神意再誕~ゲームマスターの少女は原初で微笑む~※旧『可愛くて最強?!知識チートの黒髪黒目の少女はゲーム世界に転移する?!』

たらふくごん

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第118話 四方陣の戦い2

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決戦の舞台を離れ1人西を目指すロッジノ。

(ちっ、全く厄介な場所だぜ)

程なく着く目的地。
そこは多くの魔物、特に多種多様なスライムが蠢いていた。

民たちの住居から遠く離れた小さな森。
その中に深く掘られ設置されていたゴミ捨て場。

主に捕らえた魔獣や野生の動物の死骸捨て場だ。

「うっ?!」

漂うとんでもない悪臭。
寒い冬とはいえそれはまさに誰も近づけない様な、ある意味地獄のような場所となっていた。

(クセエっっ!?……やべえ。マジで早くしねえと……意識が飛びそうだ)

とんでもなく性格の悪い結界を施した人物。
恐らくどんなにすごい宝があると言われても、きっと誰一人来ないであろう仕掛け、つまり凶悪な悪臭だ。

真面目な話、すでに周囲の大気には猛毒が含まれていた。

思い出す昨日の話。
ロッジノは思わず解呪の魔刻石を発動させながら顔をしかめてしまう。


※※※※※


「えっと…西はね……はあ」

思い出したのだろう。
美緒は心底嫌な顔をする。

いつも明るく皆を思う美緒の非常に珍しい顔に、激しく嫌な予感がしてしまう4人。
なんとか顔を上げ、なぜか涙目で美緒が話し始めた。

「ねえ、因みにあなた達の中で一番我慢強いのって誰なのかな?」
「「「「我慢強い?」」」」
「う、うん」

(いきなり何を言うんだ美緒さまは?)

いまいち繋がらない話に、俺たちは呆然としていた。

「えっとね、スッゴク臭いの」
「…臭い?」
「死骸置き場?とにかく死体とかが捨ててあって、腐っちゃってずっと放置?スライムがうじゃうじゃいて…もう地獄なの。良く判んない毒も発生しているし…」

…………。

なんだ。
そんな事か。

俺達は話を聞き、実は内心ほっとしていた。

盗賊、しかも斥候をやっていた俺達。
場合によってはクセエ肥溜めにだって身を潜めたことだってある。

まあメチャクチャ強いしとんでもねえが、美緒さまはやっぱり女性だ。
なんだか可愛らしい一面に、俺たちは思わず顔を緩めていたんだ。

「っ!?むうっ。……今、たいしたことないって思ったでしょ?」

その様子に頬を膨らませる美緒さま。
ははっ、悪いが只可愛いだけだ。
思わず俺たちはうっすらと顔を赤らめてしまう。

「っ!?もうっ。本当に私の称号厄介やっかいだね!!…コホン。…ねえ、『蟲毒こどく』って知ってる?」

「蟲毒?……それって……確か虫とかをまとめて殺し合わせ、やたら強い奴が残る?」
「うん。まあ意味とか色々あるみたいだけど。……そんな感じかな。あそこはそういう術式も付与されている。スッゴク臭いうえに厄介な虫の異常形態種が居るの。……えっとね…ゴキブリ人間?」

「「「っ!?」」」

美緒の言葉についこの前ドルンが侯爵の私兵相手に使用した悍ましい魔刻石が、当時そこに居なかったノーウイック以外の脳裏によぎる。

激しく冷や汗を流し始める3人。
訝しげにノーウイックが美緒に話しかけた。

「ゴキブリ人間だと?それってあれか?黒くてガサガサ動くやつ」
「う、うん」
「なんだよ。たかが虫だろ?なにビビってんだ?」

知らないという事は恐ろしいし幸せだ。
3人は改めて情報の重要性を心に刻んでいた。

「…つまり臭くて汚いうえにそんなとんでもない化け物がいると」
「う、うん。…以前のルートの時私……気が狂いそうになったもの」

遠い目をする美緒。
すでに同期しているため美緒の『いろいろ』は皆が共有していた。

「なあ美緒さま。そいつ強いのか?」
「……うふふ。あは、あははははははは……………っ!?はっ?!…ご、ごめんなさい。つい思い出しちゃって……えっとね、レベルは100くらいで今のあなた達なら絶対に負けないよ?でもね、嫌悪感がとんでもないの。…だからきっと一番我慢強い人が良いと思うの」

