208 / 260
第208話 届かない回復と分離する真核
しおりを挟む
「茜、ああ、茜、頼む、死ぬな、茜、くそおおおおお」
「『オーバーヒール!!』だめだ、届かないよ、ノアーナ様、古代魔術使ってよ!!泣いてないで、お願い、茜が死んじゃう」
リナ―リアが泣きながら叫んでいる。
「古代除去術!!くっ、こんな強力な呪い、見たことがない……ノアーナ様!!しっかりしてください!!勇者を失ってしまえば、希望が潰えてしまう!!ノアーナ様!!」
ルミナラスも大声で俺に叱咤する。
でも、ダメなんだよ……もう…
「うう、ああ、茜、頼むよ……目を開けてくれ…死なないで……」
ネルがノアーナを平手で殴り倒した。
そして胸ぐらをつかみ引きずり起こす。
「ノアーナ様っ、しっかりしてください!!茜を殺すつもりですか!!お願いだから、めをさましてよっ!!!」
ネルから俺に温かいものが流れ込む。
俺は何を……
そうだ。
誓ったじゃないか。
……まだだ……そうだ、まだあきらめるなっ!!
「……ありがとうネル。目が覚めた。……皆、力を貸してくれ!!茜を助けるぞ!!」
俺は魔力を練り上げる。
『英知の欠片・極風の頂・モダイスタの奇蹟・荒れ狂う涅槃の怨嗟・積み上げる虎児の祈り・深淵なる獄沙の開封よ・極限解呪、聖魔因果解呪陣!!!』
茜を中心に神聖な魔力が展開する。
「リナーリア、渾身だ!!俺に合わせろ!!マナヒール・極み!!!」
「はああ、オーバーヒール!!!」
茜に侵食する漆黒の魔力が消えていく。
呼吸が落ち着いていく。
暖かい緑の魔力が茜を癒し始めた。
茜の喪失を防いだ瞬間だった。
しかし代償はあまりにも大きかった。
呪いに極限まで特化した奴の魔力は、茜の真核の30%を破壊し、再生すらできなくなってしまっていた。
そして奪われた左腕は、復元できなかった。
※※※※※
「光喜さん……ごめんなさい……あいつ逃がしちゃったね」
左手を失い真核を侵され、誰よりもきついはずの茜が俺に声をかけた。
いま彼女はギルガンギルの塔の医療ポッドの中で治療を受けている最中だ。
その隣では何とか一命を取りとめたミューズスフィアも静かに目を閉じている。
「ばか、そんなことないだろ?俺の方が何もできなかった……俺の力はあいつに全く通用しない。俺は……あいつの餌だ」
沈痛な雰囲気に包まれる。
「ねえノアーナ。あいつさ、あれでまだ本体じゃないんだよね。レイスの残したデータだと、多分あいつ本体の20%くらいの力しかないみたいだ」
「……ああ、どうすればいいんだ」
くそっ、勝てるビジョンが浮かばない。
どうすれば……
「ノアーナ様、茜の真核を分けますわ」
「っ!?アート、今は……」
「今だからこそです。茜の状態を鑑定しました。このままだと10日持ちませんわよ」
「なっ?」
アースノートは茜に真直ぐ視線を向ける。
「茜、あなたを助けます。でも時間がかかるの……信じてくださいますか」
「……うん。アースノートさん。……信じてる」
「ふっ、流石茜ですわ。……そんなこと言われてしまえば絶対に失敗できませんもの」
「ふふっ。知ってた」
茜はそう言って目を閉じる。
アルテミリスはさっきから死にそうな顔で涙を流していた。
「ノアーナ様、あなた様の力、必要ですわ。あと、アルテミリス、あなたの力も」
「…わかった。何でもしよう。茜を失うわけにはいかない」
「グスッ……わかりました……何でもします」
※※※※※
結果としてアースノートはやっぱり天才だった。
アルテミリスの祈りの力と、一部切り離すことに成功した俺の真核の力を使い、茜はその後3日程度で意識を取り戻した。
もう体は元には戻らないものの、呪いの侵攻におびえる事はなくなった。
そして茜の真核は3つに分けられていた。
1つ目、擬似生命体で作った、ルースミールを監視し俺の再転生のカギとなる別人格「シルビー・レアン」
2つ目、俺の転生時に同時に飛ぶための欠片に宿るごく小さな真核。
3つ目、勇者茜として最後まで戦う、いわば本体。
実はルースミールは、奴が現れた影響でどうやら完全には呪縛から逃れられていなかった。
だがこれは予定調和だ。
残念ながら今の俺たちでは彼女を完全には救えなかった。
「光喜さん、力は落ちたけど、まだ戦えるよ。あいつは私が滅ぼす」
「ああ、わかった。期待している。茜…愛している」
「うん」
片手を失い大きな傷を受けた茜。
でも愛おしさは変わらない。
いや、もっと溢れた。
俺は彼女を癒す気持ちを込めて、数日心を交わし合った。
茜の真核の輝きが増していった。
そうだ。
俺たちは、
諦めるわけにはいかない。
必ず勝つ。
「『オーバーヒール!!』だめだ、届かないよ、ノアーナ様、古代魔術使ってよ!!泣いてないで、お願い、茜が死んじゃう」
リナ―リアが泣きながら叫んでいる。
「古代除去術!!くっ、こんな強力な呪い、見たことがない……ノアーナ様!!しっかりしてください!!勇者を失ってしまえば、希望が潰えてしまう!!ノアーナ様!!」
ルミナラスも大声で俺に叱咤する。
でも、ダメなんだよ……もう…
「うう、ああ、茜、頼むよ……目を開けてくれ…死なないで……」
ネルがノアーナを平手で殴り倒した。
そして胸ぐらをつかみ引きずり起こす。
「ノアーナ様っ、しっかりしてください!!茜を殺すつもりですか!!お願いだから、めをさましてよっ!!!」
ネルから俺に温かいものが流れ込む。
俺は何を……
そうだ。
誓ったじゃないか。
……まだだ……そうだ、まだあきらめるなっ!!
