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第239話 ザイルルドの亡命
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ガザルト王国首都の郊外―――
今ここではヤマイサーク率いるキャラバン隊が王都民の為に簡易ではあるが病院を開き、治療と食事の提供を行っていた。
「…いよいよ今日ですね」
配給品を配る部下を見やり、一人ヤマイサークは呟く。
今回のこのガザルトの惨状。
引き起こしたのは間違いなく彼、ヤマイサークだ。
彼だって別に『人でなし』ではない。
だから普通にとんでもない悔恨の念は常に抱えていた。
何より彼の引き起こした食糧封鎖。
それによりガザルト王国では無辜の民、おそらく万に届こうかと言う人々が苦しみの中その命を落としていた。
(…私は地獄行きですねえ…でも…これは必要なこと。…あのまま放置していれば…おそらくその数百、いや数千倍の命が奪われていた…)
唇をかみしめるヤマイサーク。
そんな彼に美緒から念話が届く。
(ヤマイサーク、準備はどう?王国民たちの王都からの避難は問題ないかしら?)
(…美緒…問題ないですよ。王城の半径500mにはすでに人はいません)
※※※※※
今日行われる悪魔掃討作戦。
この世界の摂理を超える絶対者である悪魔。
それを正にヒューマンの、いや、この世界の希望である美緒の伝説のギルドが討ち払う。
正直どんな大災害が引き起こされるか想像すらできない。
だが…
(…きっと倒すのでしょうね…)
確信。
もちろん無傷という訳にはいかないだろう。
それにヤマイサークは正直新参だ。
ギルドの実際の力、美緒の同期で伝わってきてはいるものの。
正直あまりに想像を超えていて…
まるで実感がわいていない状態だ。
「…おやおや?…どうしました会長?…あなたがにやけるなど…ずいぶん久しぶりですねえ?」
「…にやけていましたか?」
「ええ。……まるでこの作戦、すでに勝利で終わった…そんな顔でしたよ?」
ふいに近づき、おちょくるような口調でとんでもない事を言う影使いのオルデン。
彼もまた今回の作戦におけるキーマンだった。
大きくため息を吐き、真剣な視線をオルデンに向けるヤマイサーク。
「それで?…先方は準備できたのでしょうか?」
「ええ。万事整いました。…すぐにご案内出来ますよ?」
ニヤリと笑うオルデン。
実は今このタイミングで。
今回の作戦その物の根底を覆しうる物事が進行していた。
「…お願いします。…会いましょう。ザイルルドに」
※※※※※
一方新造飛空艇のデッキに来ている美緒とリンネ。
思わず見下ろしている景色に感嘆の声を上げていた。
「うあー……凄い!…あれ、動物かな?…すっごく小さく見える」
「うん。…美緒、なんか無理やりはしゃいでいる?」
目を輝かせる美緒。
でもその表情には暗い影が付きまとう。
今回の作戦。
発端はヤマイサークの経済による侵攻から始まった。
さらには神聖ルギアナード帝国へのテロ。
そしてそれを主導した悪魔たち。
確実に完遂する必要のある作戦なのだが。
実は今回の作戦、美緒達ギルドの計画には無かった作戦。
つまり『誘導された』感がどうしても美緒の心の奥底で不安をあおっていた。
「…そんなこと……あるかも」
不意に真顔に戻り、リンネの瞳を見つめる美緒。
その表情に、リンネの鼓動がトクンと跳ねた。
「…ねえ、リンネ」
「…うん」
「誰か…死んじゃうのかな」
突然沸き上がるこらえきれない涙。
リンネに縋りつき、声を殺し肩を振るわす。
「美緒…大丈夫…大丈夫だよ」
強く美緒を抱きしめささやくリンネ。
壊れそうにもろい小柄な女の子。
改めてリンネは歯を食いしばった。
余りにも。
余りにも重い重責。
それを美緒は抱えてしまっていた。
(絶対に守る…美緒は、美緒だけは…)
暫く抱き合う二人。
新造飛空艇は音もなく二人を乗せたまま目的地であるガザルトへと凄まじい速度で進んでいたんだ。
※※※※※
ガザルト王国、王家の墓―――
薄暗い安置の間の少し前の控室。
そこに待ち人は静かに佇んでいた。
「貴公がヤマイサーク…なるほど。…そういう事か」
ぶつりとつぶやくザイルルド。
その瞳にはなぜか希望の光が灯っていた。
やがて近づく3人の男性。
ヤマイサークが膝を折り、声を発する。
「…ザイルルド陛下…そうお呼びしても?」
「かまわぬ。…貴様…郡山伊作か?」
「っ!?」
衝撃が突き抜ける。
オルデンは目を白黒させているが。
「…あなたは…誰なのですか?」
「ふむ。…その反応、肯定と取るぞ。…その男は裏切る心配はなのだな?」
ちらと視線をオルデンに向けるザイルルド。
その様子にオルデンはにやりと顔を歪め口にした。
「私ごときが聞いてよい話ではないようですねえ…会長、30分後に迎えに上がります。良いですね?」
そう言い、スキル『影移動』を使い消えるオルデン。
まさに即決。
その様子にザイルルドは小さく笑みを浮かべた。
「優秀だ。そして正直だな」
「…ええ」
※※※※※
そして始まる―――
転生者同士のこの世界の秘密へとつながる重大な打ち合わせ。
世界は、物語は。
誰も知らない結末に向け動き出していた。
今ここではヤマイサーク率いるキャラバン隊が王都民の為に簡易ではあるが病院を開き、治療と食事の提供を行っていた。
「…いよいよ今日ですね」
配給品を配る部下を見やり、一人ヤマイサークは呟く。
今回のこのガザルトの惨状。
引き起こしたのは間違いなく彼、ヤマイサークだ。
彼だって別に『人でなし』ではない。
だから普通にとんでもない悔恨の念は常に抱えていた。
何より彼の引き起こした食糧封鎖。
それによりガザルト王国では無辜の民、おそらく万に届こうかと言う人々が苦しみの中その命を落としていた。
(…私は地獄行きですねえ…でも…これは必要なこと。…あのまま放置していれば…おそらくその数百、いや数千倍の命が奪われていた…)
唇をかみしめるヤマイサーク。
そんな彼に美緒から念話が届く。
(ヤマイサーク、準備はどう?王国民たちの王都からの避難は問題ないかしら?)
