【完結】婚約破棄される侯爵令嬢を救いたい!想いの重い鑑定士は乙女ゲームのフラグをぶち壊す!

たらふくごん

文字の大きさ
69 / 70

SS―19.舞奈と俊則

しおりを挟む
侯爵様の邸宅でエスペリオとロローニの二人を浄化した夜。

俺は夢を見ていた。

懐かしい古い記憶。
やがてそれは形を成し、俺はそれを思い出す。

大好きな舞奈。
彼女との最初の出会い。

ああ、やっぱり。

俺と君は運命だったんだ――――――


※※※※※


市営の保育園。
多くの子供達がキラキラと目を輝かせ、入園式は滞りなく進んでいった。

桜が散り始め葉桜になる直前。
暖かいあの街は4月の上旬にはすでにピークは終わっていた。

「はい、皆さん。入園おめでとう。私は佐々木未来、あなた達の担当です。保護者の皆さま方、ぜひよろしくお願いいたします」

俺が入園した保育園。
年少組の担当の佐々木先生。

―――ああ、なんて懐かしいんだ。

それからしばらくは慣らし保育。
午前中の短い時間だけ俺は目を引く女の子と遊ぶ事が出来ていた。

「ねえ?としのりくんっていうの?わたしまいなだよ♡よろしくね」
「う、うん。まいなちゃん」

―――やばい。
―――夢で見てるはずなのに……
―――舞奈めっちゃ可愛い。

そして始まる通常保育。
思えばこの頃から俺の母さんは病んでいた。

「ねえとしくん。なんで女の子の格好なの?」
「まいなちゃん…う、うん……ちょっとね…」

―――なぜか一緒に居た舞奈。
―――でも彼女は可愛かったんだ。
―――だから……

「おい、この男女!!まいなから離れろ!!よわむしがうつるだろ!!」

―――ああ、健太だ。
―――小学校からは結構遊んだけど…
―――コイツ嫉妬していたんだ。いつも舞奈といる俺に…

それから俺は孤立していく。
心配した舞奈がたまに様子を見てくれたけど…
健太たちが色々言ったせいで、気付けば誰も居なくなっていた。

そんな6月の下旬。
あの日は大雨で道路が冠水。
みんなの親が迎えに来る事態になったとき、なぜか俺と舞奈の二人、親の事情で遅くまで残されていたんだ。

「……なんかひさしぶりだね?おかしいよね。おなじきょうしつにいるのに」
「…う、うん」

3歳なのにため息をつく舞奈。
少し大人っぽい仕草に俺は見蕩れていたんだ。

そして突然何かを思い出したように俺の手を取り興奮したような顔で見つめてくる彼女。

「そうだ。ねえ、『おまじない』ってしってる?」
「…おまじない?」
「うん。わたしねとしくんのこと心配なの。それで長野のおじいちゃんがねこういうの」
「……」
「コホン『…舞奈よ、この世には運命ということわりがある。それはレールの様なモノ。きっといつか出会う大切な人とかもじゃな。だからな、おまえがピンとくる相手。大事にしなさい。それはきっとお前を助ける。まあ『おまじない』のような物じゃな』……とか言うの。ねっ、だから負けないで?まいなおうえんしてるから」