「……ありがとうネル。目が覚めた。……皆、力を貸してくれ!!茜を助けるぞ!!」
俺は魔力を練り上げる。
『英知の欠片・極風の頂・モダイスタの奇蹟・荒れ狂う涅槃の怨嗟・積み上げる虎児の祈り・深淵なる獄沙の開封よ・極限解呪、聖魔因果解呪陣!!!』
茜を中心に神聖な魔力が展開する。
「リナーリア、渾身だ!!俺に合わせろ!!マナヒール・極み!!!」
「はああ、オーバーヒール!!!」
茜に侵食する漆黒の魔力が消えていく。
呼吸が落ち着いていく。
暖かい緑の魔力が茜を癒し始めた。
茜の喪失を防いだ瞬間だった。
しかし代償はあまりにも大きかった。
呪いに極限まで特化した奴の魔力は、茜の真核の30%を破壊し、再生すらできなくなってしまっていた。
そして奪われた左腕は、復元できなかった。
※※※※※
「光喜さん……ごめんなさい……あいつ逃がしちゃったね」
左手を失い真核を侵され、誰よりもきついはずの茜が俺に声をかけた。
いま彼女はギルガンギルの塔の医療ポッドの中で治療を受けている最中だ。
その隣では何とか一命を取りとめたミューズスフィアも静かに目を閉じている。
「ばか、そんなことないだろ?俺の方が何もできなかった……俺の力はあいつに全く通用しない。俺は……あいつの餌だ」
沈痛な雰囲気に包まれる。
「ねえノアーナ。あいつさ、あれでまだ本体じゃないんだよね。レイスの残したデータだと、多分あいつ本体の20%くらいの力しかないみたいだ」
「……ああ、どうすればいいんだ」
くそっ、勝てるビジョンが浮かばない。
どうすれば……
「ノアーナ様、茜の真核を分けますわ」
「っ!?アート、今は……」
「今だからこそです。茜の状態を鑑定しました。このままだと10日持ちませんわよ」
「なっ?」
アースノートは茜に真直ぐ視線を向ける。
「茜、あなたを助けます。でも時間がかかるの……信じてくださいますか」
「……うん。アースノートさん。……信じてる」
「ふっ、流石茜ですわ。……そんなこと言われてしまえば絶対に失敗できませんもの」
「ふふっ。知ってた」
茜はそう言って目を閉じる。
アルテミリスはさっきから死にそうな顔で涙を流していた。
「ノアーナ様、あなた様の力、必要ですわ。あと、アルテミリス、あなたの力も」
「…わかった。何でもしよう。茜を失うわけにはいかない」
「グスッ……わかりました……何でもします」
※※※※※
結果としてアースノートはやっぱり天才だった。
アルテミリスの祈りの力と、一部切り離すことに成功した俺の真核の力を使い、茜はその後3日程度で意識を取り戻した。
もう体は元には戻らないものの、呪いの侵攻におびえる事はなくなった。
そして茜の真核は3つに分けられていた。
1つ目、擬似生命体で作った、ルースミールを監視し俺の再転生のカギとなる別人格「シルビー・レアン」
2つ目、俺の転生時に同時に飛ぶための欠片に宿るごく小さな真核。
3つ目、勇者茜として最後まで戦う、いわば本体。
実はルースミールは、奴が現れた影響でどうやら完全には呪縛から逃れられていなかった。
だがこれは予定調和だ。
残念ながら今の俺たちでは彼女を完全には救えなかった。
「光喜さん、力は落ちたけど、まだ戦えるよ。あいつは私が滅ぼす」
「ああ、わかった。期待している。茜…愛している」
「うん」
片手を失い大きな傷を受けた茜。
でも愛おしさは変わらない。
いや、もっと溢れた。
俺は彼女を癒す気持ちを込めて、数日心を交わし合った。
茜の真核の輝きが増していった。
そうだ。
俺たちは、
諦めるわけにはいかない。
必ず勝つ。
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる