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18.性悪女のたくらみを暴け
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土の季節第3月一闇の日
いよいよ今日は王立学園の卒業パーティーの日。
ウッドストック家から会場のガルド王宮までは馬車で1時間ほどの距離だ。
実はウッドストック家は伯爵ではあるがその実力は下手な侯爵よりも上だった。
王都のすぐ隣でウッドストック領はその潤沢な地下資源をもとに繁栄していた。
「お父さまが攻略対象だったため近くにいるという設定なのでしょうけれど」
馬車の中でロナリアは独り言ちる。
不思議そうにロナリアを見つめルルが口を開いた。
「何か仰いましたかロナリアお姉さま?」
可愛く余所行きのドレスに身を包んだルルが首を傾げる。
淡いパステルカラーが可愛らしい彼女によく似合っている。
「ふふっ、何でもないわ。可愛いわね、ルルは」
「な、何言うんですか、もう……ドキドキしちゃいます」
私は昨晩、ルルも含め数名の侍女にそれこそ有り得ないくらい体中をまさぐられつくされ、際どい所までそれはもう丁寧に磨かれ、本当に魂まで抜けてしまうのではという快感に包まれたのだ。
百合が流行る気持ちが分かってしまったロナリアなのであった。
だって……
あんなところやこんなところまで女性のしなやかな指で優しく撫でられ。
マッサージされ、香油を塗りたくられれば……
そりゃあ、あんな声だって出ちゃうでしょ!
施術してくれた皆さんもなんだかうっとりと顔を赤らめてるし……
ルルもパーティー出るからって同じように磨かれて、なんか危ないくらい可愛い声出しちゃってたし……
おかげさまで『ガチで隅々まで』ツルツルピカピカだけれどね!
思い出し顔を真っ赤に染めるロナリア。
「すごいわね。貴族って」
「???」
さらに早朝たたき起こされコルセットで締め付けられ、数時間かけ化粧とトコトン髪を結い上げられる。
死んだような表情で着飾られていく自分を見ながらほぼ不動で耐えたのだ。
もう帰りたいと思う事は致し方のない事だろう。
是非男どもにも同じ苦労を分からせてやりたいと、ロナリアは真剣に思ったものだ。
兄のレイナルドは会場で待ち合わせることになっていて、当然だが仕込みはすでに終わっている。
後は合図と現場の情報の共有だけだ。
まあ妻になるアリントン子爵家長女ラナ嬢と王都内の邸宅でのお泊りデートをこなした後らしいのだけれどね。
……もてる男はマメなのね。
そんなことを思い浮かべながらも、ガルド王宮の見取り図を開き再度確認をする。
取り敢えず対応は問題ないはずだ。
パーティーには防犯上一人の付き人が許されている。
本来なら筋骨隆々な護衛騎士を連れていくところであるが、まあ何度も見ているイベントだ。
危険がないのは承知している。
それよりも男性を連れていく方がきっと厄介なことになるとロナリアは考えていた。
「あの女……絶対まともじゃない」
男爵令嬢ミリー。
お母様の記憶にも無いし、過去にもどうやらロナリアとの接点もほぼ無いようだ。
どうも彼女、同姓に蛇蝎のごとく嫌われていてお茶会とかも全く招待されないらしい。
そういうわけで精神安定の意味を含め今回可愛いルルを同行させた。
もちろん、会場内でのミッションはすでに伝達済みだ。
「はあ、本当に可愛いわルル。癒される」
「あう…ロナリアお姉さま♡」
思わず隣に座り優しくルルを抱きしめささやくロナリア。
甘く優しい彼女のぬくもりと匂いが、荒んでいく精神を安定させていく。
そしていよいよ決戦の幕が上がる。
※※※※※
続々と到着する馬車を横目でちらりと見やり、ロナリアは人の流れを躱しながらルルとともに庭園の隅の方へ足を運ぶ。
今回の救出劇に向け、ロナリアは創造のスキルで超近代的な機器をいくつか用意していた。
馬番の2人にも渡してあるそれの現地でのテストを行うためだ。
『……あー。あー、聞こえるかしら』
『……は、はひっ、き、聞こえる?うわあ、すごっ!』
馬番二人の慌てふためく様子が目に浮かぶ。
『落ち着いて頂戴。ちゃんと使えるわね。じゃあ準備はよろしくて』
『は、はい』
『お願いね』
よし、通信機も問題ない。
あとは周りの動きに注意して…
ん?
