灰燼の瞳//AI of the monochrome

もみもみ紅葉

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パロディ罵倒るファンタジー

《《00010000》》=16.出来損ないだって決めつけていたんだ

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「待たせたね」

「お、何か思いついたか?」

「だいぶ賭けになるけどね」

「賭けられるだけマシだ」

「下準備はしておくからその間に君たちも休むといい」

「言われなくてもそうする。戻るぞダリア」

「待っておりました」

 アキリたちとバトンタッチをして龍の前に立つルーナとムイミ。...しかし

「スーちゃんは下準備の方をお願いできる?」

「...龍は?」

「僕一人で相手をするよ」

「でスが...いえ、ワかりまシタ。ソチらはお願いシます」

 ムイミはちらりとルーナを見て直ぐに踵を返して走り出す。

「ふふっ、何故そこまで信仰されてるのか未だに分からないね...でも、悪い気はしない」

 ルーナはビシッと龍を指差しそのまま指をくいっ、と曲げて...

「ヴァ?」

「ふふっ、ここからは選手交代...そしてタイマンの時間だよ」

 龍を挑発する!

「ヴッァ!」

「...」

 ルーナに向かって息付く間もない連続攻撃を仕掛ける龍。それを冷静に淡々と躱して隙があればあらゆる姑息な技を仕掛けるルーナ。投石、砂かけ、手裏剣ばら撒き...しかし、動きが止まるどころか歯牙にもかけられない。

「ふふふ、ダメージはなくとも動きぐらいは止まるかと思ったんだけどね...」

 しかし、これで一つ分かったことがある。この一連の行動で龍に唯一、効果があったのはだということ。これは絶望でもあり、同時に突破口が見つかった。何一つ攻撃は届かないがこっちを向かせることは出来る...

「とはいえ...ッ!」

 一人で相手をするにはあまりにもデカいし早い!...あと、15分生き残れれば上出来というところだろう。

「...喋らない相手は寂しいね」

「ヴァッ!」

「...訂正しよう、言語が通じない相手は寂しいね」

「ウァ...」

 何故か少し不貞腐れた表情で鳴く龍...そして、「言い方が悪かった、ごめんて」と謝るルーナ。そんな謎のやり取りをする一方で...

「なぁ?」

「なんでしょうか?」

「こう、バトル系のキャラの服が破れた時ってどうしてるんだろうな」

「また、面倒なところに触れますね。何着もストックあるんじゃないですか?」

「くっ...私たちは二着を着回すことしか出来ないのにっ!」

 そう言いながら悔しそうに地面を叩くアキリ。

「...わたくしたちは破れる度に仕立て直してますからね」

布代ぬのだいと裁断スキルだけが上がっていく!」

「下手にミシン等の一時的に使う道具が演算できてしまいますからね。直した方が安上がりです」

「もっと楽な異世界に転生したい!」

「中途半端にリアリティありますからねこの世界」

「お前ら何の話してんだァ?」

 律儀に言われた通り話し相手をする堕鳥と適当に返事をしながら服に付いた砂埃を払い破れた所を縫うダリアと地面に寝そべりながら「もう、何も考えたくねぇ」という顔で自分で演算した氷を眺めているアキリ。

「カット」

 アキリがそう呟くと手に持っている氷塊が勝手に削れていき...ブリリアントカットダイヤモンド型になる。

「うん...」

 渋い顔をしながら色々な角度で氷を眺めて...

グッド普通...ッ!」

 つまらなそうにそう言うと作った氷を放り投げる。そうしてまた、次の氷塊を演算し、削って...

フェア下手...ッ!」

 雑に放り投げる。

「...お嬢様は相変わらず細かい演算が苦手でいらっしゃいますね」

 一連の流れを見ていたダリアが投げ飛ばされた氷をキャッチしてこれまた色々な角度から眺めながら呟く。

「カット」

 ダリアがそう呟くと氷がまた勝手に削れていき...一際、光を反射する美しい結晶に変わる!

