案山子に



近づいて行った
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