薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤

文字の大きさ
165 / 181
第5章 闇の遺跡編

165話 ブラックの誓い

しおりを挟む
 舞の前にブラックが現れる少し前の事である。

 ブラックが目を覚ました時には、周りに見慣れた顔があったのだ。

 意識を失ってからどのくらい経ったのだろう。
 横を見ると、ブロムはまだ横たわっており、意識がなかった。
 エネルギーを吸い取られ弱ってはいたが、徐々に回復する気配はあったのだ。
 魔人ほどでは無いが、黒翼人も自己回復能力を持っているので、いずれは問題なく目覚めることだろう。
 私自身も少しだけ回復をしてはいるが、以前の力には程遠かったのだ。

「ブラック、目が覚めたのだな。
 我らが助けに来たからには、もう心配ないぞ。」

 アクアはそう言って得意げな顔をしたのだ。

「ブラック、良かった。
 ちゃんと精霊を連れてきたよ。
 それにジルコンと・・・舞も来てるよ。」

 スピネルはそう言って、心配そうに顔を覗き込んできたのだ。
 私は舞が来ていると聞いて、動揺したのだ。
 ジルコンや精霊がいるとは言え、ここは危険な事が多い場所なのだ。
 それに、あの白の存在の空間に拘束されたせいで、舞の指輪に私の力が届かなかったはずなのだ。
 今も魔力がほとんど戻ってない事を考えると、舞を守る術が今の自分にはきっとないのだと思う。
 そんな状態で舞がこの場にいる事が心配でならなかった。

「スピネル、ここでブロム殿を見ててくれるか?
 私はみんなの所に行かなくては。」
 
「ブラック、みんなじゃ無くて舞のところに行きたいのだろう?
 いいけど、まだ力が復活していないのだから、気をつけないと。」

 スピネルは笑いながら承諾してくれたのだ。
 私はアクアと共にみんなの気配を探った。
 先程行った中庭の奥の方にある広間に、みんなの気配を感じる事が出来た。
 だが、そこには森の主と白の存在の気配もあったのだ。
 精霊やジルコンが来ている事はわかってはいたが、なぜか不安は消えなかったのだ。
 瞬時にその部屋の入口までアクアと一緒に移動したのだ。
 そして慎重にその部屋を覗いたのだ。

 そこには久しぶりに見る舞がいたのだ。
 以前と変わらず、綺麗な長い黒髪と力強い黒い瞳が輝いて見えたのだ。
 ずっと会いたかった人が目の前にいることに、こんな状況ではあるが、心が躍るような気持ちになったのだ。
 しかし、舞は森の主と白の存在に向かって歩いていたのだ。
 何を話しているかまではわからなかったが、緊迫した雰囲気がこっちにも伝わってきたのだ。

 その時、白の存在が左手をあげたのだ。
 私がエネルギーを吸い取られた時と同じ状況になると、すぐにわかった。
 人間の舞がエネルギーを吸い取られると言う事は、死を意味するのだ。
 そんな事は絶対にさせるわけにはいかない。
 私は瞬時に舞の前に移動し、白の存在の前に立ち塞がったのだ。
 そして私は一言だけ舞に言葉をかけた後に、倒れてしまったのだ。

 まだ魔力が回復していなかったため、結界も作る事が出来なかった。
 薄れていく意識の中、魔人の王たる者がなんて情けない姿だと思った。
 しかし、私は王である前に舞を守る盾でありたいと思ったのだ。
 舞はすぐに感情で動き、いつも自分では無く誰かの為に危ないことばかりする。
 そして、いつも私に心配ばかりさせるのだ。
 だが舞の近くにいると、それまで暗闇にいた自分が、いつの間にか色鮮やかな世界に導かれたような気分にさせられるのだ。
 ・・・私にとっては光なのだ。
 ずっと一緒に居られればと、何度思った事か。
 それが無理な事も良くわかっていたから、それなら私は舞を守る絶対的な盾になる事を誓ったのだ。
 それは、魔力の少ない今でも変わらないのだ。
 だから、命をかけても舞を守りたいのだ。
 
 そうあの時、私は指輪に誓ったのだ。
 まだドラゴンが私の体の中にいた時のあの夜だ。
 舞に契約の指輪の話をした時である。
 対の指輪は契約の指輪ではあるが、指輪を持っている者達を引き寄せる力があると言われている。
 だからペンダントと同じ石を付けて舞を守る事も出来る指輪とし、持っていてもらったのだ。

 そして契約とは違うが、あの時私は舞の手を取り指輪を重ね、舞を守る事を心の中で強く誓ったのだ。
 指輪に何か力があるならば、命をかけて舞を守りぬくので、舞の近くにずっといさせてほしいと願ったのだ。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

モブっと異世界転生

月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。 ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。 目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。 サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。 死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?! しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ! *誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件

やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。

処理中です...