なんだろう、あれ?
庭園の隅の方に、ボロボロの布で囲われた2メートルはありそうな四角いものが鎮座していた。
そして周りには数人の憲兵らしき男が台車の様なものの横でたむろしている。
ロナリアがいる場所から20m位は離れているだろうか。
……鑑定は届かないわね。
「ねえルル、あれ何かしら」
「えっ、なんですか」
私の後ろからついて来たルルはちょうど私が邪魔になっていて見えない位置にいた。
そして物を見ようとひょいっと私の横から前に出ようとし、躓いてしまったのだ。
「きゃっ!」
「ルルっ!?」
慌てて手をつかみ、ルルが転ぶのは防げたが、どうやら憲兵に聞こえたようで、たむろしている場所から2人がこちらに近づいて来た。
「すみませんお嬢様方、こちらは殿下の指示で立ち入り禁止になっております。ご退去願いたいのですが」
「あら、そうでしたのね。ごめんなさい。馬車に酔ってしまいまして」
コイツら何か雰囲気がおかしい。
この距離なら……『鑑定』……なっ!?
「それは大変ですね。医務室がございますのでご案内いたしましょう」
「ええ、ありがとうございます。…あら?エスコートの方が見えたみたいですわ。それでは失礼いたしますわね。お仕事ご苦労様です」
私は言い訳をしてそそくさと庭園を後にした。
ルルがその様子におかしいと感じたのだろうが取り敢えず何も言わずについてきてくれた。
うん。
本当に優秀な子だ。
ホールに続く広めの廊下まで来て私はルルに振り返った。
そして顔を近づけささやく。
「さっきの憲兵の皆さん……野盗でしたわ」
「っ!?なっ」
私は慌ててルルの口をふさいだ。
「しーっ。はあ、マジで性悪ね。あの糞女」
「……ミリー嬢ですか」
「うん。……道理で侯爵様が手も足も出ないはずだわ」
私はため息をついて鑑定でつかんだ事実をルルに教えた。
「前に話したでしょ。エリス嬢が野党に襲われるって」
「…はい。自害なさるのですよね」
「ええ、でも違うわね。もっと確実に心を壊すつもりよ」
私は自分の表情が消えていくのを自覚した。
「おそらくエリス嬢は憲兵に連れていかれるわ。そしてそのままさっきの庭園にあった檻で連れ去られる」
「っ!?…じゃあ、王宮の牢屋ではなく……」
「そうね。どこかへそのまま連れていき、沢山の男の慰み者にするのでしょうね。……そして心を完全に折る」
ルルの目が見開かれる。
「酷い……」
「絶対に助けるわ」
そこへエスコートするために兄のレイナルドが颯爽と登場した。
マジでかっこいい。
キラキラのエフェクトが見えるようだ。
「美しいお嬢様方?内緒話は終わったのかな?」
「ふふっ、淑女に秘密はつきものでしてよ。素敵ですお兄様」
お兄様は跪いて私の手を取り、口づけを落とす。
「お手を取っても?」
「ええ、喜んで」
私は抱き着くようにお兄様に近づいた。
そして耳元でささやく。
「お兄様、どうやら最悪ですわ」
「動かせるのは五人だ。……足りるかな」
「流石ですお兄様。ルルの合図と同時に動かしてくださる?」
「ああ、どう動く?」
「憲兵に偽装した野盗三名がエリス嬢を連行します。無力化してウッドストック家の馬車に確保したいわ。エリス嬢ごと」
「問題な無いのだな?」
「ええ、その後すぐにドレスト侯爵様と面会いたします」
「分かった。私が責任を持ってエリス嬢をわが家へお連れしよう」
「ふふっ、手を出さないで下さいましね」
「ふう、ロナリアはもっと兄を信用しなさい」
「信じておりますわよ。とっくに。お願いいたします。お兄様」
良し、これで完璧だ。
私はわざとらしく声を出してお兄様に甘える。
「もう、お兄様?嬉しすぎて本当に惚れてしまいますわ」
兄も流石だ。
すぐにフォローしてくれる。
「ああ、可愛い妹よ。兄でなければ惚れてしまうところだぞ。さあ、そろそろ時間だ」
「ええ、よろしくお願いいたしますわ」
賽は投げられた。
まずは緒戦。
しっかり勝たせてもらうわよ。
いよいよ今日は王立学園の卒業パーティーの日。
