私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう 他

星山遼

文字の大きさ
3 / 16
私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう

後編

しおりを挟む
 見送る者もないまま、フィオレナは一人、王城の門をくぐって外へ出る。
 直後、背後で重く耳障みみざわりな音が響いた。首だけで振り返ってあおぎ見ると、フィオレナの身長より遥かに高く堅牢けんろうな作りの門扉もんぴが閉ざされたところだった。
 一つ息を吐き、気持ちを切り替えて緩やかな下り坂を進む。王城が木々の向こうに隠れた所で立ち止まった。
 左右に視線を走らせ、周囲を確認する。
 誰もいない。
 フィオレナはカバンを足元に置き、胸の前で指を組んで祈りの姿勢を取った。目を伏せて微かにうつむく。
 フィオレナの全身を淡い燐光りんこうが包み、長い白銀色の髪が光をまとって神々こうごうしく輝く。その光に呼応する様に、王城の複数の個所から光の柱が立ち上った。
 王城を取り囲む様に出現した光の柱は空高く伸び――不意に弾けて光の粒をき散らした。日差しを受けてきらきら輝きながら地上へと降り注ぐさまは、さながら光のシャワーだ。
 フィオレナは肩の力を抜いて目を開けた。髪に絡み付いた光の粒子をそっとすくい取る。
 これがフィオレナの、聖女の力。
 フィオレナの力は有効範囲が限られている為、広く力を拡散したい場合には何かしらの補助が必要になる。今回は王城の庭に植えられた木々に聖女の力を分け与える事で増幅装置としての機能を持たせた。
 準備に時間が掛かってしまい、ラーミアのたくらみを阻止する前に追い出されてしまったが――流石さすがにみすみす魔物を放置して国を滅ぼされては寝覚めが悪い。
 今頃、聖女の力を浴びた魔物ラーミアは本来の姿に戻っているだろう。
「アズレッド王子の前で醜態しゅうたいを晒す羽目はめになっていないと良いけれど」
 心にも思っていない事をうそぶく。
 風に乗って何かが聞こえた。
 老婆のごとしゃがれた絶叫は、微妙にラーミアの声に似ていた感じもするが――まぁ空耳だろう。
 何はともあれ、これで自分の役目は終わりだ。
 フィオレナはカバンを持ち上げる。
 さて、これから何処へ行こう?
 と、先程読んでいた手紙がカバンの隙間から滑り落ちた。
 拾おうと伸ばした指の先で、手紙はふわりと浮き上がり……またたく間に純白の小鳥へ変じる。
 驚きに目を見開くフィオレナを一瞥いちべつした小鳥は、そのまま真っ直ぐ飛び去った。
「そもそも、私にチカラの使い方を示してくださったのはあの手紙でしたわね」
 去年の誕生日に突如発現した己のチカラ。
 それが一体何なのか、自分はおかしくなってしまったのか。誰にも相談出来ず不安に駆られていたフィオレナの手元に飛び込んで来た、一羽の小鳥。
 真っ白な小鳥は一通の手紙に姿を変えた。そこにはフィオレナの疑問に対する答えが全て記されていた。
 つまり。
「次に私が向かうべき場所へ導いて下さる、と?」
 呟きに答えるものはない。しかし、これと言って行くあてもない身だ。信じてついて行くのも一興だろう。
「王城の奥で幾重にも守られながら生きていくのは安全だし幸せではあるのでしょうけれど、息が詰まりそうですし」
 城壁に切り取られた狭い空を見上げるよりも、遥か彼方まで続く道を辿る方が心も体も自由に生きられる気がする。

「素敵な出会いが待っていると、期待していますよ?」
 空高く羽ばたく小鳥を眩しそうに見上げて微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました

九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」 悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。 公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。 「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」 ――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...