神意再誕~ゲームマスターの少女は原初で微笑む~※旧『可愛くて最強?!知識チートの黒髪黒目の少女はゲーム世界に転移する?!』

たらふくごん

文字の大きさ
147 / 267

第139話 失敗した以前の美緒ルート1

しおりを挟む
とある世界線―――

都内の住宅密集地、沿線沿いの小さなアパートの明かりが深夜の寝静まる時間だというのに煌々とその明かりを窓の外に漏らしていた。

「兄さん。そろそろ寝たら?もう3時過ぎだよ?」
「ああ?!…もうそんな時間?!…あー、あとちょっとで区切りなんだ。そこでやめるさ。優斗こそ早く寝ろよ?俺は明日13時起きで問題がないんだ。お前10時から打ち合わせだろ?」

モニターから目を離さずに、凄まじい速さでキーボードを打つ大地。
その様子に優斗はため息をついた。

「まったく。さっきも同じこと言っていたよ?それからすでに2時間たってるけど?」
「うー。…こ、今度はマジだから……ほら、早く寝ろよ」
「分かったよ。おやすみ、兄さん」
「ああ」

会社を立ち上げてから1年と5か月が過ぎていた。

やっと幾つかの仕事が認められ、優斗や大地が所属する奏多の会社『レリアレード』はその業績を伸ばし始めていた。

今までは外注が主だった仕事の彼等。
遂に今自作のRPGの制作に取り掛かっていたところだった。
そのメインプログラマーに、大地は名乗りを上げていた。

「……リンネとガナロ……双子の神…我ながら良い設定だな……」

企画書をちらりと見やり、大地はおもむろに大きく伸びをした。

「痛っ!……くそ…」

悍ましい事件に巻き込まれた大地と優斗。
その後遺症は大地の体を蝕んでいた。
つい動かしすぎた体に鈍い痛みが走る。

その事実にため息をつく。
それと同時に蓄積した疲労で一瞬目の前が暗くなってしまう。

(…やべえ……また『あいつ』に乗っ取られる感じだ……ちょっと待ってくれよ…)

慌ててキーボードを打ち込み保存を済ませ、大地はのっそりと起き上がる。
そしてソファーに倒れ込み、クシャクシャになっている毛布をどうにか自分にかけ目を閉じた。

やがて急激に遠ざかる意識。
そして一瞬切り替わった感じがし、大地は白い世界で目を覚ました。

「…はあ。まったく。……それで?どうしたんだ………リンネ」
「うん。アーク様」

今の自分は創世神アークディーツ。
何故か混濁しない意識と思考。
もちろんさっきまでの大地としての記憶、それは薄まることなく今の自分が存在していた。

ただ彼は、黒木大地に戻るとそのすべての情報は秘匿されてしまう。

それゆえに、新たな称号『ゲームクリエイター』を習得する事が出来ていた。

「…ゲームマスターは健在か?」
「う、うん。…でも、だけど、美緒は……すっごく苦しんでる……どうして、美緒はあんなに歯を食いしばらなくてはいけないの?…美緒は、彼女は……」

目に涙を浮かべる10歳くらいのリンネ。
幾つもの縛りを受ける中、彼女もまた禁忌ぎりぎりを責め、その力を削がれていた。

「…言ったろ?残念ながら今回の美緒は勝てない。リンネだってわかっているはずだ」
「っ!?で、でも…だって……美緒は…彼女は諦めていない」

創世神であるアークディーツ。
あり得ない権能ゆえ、彼には今のリンネがいる世界には干渉する事が出来なかった。
唯一干渉できるもの。

どうにか虚無神の裏をかき、最後まで秘匿することによって眷属化に成功したリンネ、ただ一人だった。

アークディーツは遠い目をする。
すでに違う次元、もう一人の眷属化を成功させたところだった。

そう、アルディの存在。
彼は『流入者』としての意味を持ってその存在を許されている設定にしておいた、隠し玉だった。

そして今回の美緒のルート、アルディは存在しない。
正確には世界に存在はするが、美緒と出会う事はない人物だった。

(もうすぐだ。もうすぐ時は来る。……絶望し打ちひしがれ諦めたその瞬間。そこでしか入れ替えられない。そうでなければ優斗に、いや優斗を操っている虚無神を欺けない)

