薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第3章 翼国編

88話 準備

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 私はクロル達に別れを告げ、魔人の国にブラック達と一緒に戻ったのだ。

「舞、大丈夫だった?
 心配したのよ。
 無事でよかった。」

 魔人の城に着くと、ジルコンもとても心配していたようで、すぐに駆け寄ってきたのだ。
 相変わらず綺麗なジルコンに近くで見つめられると、女性の私でもドキドキしてしまうのだ。

「ごめんなさい。
 心配かけてしまって。
 ブラックにも怒られたわ。」

「そうそう、ブラックの慌てようを見せてあげたかったわ。」

 ジルコンは小声でブラックに聞こえないよう話してきた。

 本当はもう少し滞在して、リオさんの周辺を調べたかったのだが、ブラックの言う事を聞くことにしたのだ。
 色々な人が私を心配して迎えに来てくれたのに、ワガママを言ってはいけないと思ったのだ。

 その日は魔人の城に滞在し、次の日にカクの家に戻ることにした。
 夜は黒翼人の国での事をみんなで話したのだが、街の下にいた正体不明の生き物の話をした時は、また私を危険な目に合わせたなと、ブラックはアクアとスピネルを睨んでいたのだ。
 私は外に出て、夜風に当たることにした。 
 この国はいつでも春のような気候で、夜もとても過ごしやすく、優しい風が吹いていたのだ。
 みんなとの話はとても楽しく、食事やお酒も美味しかったのだ。

 しかし、リオさんの病について原因が突き止められなかった事が、ずっと心に引っかかっていたのだ。
 ブラックに怒られるかもしれないが、やっぱりもう一度行ってみたいと思ったのだ。
 その時、ふと後ろに気配を感じたのだ。
 私がいなくなったことに気付いてか、ブラックも外に出てきたのだ。

「どうしました?
 気分でも悪いのですか?」

「いえ。
 ちょっと、飲み過ぎたので夜風にあたってました。」
 
 私の顔をじっとみると少し笑いながら言ったのだ。

「嘘ですね。
 黒翼人の国が気になるんですよね?
 顔を見ればわかります。」

「・・・ええ。
 どうしてもリオさんの事が気になって。
 ・・・また行ってはダメですか?」

 ブラックは困った顔をして話し始めたのだ。

「さっきみんなに話したように、ユークレイスとトルマが向こうで色々調べていますから、その辺りもわかってくると思いますよ。
 だから・・・舞、危険な所には行ってほしく無いのです。」

「そうよね。
 また捕まってしまう事もあるかもしれないし、危険が無いとは言えないわよね。
 わかってはいるの。
 でも、お願い、もう一度だけ行かせてほしいの。」

 ブラックは少し考えた後、ため息をついてこう言ったのだ。

「思えば、初めて舞を見た時も戦いの時でしたね。
 魔人を見ても物怖じせず、強いあなたの意志を感じました。
 その後の人間の城での戦いも、命が危なかったかも知れないのに、プランツに向かって堂々とした姿だった事を思い出しました。
 そして森でもそうでしたね。
 舞は何も変わっていなかったのに。
 私が・・・変わったのですね。
 私はあなたを失ったらどうしようかと、心配で仕方なかった。
 ・・・私の側から絶対に離れないと約束できますか?」

「ええ、もちろん。」

「では、人間の国に戻ったら、何があってもいいように万全の準備をしてきてくださいね。」
 
「ありがとう、ブラック。」

 私はそう言って満面の笑顔でブラックを見ると、ブラックも優しく微笑んで頭を撫でてくれたのだ。

 次の日、カクの家までブラックが送ってくれた。
 ブラックが黒翼人の世界に行く時に声をかけるので、勝手な行動を取らないように、そこはキツく言われたのだ。
 
 カクの家に入ると、二人が首を長くして待っていたのだ。
 これまでの事を二人に話すと、カクもヨクも驚きで目を見開いて聞いていたのだ。

「舞、相変わらず危険なところばかり行ってて心配だよ。
 今回もなかなか帰って来ないから、何かあったのかと思ってたらやっぱりね。」

「まあ、魔人の国から知らせは来ていたが、まさか他の世界に行っていたとはな。
 この歳になってから、色々な話が聞けてわしは楽しくて仕方ないよ。
 もっと若かったら、わしも一緒に行きたかったぞ。」

 ヨクは楽しそうに話していたが、まじめな顔をして言ったのだ。

「だが、舞、本当に気を付けるのだぞ。
 何が起きるかわからないのだから、しっかりと準備するのだぞ。
 マサユキに怒られることがあっては困るからのう。」

 カクとヨクと話をしていると本当に落ち着くのだ。
 自分の家では無いが、家に帰ったようでとても安心するのだ。
 そして、二人は本当の家族のように思えたのだ。

「カク、忙しいとは思うけど、黒翼人の国に行く準備を手伝ってもらっていいかな。」

「もちろんだよ。
 舞のためなら仕事なんて行かなくても大丈夫だよ。」

 カクは嬉しそうに答えた。

「仕方ない。
 カクの代わりにワシが城に行くから、準備を手伝ってあげなさい。」

「二人ともありがとう。」

 さあ、準備をしなくては。
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