創造主である究極の魔王は自分が創造した異世界に再転生する~気付いた時にはハーレム状態?運命の人も勇者も神々も、俺の子を欲しがるのだが?~

たらふくごん

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第220話 ルリースフェルトの誤算

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(新星歴5023年5月1日)

 レイトサンクチュアリ宮殿の特級眷属控室でルリースフェルトは親指の爪を噛みながら焦りを露にしていた。

 せっかく『欺くもの』の称号でルースミールを篭絡し眷族第3席にもぐりこみ、長い年月をかけ計画していた「ノアーナ略奪作戦」
 3日前成功したとほくそ笑んでいたのに、横から等星の極姫ツワッド嬢にかっ攫われてしまった。

 そして仕切り直しだと自身に言い聞かせ、新たに策を練ろうとしていた矢先、暴走したルースミールが騎士団長であるダルテンに呪紋を刻んだ。

 まあ、天使族が滅ぼうがルリースフェルトは痛くもかゆくもないのだが……
 しかしそれが原因なのだろう、最悪な展開になった。
 あの日から僅か3日。

 何故か力を取り戻してしまったノアーナがここに直接来ることになってしまったのだ。

 転生者である彼女は称号のほかにもいくつかのスキルがある。
 そのスキルで確認した今のノアーナには全く付け入るスキがない事を理解してしまっていた。

 「くそっ、もう少しだったのに……あの糞女、あああ、むかつく。……でも、このままじゃ不味いよね」

 ゆらりと立ち上がり、念話を飛ばす。

 「くそっ、早く……!?おそいっ!!早く出ろこの馬鹿が。うん?ええ、今から行くから私を匿いなさい。いいわね」

 大きくため息をつく。
 そしてにやりといやらしい笑みを浮かべた。

 「しょうがないか。生身が欲しかったけど…もう死体でもいいや。エルロにおねだりすればいいもんね」

 そしてすべての偽装を解き、ルリースフェルトはその痕跡を一瞬で彼女にかかわった者全ての記憶から消去した。

 深く考えることなく。

 「ふん。ここの暮らしも悪くなかったけど。まあ次は世界覇者の奥さんか。つまらない男だけどね……まあいっか」

 そして姿を消す。
 この選択が間違いだったことに今の彼女は気づけなかった。

※※※※※

 ファルスーノルン星の周りにはかつての星間大戦争の残骸である無数の岩石群がまるで衛星の様に周りを周回している。

 その中の比較的大きな岩石に、かつてレイスが欠片と悪意の能力を使い隠れ家を構築していた。

 ノアーナが帰還した今、悪意の本体はモレイスト地下大宮殿の最奥のさらに奥の祭壇で復活したのだが、どうやらまだ動く気配はない。
 だがこの場所には方法は分からないがかつて狂い暴走し、悪意の力を簒奪したエルフのエルロが、まるで王の様に玉座に座っていた。

 空間が軋み魔力があふれ出す。
 レイトサンクチュアリ宮殿から逃げてきたフェルトが転移してきた。

 「エルロ、あんた反応遅すぎ!……ん?なによあんた。……えっ!?ちょっと、何を…あうっ!?」

 転移してきたフェルトの頭をエルロは突然わしづかみにする。
 そして凍り付くような目で睨み付けた。

 「お前、俺をたばかっていたんだな。……くくく、さぞ滑稽だったろうな?……しかしお前、阿呆だな。……なぜこのタイミングで解除した」

 「うぐっ、ああ!?そうだっ、くそっ!!……放せ、早く放せよ!?痛いっ!!!!」

 ぎちぎちと嫌な音が響く。
 フェルトの頭から鮮血が流れ始める。

 「ああっ。痛い!!痛いっ、ご、ごめんなさい、お願い……うぎゃああああ!!!!……   」
 「『死体でも良い』んだろ?……お前が死ねよ」

※※※※※

 転生者フェルトは、もともとただの日本の学生だ。

 ただわがまま放題で実の親からも見限られ、唯一心を許していた親友の死に遭遇し、騙されすでに心が壊れていた。
 最終的には繁華街で体を売りその日暮しをしていた。
 そしていくつかの行いが原因で命を落としていた。

