私を追放した王子と妹へ、聖女の力が本物だと証明して差し上げましょう 他

星山遼

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追放された聖女は、竜の旦那様を射止めて幸せを満喫中です

前編

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「聖女シャーリィ・レード、どうか我が元へ戻って来て欲しい」
 第一王子にしてかつての婚約者・エルリスがうやうやしく差し出した手に、シャーリィは冷ややかな眼差しを向ける。
「そんな粗末な服より、華やかなドレスこそがキミには相応ふさわしい」
 憐れむ言葉に、ぴくり、とシャーリィの目元が震える。
 手を取ろうとしないシャーリィに痺れを切らしたエルリス王子が一歩踏み込む。が、「ひっ?!」と情けない悲鳴を上げて後退あとずさった。
 シャーリィの足元にはべる大小様々なドラゴン達が鋭い牙を剥き出しにして唸り、翼を打ち鳴らしてエルリス王子を威嚇いかくしたからだ。
「こっ、ここは聖女たるキミが居るべき場所ではない。今すぐ王城へ帰ろう」
 端正な顔を恐怖に引きつらせ、声を上擦うわずらせて早口にまくし立てる。シャーリィは顔色一つ変えずかたわらのドラゴンに手を添え、表面のうろこを軽く撫でて牙を引かせた。
「私を『ニセ聖女』と断じて、ドラゴン達がむこの辺境の森へ追放したのは、国王陛下とエルリス王子だったと記憶しておりますが?」
 淡々と言って、左手の甲を王子に示す。神々こうごうしい程に白く輝くシャーリィの手を彩るのは、彫刻の如く描かれた緻密ちみつ紋様もんよう
 聖女の証たる紋様をその身に授かって生まれた伯爵令嬢シャーリィ・レードは、二歳年上のエルリス王子と婚約
 国の繁栄と安寧の為に結ばれた王子と聖女の婚約に、シャーリィの拒否権はなかった。それでも貴族に生まれ、聖女に選ばれた己の宿命に誇らしささえ覚えていた。
 けれどエルリス王子は違った。
 シャーリィが己の役割を全うすべく己を厳しく律し、狂暴なドラゴンに対抗すべく日々知識を蓄えている間に、エルリス王子はある令嬢と恋仲になった。
 他の女性に心を奪われるのも若さゆえ。それに彼が王位を継いだ後は、より多くの血筋を残す為にも側室や愛妾を囲うのは避けられない。
 だからシャーリィは己の内に渦巻く感情を飲み込み、未来の王妃として毅然きぜんと背筋を伸ばして来た。
 だが、そんなシャーリィの努力をエルリス王子は踏みにじった。
 恋人と添い遂げたい一心で「ドラゴンなどと言う、人間とは相容れない異種族に執着するなど聖女であるはずがない!」とシャーリィをおとしめて強引に婚約を解消し、ドラゴンが棲むこの辺境の森にシャーリィを追放した。
 あれから二年。とっくにシャーリィの事など忘れてくだんの令嬢とハッピーエンドを迎えているとばかり思っていたのだが――王子の様子から推察するに、どうやらそう上手く事は運んでいないらしい。
「こっ、この森にキミを追放……いや、送り込んだのは、ドラゴン相手にキミの聖女のチカラを如何いかんなく発揮してもらい、父上や国民にキミの正当性を証明させる為さ」
 怯えて真っ青な顔になりながら、声を裏返らせて御託ごたくを羅列する。
 シャーリィは聞き苦しい言い訳に眉をひそめそうになる。不快感を追い払おうと水色の目を伏せ、軽く息を吐いた。
 どれほどわれようとも今更王城に戻るつもりはないし、シャーリィ一人で決められる話でもない。
「お話は分かりました。一日、時間を下さい」
 そう言って話を切り上げ、引き留めようと口を開きかけたエルリス王子へ慇懃いんぎんに一礼して森へ引き返した。
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