(…美緒…問題ないですよ。王城の半径500mにはすでに人はいません)
※※※※※
今日行われる悪魔掃討作戦。
この世界の摂理を超える絶対者である悪魔。
それを正にヒューマンの、いや、この世界の希望である美緒の伝説のギルドが討ち払う。
正直どんな大災害が引き起こされるか想像すらできない。
だが…
(…きっと倒すのでしょうね…)
確信。
もちろん無傷という訳にはいかないだろう。
それにヤマイサークは正直新参だ。
ギルドの実際の力、美緒の同期で伝わってきてはいるものの。
正直あまりに想像を超えていて…
まるで実感がわいていない状態だ。
「…おやおや?…どうしました会長?…あなたがにやけるなど…ずいぶん久しぶりですねえ?」
「…にやけていましたか?」
「ええ。……まるでこの作戦、すでに勝利で終わった…そんな顔でしたよ?」
ふいに近づき、おちょくるような口調でとんでもない事を言う影使いのオルデン。
彼もまた今回の作戦におけるキーマンだった。
大きくため息を吐き、真剣な視線をオルデンに向けるヤマイサーク。
「それで?…先方は準備できたのでしょうか?」
「ええ。万事整いました。…すぐにご案内出来ますよ?」
ニヤリと笑うオルデン。
実は今このタイミングで。
今回の作戦その物の根底を覆しうる物事が進行していた。
「…お願いします。…会いましょう。ザイルルドに」
※※※※※
一方新造飛空艇のデッキに来ている美緒とリンネ。
思わず見下ろしている景色に感嘆の声を上げていた。
「うあー……凄い!…あれ、動物かな?…すっごく小さく見える」
「うん。…美緒、なんか無理やりはしゃいでいる?」
目を輝かせる美緒。
でもその表情には暗い影が付きまとう。
今回の作戦。
発端はヤマイサークの経済による侵攻から始まった。
さらには神聖ルギアナード帝国へのテロ。
そしてそれを主導した悪魔たち。
確実に完遂する必要のある作戦なのだが。
実は今回の作戦、美緒達ギルドの計画には無かった作戦。
つまり『誘導された』感がどうしても美緒の心の奥底で不安をあおっていた。
「…そんなこと……あるかも」
不意に真顔に戻り、リンネの瞳を見つめる美緒。
その表情に、リンネの鼓動がトクンと跳ねた。
「…ねえ、リンネ」
「…うん」
「誰か…死んじゃうのかな」
突然沸き上がるこらえきれない涙。
リンネに縋りつき、声を殺し肩を振るわす。
「美緒…大丈夫…大丈夫だよ」
強く美緒を抱きしめささやくリンネ。
壊れそうにもろい小柄な女の子。
改めてリンネは歯を食いしばった。
余りにも。
余りにも重い重責。
それを美緒は抱えてしまっていた。
(絶対に守る…美緒は、美緒だけは…)
暫く抱き合う二人。
新造飛空艇は音もなく二人を乗せたまま目的地であるガザルトへと凄まじい速度で進んでいたんだ。
※※※※※
ガザルト王国、王家の墓―――
薄暗い安置の間の少し前の控室。
そこに待ち人は静かに佇んでいた。
「貴公がヤマイサーク…なるほど。…そういう事か」
ぶつりとつぶやくザイルルド。
その瞳にはなぜか希望の光が灯っていた。
やがて近づく3人の男性。
ヤマイサークが膝を折り、声を発する。
「…ザイルルド陛下…そうお呼びしても?」
「かまわぬ。…貴様…郡山伊作か?」
「っ!?」
衝撃が突き抜ける。
オルデンは目を白黒させているが。
「…あなたは…誰なのですか?」
「ふむ。…その反応、肯定と取るぞ。…その男は裏切る心配はなのだな?」
ちらと視線をオルデンに向けるザイルルド。
その様子にオルデンはにやりと顔を歪め口にした。
「私ごときが聞いてよい話ではないようですねえ…会長、30分後に迎えに上がります。良いですね?」
そう言い、スキル『影移動』を使い消えるオルデン。
まさに即決。
その様子にザイルルドは小さく笑みを浮かべた。
「優秀だ。そして正直だな」
「…ええ」
※※※※※
そして始まる―――
転生者同士のこの世界の秘密へとつながる重大な打ち合わせ。
世界は、物語は。
誰も知らない結末に向け動き出していた。
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