薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
55 / 181
第2章 森再生編

55話 寄生

しおりを挟む
 私達が森に入った瞬間、その黒い影のような物が近づいてきたのだ。
 しかし直前まで来ると何かに弾かれたようになり、それ以上私達の近くに来ることは出来ないようだった。
 それが、ブラックの張った結界なのだろう。
 前と同じように真っ直ぐに道を進んだ。
 そう言えば、ここを棲家にしていた魔獣達はどうしたのだろう。
 こんな状況ではここに住むことは困難に感じたのだ。
 ブラックに聞くと、ある程度の魔獣は無意識に結界を張っているので、このくらいの負のエネルギーの塊には問題ないとのことなのだ。
 しかし、居心地が悪い事は確かなので、殆どは草原の方に移動しているらしい。

「ねえ、貴方なら、この黒い影のような物も消滅させる事が出来るかと思うのだけど。」

 私はふと疑問に思った。
 魔人の王であるブラックであれば問題なく対処出来たのではないかと。

「確かに。
 出来なくはないのですが、これらを消滅する為には森全体を無くすしか私には出来ないのですよ。
 この負エネルギーの塊は浮遊しているだけでなく、草木に寄生しているような状態になっているのですよ。
 まあ、もし国に悪影響が出るのであれば、そうしなければいけないとは思ってますが。」

 そう言うことか。
 ハナさんの守った森を自分で消滅したくないのだろう。
 だからその決断をする前に、私に何か出来ればと、呼んだわけなのだろう。
 私もこの森自体が無くなってほしくはない。
 あの木の精霊に会ってしまったからには、その存在自体を消滅させる事は避けたいと思うのだ。

 真っ直ぐに進むと、大木のある広場に出たのだ。
 以前と同じように大木は立っていたが、葉は殆ど落ちており、枝も乾燥して生気が見られなかった。
 
「もう、枯れてしまったのかしら?」

「いや、少しだけだが、生命エネルギーは感じますよ。」
 
 草木に寄生していると言うのが気になるのだ。
 いわゆる、ウイルスのような物なのかもしれない。
 自分だけでは増殖出来ないが、寄生することで仲間を増やして行くような。
 そうなると、宿主本体が強くならなけらばいけないのだ。
 精霊を探さなければ。
 前回は精霊の方から呼びかけてくれて、トンネルを作り導いてくれたのだ。
 私達が来ている事はきっとわかっているはず。
 だが、自分のところに導く力も残ってないのだろうか。
 私は自分の世界から持ってきたある液体を出した。
 そしてそのペットボトルに、ある漢方薬を入れ、カクの家からもらった風の鉱石の粉末を入れたのだ。
 その中に入れた漢方は

 ジオウ、トウキ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ニンジン、ケイヒ、オンジ、シャクヤク、チンピ、オウギ、カンゾウ、ゴミン

 が入っており、もともと疲労回復や感染症による全身衰弱、体力低下に用いられるのだ。
 そこに、風の鉱石の粉末を入れる事で、この辺一帯に広がるように振り撒いたのだ。
 持って来た液体はもともと植物に良いと言われている 窒素、リン酸、カリウム の配合から出来ている栄養剤なのだ。
 これが効果があるかはわからないが、精霊のところまで導くだけの力が戻ればと思ったのだ。
 正直、光の鉱石の粉末も転移の時に使った余りがあったので持って来ているのだが、これを使うのは怖かったのだ。
 植物に寄生しているとするならば、宿主ではなくウイルスのような黒い影の力が増すことになっては困るからだ。
 
 私がその液体を振り撒くと、柔らかな風が辺りに吹きだし、周辺の木々がザワザワと動き出したのである。
 すると、以前よりは小さいが、人一人が通れるトンネルが作られたのだ。
 しかし、あっという間に木々がまた動き出して、トンネルを塞ごうとしているのを見て、ブラックは私を抱え、瞬時に通り抜けたのだ。

「ありがとうございます。
 私が走ったらきっと塞がれてました。」

「いえいえ。
 一度行ったところなら瞬時に移動できたのですが、どうやら以前行った空間はその都度移動しているようなので、場所がわからなかったのです。
 何かから逃げているような感じですね。」

「では、まだ精霊は大丈夫ということかしら?」

 そう言った時、後ろに気配を感じたのである。

「舞、ブラック・・・私がわかりますか?」

 そこには以前見た精霊とは違い、小さな子供のような形の者が存在した。
 それは、輝きもなくなっており、弱っているように見えたのだ。

「いったいどうしたと言うのですか?」

 私は駆け寄り、頭を撫でようとしたのだ。
その瞬間、その精霊と思われるものは弾かれて飛ばされたのだ。

「舞、それはあの精霊では無いようです、離れて。」

 弾かれた精霊と思われた者は起き上がり、見る見る黒ずんで行き、森にいた黒い影の集合体のようなものになったのだ。
 ブラックが攻撃しようとして左手を上げた時だった。

「舞、ブラック、こちらに。」

 後ろから叫ぶ声が聞こえたのだ。
 振り向くと先程と同じ子供のような形の精霊らしきものが木々の間から呼んでいるのだ。
 また偽物ではと一瞬思ったが、小さな子供になっていても、以前と同じ透明感のある輝きを放っていたのだ。

 「きっと本物だわ。」

 私達は呼ぶ声の方に行き、木々の合間の入り口から入りこんだのだ。
 すぐに入り口は閉ざされ、この精霊が作ったであろう空間に私たちは導かれたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編。 リーナ視点が主です。 ----- また続けるかもしれませんが、一旦完結です。 ※小説家になろう様にも掲載中。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...