薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第1章 洞窟出現編

45話 終結

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 私はプランツからの申し出に返事をする為、結界の外に出たのだ。
 カクやヨクは心配したが、話したいこともあったのだ。
 もちろん応じるつもりも無いし、必要もないのだ。
 さっきまで結界の外でプランツのしもべを倒すべく兵士達が戦っていた。
 途中でプランツのしもべ達が毒を噴出したが、兵士達は問題なかったのだ。
 ただ、プランツを欺くため、殆どのしもべを倒した後は自分たちも倒れるふりをしたのだ。
 本当は気が気じゃなかった。
 もしかしたら、薬が効かないこともあるのではと心配になったのだ。
 しかし、兵士たちが倒れるときに、私に目配せしたのだ。
 つまり、問題はなく計画通りという事を伝えてくれたのだ。
 だから、もし結界内に猛毒を噴出されても、今なら問題は無いのだ。

「シンブ・・・さんですよね。
 私はともかく、王様達を本当に傷つけても良いんですか?
 少なくとも、王様とヨクはあなたが魔人で、しかも裏切るような事をした事にショックを受けてましたよ。
 私がもしかしたら、あなたが怪しいと話した時も、みんなあなたを信じていたんですよ。
 魔人になってしまったら、心は痛まないのですか?」

「・・・舞、もう遅いのだよ。
 人間の気持ちのままでいられれば幸せだったのかもしれない。
 しかし、魔人として復活したからには、私にとって人間は敵であり私を消滅に追い込んだ者達なのだよ。
 その事実は消えないのだ。
 だから、この世界から魔人を追い出した人間とは共存はできないのだよ。
 つまりはブラック様に従う事は出来ないのだ。」

 プランツの顔を見ると、何も感じないわけでは無いようだ。
 しかし、今まで何百年も考えてきた事を簡単に覆す事は出来ないのだろう。
 だが、私も人間を傷つける者を許す事は出来ないのだ。

「・・・そう、残念ですね。
 私はあなたの申し出は断ります。
 少ししか話してないけど、ブラックも私の友人の1人よ。
 それにここにいる人みんなを傷つける事も出来ない。
 あなたが降伏してくれれば、きっとブラックも悪いようにはしないわ。
 そうしてください。」

 プランツは意を決したように目を閉じたのだ。
 そして、プランツのしもべ達は猛毒を噴出させたのである。
 
「舞、すまない。
 私はもう、こうするしかないのだよ。」

 すぐにシウン大将が簡易結界内にいたプランツのしもべを瞬く間に切り刻んだ。
 それと同時にネフライトがプランツを抑え、魔法が使えないようにする拘束具を手首にはめたのである。
 プランツと一緒に行動していた魔人たちも殆どトルマにやられており、抵抗しようというものはいなかったのだ。
 そして、ブラックは猛毒が存在するこの城一帯の空気から毒物を消滅させてくれたようなのだ。
 
「何故だ。
 あの毒を少しは吸収しているはずなのに、誰も苦しむものがいないと言うのか。
 人間には抵抗できるはずがない。」

 プランツはひきつった顔で叫んだのだ。

「昔あなたを消滅させた薬と逆の薬を前もって使っておいたの。
 この広間にいる人間全員にね。
 だから、その薬の効果があるうちは、誰も傷つける事は出来ないわ。」

 そして、私はプランツに伝えたかった。

「本来薬は、病気を治したり、私たちの身体をより良い状態にするためのものよね。
 だから、闇の薬は間違った使い方なのよ。
 薬師だったシンブならわかるはずだわ。」

 プランツは下を向いたまま、顔を上げなかった。
 そして、私は二度と闇の薬は作らないと心に決めたのだ。
 昔、ハナさんが作らないようにした意味がわかったのだ。
 この薬が無ければ、ここにいるプランツも500年もの間苦しむ事はなかったのかもしれない。

「お嬢さん、流石ですね。
 きっと何か策を講じてくれているとは思っていましたが、完璧ですね。」

 手を叩きながら、ブラックは私の方に向かってきた。

「プランツに寛大な処分をお願いできますか?
 あなたを殺そうとした人だけど。」

「プランツを消滅させる事はしませんよ。
 私にダメージを与えられるのは、本当にあなたの薬くらいかもしれませんね。
 今後は幹部たちと相談してどうするかを考えますよ。
 私は独裁者ではありませんから。」

 そう言うと、ネフライトとトルマにプランツと他の魔人を連れて行くように指示を出した。

「あ、少し待ってください。」

 私は捕らえられているプランツに、ポケットに入っていたある薬を渡したのだ。

「もし、どうしても辛くなったら、この薬を飲んでください。」

 私は小声でそう伝え、無理矢理プランツの手に薬を置いてきたのだ。
 プランツはチラッと私を見ただけで何も話さなかった。
 そして王様やヨクを一瞬見たが、すぐに下を向いてしまったのだ。

 プランツが連れて行かれた後、城の外が騒がしい事に気づいた。
 城の外を窓から覗いてみると、城の周りが崖と山に囲まれていたのだ。
 人間が簡単には逃げられないように、地形を変えていたようだ。
 敵がいなくなっても、この崖を攻略するには大変であるのだ。
 外に出ていた兵士達がどうしたら良いものかと、相談しているようであった。

 その時である。
 空に一点の輝くものが見えたのだ。
 よく見ると人なのだ。
 それも金髪のとても美しい女性がいたのだ。
 その女性が両手を広げると、城の周りに光が振りまかれ、崖や岩山が大きな音をたてながら本来の形に戻り、植物も元のように生き生きと生えてきたのだ。

「ブラック、遅くなってごめんなさい。
 でも、元に戻したわよ。」
 
 どうも、ブラックの知り合いのようなのだ。

「いや、ちょうどよかったよ。
 いつ見ても、素晴らしい自然の力だね。」

「あら、このお嬢さん似てるわね。
・・・なるほどねー」

「その話はまた今度で・・・」

 私を見るなり、その綺麗な人はつぶやいたのだ。
 ブラックは何となく気まずそうにして、早く帰るように促したのだ。

 そして、長い1日が終わったのである。
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