薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第4章 火山のドラゴン編

123話 闇の薬再び

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 ブラックが結界に入った後は、黒い煙により中を伺う事が出来なかった。
 私は座り込んだまま、その結界を見ていることしかできなかった。

「大丈夫だよ。
 ブラックならきっとエネルギーを消滅させて出てくるはずだよ。」

 スピネルが私を励ましてくれるのだが、私は不安しかなかったのだ。

 闇の薬の話をした事が引っかかるのだ。
 私が二度と作らないと決めた事を知っていて、あえて準備をしてほしいという事は、ブラックではどうにもならない状況になる可能性が高いという事なのだろう。

「こっちは何とかなったぞ。」

 見上げるとアクアが綺麗な石を持って立っていた。
 残りのドラゴンのエネルギーを、上手く封印の石に移し替えたようなのだ。
 アクアがその石を持ちながら、ブラックの結界を眺めたのだ。

「少し気になった事があるのだ。
 いにしえからのドラゴンは魔獣に近い存在と聞いていたのだが、さっき私の中に入ってきた時にドラゴンの意志を感じたのだ。
 まるで、我らと同じようにだ。
 そうだとすると、とても厄介かもしれないぞ。
 本能で暴れるドラゴンではなく知恵があるとするなら・・・」

 そんな話をアクアがした時、精霊がつぶやいたのだ。

「まずいですね。
 ドラゴンのエネルギーが小さくなってはいますが、ブラックの魔力の低下も感じます。」

 スピネルとアクアも感じていたようで、2人とも黙って顔を見合わせていた。
 
「舞、ブラックが言っていた通り、準備をした方がいいかもしれません。」

 森の精霊は私とブラックの会話をポケットの中で聞いていたようだった。
 聞かれていたと思うと少し恥ずかしい気もしたが、今はそんな事を言ってる場合では無いのだ。

 それにしても、絶対に作らないと思った闇の薬を本当に使っていいのだろうか。
 もしもブラックよりも強い存在であるなら、もう誰もそのドラゴンを止める事はできない。
 私が躊躇する事で、大きな被害をもたらす事になるかもしれない。
 そう思えば、ブラックが言ったように、闇の薬を使う事はみんなの助けになるのかもしれない。
 それに、・・・悩んでいる時間は無いのだ。

「わかったわ。
 シウン大将、闇の鉱石は城にあるわよね?」

「ええ、武器庫にありますが。
 ・・・必要なのですね。
 以前、魔獣に使った時のように。」

 私は黙って頷いて、スピネルに向かってお願いしたのだ。

「スピネル、急いでここから出て私を人間の城まで連れて行ってくれる?」

 シウン大将に案内を頼み、アクアにはブラックの様子を見てもらう事にした。
 何かあったらすぐに思念でスピネルに伝えるようにしてもらったのだ。

 私とシウン大将はスピネルに掴まると一瞬で城の前まで移動したのだ。
 一度行った場所なら空間把握が出来ているので、戻る事も簡単のようだ。
 本当に魔人はすごいと私とシウン大将は実感したのだ。

 城に着くとシウン大将が武器庫に案内してくれた。
 そこの警備は非常に厳重であったが、シウン大将と一緒のため、問題なく入る事が出来た。
 中にはたくさんの武器が整頓して置かれていた。
 一番奥まで行くと、何重にも鍵のかかった箱があったのだ。
 シウン大将が手際よく鍵を開けると、以前見た黒い闇の鉱石の粉末が入ったボールがいくつか置いてあったのだ。
 確か魔法陣との使用で、魔獣をどこかに移動し拘束する事ができたはず。

「そう言えば、あの時の魔獣はどうなったのですか?」

 私がその黒いボールを見ながら話すとシウン大将は教えてくれたのだ。

「ああ、あの時の魔獣はある場所の地下に移動したのです。
 そこは魔人対策の結界が張ってあるところで、魔獣も勝手に動く事が出来ない場所なのです。
 1匹はだいぶ弱っており消滅するかと思ったのですが、時間と共に回復しましたよ。
 さすが魔獣ですね。
 ただ、何故か隔離して少し経つと、魔獣達は攻撃性が薄れて大人しくなったのですよ。
 そして魔人の国に行く事ができるようになってから、向こうの世界に戻したのですよ。」

 私は自分が作った闇の薬で魔獣を消滅させていたと思っていた。
 今は魔人の国にいると聞いて、ホッとしたのだ。
 ずっと心の片隅に引っかかっていたのだ。
 きっと、闇の鉱石の量で効果にも差があるのだろう。
 今回はどうしたら良いものか・・・。

 私は闇の鉱石のボールを一つもらい、気を付けて鞄に入れたのだ。
 そして今度はカクの家に移動したのだ。
 カクとヨクはまだ城にいるようで、お屋敷には使用人しかいなかった。
 私は急いで自分のスーツケースを開けてある漢方を取り出したのだ。
 そしてマスクと手袋を付けて、慎重に以前と同じように闇の薬を作ったのだ。
 
 一つは魔獣に使ったものと同じ物を。

 オウギ、ソウジュツ、ニンジン、トウキ、サイコ、タイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウマ、ショウキョウ

 そして、

 オウギ、ケイヒ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、トウキ、ニンジン、ブクリョウ、カンゾウ、ソウジュツ

 この2種類の漢方は、病後の体力回復などに使われるものなのだ。
 それを闇の鉱石の粉末と混合したのだ。
 効果が逆に転じる事で弱体化させる薬となるのだ。

 そしてもう一つは・・・
 使う事があるか分からなかったが、希望を込めた別の薬も作ってみたのだ。

 私は残っていた光の鉱石の粉末も使い、念の為完全回復の薬も追加して作り、鞄に全てをしまったのだ。
 帰るための光の鉱石が全てなくなってしまったが、また採掘されるのを待てば良いのだ。
 今はそんな事は考えてられなかった。
 
 そしてブラックやアクアが心配だったので、私達は急ぎ岩山の洞窟に戻ったのだ。
 スピネルに掴まり、一瞬で戻る事が出来たのだ。

 私達が戻った事に気付くと、アクアが黙って結界を指差したのだ。
 ちょうど、ブラックの作った結界がだんだんと小さくなっていき、結界から出てくる人物がいたのだ。
 それは明らかにブラックであったのだ。
 私はブラックがドラゴンを消滅させて出てきたと思い、ホッとしたのだ。
 私の取り越し苦労であったと安堵したのだ。

 ・・・しかし、精霊や二人の魔人はニコリともせず、神妙な顔付きで出てきた人物を見ていたのだ。
 その顔を見た時、私の心に不安が押し寄せたのだ。

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