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ニセ聖女呼ばわりされて追放されたら、戦闘狂と噂の辺境伯から求婚されました
前編
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「ニセ聖女リフィ・ダーリア!国民を、王家を謀った罪でお前を追放する!」
「一体どういう事なのよぉ」
森の中をとぼとぼ歩きながら、男爵令嬢リフィ・ドーリアは何度目になるか分からない愚痴を漏らした。しかし、木が生い茂り過ぎて日の光が届かない薄暗い森の中で、彼女の疑問に答える者はいない。夢であって欲しいと縋る様な気持ちで掌を凝視するが、何も起こらなかった。
三日前までは違った。リフィが念じれば掌に清らかな力が宿り、国を守る為の神々しい力を顕現させる事が出来た。
ところが突然その力が消失し、国王から追放を命じられてしまった。一刻も早く城から出ないと首を刎ね飛ばされそうな剣幕だったので、文字通り着の身着のままで王都を飛び出した。
「一方的に聖女として祀り上げておいて、役に立たなくなったらポイ捨てとかありえなくない?」
しかも路銀はおろかパンの一つも持たせてもらえなかった。なので今、リフィは絶賛空腹中だ。
実家であるダーリア男爵家はお世辞にも裕福とは言い難かったから、粗食には慣れているし、食べられる木の実だって普通にもいで食べていた。
だから森の中なら木の実の一つくらい拾えるのではないかと期待して足を向けたものの、日の差さない森には果実どころか小動物すら見当たらない。
あてもなく歩を進めていると、前方が明るくなってきた。森の出口が近いらしい。
ここまで無心で歩き続けてきたリフィの足が遂に止まった。
目の前に広がっていたのは夕闇の迫る空だった。吹き抜ける風が、ほつれた赤髪を掻き乱す。
視線を下げると、夕日に照らされた町が見えた。しかし、リフィが抱いたのは安堵ではなく絶望だった。
町があるのは下方。
今、リフィがいるのは到底人が降りられる高さではない絶壁の上。
「うそ・・・・・・」
ここは行き止まり。進む為には元来た道を戻らねばならない。
日没が近い。一刻でも早く森から出なければーー焦る気持ちに反して、リフィの足は動かなかった。膝から力が抜け、ぺたりとその場にへたりこんでしまう。
「女神のばかーっ!何とかしなさいよーっ!」
空へ向けて叫んだ瞬間、くらりと視界が揺れた。空腹で体力も限界、意識が遠のく。
『あはは、ごめんごめーん!お詫びに助けを呼んだから許してー?』
脳裏に脳天気な女性の声が響く。聞き覚えのある声に一言文句を言ってやろうとしたリフィの耳が、地を蹴る馬の蹄の音を捉える。
「おい、大丈夫か?」
顔の下半分を布で覆い隠した男が、馬上からリフィに声をかける。閉じゆく視界の中で捉えた、差し伸べられた逞しい腕と、力強い意思を宿す茶色の双眸が印象的だった。
気力を振り絞って答えようとした瞬間、リフィの意識はふつりと途切れた。
「一体どういう事なのよぉ」
森の中をとぼとぼ歩きながら、男爵令嬢リフィ・ドーリアは何度目になるか分からない愚痴を漏らした。しかし、木が生い茂り過ぎて日の光が届かない薄暗い森の中で、彼女の疑問に答える者はいない。夢であって欲しいと縋る様な気持ちで掌を凝視するが、何も起こらなかった。
三日前までは違った。リフィが念じれば掌に清らかな力が宿り、国を守る為の神々しい力を顕現させる事が出来た。
ところが突然その力が消失し、国王から追放を命じられてしまった。一刻も早く城から出ないと首を刎ね飛ばされそうな剣幕だったので、文字通り着の身着のままで王都を飛び出した。
「一方的に聖女として祀り上げておいて、役に立たなくなったらポイ捨てとかありえなくない?」
しかも路銀はおろかパンの一つも持たせてもらえなかった。なので今、リフィは絶賛空腹中だ。
実家であるダーリア男爵家はお世辞にも裕福とは言い難かったから、粗食には慣れているし、食べられる木の実だって普通にもいで食べていた。
だから森の中なら木の実の一つくらい拾えるのではないかと期待して足を向けたものの、日の差さない森には果実どころか小動物すら見当たらない。
あてもなく歩を進めていると、前方が明るくなってきた。森の出口が近いらしい。
ここまで無心で歩き続けてきたリフィの足が遂に止まった。
目の前に広がっていたのは夕闇の迫る空だった。吹き抜ける風が、ほつれた赤髪を掻き乱す。
視線を下げると、夕日に照らされた町が見えた。しかし、リフィが抱いたのは安堵ではなく絶望だった。
町があるのは下方。
今、リフィがいるのは到底人が降りられる高さではない絶壁の上。
「うそ・・・・・・」
ここは行き止まり。進む為には元来た道を戻らねばならない。
日没が近い。一刻でも早く森から出なければーー焦る気持ちに反して、リフィの足は動かなかった。膝から力が抜け、ぺたりとその場にへたりこんでしまう。
「女神のばかーっ!何とかしなさいよーっ!」
空へ向けて叫んだ瞬間、くらりと視界が揺れた。空腹で体力も限界、意識が遠のく。
『あはは、ごめんごめーん!お詫びに助けを呼んだから許してー?』
脳裏に脳天気な女性の声が響く。聞き覚えのある声に一言文句を言ってやろうとしたリフィの耳が、地を蹴る馬の蹄の音を捉える。
「おい、大丈夫か?」
顔の下半分を布で覆い隠した男が、馬上からリフィに声をかける。閉じゆく視界の中で捉えた、差し伸べられた逞しい腕と、力強い意思を宿す茶色の双眸が印象的だった。
気力を振り絞って答えようとした瞬間、リフィの意識はふつりと途切れた。
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