【完結】婚約破棄される侯爵令嬢を救いたい!想いの重い鑑定士は乙女ゲームのフラグをぶち壊す!

たらふくごん

文字の大きさ
9 / 70

9.幸せな時間と永遠の別れ

しおりを挟む
あのあと私は本田君…俊則が帰ろうとする前に告白した。
俊則は目を回しながら、そして涙を流してすごく喜んでくれた。

実は俊則、保育園の時一緒で、その時から私のこと好きだったって。
私はどうしていいか分からないくらい赤くなっちゃっていた。

そしたらなんか今日はたまたま早くお父さんとお母さんが帰ってきて、そのまま両親に紹介することになっちゃって…

俊則、可哀相なくらい緊張してたけど、最後にお父さんに「娘さんとお付き合いさせてください」って言ってくれた。

感動しすぎてなんか私、もう結婚してもいいかなって思っちゃったくらいだった。

それで俊則が帰った後、両親から凄くしつこく色々聞かれて…
一応知っていることは全部話したの。
バイトの時の事とか、その、親友の事も。

そしたらもう家族3人で大泣きしちゃった。
お父さんなんか「もう一緒に暮らしたらどうだ」なんて言い出す始末。

でもお父さんもお母さんも、凄く気に入ってくれた。
私は本当にとても嬉しかったんだ。

一応付き合い始めたことにはなったけど、俊則はお母さんのこともあって毎日忙しくて、たまにバイト終わりに私の家まで送ってくれる時にお話ししたりしていた。

それに俊則、最近お洒落になってきて、なんだか少しやせて、カッコよくなってきたんだよね。
「舞奈に恥ずかしい思いさせたくないからさ。俺も少しは格好つけたいんだ。だって……舞奈可愛すぎて……心配なんだ」

もう。
この男は私をキュン死させたいのだろうか?
私の好きは毎日加速的に増していったんだ。

7月に入ってすぐ、私たちの学校では期末試験が行われた。
あれから俊則のお母さんも少し体調が良くなって、短い時間だけど働くようになった。
そしてお金がない事で大学をあきらめていた俊則にうちのお父さんがアドバイスしてくれて、お金がなくても行ける方法を教えてくれていた。

うちの高校は偏差値が52くらいの高校だった。
びっくりしたんだけど俊則、実は新入生代表挨拶をしていたくらい自頭は良かったんだよね。

色々諦めていた彼はランクを2つくらい下げて、アルバイト可、家から近いということでうちの学校に入学していたんだ。

1年のころは本当にバイト中心で勉強してなくて、500人中450番くらいだって言ってた。
因みに私は100番くらいだった。
それで俊則はアルバイトを少し減らして、怖いくらい勉強に集中していたんだ。

心配になった私は
「お父さんああ言ったけど、別に就職でもいいんじゃないの?」
俊則にそう言った。

でも彼は

「俺は舞奈と将来結婚したいんだ。絶対幸せにしたい。……つまらない話するけどさ、やっぱりお金って大事なんだよ。俺は要領が悪いからさ、少しでもいい大学に入っていい会社に勤めたいんだ」

