薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第4章 火山のドラゴン編

124話 ブラックとドラゴン

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 ブラックが結界に入る少し前の事である。
 アクアがドラゴンのエネルギーを移しきれていない様子を見て、ブラックは考え込んでいた。
 
 このままアクアを依り代としてドラゴンが復活したのであれば、私が何とかするしかないと思ったのだ。
 残念な事ではあるがアクアの自我が消え去るようでは仕方ないのだ。

 しかし、舞から言われるまで私達は石で繋がっている事をすっかり忘れていたのだ。
 アクアに魔力を送る事で、舞の薬で分離できたのは良かった。
 だが、出てきたドラゴンのエネルギーを封印は出来ないのではと思ったのだ。
 残念なことに予想通り外に放出されたのだ。
 私はいち早く結界を作ったが、エネルギーが巨大であったため、結界がどれだけもつか分からなかったのだ。
 
 やはり、私が消滅させるしかないと思ったが、そのドラゴンのエネルギーは私の魔力と同じくらいであるのだ。
 場合によっては、私が消滅されるか体を乗っ取られる可能性があったのだ。
 危険な賭けであったが、私がやらなければいずれドラゴンは復活するだろう。

 この世界が火の海になる事は避けたかった。
 もし失敗すれば、魔人の仲間や舞とも会う事は出来なくなる。
 ・・・だが、アクアを助けるために一生懸命な舞を見て、この賭けに参加し、そして勝たなくてはならないと思ったのだ。
 そしてもしも負けた時は、舞には悪いがあの薬を使ってもらうしかないと思ったのだ。
 私やドラゴンを消滅に導けるのはきっとあの薬だけなのだ。

 舞と連絡が途絶えたと聞いた時、私は本当に狼狽えたのだ。
 そして再会できた時にどんなに嬉しかったか。
 ・・・だが、また離れなくてはいけなくなるかもしれない。
 こんな時に話す言葉が見つからず、舞を抱きしめることしかできなかった。

 しかし悲観することばかりでは無いのだ。
 私達には約束の指輪があるのだ。
 舞も私と同じ気持ちでいてくれれば、また再会する事は可能なのだ。
 それを信じたかった。
 今は自分ができる事をするだけだと思った。
 そして私は、自分の作った結界の中に入ったのだ。


 結界の中は強大なドラゴンのエネルギーで充満していたのだ。
 消滅させようと左手を出した時である。
 ただのエネルギーの塊だけかと思ったが、ドラゴンの意志を感じたのだ。
 アクアからは魔獣のたぐいと聞いていたので、欲でしか動かない怪物と思っていたのだ。
 だが、少し違ったようだ。
 だとしても、邪悪なる存在は同じで、私がすべき事は同じなのだが。
 ドラゴンの意志により、私の中に入り込もうとしているのは明らかだった。
 そして私の身体を使って自分の復活を狙っているのだ。
 この結界が破られれば、別の誰かに入り込み復活を試みるだろう。
 それは阻止しなければいけないのだ。

 私は左手から、このエネルギーを消滅する力をドラゴンの意志に向けて放出したのだ。
 この膨大なエネルギーを消滅する為には、私の魔力もかなり減らされる事になるだろう。
 どちらが先に消耗するかの問題であった。

 私に入り込もうとするドラゴンのエネルギーを消滅していくうちに頭の中に誰かが話しかけてきたのだ。
 それは明らかにドラゴンの意志であったのだ。

『そこの魔人、取り引きをしようでは無いか。
 このままでは、お互いが消滅する事になるぞ。』

『取り引きなどはしない。
 私が必ずお前のエネルギーを減らし封印に持ち込むので、安心するといい。』

『本当に出来るか?
 僅かに我の方が上だった場合はどうする。
 時が立てばエネルギーは元に戻る事が出来るのだぞ。
 そうすれば、私は自由だからな。』

『それは私にも言える事では無いですか?
 それに、お前はさっきドラゴンの民に入り込む事が出来なかったではないか。
 追い出された存在が何を言う。』

『確かに・・・何故か外に追いやられてしまったのだ。
 お前ほど力がないはずなのに。
 だが、さっきの我とは違うぞ。』

 確かにアクアに入り込んでいたエネルギーよりも多くが、元の封印の石から流れ集まっているようなのだ。
 そう考えるとどうなるかわからないのも確かなのだ。

『どうだ、私を受け入れ共にこの世界に君臨しようではないか。
 長い間眠っている間に、自分の意志というものに気付いたのだ。
 そして伝える術も修得した。
 そうであるなら、ドラゴンとしての復活よりも魔人のような存在で復活する方が面白そうではないかと思ったのだ。
 世界をただ火の海にするなどつまらない事に気付いたのだよ。』

『私の身体に入り、世界を自分の意のままにしようとでも?
 冗談ではない。
 受け入れるつもりは無いですよ。』

『そうか、残念だな。
 ではこの結界を破壊し外に出る事に力を注ごう。
 そうすれば、お前より弱い者であれば入るのは簡単であるからな。
 この結界も時間の問題ではないか?』

『・・・やめろ、外の者に手を出すな。
 お前の相手は私だ。』

 正直、このドラゴンのエネルギーを消滅する事に力を注いでいた為、結界の強度に力を入れる事ができず、限界に来ていたのだ。
 外にはスピネルや大事な舞がいるのだ。
 手を出させるわけにはいかないのだ。
 このドラゴンに入り込まれたら自我が消滅してしまうだろう。
 アクアでさえ危なかったのだ。
 私なら追い出される事はないかもしれないが・・・私は今の私のままでいられるのだろうか。
 私が考えている隙にドラゴンの意志が入ってきたのだ。
 
『私を受け入れるのだ。
 他の者では我を抑えられないだろうが、お前なら違うであろう。
 ならば、悪い話では無いだろう。』
 
 確かにその通りなのだ。
 力が同等であれば、追い出される事なくドラゴンの力を抑えることも可能かもしれない。
 だが、そんな上手く行くだろうか・・・
 私自身が押さえ込まれるかもしれないのだ。
 だが、今このドラゴンが他の者に入るのだけは阻止したかったのだ。

 私は受け入れるしか無かったのだ。
 
 
 
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