緋雲村殺人事件

藤原 龍斗

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緋雲盆地

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朝、早くに目が覚めたわたしは


昨日、幸乃さんから聞いていた


洗面台で顔を洗っていた。


「おはよう」


後ろから早百合さんの声がした


『おはようございます』


顔拭いて早百合に一礼する


「朝食出来てるみたいだから


食堂へ行ってみて」


早百合はそう言って洗面台で


顔を洗い始めた


わたしは食堂に向かい


幸乃さんに挨拶して椅子に座った


幸乃さんが朝食を運んで来た時に


眞島と早百合が食堂に入って来た


『おはようございます』


わたしは眞島に向かい一礼すると


「おはよう」


寝起きだからか、


短い挨拶で返された


「叔父様、今日は、店舗の視察と


織物組合と打ち合わせ


雑貨商の卸問屋の会合


があります。」


「わかった」


やはり、寝起きなのか短い返答。


「叔父様、昨日、葡萄酒を


一本空けたでしょ」


「ああ」


「あまり!お強くは無いんですから」


「う、うん」


眞島は少し頷きながら席を立ち


洗面台の方に向かって行った


「先に食べてしまって、


出社しましょう」


『はい』


わたしは食事を終え


早百合さんと一緒に


屋敷を出て、出社した


「おはようございます。」


会社の扉を開けると、


事務所の中には数人の人影がある


「おはようございます。」


早百合さんが皆に向かって


挨拶をした。


事務所の中の人々が


それぞれ


「おはようございます。」


と、挨拶をしていく



「今日から働く事になりました


城瀬さんです。」


『本日よりお世話になります


城瀬充伸です。


よろしくお願い致します。』


「こちらこそ・・・」


社員の方々が、温かく迎えてくれた


「それでは、皆さん、


社長の指示で、本日より緋雲村に


出張に行ってきます。」


出社早々出張の言葉で


社員達が呆気に取られている間に


早百合達は会社を後にした。


緋雲村に行く前に必要な物を買い


昼前には大阪駅に到着して


京都行きの汽車に乗り込んだ。


「城瀬さん、叔父、いえ、社長がすみません」


早百合さんが謝ってきた。


『いえいえ、働き口を頂けて、


本当に感謝しています』


そう、言って深々と頭を下げた


早百合さんは首を振りながら


「ううん、違うの」


わたしは、顔を上げ少し呆気にとられた


「社長、いえ、叔父様が何故、


急に人を雇い入れたのか?、何故


急な出張を入れたのか?、解らないのです。」


早百合はそう、言って少し考えてる様子である


『わたしは、』


と言いかけた時、汽車の警笛が鳴り響いた。


ゆっくりと、ゆっくりと進んで行く、汽車


昨日からの出来事が走馬灯の様に駆けめぐる


少しだけ、故郷から心が追い付いてきた。


閉じた瞼をゆっくりと開け


少し大きめな口調で


『わたしは、このご縁を大切に


真摯に取り組みたいです』


早百合は驚いた後、恥ずかしそうに


「城瀬さん、その言い方は、ご縁談の言い方ですよ」


『えっ』


わたしは、我に返り辺りを見渡すと、


他の乗客達が、笑顔で


「若いって、ええな~」


「きばりぃや」


などと、少し囃し立てている


わたしは、恥ずかくなり頭を垂れてしまった。


丹波口駅から、山陰本線に乗り、


八木駅に着いたのは午後6時、


辺り一面田畑で民家がまばらに建っている


「今日は、眞島商会の八木出張所で


泊って、明日、車で緋雲村に行きます」


早百合さんが、回りの景色を


見渡しているわたしに、そう、言ってきた


『はい、結構遠いいのですね』


わたしは、少し落胆した


それを見ていた早百合さんが


「明日は、朝6時出発で、車で3時間、


緋雲村に9時過ぎに、到着予定よ」


と言ってきて、少し苦笑している


わたしは、長旅の疲れと、明日への疲れが、


重なり今にも崩れ落ちそうになった


翌朝、眞島商会、八木出張所の専属運転手、


岡本さんに緋雲村まで送迎をして貰い


この長旅の終着点、緋雲村に到着した。


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