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第二百五話『再会1』
帰郷から数日が経過し、年の瀬が目前に迫ってきた。
当日の夜には祭りが催される予定となっており、俺も積極的に力仕事を手伝った。最高の形で新年を迎えるため、皆と一丸になって準備を進めた。
日が暮れる前に家に帰ると、暖炉の前で休んでいたルルニアが労いに言葉をくれた。俺はコートを脱いでマフラーを外し、ただいまのキスをした。
「今日はどんなご様子でしたか?」
「丸太を何本も運んだ。それをこう四角に組んで積んで、祭りの開始に合わせて燃やすんだ。夜の闇を照らす炎と空に舞う火の粉が綺麗だぞ」
「残り三日ですか、待ち遠しいですね」
「今のところ天気が荒れる兆候はないし、予定通りに行けそうだ。力仕事の報酬として特等席は予約したから、当日はゆっくりと観覧しよう」
今日の体調を聞いてみると、おかげさまでと返事があった。
「欲しい物ややりたいことがあれば何でも言えよ」
「何もないです。しいて一つ挙げるなら、この子が無事に生まれることだけですかね」
「そうか、備えも万全だし後は時を待つだけだな」
赤子用の揺り籠はアストロアスの職人に依頼してある。服は王都の洋品店で買い込んであり、五歳ぐらいまでは男女共に対応可能にしている。
「お昼にグレイゼルの先生ともお話をしましたよ。妊娠後期の食事についてや、寝る時に母体と赤子の両方にとって良い姿勢を教えてもらいました」
「俺が注意することはあるか?」
「しいて言うなら、寝る時の姿勢をたまに見ていただけますか? 仰向けに寝るとよくないそうなので、そうなっていたら直していただきたいです」
了承の返事をすると、ルルニアが急に照れた顔をした。
何があったのか聞くと、指で髪をイジりながら答えた。
「…………お腹の子ですが、双子だろうと言われました」
まさかの発言だった。ここ半月ほどでお腹の膨らみが急速に増していたが、一人にしては大きすぎる気がしていた。その疑問がやっと氷解した。
「でも耳に当てた時の心音は一つだった気がするぞ?」
「お腹の中の位置も関係するそうです。しっかり聴診と触診をしてもらって、二人分の心音を確認してもらいました。間違いないそうです」
「双子か、男の子か女の子が二人ずつならどうする?」
「名前を新しく決める必要はあるでしょうが、まだいいと思います。焦らずゆっくり過ごして、エッチの余韻の中で意見を交わしましょう」
嬉しい言葉だったが、ここ最近のルルニアは性行為で疲れがちだった。本人の性欲は欠片も衰えていないため、お腹の重さがかなり辛いようだった。
(……サキュバス相手だと性行為を控えるってのもな)
夫として妻を満足させてやりたかった。とはいえルルニアが好きなのは陰茎を子宮に打ち付けるような激しい行為であり、実現は到底不可能だった。
「あなた、どうかされましたか?」
「何でもない。ルルニアが最高にエッチだと思っただけだ」
「臨月間近の妊婦にそれ言いますか? 変態さんですよ?」
「そう言う割には口が緩んでるぞ」
俺はルルニアを抱き寄せ、手櫛で髪を整えるように撫でた。
プレステスが夕食の完成を告げると、玄関口で音がした。
ニーチャが台所から離れ、「クレア」と名前を呼んだ。
「────や、ようやく会えたね。ルルニア」
クレアの見た目は別れの日から変わっていなかった。身長が高くて胸が大きく、陽気で人当たりの良さそうな顔をしている。元気そうで何よりだ。
ルルニアが立ち上がろうとしたので支え、クレアの元に連れて行った。挨拶もそこそこに視線が向いたのは、服の上からでも分かるお腹の丸みだ。
「五ヵ月ぐらいだっけ、やっぱりサキュバスの妊娠とは違うみたいね」
触っていいかと聞き、ルルニアが了承した。
手で表面に触れ、名前は何かと聞いてきた。
「ゼルアとクルニかぁ、早く顔が見たいね。耳元であたしがお母さんだぞって囁き続ければ、勘違いしてくれたりしないかな?」
「……悪い冗談はやめてくれ」
「ごめんごめん、本気で考えたわけじゃないから許してよ。ルルニアのことは諦めてないけど、あなたのことは認めてるんだから」
チロッと舌を出して謝られた。
今回は何日ぐらいの滞在なのか聞くと、年明けまではいると返事があった。年の瀬のお祭りを観光し、翌日に帰る予定なのだという。俺が不在の間の護衛を任せられそうで安心した。
「あ、寝泊まりする宿はもう取ってあるから。お金は立ち寄った町で日雇いの仕事を探して稼いだものだから、汚いお金じゃないよ」
今日は挨拶にきただけらしく、もう帰るそうだ。ルルニアが引き止めようとすると、腕組みをしてどうすべきか迷った。
「残りたいのは山々だけど、待たせている子たちがいるからさ」
「また新しいサキュバスを?」
「そそ、旅の途中で何人かのサキュバスと会ってね。アストロアスの話をしたら行ってみたいって子がいて、許可をもらうまで縄張りの境界線で待機してもらってるの」
何人ぐらいなのか聞くと、指が三本も突き立てられた。
皆良い子たちだと言い、手を合わせてお願いしてきた。