しれっとそんなこと言う俊則に私は毎日ドキドキさせられていたんだ。
せっかく両親公認なのに……実はまだキスもしていなかったけど。

そして運命の期末試験が終わり、結果を見て私は魂が抜けるほど驚いた。
俊則が学年3位になっていた。
そしてクラスの女子の目が劇的に変わっていった。

私と彼が付き合っていることは実は誰も知らない。
私は良かったけど彼が言わない方が良いいんじゃないかって心配していたからだ。

「俺みたいな不細工と付き合っていることがばれたら舞奈いやじゃない?」

私はなんか秘密にしていることが、逆にかっこいいと思ってしまっていた。

「ううん、そんなことないけど。でも、2学期からは教室でもお話ししたい」
「ああ、俺も真剣に頑張るよ。舞奈が恥ずかしくない彼氏になって見せる」

私は舞い上がっていた。
そしてうぬぼれていた。

実は俊則が優しいのは今に始まったことではなかった。
思い起こせば彼は保育園の時から優しかった気がする。
ごめんだけどあまり覚えていないけどね。

彼は中学時代も勉強ができ生徒会に所属したり、風紀委員長とかもやっていた。
フェミニストの彼は特に女性には優しかったから、実は隠れファンがいたらしい。

お父さんが亡くなったのが中学3年の4月。
そこから彼は色々諦めた。
だからミーハーな隠れファンたちはいっせいに彼から離れていった。

でも、わたしのほかに一人、ずっと彼を見ていた女の子がいた。
一個下の1年生の高木絵美里。
あの、頭のおかしい女が、全ての運命を狂わせた。

※※※※※

夏休みに入ると、俊則は泊まり込みで10日間ほどアルバイトに行ってしまっていた。
私はとても寂しくて拗ねたりもしたけど、俊則は一度電話してくれて8月5日に会いたい、デートしようって誘ってくれた。

えっと昔だったから、ケータイは学生で持っている人はいなかったんだよね。

だから電話もすごくうれしかったし、駅で待ち合わせをして、海沿いの水族館に行く約束をしてくれて本当に嬉しかった。

私は嬉しすぎるし、なんかお母さんもやけに気合が入って、凄く可愛い髪形と、少し大人っぽいお化粧までしてくれて、わたしはウキウキで待ち合わせの場所に行った。

そこには今まで見たことがない、かっこいい俊則が待っていてくれたんだ。
私を優しく見つめる瞳に、わたしは思わず呆けてしまっていた。

「舞奈、可愛い。……会いたかったよ」
「うん。俊則、わたしも」

周りに人がいることなんて関係なかった。
私は夢中で彼に抱き着いた。

後で聞いたら、彼の田舎で農業の短期集中バイトに応募していたんだって。
10日間で、8キロもやせたって聞いてびっくりした。

もう誰も俊則を馬鹿にする人はいないと思う。
凄くお洒落な服を着て、やせて筋肉質な彼は、本当にかっこよくて。

私は幸せの絶頂にいた。

デートは最高だったし、素敵だった。

確かに彼は女の子と付き合ったことがなかったし、わたしだって初めてだった。
だけどなんだろ、慣れているとかじゃなくて、凄く優しい。
何より私をとても大切にしてくれる。

マニュアルとか、人から聞いたとかじゃなくて、心の底からの思いやりにあふれたデートは、わたしの心を完全に打ち砕いた。

水族館で可愛いクラゲを見て、わたしたちはいつの間にか自然に腕を組んで歩いていた。
凄く混んでいるから、彼は優しく肩を抱いてくれるし、自然と距離が近くなって…

私は生まれて初めて好きな男の子とキスをした。

ちっともロマンチックじゃなかったけど。
だって、お互い緊張しすぎて、歯をぶつけあって痛くてうずくまっちゃうし。

でも最後に、本当に子供みたいなキスをしたんだ。

本当に嬉しかったんだよ?
もう離れないって、ずっと一緒だよって、お互い思っていた。

そしてその日の夕方。
繁華街の交差点であの頭のおかしい女、高木絵美里が突然俊則を大きなナイフで背中から刺した。

何が起きたか分からなかった。
俊則の背中から、赤黒い血がどくどく流れてきて、そして、刺さった場所が悪く俊則は。

即死だった。

私は多分、1か月くらい狂ってしまっていた。
後で聞いた話だけれど、あの頭のおかしい女は初恋をこじらせていた。

中学1年の頃、俊則に助けられ、それからずっとスト-カー行為を行っていたのだ。
そして自分じゃない女、つまり私と付き合っている姿を見て、殺してから自分も死のうとしていたらしい。

そして私は二度と。
好きな人を作ることが出来なくなっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...