―――今思えば舞奈の記憶力ヤベーな。
―――でも今ならわかる。
―――あれは道しるべ。

―――あの時俺と舞奈の運命は動き始めたんだ。

彼女の難しい話。
あの時の俺は全く分からなくて…
でも、応援するって言われたこと。

俺はそれが宝物になったんだ。

やがて月日が流れティナちゃんが短い間だけどうちの園に訪れた。
そして俺の運命はさらに加速した。

いつもうじうじしていた俺の、ティナちゃんを守るために奮い立たせた勇気。
一番に反応してくれたのはやっぱり舞奈だった。

メチャクチャ嬉しかったんだ。
俺はあの時もう。

将来舞奈と結婚したいって心の底から想っていた。
ヤベーくらいのませガキだね。


※※※※※


「…う…ん……っ!?舞奈?…あれ?」
「俊則…うなされていたよ?…大丈夫?」

長いのか短いのか。
俺は今見ていた夢をすべて忘れていた。

でも目の前にいる舞奈。
なぜか涙が出てきてしまう。

「っ!?俊則?ああ、大丈夫だよ?…私がいるから…絶対にいつまでも一緒だよ」
「うああ、舞奈…舞奈……」

俺はみっともなく彼女に縋りついた。
優しく包み込んでくれる温かくそして大好きな匂い。

ああ、君は。
俺の運命の人だ。

どうして俺の部屋に彼女がいたのか。
気付けば俺は聞くのを忘れていた。

でも彼女のぬくもり。
俺はもう絶対に手放さない。

死んで別れてしまった愛おしい彼女。
今のこの瞬間、俺は運命に感謝をささげていた。


※※※※※


翌朝。
俺は起きた時にテーブルの上にある舞奈のメモを見つけていた。

「…メモ?…ふふ、いつでも会えるのに…どれどれ……うん?」

メモには走り書きでこう書いてあった。

『ねえ、デートだけどさ。高校生に戻ろっか』

と。

高校生に戻る?

俺はいまいち理解せずに朝食の為に舞奈の部屋に向かったんだ。

「おはよう」

「おはよう」
「おはようございます先輩」
「シュラド様、おはようございます」

ああ、まさに天国だ。

大好きな俺の彼女たち。
きっと世界でも一番かわいい3人だ。

「ねえ俊則、メモ見た?」
「うん」
「ふふっ、私さこの前ちょっとサプライズしたでしょ?あれからちょっと考えたんだよね」

得意げな舞奈。
目を輝かせてメチャクチャ可愛い。

「そしてついにたどり着きました!ジャジャーン!!」

取り出したるはなぜかおどろおどろしい色の怪しい瓶。
思わず固まってしまう舞奈以外の3人。

「あ、た、確かに色はちょっと…で、でも効果は問題ないよ?」
「っ!?ロナリアお姉さま?それ、飲むんですか?!」
「ま、舞奈さん?大丈夫なんですか?」

いきなり心配そうになり舞奈に声をかけるルルと絵美里。
不満そうな顔をする舞奈が俺に視線を向ける。

「う、うん。ありがとう舞奈。飲むよ?…それでこれいつ使うの?」
「あ、ありがと。ねえ俊則?明日って訓練とか休めるかな?」
「うん。今日言えば大丈夫。それじゃ明日…君とデートできるってこと?……ああ、嬉しい」

もちろんルルと絵美里とのデート。
それだって俺は最高に楽しかったし嬉しかった。

でもやっぱり。
舞奈とのデート。

俺は心が沸き立ってしまう。

「……もう。ばか……嬉しい。俊則」
「う、うん」

やばい。
なんか拗ねてそして恥じらう舞奈。

ああ、今すぐ抱きしめたくなっちゃう。

「むう。やっぱりロナリアお姉さまズルいです」
「うんうん。先輩なんだかすごく浮かれてる」

「え?あ、いや…ははは、は…」

突き刺さる美少女二人のジト目。
ごめん、それ俺には…

ご褒美と変わりませんよ?

改めて恵まれている現状に俺の心は温かくなっていったんだ。


※※※※※


デート当日朝。
俺は舞奈に呼ばれて彼女の部屋へ訪ねていた。

「はい。俊則、それ飲んでみて」
「う、うん」

俺は先日舞奈が作った怪しい色の瓶の蓋を開ける。
見た目とは違うすっきりとした柑橘系の香りが俺の鼻に届く。

「うえ?…いい匂いなんだね……俺てっきり…」
「…なに」
「あ、いや……いただきます」

なんかやっぱり舞奈気にしているみたい。
俺はおもむろに流し込み飲み干した。

「っ!?」

途端に熱くなる体。
そしてなぜか縮んでいく?