ようやく理解が追い付いた。
俺はすっと前に出た。

「俺が行く。我慢なら負けねえし何よりノーウイックとモナークには解除後すぐに力を振るってもらいてえ。俺ならそこだけこなしゃ、後は適当にどこかの湯場で身を清めても問題ねえだろ?」

悔しいがノーウイックとモナークの技術。
俺やイニギアよりも数段上だ。

きっとこれが正解だろう。

「……ごめんなさいロッジノ。……お願いできますか?」
「ああ、任せろ。……美緒さま?信じて欲しい」
「っ!?う、うん」

そう言って俺の手を取りにっこり微笑んでくれる。
ああ、俺は今無敵に違いない。

絶対に成し遂げる。

俺は誓ったんだ。


※※※※※


ここに到着しすでに5分が過ぎていた。
さっき一番遠方に向かったノーウイックから通信が来たところだ。

俺はどうにか打ち倒した、まさにゴキブリ人間らしきものを蹴り飛ばし、封印の核である小刀を見下ろしていた。

「くそがっ。自分の匂いで目が染みやがる。……風呂くらいでこの匂い落ちるのか?」

正直ほぼ無傷で勝てたのは奇跡に近い。
美緒さまのくれた奥の手『ふまきらー?』

見たことのない、金属で覆われた細い筒。

これがなけりゃ、きっと俺は無事ではなかった。

(さすがの美緒さまも、読み切れない事あるんだな)

俺は時間が刻まれている魔刻石を見つめながら先ほどの死闘を思い返していた。


※※※※※


俺は取り敢えず、今自らが使える最大の広域殲滅魔法、フレイムバーストを数発ぶち込んだところだ。

捨て場はすり鉢状の形状。
封印はその奥。

何しろ『わらわらいる』スライムが邪魔だった。

濛々もうもうとあがる煙と供に、あり得ない悪臭が周囲を包み込む。
解呪の魔刻石は確かに効果を発揮していたが一瞬で充満する地獄の様相、俺はしかめっ面で奥にいる悍ましい生き物を見つめていた。

「プルグギャアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー」

意味不明な奇声を発し、飛び掛かってくる嫌悪感満載なそのフォルム。
マジで夢に見そうなその姿。

とてもじゃないが美緒さまには見せられない。

(なんで腹みてえなところから顔が生えてんだ?うぐっ、マジで吐きそうだ)

しかもコイツとんでもなく素早い。
さっきから俺のジョブ『アサシン』による急所攻撃が数十発捕らえているというのに一向にその速度が落ちない。

ズガガッッ!!!

「おっと?!」

しかも意味不明な場所から俺に向かってくる攻撃。

どうやらコイツ、多くの分身体もいるようだ。

「くそっ!らちが明かねえ」

俺達は戦いに来たんじゃない。
封印を解くために来ている。

その思考が一瞬俺の行動を遅らせた。

「しまっ!???ぐうあああああっっ!!!!??」

ゴキブリ人間がいきなり口らしきところから、霧状のおどろおどろしい液体をまき散らす。
それをごく少量だが吸い込んだ俺は肺が腐るのではという激痛に思わず蹲ってしまった。

一瞬で蹂躙される俺の肺。
夥しい赤黒い血が口から吐き出された。

「キシャ?!キシャ、キシャシャアアアアアアアア!!」

嬉しがってるのか何なのか。
ゴキブリ人間は腹の先、尾の先端についている大きな針を俺に向けてきた。

(俺に卵を産み付ける?!!)

悍ましい想像に、全身が悪寒に包まれた。

俺は咄嗟にマジックポーチから『絶対に効くとは思えないけど…お守り?』
そう言われ渡された怪しい筒を取り出し、ゴキブリ人間に向けて上のボタンを押した。

「っ!?……ぐぎょ?プギャアアアアアアアアアアアアア―――――――?!!!」
「っ!?…苦しんでる?……すげえ……流石美緒さまだ…」

白い煙状の物にそいつが触れた瞬間。
のたうち回りそして数秒後……

ゴキブリ人間は死んだのだろう。
俺の脳裏に電子音が流れた。

『ピコン……経験値を獲得しました……レベルが上昇します……スキル『我慢王』を獲得しました…』

………我慢王?

なんだそれ?

どうにか窮地を脱した俺。
気付けば美緒さまのバフによる回復が始まっていた。
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