 因果応報なのだろう。
 もちろん深く考えない彼女はそんなことはつゆほどにも思っていなかったのだが……

 無自覚であったものの、すでに狂っていた彼女のあり得ないような我儘は多くの人の人生をめちゃくちゃにしていた。

 金を得るために痴漢冤罪を吹っ掛け、多くの善良なサラリーマンを地獄へと落とした。
 気に入らないからとチンピラを騙し女性の尊厳を奪う。
 美人局や脅迫は日常茶飯事。

 彼女は『悪意』ではなくただ『わがまま』でこれらを繰り広げていた。

 そして遂に報いを受ける。
 知らないで騙し、人生を終わらせてしまった女性の親が、ある組織の幹部だった。

 彼女は数日にわたる地獄を経験しその生涯を閉じたはずだった。
 しかしちょうどそのタイミングはファルスーノルン星のみならず地球をも巻き込む欠片事件が起こった後で、時空にひずみが生じていた。

 彼女自体に悪意はない。
 しかし事実として彼女が行っていたことは紛れもなく『あり得ないほど濃密な悪意』の所業だった。

 彼女は引き寄せられ時空を超え……
 ファルスーノルン星で優雅に暮らしていた天使族の女性に憑依する。

 彼女はほくそ笑んだ。

 「やっぱりね。私悪い事何にもしてない。ちょっと我儘だっただけ。……ふうん、この子『フェルト』って言うんだ……ははっ、すっごいお人よし。……うん、私貴女をもらうね?いいでしょ?アハハ、アハハハハハハ」

 フェルトは狂い、そして乗っ取られた。
 余りのわがままに、あり得ない『結果としての悪意』にフェルト本人の心が耐えられなかった。

 『強い想いはすべてを覆す』

 それは彼女も例外ではなかった。

 「自分は全く悪い事をしていない。だから転生した。これは許されたという事よね」

 だから好き放題をし始める。
 だって許されたから。

 かつて極東でノアーナに出会った彼女は、生まれて初めて心の底から欲しいものを見つけた。
 そう、ノアーナだ。

 だがすでにあの時、ノアーナにもこの星にも危機が訪れることをいくつかのスキルを得ていた彼女は知った。

 だから確実に手に入れるため彼女は多くの事を、準備に明け暮れる。

 多くの人を欺き、いつの間にかルースミールを篭絡し、エルフの少年だったエルロを導き、騙し、心を完全に壊した。

 アースノートが以前エルロを『そういう因子があった』と断じたのには、フェルトの関与があったからだ。

 神ですら欺く称号『欺くもの』
 その力を存分に使いながら彼女は暗躍を繰り返していたのだった。

 そして厄介だったのは彼女の行いは悪意ではなかったことだ。
 神たちは最後まで彼女の暗躍に気づく事はなかった。

※※※※※

 「フン……死んだか……くそっ、俺はいったい……だが、いまさらだ」

 エルロの脳裏に、少年だった頃の情景が浮かぶ。
 近しいものから愛されることなく非道な扱いを受けた。
 そして偽りの愛の溺れていた愚かな自分。
 多くの禁忌を破り、幾人もの人を殺し許されることのない業を刻んだこの100年。

 「ああ、理由は関係ないな。……なあ、フェルト。……俺もお前と変わらないな。だが俺はけじめだけはつけよう。……この世界を滅ぼす」

 フェルトの導きにより狂っていたエルロ。
 完全に覚醒した彼は一番ダメな方へと舵を切る。

 愛を知らない少年にとって、神々の目指す世界は受け入れる事が出来ないものだった。
 彼に唯一の愛をくれていたと勘違いしていたフェルトは今この手で殺した。

 強行した様々な儀式の中で彼は知った。
 かつて何の力もないスライムが、最強に至るそのロジックを。

 だから儀式の際、一番最初にスライムに本体を食べさせていた。
 そしてそのスライムを100年という長き間に掴んだ秘術で自身に取り込んでいたのだ。

 多くの悪意の能力とともに。

 「ふん、本体はまだだな。あいつは怠惰だ。まあいい。奴が目覚めた時こそこの星は終わりを迎える。俺が捕食するからな。ふふ、フハハ、アーハッハハハハハハハハ」

 フェルトの亡骸のすぐ横で、エルロは馬鹿笑いを続けていた。
 いつまでも……

 彼の瞳に一筋の涙が零れていたことに気づかないまま……
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