薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第3章 翼国編

87話 潜入

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 ユークレイスとトルマはブロムの手引きで軍に潜り込むことが出来た。

 国境に配置されていた部隊から城の衛兵に移動して来たという設定なのだ。
 そのため、城の中のことは全く分からなくても、不思議ではなかったのだ。
 もちろん、上官にはユークレイスが都合の良い記憶を送ったこともあり、難なく入り込めたのだ。
 衛兵であれば、アルゴンの近くに行くこともあるので一番良いのではと、ブロムの勧めであった。
 ユークレイスがいるので、疑われそうになったら上手く記憶を書き換えてくれるので、全く問題は無かった。

 アルゴンに直接ユークレイスの魔法を使い、考えを覗く事は出来るのだが、アルゴンの力がハッキリとは分からないため、二人の魔人がこの国に入り込んでいる事は、まだ隠しておく事にしたのだ。
 リオの病についても回復はしているが、まだ原因というものがわかってないのも理由の一つなのだ。

 それに王子達は、父である王が操られていると言うが、王自らがこの状況を本当に希望している事であるなら、魔人達が口を挟む事ではないのだ。
 これはブラックの考えであった。
 それを見極めるためにも、二人はしばらく黒翼人の兵士を演じる事としたのだ。

 兵士の訓練においては、前もってブロムから一度説明を受けていた事もあり、彼らにとっては簡単であったのだ。
 トルマは楽しんでやっていたので、やり過ぎな面もあり、ユークレイスに注意されていたのだ。
 特別視されても困るので、魔人にとっては逆に力を制御する方が大変だったようだ。
 そしてユークレイスの力もあるが、同僚ともすぐに打ち解ける事ができ、数日もすると二人は黒翼人の立派な衛兵になっていたのだ。

 そしてある朝、アルゴンとブロムの父である王が城の兵士達を全員召集したのだ。
 そこで、白翼人へ数日後に行う先制攻撃が公表されたのだ。
 ブロム達三兄弟もその場で聞かされたようで、驚きを隠せなかった。
 そして、かつて白翼人が仕掛けたように、今度は我々がやる番であると王様は力を込めて演説したのだ。
 その後アルゴンが兵士達の指揮を高めるために話し出したのだ。
 二人の魔人達が思った通り、その言葉と一緒に思考誘導の魔法が使われていたのだ。
 アルゴンの言葉を聞くと兵士たちは口々に歓声をあげ、打倒白翼人を掲げたのだ。
 それは魔人の二人にとっては、とても異様な光景であった。
 それにしても、せっかく停戦状態である国にわざわざ戦いをまた挑むとは、どんな理由があるのだろう。
 今まで軍に力を入れてきた事で、民間人は飢えに苦しんでいるとブロムは訴えていたのだ。
 白翼人との間にはどんな確執があるのだろうか。
 ユークレイスとトルマは戦争に向かって行くこの国が不思議でならなかった。

 その後ブロム達三兄弟は、父である王に攻撃の計画を取りやめるように懇願したが、聞き入れてはくれなかったのだ。
 そして、黒翼人の兵士達は先制攻撃に向けて準備を進めることになったのだ。
 ユークレイス達兵士は武器庫から大量の武器を出して手入れを始めたのだ。
 その中には魔法道具と思われる武器も沢山あり、トルマの興味をそそるものばかりだった。
 自分の国でも使えるものが無いか、目を輝かせていたのだ。
 後日人間のシウンに報告しようと、しっかりと目に焼き付けていたのだ。

 夜になるとユークレイスとトルマはこの世界から自分の世界につながるトンネルを抜けるのが日課だった。
 湖のそばの岩場に出れば、どこにでも連絡が取れる状態になるのだ。
 そしてブラックに思念を飛ばし、その日にあった事を報告し今後の指示を仰いでいたのだ。
 

             ○

             ○

             ○

 アルゴンは自分の執務室に入り、一息ついていた。
 
 当初の計画より早めることになったが仕方がない。
 あの三兄弟に邪魔される前に私の計画を進めることにしたのだ。
 結局、先日の人間の娘もいつの間にか、元の世界に帰したと王子達から言われたのだ。
 魔人が迎えに来たのでは無いかという事が、うやむやになったのだ。
 それに、あの階層の重体だった兵士に、後日誰にやられたかを聞いたところ、記憶が全く無いと言うのだ。
 城の中で嵐のような騒ぎがあった事も、何が原因で起きたか、誰も分からないと言うのだ。
 腑に落ちない事が多かったが、私の計画を中止する事は出来ないのだ。

 そして私は白翼人の内通者に話をしたのだ。
 先制攻撃を仕掛ける事を、敵である白翼人へわざと漏らすようにと。
 こちらの兵力、武器や弱点など様々な情報を流すことにしたのだ。
 これで、白翼人に一丸となって先制攻撃を仕掛けたつもりが、返り討ちにされるわけなのだ。
 全ての情報を知られている事で、黒翼人達は手足も出ない状況になるはずなのだ。
 そして、彼らの顔は絶望に変わるのだ。
 私はその気持ちをより深い絶望感を味わえるように思考誘導してあげようと思うのだ。

 以前、カレンにかけられたスパイ容疑と同じに、今度は私が本当のスパイになってやるのだ。
 
 
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