『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん

文字の大きさ
36 / 147

第35話 ジグルダと教皇ルベストイのその後

しおりを挟む
今回の騒動の原因である教皇とジグルダ。

僕はあの後彼らを完全に解呪して、実は話し合いを行うことにしていたんだ。

きっと今回の件は氷山の一角。
異星の脅威はきっとこんなもんじゃない。

まずはきっちりと、情報の収集をしなくちゃね。
まずはジグルダからだ。

ジグルダはつい数年前、いきなり彼らの星を攻められ改造され洗脳。
意味も解らずこの星へと連れてこられていた。


※※※※※


国王に依頼し借りた尋問室。
そこでは今僕とティア、そしてジグルダと名乗っていた異形の3人で話し合いを行っていた。

「…もう、帰る場所はない――殺してくれ」

そう懇願する異形の生物。
知能レベルは高いし戦闘能力もそれなりだ。

どうやら彼らの星は既に破壊されてしまったらしい。
確かに今の状況、彼は行く場所すらない。

「うーん。でも、もう誰かを殺そうとかは思っていないんでしょ?」

「…それはそうだが…だが我らの食事と言うかなんというか…どうしても『生体からのエネルギー補給』をしないと俺は生きてはいけないんだ」

下を向き俯く。
その瞳には後悔の念が滲んでいた。

「…正直俺が“おこなったこと”は許されざることだろう?…ライトなら一瞬で俺なぞ殺せる――頼む」

正直ジグルダはただの被害者だ。
“追放され転生した僕”にはその想い、分かるところもある。

自分の場所ではない世界――
そして犯した多くの罪。

でも。
彼らの仲間、同胞たち。
すでにかなりの人数がこの星に潜入しているはずだ。

確かに殺すのは簡単だ。
でも…それは解決ですらないんだ。

それに僕は。
どうしても彼らに対して“怒る気”になれなかった。

「ねえ、ジグルダ?君、本当の名前ってあるの?」
「…リョナーリイニーダだ。…この星だと周波数?発音?…が違うらしいが…まあ俺の名はそれだ」

「リョナ?リイニー?――じゃあ今から君は『リョダ』だ。いいね?」

この星の生物とは比較にならないほど強い彼等。
でも今目の前にいる『リョダ』からは悪意はみじんも感じられない。

「僕がさ、結界で場所を作るからさ…そこで暮らしなよ。えっと、魔物でも良いのかな?その、食事?」

「っ!?なっ?…あ、ああ。もちろん魔物でも問題はないが…良いのか?俺は多くの女を捕食してきた――殺したんだ…」

まあね。

彼は既に数年聖協国で君臨していた。
当然許されざることをしていたんだ。

でもさ。
それを罰する資格、僕には無いよね?

いわゆる食事。
生きるための行為。

――きっと僕だって同じ状況なら同じことをする。

「じゃあさ、僕に協力してよ。君たちに酷い事をした奴らがさ、そのうち大挙して攻めてくるんだ。…罰?と言うか“贖罪”したいのなら…君たちの力、僕に貸してほしい」

驚愕の表情を浮かべるリョダ。
そして恐る恐る僕に声をかけてきた。

「…俺…達?!…ま、まさか…」
「居るんでしょ?多くの仲間。…きっと強制的に操られているんだよね。…見つけたら助けるよ?――約束だ」

正直面倒くさい。
悪いけど積極的にそれをやるつもりもない。

でも。

間違いなく彼らは今“脅威”に他ならないんだ。
探さなくても確実に出会う。

僕は確信していた。


色々考えている僕の前にリョダは跪づく。
そして長く大きな手を前に差し出す。

「…ライト…いえ、ライト様…最大級の謝辞と忠誠を…我が魂、あなた様に捧げます」

……
うあ。
うー。

真面目かっ?!

