薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

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第5章 闇の遺跡編

163話 森の主の役目

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 森の主が、パラシスを結界から出してほしいと懇願する少し前の事である。

 精霊が城全体に放った蔓が、ついに見つけたのだ。
 パラシスの作った空間にいるブラック達の居所がわかったのだ。
 今は結界の中にパラシスがいる事で、空間の把握はできないはず。
 救出するなら今なのだ。
 それにちょうど良い事に、スピネル達がその空間のかなり近くにいることもわかったのだ。
 精霊は、素直に話し出したパラシスを見て、まだ何か仕掛けてくるのではないかと、思ったのだ。
 
 そして精霊は思念を使い、みんなに考えを伝えたのだ。
 スピネルとアクアが精霊の指示通り動いてくれた事がわかると、ジルコンに結界を解いても大丈夫である事を伝えたのだ。
 予想通り、心の優しい森の主はパラシスの結界を解いてほしいと申し出てきたのだ。
 
 
             ○

             ○

             ○

 パラシスは結界から出してもらうと、今までブラック達二人を拘束していた部屋につながるドアを作り出したのだ。
 森の主はパラシスの隣に行き、そのドアを開けて中を確認したのだ。
 するとその中を見て、森の主は愕然としたのだ。

 そこには二人が横たわっていたのだが、私の目には二人が息絶えているように見えたのだ。
 そして、その状況を魔人達になんと説明すれば良いか、思いつかなかったのだ。
 パラシスをここまでにさせてしまったのは、やはり私の責任であるのだ。
 
「パラシスこれは・・・
 あの時、それ以上はダメだと言ったでは無いか・・・」

「あははは・・・。
 愉快だ。
 その顔・・・それが見たかったのだ。
 早く邪なエネルギーを作り出すのだ。
 お前が私を止めれなかった事で、二人は生き絶えたぞ。
 結界から出た後すぐに、二人の弱々しいエネルギーを全て吸収させてもらったぞ。
 私が作った空間の中では、支配者である私はなんでも出来る事は知っているだろう。
 残念な事に、あの二人は自然から生まれし者の加護下になかったからな。
 全てはお前のせいだ。
 お前が私のする事を容認していたせいだぞ。
 さあ、邪なエネルギーを吸い取ってやるぞ。
 今までもそうしてきたように・・・」

 そう言ってパラシスは笑い出したのだ。
 しかし、今の私は怒りが込み上げたのではなく、こんな事をしてしまったパラシスを可哀想に思うだけだった。
 それも、あの娘の作る薬のおかげなのかもしれない。
 そして、私はそっとパラシスを抱きしめたのだ。
 今まで邪なエネルギーを吸い取ってもらうときには、パラシスが私を抱きしめてくれたのだが、同じように今度は私が抱きしめたのだ。

「ああ、そうだね。
 全ては私のせいなのだよ。
 エネルギーを吸い取るならそれでもかまわない。
 だが悪いが、今の私の中には黒いものは作られてはいないのだよ。
 残念だが、あのエネルギーを渡す事はできないのだよ。」

 そう言うと、パラシスは悔しそうな顔をしたが、すぐにパラシスは不思議な感覚になったのだ。
 今は邪なエネルギーが無いにも関わらず、なぜかとても温かな安らぎをもたらす物が入り込んできたのだ。
 そして、パラシスが思ってもいなかった感覚を味わっていた時に、私は意を決してパラシスを消滅させるべく力を使い出したのだ。

 今の弱った力では、パラシスを消滅させると言う事は、自分も同じように消滅に向かうと言う事だとわかっているのだ。
 自分がいなくなった後の森の事が気がかりではあったが、このままパラシスを野放しにする事はできないと思ったのだ。
 パラシスを消滅させる事が、私の最後の役目と思っていたのだ。
 私の力がパラシスの消滅へと使われていくと、だんだんとこの空間が歪んできたのだ。
 そして、この城の外の景色が崩壊していくのが見えたのだ。
 いずれ、この城も消滅してあの暗い森のみとなるだろう。
 待っていた村人達はもう現れることもないのだから、この空間を残しておく必要はないのだ。
 この森が一度消滅することで、きっと新たな森が出来るはず。
 私の黒いエネルギーで澱んだ森ではなく、キラキラした若く生命力溢れる森がきっと生まれてくることだろう。
 その為にも、私達は滅びる事が正解なのだろう。
 そう思い、私は更に自分の残されたエネルギーをパラシスの消滅に使ったのだ。

 その時、それを見ていた者が叫んだのだ。

「もうやめて!
 大丈夫、捕らえられていた二人はちゃんと生きているわ。
 それに、あなたが消えてしまったら、この森の生き物達はどうなるの?
 森を管理する者がいなければ、きっと上の世界に現れ、いずれは駆逐されてしまうわ。
 それに、黒翼国ではまた病も蔓延するかもしれない。
 それでは、誰も幸せにはなれないのよ。」

 そう言って、舞は森の主とパラシスのもとに歩き出したのだ。

 

 

 
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