私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう 他

星山遼

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私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう

前編

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「フィオレナお姉様、どうか罪をお認めになって下さい!」
 闇色の双眸そうぼうを涙で濡らして懇願こんがんする妹へ、伯爵令嬢フィオレナ・ギザンは冷めた眼差しを向ける。
「妹がこれ程までにお前を慕っているのに無視するつもりか、フィオレナ!」
 詫びるでも反論するでもないフィオレナにいきどおりを覚えたのか、婚約者にして第一王子であるアズレッドが碧眼へきがんを吊り上げて声をあららげた。王子はかたわらに立つ少女――フィオレナの妹ラーミア――の肩を抱き、厳しい表情でフィオレナの反応を待っている。
 フィオレナは小さく息をつくと、銀色の瞳で王子と妹を見遣みやった。
「そもそも私の罪とは何なのですか?」
「とぼけるな、ニセ聖女め!」
 アズレッド王子の目が血走り、顔が怒りで赤く染まる。
 フィオレナは喉元まで出かかった溜め息を飲み込んだ。無駄だと承知の上で、これまでに何度も繰り返して来た言葉を口にする。
「私はさずかったチカラを、与えられた使命を、おろそかにした事は一度もございません。全ての元凶は、」
「もういい!」
 だん!と床を踏み鳴らし、アズレッドが激昂げっこうする。憎々しげに口元を歪め、フィオレナに指を突き付けた。
「自分に聖女のチカラが無い事を隠す為に、実の妹をおとしいれようとする女など聖女であるはずがない!」
 てのひらで顔をおおい、しゃくり上げるラーミアにいたわりの眼差しを注いだ後、アズレッド王子は侮蔑ぶべつあらわに吐き捨てた。
「王家を、国をたばかるなど本来なら極刑ものだが……ラーミアからの嘆願もあり、お前を国外追放とする。せいぜい妹に感謝するんだな!」

「ワタシの勝ちね、お姉様」
 勝ち誇った声に、フィオレナは読んでいた手紙をさりげなくカバンに滑り込ませながら顔を上げた。
「その『お姉様』という呼び方、めて欲しいのだけど」
「あら、どうして?」
 無邪気に小首を傾げる仕草しぐさ可憐かれんな少女そのもの。しかしフィオレナには通用しない。
「私の妹などではないでしょう?だって貴女は、」
 ギザン伯爵家に娘はフィオレナしかいない。それなのにフィオレナ以外の誰もがラーミアをギザン伯爵家の令嬢だと、フィオレナの妹だと認識している。その矛盾に誰も気付かない。
 何故なら。
「人間をたぶらかして生命力を食らう魔物――夢魔なのだから」
 フィオレナの指摘に、ラーミアは紅い唇に勝ち誇った笑みを浮かべた。嘲笑あざわらう様にあごを上げ、細い腰に手を当ててフィオレナを見下す。
「その魔物一匹すら追い払えないなんて、お可哀想な聖女様。奥の手を隠しているのかと警戒していたのに、まさかあっさり追い出されちゃうとは思わなかったわ!」
 高らかに笑うラーミアに、フィオレナは無言を貫く。
 指摘された通り、魔物であるラーミアに対して、フィオレナは無力だった。
 王城への侵入を易々やすやすと許し、アズレッド王子を含む大多数の人間に『フィオレナの妹、ラーミア・ギザン』と言う偽りの記憶を植え付けさせてしまった。
「それで、貴女の目的は何?」
 ラーミアの挑発には取り合わず、淡々と問う。肩透かしを食らったラーミアは面白くなさそうな表情を見せたが、おのれの優位を確信したのか、すぐに機嫌を直した。
市井しせいの人間と違って、貴族の生命力って美味しいのよね。若い男は特に」
 つまりラーミアにとって、貴族の頂点たる王子は極上の餌と言う訳か。
「これからは連日連夜楽しめるわね。ああもう夜が待ち切れない!」
 体をくねらせて一人で盛り上がるラーミアを尻目に、フィオレナは荷物を詰めたカバンを閉じて立ち上がった。もうここに用はないし、居場所もない。
「あら、本当に出て行くの?」
 部屋を出ようとドアノブに手を掛けたフィオレナに、意外感を隠さないラーミアの声が投げ付けられる。
 気にせず廊下へ出てドアを閉じる寸前、ラーミアの声が耳に刺さった。

「さよなら、役立たずの聖女様おねえさま
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