創世神の対であり、さらに世律神を追い落としその眷属を手中に収めた虚無神。
すでにその力はアークディーツの想定を大きく超えていた。

(欺くには…ちゃんと騙すには、ロジックがいる。そしてトリックとあり得ないほど簡単な嘘との組み合わせ…わざとたどり着かせることで時間をもぎ取るしかないんだ…)

そうして紡がれる多くの設定とキャラクターたち。
分散させ、そして集結させることでゲームマスターの力を高めるために。

「……ゲームマスター……すまない」
「??…なにか言いました?」

「リンネ」
「は、はい」

改めてリンネを見つめる。
すでに消耗し、あまりにも儚い様子にアークディーツは強く唇をかみしめた。

「次のルート、唯一正解にたどり着く美緒のルート……きっと彼女は精神的に危うい状況になる」
「っ!?なっ?!」
「…すまない。情報に制限をかけるためだ。…たぶん彼女は思い出さないかもしれない。でも絶対に強い。……彼女は奏多さんと真奈さんの娘だ」

「…奏多さま……あの方は、いったい…」
「すまんがいくらリンネでもそれは言えない。でもすまない。もう一度だけでいい。信じてほしい」

遥か格上。
全ての世界の元を創生した絶対者。

それが神とはいえ自分に深々と頭を下げた。

「ひうっ?!アーク様?そ、その…」

慌てふためくリンネ。
一瞬素に戻ったことで自身を縛る摂理が緩む。
急激に回復し、その身を魔力がまとわり出した。

「…うん。これでまたゲームマスターの力になれるよ?…悪いな、だまし討ちみたいで」
「っ!?も、もう。……でも…ありがとう…確かにこれなら彼女の力になれそう」

にっこりとほほ笑む。
しかしどうしてもその可愛らしい笑顔には暗い影が付きまとっていた。

「…俺は酷い創生主だな……せめてあいつがいてくれたら…」
「…???」
「あああ、何でもないよ。とにかくリンネ、お前は死んだらいけないよ?確かに数多の世界に君たち神は創造されているし、リンクもできる。だけどそれは上層の記憶や事実だけだ。辛いだろうけどゲームマスターの最後、お前は見届けなければいけない。そうしないとすべてが水の泡になるんだ。いいね?」

リンネの隠された称号。
『サイトスーパーバイザー』現場監督。

彼女には物語の最後まで監修する責任と権利が付与されていた。

「私の称号、現場監督……酷いよねアーク様。…私は美緒と同じところには立てないってことでしょ?」
「ああ。でも今回だけだ。…そうだリンネ」
「うん?」
「約束してほしい事がある」

真剣な目を向ける創世神。
ゴクリとリンネはつばを飲み込んだ。

「お前は絶対に次のステージ、最初に美緒に出会う。だからその時のためにお前はこの世界で死ぬことは許さない。たとえ俺は殺されても、だ。いいな?」
「………う、うん。…分かった」

「多くは言えないが、いくつもの絡まる世界での経験からもたらされた美緒の願いなんだ。だからこれは俺との約束と言うよりは美緒との約束だ。いいな?絶対だからな!?」

珍しく念を押すアークディーツ。
付き合いの長いリンネは訝しげに目を細めた。

「コホン。まあなんだ。そういう事だ。…この先は辛い事ばかりが……きっとゲームマスターは経験してしまう。唯一の親友となれるように精霊王の設定はいじったが…残念ながら彼女は俺の眷属じゃないんだ。そこまで手を伸ばせば奴にバレてしまうからな」

「精霊王…ファナンレイリね?」
「ああ。すまないなリンネ。お前ばかりに苦労を掛けてしまう」

申し訳なさそうにうつむくアークディーツ。
彼は大地と融合を果たした後、仕草がとても人間らしくなった。

その様子にリンネは思わず笑みを浮かべる。

「大丈夫です。アーク様。…それに私、美緒の事大好きですもの」
「そうか。……おっと、もう戻る時間のようだ…ここは隠匿されているとはいえ長時間いない方が良いだろう。リンネ、ちゃんと戻るんだよ?」
「はい」

そして解けるように消えるリンネの姿を確認し、アークディーツは一人大きく息を吐いた。

「絶対に終わらせない。……奏多さんから受け取った希望…絶対に守るんだ…」

独り言ち消える創世神。
そして同時にその世界は虚無に飲まれ消滅していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...