ウッドストック家から会場のガルド王宮までは馬車で1時間ほどの距離だ。
実はウッドストック家は伯爵ではあるがその実力は下手な侯爵よりも上だった。
王都のすぐ隣でウッドストック領はその潤沢な地下資源をもとに繁栄していた。
「お父さまが攻略対象だったため近くにいるという設定なのでしょうけれど」
馬車の中でロナリアは独り言ちる。
不思議そうにロナリアを見つめルルが口を開いた。
「何か仰いましたかロナリアお姉さま?」
可愛く余所行きのドレスに身を包んだルルが首を傾げる。
淡いパステルカラーが可愛らしい彼女によく似合っている。
「ふふっ、何でもないわ。可愛いわね、ルルは」
「な、何言うんですか、もう……ドキドキしちゃいます」
私は昨晩、ルルも含め数名の侍女にそれこそ有り得ないくらい体中をまさぐられつくされ、際どい所までそれはもう丁寧に磨かれ、本当に魂まで抜けてしまうのではという快感に包まれたのだ。
百合が流行る気持ちが分かってしまったロナリアなのであった。
だって……
あんなところやこんなところまで女性のしなやかな指で優しく撫でられ。
マッサージされ、香油を塗りたくられれば……
そりゃあ、あんな声だって出ちゃうでしょ!
施術してくれた皆さんもなんだかうっとりと顔を赤らめてるし……
ルルもパーティー出るからって同じように磨かれて、なんか危ないくらい可愛い声出しちゃってたし……
おかげさまで『ガチで隅々まで』ツルツルピカピカだけれどね!
思い出し顔を真っ赤に染めるロナリア。
「すごいわね。貴族って」
「???」
さらに早朝たたき起こされコルセットで締め付けられ、数時間かけ化粧とトコトン髪を結い上げられる。
死んだような表情で着飾られていく自分を見ながらほぼ不動で耐えたのだ。
もう帰りたいと思う事は致し方のない事だろう。
是非男どもにも同じ苦労を分からせてやりたいと、ロナリアは真剣に思ったものだ。
兄のレイナルドは会場で待ち合わせることになっていて、当然だが仕込みはすでに終わっている。
後は合図と現場の情報の共有だけだ。
まあ妻になるアリントン子爵家長女ラナ嬢と王都内の邸宅でのお泊りデートをこなした後らしいのだけれどね。
……もてる男はマメなのね。
そんなことを思い浮かべながらも、ガルド王宮の見取り図を開き再度確認をする。
取り敢えず対応は問題ないはずだ。
パーティーには防犯上一人の付き人が許されている。
本来なら筋骨隆々な護衛騎士を連れていくところであるが、まあ何度も見ているイベントだ。
危険がないのは承知している。
それよりも男性を連れていく方がきっと厄介なことになるとロナリアは考えていた。
「あの女……絶対まともじゃない」
男爵令嬢ミリー。
お母様の記憶にも無いし、過去にもどうやらロナリアとの接点もほぼ無いようだ。
どうも彼女、同姓に蛇蝎のごとく嫌われていてお茶会とかも全く招待されないらしい。
そういうわけで精神安定の意味を含め今回可愛いルルを同行させた。
もちろん、会場内でのミッションはすでに伝達済みだ。
「はあ、本当に可愛いわルル。癒される」
「あう…ロナリアお姉さま♡」
思わず隣に座り優しくルルを抱きしめささやくロナリア。
甘く優しい彼女のぬくもりと匂いが、荒んでいく精神を安定させていく。
そしていよいよ決戦の幕が上がる。
※※※※※
続々と到着する馬車を横目でちらりと見やり、ロナリアは人の流れを躱しながらルルとともに庭園の隅の方へ足を運ぶ。
今回の救出劇に向け、ロナリアは創造のスキルで超近代的な機器をいくつか用意していた。
馬番の2人にも渡してあるそれの現地でのテストを行うためだ。
『……あー。あー、聞こえるかしら』
『……は、はひっ、き、聞こえる?うわあ、すごっ!』
馬番二人の慌てふためく様子が目に浮かぶ。
『落ち着いて頂戴。ちゃんと使えるわね。じゃあ準備はよろしくて』
『は、はい』
『お願いね』
よし、通信機も問題ない。
あとは周りの動きに注意して…
ん?