「うおっ?!」
「……あああ、俊則だ……ああ、としのりっ!!」

突然抱き着く舞奈。

「ま、舞奈?……っ!?声が?!!…えええっ?!!」

ふと視線をそらし目に入る姿見。
そこには日本にいた時の俺が、金髪美女に抱き着かれている様子が映し出されていた。

「舞奈?!…これって…」
「うん。魂に記憶されている姿に変身できる薬。すっごく頑張ったの。…まあ効果は短くて…24時間なんだけどね」

そう言いながら舞奈はもう一つの瓶を開けて飲み干した。
輝く彼女の体。

そしてあり得ない感動が俺を包み込む。

「……どう、かな?…あうっ、私日本にいた時…やっぱりちっぱいなのよね…ロナリア本当にチートだわ…っ!?うわっ!?」

もうだめだ。
もうたまらない。
俺はがむしゃらに彼女を抱きしめていた。

「と、と、としのり?!ひゃん♡」
「ああああ、舞奈だ……俺の大切な舞奈……あああ、もう…だめだ…」
「ちょ、ちょ、ちょっと、まっ…あんっ♡」

俺はあまりの感動に抱きしめながらも彼女の可愛らしいお尻に手を這わしていた。
真っ赤に染まる可愛い日本にいた時の姿。
俺の頭は爆発寸前だ。

「ま、まって?…うあ、こ、この体…び、敏感なのっ!!」
「ひうっ?!」

彼女の懇願。
俺はどうにか手を離した。

「ふう。……もう。俊則のエッチ♡」
「ぐはああっっ?!!」

やばい。
破壊力半端ない。

(あうう、ど、どうしよう……こ、この体……未使用だ……あうう♡)

何故か挙動不審になる舞奈。
俺は思わずいぶかしげな眼で彼女を見つめた。

「えっと…大丈夫?」
「う、うん」

改めて見つめる彼女。
いつものロナリア嬢の服が少し大きめで…

確か日本にいた時の彼女は156cm。
ロナリア嬢は165cmだから10cmくらい違うはずだ。

それに胸も…うあ、やばい。
メチャクチャ興奮してしまう。

感じたい…心の底から恐ろしいほどの欲求が沸き上がる。

それを感じたのか、何故か胸を隠すしぐさをする舞奈。
逆に強調され、俺はもう目を離せない。

「も、もう。本当にえっちなんだから…ねえ」
「う、うん?」
「着替えるから…出て行って」
「……え?…え、で、でも……見たい…かな」
「はあっ?!…も、もう…あうっ、そんな顔して……」

仕草1つ。
俺は目に焼き付けたい。

だって目の前にいる女の子。
俺の大好きな、運命の女の子の本当の姿なんだ。

「ダメ?お、俺もここで着替えるから…っ!?ご、ごめん、俺もテンパって変な事…」
「……いよ」
「……」
「分かったよ。いいよ。ここにいて。…で、でもいきなり触るとかはダメだからね?今日はデートに行くんだから」
「う、うん。……ありがとう」
「うあ、そ、そんなお礼なんて……あーもう、早く着替えよっ!!」
「うん」

二人して視線を外さず見つめ合い着替えをする。
傍から見たらひどく滑稽なそれに気づき、どちらとも問わず笑い声を出してしまう。

「あはは、あはははは。…おかしいね。なんだか私たち、付き合い立てのカップルみたい」
「あははは、そうだね。…うん。でもそうかも」
「うん?」
「だって俺舞奈とまだエッチもしてないよ?キスだってチュッてしただけ」

思い出すあの水族館のデート。
俺達はまだ恋人としての付き合いをしていなかった。

「……私のお尻触ったくせに」
「ぐはあっ?!!」

う、うん。
確かに触っちゃった……
やばい。
感触が……

「っ!?も、もう、本当にえっちだね。ふんだ」
「あ、ご、ごめん」

「あとでちゃんと、優しくエスコートしてよね。…それで許してあげる」
「う、うん」

そんなこんな。
愛すべき時間。

俺達の準備は整い、心に残るデートが幕を開ける。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...