「えくせれんとー」

「何やってんだそれェ」

 首を傾げながらその光景を見る堕鳥...ダリアの手にある氷を見ながら棒読みで褒めるアキリ...二人が何となくで行っているコレは演算の精度を上げる練習としてよく用いられるモノで手に持った物体をどれだけ美しく精密に想像通りに削れるか試す...片手間でやる暇つぶしみたいなものである。...して、何故この暇つぶしを行っているのか。

「お嬢様、もしかして...」

「ぉ...?」

?」

ねてるのかァこれェ?」

「おそらく...理由は龍との戦いでルーナ様に敗北感でも感じたのではないでしょうか」

「敗北感だと...ォ?」

「そもそもお嬢様は演算がすこぶる苦手でございますから。大雑把な演算しか出来ません」

「あァ、だから氷とマグマっぽいやつしか演算してなかったのかァ」

「...あれを使ったのですか?」

「アレってマグマっぽいやつの事かァ?使ってたぞォ?」

「よくあんなクソ長い詠唱する時間ありましたね」

「なんだかんだでルーナあいつ時間稼いでたぞォ?」

「お嬢様...そこまでお膳立てされて龍仕留めきれてないとかマジですか?」

「...ヴ」

「というか、ダメージ入れる以前に手枷にしか当たってなかったなァ」

「...グァ」

「お嬢様...」

「悪かったな!演算下手くそで!」

「お嬢様、そんなに拗ねないでください...そもそもお嬢様が得意なのは...いえ、なんでもありません。忘れてください」

「...」

「何か飲むかァ?」

「飲む」

わたくしも頂いても?」

「いいけどォ...そば湯でいいかァ?」

「構いませんが...どうしてそば湯?」

「私、そばアレルギー」

「まさかの設定かぶりィ!?」

 ツッコミを入れつつ湯呑みを差し出す堕鳥。それを受け取り飲むアキリとダリア。

「...」

「...」

 ズズズ...という啜る音と龍の咆哮が場を支配する不思議な空間。そんな中、堕鳥がチラリとアキリを見る。まるで休憩中の上司に仕事の話をしていいのか迷っている部下のような...そんな雰囲気。その仕草に一抹の懐かしさを覚え、気づけば口を開いていた。

「どうした、何か聞きたいことでもあるのか?」

「ん、あァ...そのなんだ...ァ、ずっと聞きたかったんだが、アレと戦ってて怖くないのかァ?」

「お前、あのねこが怖いのか?」

「いや、外見の話じゃなくてだなァ...」

「...?」

「お嬢様、おそらくアレと戦って死ぬのが怖くないのか?という質問かと」

「...ん、あぁ、死ぬのが怖いかって質問なら答えはYESだ。

「ならァ...」

「...そうだな」

 堕鳥の言葉を遮るようにアキリはさらに言葉を続ける。

「私にはやるべき事がある。それをせずにこんなところで死ぬのは怖ぇな...」

「やっぱり、お前も死ぬのが怖いのか」

「怖ぇよ、怖ぇけど...

「...ァ?」

「だって、?この恐怖がなきゃ私は生きたいとすら思えないんだ」

「...」

 言葉が詰まる。あれほど意味とか色々考えていた自分が馬鹿らしくなるほど清々しい答え。つまり、なんだアレか?のか?なんだそれは、自分の役目すら全うできていなかったとでもいうのか。道具として造られたモノとしてただ、粛々と...効率と命令の下に動く。それすら出来ていなかったとしたら俺は何の為に造られたのだ?この恐怖こころは俺が望んだものだったと?巫山戯ふざけるな!そんなことあってはならないだろう!これは与えられたモノだ。断じて得たものじゃない...そう思わなれければならないほど俺はこの現実を受け入れられずにいた。

「なら俺はァ...」

「お前には一つ足りてないものがある」

 再び堕鳥の言葉を遮るようにアキリは力強く...しかし、何処か優しさのこもった凛とした声で言う。

だよ」

「...はァ?」

 何を言っている?...そんな馬鹿な事があるか。俺はずっとこれに惑わされて、これのせいでずっと悩んでいるんだぞ?だというのに...

「違う、んじゃないんだよ」

「...」

 全く理解できない...呆然とアキリを見る堕鳥。それを一瞥し、立ち上がるとそっとダリアも立ち上がる。

「そこからはお前が自分で見つけるべきだ。...行くぞ」

「はい、お嬢様」

 龍へと歩きだすアキリとダリア...残された言葉だけが胸の中で反芻する。
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