「────お試しで会ってみることはできないかな? フェイたちみたいに上手く引き込めれば、アストロアスの利益になると思うんだけど……どう?」
当日の夜には祭りが催される予定となっており、俺も積極的に力仕事を手伝った。最高の形で新年を迎えるため、皆と一丸になって準備を進めた。
日が暮れる前に家に帰ると、暖炉の前で休んでいたルルニアが労いに言葉をくれた。俺はコートを脱いでマフラーを外し、ただいまのキスをした。
「今日はどんなご様子でしたか?」
「丸太を何本も運んだ。それをこう四角に組んで積んで、祭りの開始に合わせて燃やすんだ。夜の闇を照らす炎と空に舞う火の粉が綺麗だぞ」
「残り三日ですか、待ち遠しいですね」
「今のところ天気が荒れる兆候はないし、予定通りに行けそうだ。力仕事の報酬として特等席は予約したから、当日はゆっくりと観覧しよう」
今日の体調を聞いてみると、おかげさまでと返事があった。
「欲しい物ややりたいことがあれば何でも言えよ」
「何もないです。しいて一つ挙げるなら、この子が無事に生まれることだけですかね」
「そうか、備えも万全だし後は時を待つだけだな」
赤子用の揺り籠はアストロアスの職人に依頼してある。服は王都の洋品店で買い込んであり、五歳ぐらいまでは男女共に対応可能にしている。
「お昼にグレイゼルの先生ともお話をしましたよ。妊娠後期の食事についてや、寝る時に母体と赤子の両方にとって良い姿勢を教えてもらいました」
「俺が注意することはあるか?」
「しいて言うなら、寝る時の姿勢をたまに見ていただけますか? 仰向けに寝るとよくないそうなので、そうなっていたら直していただきたいです」
了承の返事をすると、ルルニアが急に照れた顔をした。
何があったのか聞くと、指で髪をイジりながら答えた。
「…………お腹の子ですが、双子だろうと言われました」
まさかの発言だった。ここ半月ほどでお腹の膨らみが急速に増していたが、一人にしては大きすぎる気がしていた。その疑問がやっと氷解した。
「でも耳に当てた時の心音は一つだった気がするぞ?」
「お腹の中の位置も関係するそうです。しっかり聴診と触診をしてもらって、二人分の心音を確認してもらいました。間違いないそうです」
「双子か、男の子か女の子が二人ずつならどうする?」
「名前を新しく決める必要はあるでしょうが、まだいいと思います。焦らずゆっくり過ごして、エッチの余韻の中で意見を交わしましょう」
嬉しい言葉だったが、ここ最近のルルニアは性行為で疲れがちだった。本人の性欲は欠片も衰えていないため、お腹の重さがかなり辛いようだった。
(……サキュバス相手だと性行為を控えるってのもな)
夫として妻を満足させてやりたかった。とはいえルルニアが好きなのは陰茎を子宮に打ち付けるような激しい行為であり、実現は到底不可能だった。
「あなた、どうかされましたか?」
「何でもない。ルルニアが最高にエッチだと思っただけだ」
「臨月間近の妊婦にそれ言いますか? 変態さんですよ?」
「そう言う割には口が緩んでるぞ」
俺はルルニアを抱き寄せ、手櫛で髪を整えるように撫でた。
プレステスが夕食の完成を告げると、玄関口で音がした。
ニーチャが台所から離れ、「クレア」と名前を呼んだ。
「────や、ようやく会えたね。ルルニア」
クレアの見た目は別れの日から変わっていなかった。身長が高くて胸が大きく、陽気で人当たりの良さそうな顔をしている。元気そうで何よりだ。
ルルニアが立ち上がろうとしたので支え、クレアの元に連れて行った。挨拶もそこそこに視線が向いたのは、服の上からでも分かるお腹の丸みだ。
「五ヵ月ぐらいだっけ、やっぱりサキュバスの妊娠とは違うみたいね」
触っていいかと聞き、ルルニアが了承した。
手で表面に触れ、名前は何かと聞いてきた。
「ゼルアとクルニかぁ、早く顔が見たいね。耳元であたしがお母さんだぞって囁き続ければ、勘違いしてくれたりしないかな?」
「……悪い冗談はやめてくれ」
「ごめんごめん、本気で考えたわけじゃないから許してよ。ルルニアのことは諦めてないけど、あなたのことは認めてるんだから」
チロッと舌を出して謝られた。
今回は何日ぐらいの滞在なのか聞くと、年明けまではいると返事があった。年の瀬のお祭りを観光し、翌日に帰る予定なのだという。俺が不在の間の護衛を任せられそうで安心した。
「あ、寝泊まりする宿はもう取ってあるから。お金は立ち寄った町で日雇いの仕事を探して稼いだものだから、汚いお金じゃないよ」
今日は挨拶にきただけらしく、もう帰るそうだ。ルルニアが引き止めようとすると、腕組みをしてどうすべきか迷った。
「残りたいのは山々だけど、待たせている子たちがいるからさ」
「また新しいサキュバスを?」
「そそ、旅の途中で何人かのサキュバスと会ってね。アストロアスの話をしたら行ってみたいって子がいて、許可をもらうまで縄張りの境界線で待機してもらってるの」
何人ぐらいなのか聞くと、指が三本も突き立てられた。
皆良い子たちだと言い、手を合わせてお願いしてきた。
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