それにどうしてティア、にっこりしているの?
もう。


なし崩し的に僕の配下が増えた瞬間だった。


※※※※※


取り敢えず僕はティアとリョダを連れて魔族の集落のすぐ近くに転移。
バルイルドさんに説明をし、広域に結界を張っておいた。

それから一応暮らせる住居としばらくの食料。

後は…

「ねえリョダ?取り敢えずしばらくはここで暮らしてくれる?…よし、繋がった。…念話?取り敢えず何か困ったら僕を思い浮かべてよ。つながるからさ。あー、後はそうだな…」

僕はインベントリから教本のような物を取り出しリョダに渡した。

「襲ってくる神?やられっぱなしはむかつくでしょ?それをよく読んで修行しておいて」
「はっ。勅命、賜りました」

「あー、うん。…ほどほどにね?あんまり無茶はダメだよ?」
「はっ」

どうやら彼等、元々メチャクチャ真面目な性格らしい。
なんだかすんごく強くなりそうだけど…

何より僕が解呪したことで擬態?のレベルが爆上がり。
かなりのイケメンが立っていた。

…まあいっか。

「んじゃ、僕は帰るよ?何かあったら連絡、だよ?あとヒューマンは食べちゃダメ。魔物は好きにしていいからさ。いいね?」

そう言い残し僕はティアと転移した。

後は例の教皇だ。

はあ。
面倒くさい。


※※※※※


ジグルダの件がどうにか済んだことで、僕はため息をつきつつも少し気を抜いていた。

転移して戻った王宮。
もちろんバレないように、外灯の届かない庭の隅に転移したよ?

そして何もなかったように王宮を進む僕とティア。
何故か慌しく兵士たちがざわめいている?

「…あれ?…どうしたんだろ?」
「ええ。すべて解決したはず…っ!?ライト様っ!」

ティアの感覚から、あの男“教皇の波動”が失われた。
ほぼ同時に僕に繋がっていた教皇の魔力が途切れる。

「っ!?ええっ?!ど、どうして?…くっ、ティア、執務室へ行くよっ」
「は、はい」

僕はおもむろにティアの手を取り、執務室へと飛んだんだ。


※※※※※


結果として。
教皇ルベストイは逃げていなくなっていた。

しかもどういう理屈か分からないけど…
僕の追跡を無効化していた。

(目覚めた?!…いや、違う…協力者だ――王宮の中に、教皇派がいる)

女神を奉る聖教会。
実はかなりの力を持つ組織だ。

いまだ教皇の“狂信者”がいた事実。

国王の執務室は怒りの波動に包まれていた。

「…すまない…ライト…」

うなだれ頭を下げる国王。
悔しそうに俯くロキラス殿下。

そんな僕の感覚に、小さな悲鳴が届く。

「っ!?…あの時の女の子?…まさかっ?!」

教皇と初めて会ったときにいた少女。
彼女に危機が訪れていた。

「くそがっ!!!」

僕は怒りに囚われつつも転移した。
そして目撃する。

権力に、力に憑りつかれ――
他人を見下すその悍ましいヒューマンの本性。


僕の想定を超える、別の星の生き物の感情を。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

追放された『修理職人』、辺境の店が国宝級の聖地になる~万物を新品以上に直せるので、今さら戻ってこいと言われても予約で一杯です

たまごころ
ファンタジー
「攻撃力が皆無の生産職は、魔王戦では足手まといだ」 勇者パーティで武器や防具の管理をしていたルークは、ダンジョン攻略の最終局面を前に追放されてしまう。 しかし、勇者たちは知らなかった。伝説の聖剣も、鉄壁の鎧も、ルークのスキル『修復』によるメンテナンスがあったからこそ、性能を維持できていたことを。 一方、最果ての村にたどり着いたルークは、ボロボロの小屋を直して、小さな「修理屋」を開店する。 彼の『修復』スキルは、単に物を直すだけではない。錆びた剣は名刀に、古びたポーションは最高級エリクサーに、品質すらも「新品以上」に進化させる規格外の力だったのだ。 引退した老剣士の愛剣を蘇らせ、村の井戸を枯れない泉に直し、ついにはお忍びで来た王女様の不治の病まで『修理』してしまい――? ルークの店には、今日も世界中から依頼が殺到する。 「えっ、勇者たちが新品の剣をすぐに折ってしまって困ってる? 知りませんが、とりあえず最後尾に並んでいただけますか?」 これは、職人少年が辺境の村を世界一の都へと変えていく、ほのぼの逆転サクセスストーリー。

処理中です...