なんだろう、あれ?
庭園の隅の方に、ボロボロの布で囲われた2メートルはありそうな四角いものが鎮座していた。
そして周りには数人の憲兵らしき男が台車の様なものの横でたむろしている。
ロナリアがいる場所から20m位は離れているだろうか。
……鑑定は届かないわね。
「ねえルル、あれ何かしら」
「えっ、なんですか」
私の後ろからついて来たルルはちょうど私が邪魔になっていて見えない位置にいた。
そして物を見ようとひょいっと私の横から前に出ようとし、躓いてしまったのだ。
「きゃっ!」
「ルルっ!?」
慌てて手をつかみ、ルルが転ぶのは防げたが、どうやら憲兵に聞こえたようで、たむろしている場所から2人がこちらに近づいて来た。
「すみませんお嬢様方、こちらは殿下の指示で立ち入り禁止になっております。ご退去願いたいのですが」
「あら、そうでしたのね。ごめんなさい。馬車に酔ってしまいまして」
コイツら何か雰囲気がおかしい。
この距離なら……『鑑定』……なっ!?
「それは大変ですね。医務室がございますのでご案内いたしましょう」
「ええ、ありがとうございます。…あら?エスコートの方が見えたみたいですわ。それでは失礼いたしますわね。お仕事ご苦労様です」
私は言い訳をしてそそくさと庭園を後にした。
ルルがその様子におかしいと感じたのだろうが取り敢えず何も言わずについてきてくれた。
うん。
本当に優秀な子だ。
ホールに続く広めの廊下まで来て私はルルに振り返った。
そして顔を近づけささやく。
「さっきの憲兵の皆さん……野盗でしたわ」
「っ!?なっ」
私は慌ててルルの口をふさいだ。
「しーっ。はあ、マジで性悪ね。あの糞女」
「……ミリー嬢ですか」
「うん。……道理で侯爵様が手も足も出ないはずだわ」
私はため息をついて鑑定でつかんだ事実をルルに教えた。
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「…はい。自害なさるのですよね」
「ええ、でも違うわね。もっと確実に心を壊すつもりよ」
私は自分の表情が消えていくのを自覚した。
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「っ!?…じゃあ、王宮の牢屋ではなく……」
「そうね。どこかへそのまま連れていき、沢山の男の慰み者にするのでしょうね。……そして心を完全に折る」
ルルの目が見開かれる。
「酷い……」
「絶対に助けるわ」
そこへエスコートするために兄のレイナルドが颯爽と登場した。
マジでかっこいい。
キラキラのエフェクトが見えるようだ。
「美しいお嬢様方?内緒話は終わったのかな?」
「ふふっ、淑女に秘密はつきものでしてよ。素敵ですお兄様」
お兄様は跪いて私の手を取り、口づけを落とす。
「お手を取っても?」
「ええ、喜んで」
私は抱き着くようにお兄様に近づいた。
そして耳元でささやく。
「お兄様、どうやら最悪ですわ」
「動かせるのは五人だ。……足りるかな」
「流石ですお兄様。ルルの合図と同時に動かしてくださる?」
「ああ、どう動く?」
「憲兵に偽装した野盗三名がエリス嬢を連行します。無力化してウッドストック家の馬車に確保したいわ。エリス嬢ごと」
「問題な無いのだな?」
「ええ、その後すぐにドレスト侯爵様と面会いたします」
「分かった。私が責任を持ってエリス嬢をわが家へお連れしよう」
「ふふっ、手を出さないで下さいましね」
「ふう、ロナリアはもっと兄を信用しなさい」
「信じておりますわよ。とっくに。お願いいたします。お兄様」
良し、これで完璧だ。
私はわざとらしく声を出してお兄様に甘える。
「もう、お兄様?嬉しすぎて本当に惚れてしまいますわ」
兄も流石だ。
すぐにフォローしてくれる。
「ああ、可愛い妹よ。兄でなければ惚れてしまうところだぞ。さあ、そろそろ時間だ」
「ええ、よろしくお願いいたしますわ」
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