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~高校生編~
第4章 ハブられました
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私の高校では生徒の自主性を尊重し、学校行事の運営は全て生徒に任されています。生徒会を中心に行事は計画され、行事委員会が運営を取り仕切り、他の委員会も各パートで活動します。だから本当に忙しい!
委員会のメンバーには高校三年生もいて、本来なら高三が委員長などに就くのですが、今年はなぜか高二が三役を占めています。
「俺らは影でいいよー!」と先輩達は苦笑いでした。ほとんどの先輩が部活動も兼任し、受験勉強もしながらで、とても精力的です。部活に入っていない私などいくらでもこき使ってください!と逆にお願いしてしまいました。
五月半ばの体育祭に向けて、準備は順調に進みました。入場門と退場門も一週間掛けて出来上がり、とても迫力ある仕上がりになったのです。
「一佳、七海、連絡会に行こう!」
放課後、潤くんが私達を呼びに来ました。今日は他の委員会との連絡会です。本来は薫ちゃんが出る予定なのですが、今日はどうしても家の用事があると言うので私が代理で出ることになったのです。
「私、会計の予算を出してから行くから、先に行ってて。」
「分かった。めんどくせーな。委員長が一人で決めてくりゃいいじゃん。」
「そう言わないで。実際に動くのは副委員長なんだから。」
一佳くんはブツブツ文句を言いながら潤くんと教室を出て行きました。
慌てて会計のプリントを整理していたら、スッと影が差しました。何?と思い顔を上げると、同じクラスの中村さんと小山さんが前に立っていたのです。
「山城さんって、木谷瀬くんとずいぶん親しげなのね?」
「え?委員会で仲良くしてもらっているけど……」
「調子に乗るんじゃないわよ。」
プイと横を向いて、二人は教室を出て行きました。調子に乗る?いったい何のことだろう?
中村さんも小山さんもいわゆる『キレイどころ』で、派手で目立つ人たちです。中村さんは去年行事委員会を受け持ちながら、潤くんが出てこなくなってから委員会活動を放置してしまったそうで、それなのに今でも潤くんにまとわりついているようです。
何となく、嫌な気持ちになりながら、連絡会のある会議室に急ぎました。
次の日、教室を移動しようとして、選択授業が一緒の鈴木さんに声を掛けたら、急に困った顔をされました。
「山城ちゃん、ごめん、私、一緒に行けない……」
「え、なんで?」
「ホント、ごめんね!」
鈴木さんはノートを抱えて教室を飛び出して行きました。私、彼女に嫌がられるようなことをしたかな?悶々としながら、私もノートを持って選択授業のある教室に向かいました。次の時間もやはり今まで一緒に行動していた子に嫌がられてしまいました。
お昼休み、いつものメンバーでお弁当を食べようと席を移動したら、その場にいた子達に同じように困った顔をされました。
「七海ちゃん、ごめん、しばらく別な人とお弁当を食べてくれない?」
「え、なんで?」
「あの人たちに睨まれるとやりにくいから……」
千夏ちゃんやこのみちゃんは口を閉ざしました。ふと向けた視線の先に、中村さんと小山さんが居たのです。二人は冷たい目で私を嗤っていました。
これって、ハブられているのでしょうか?……もしかして、潤くんと仲良くしているからなの?
千夏ちゃん達と食べることは出来ません。窓際の自分の席に座り、お弁当を広げました。悔しいけど、今は嵐が過ぎるのを待つしかありません。中村さん達の気が済んだらまた元のようになれるかもしれない。
「アンタ、一人でメシ食う気?」
ハッとして顔を上げたら、一佳くんがムッとして立っていました。
「う、うん、今日は一人……」
「ふん、薫の言った通りだな。」
一佳くんはいきなり私のお弁当箱の蓋を閉め、そしてバンダナにしまい込んで、あごをしゃくりました。
「行こうぜ。」
「え、え?」
「メシなら俺……や、薫や潤と食おう。」
私のお弁当箱を持って、スタスタと教室を出て行こうとします。
「待って、ちょっと!」
「なんか、文句ある?」
「……文句は無いです!」
焦りました。また、中村さん達が怖い顔で私を睨んでいるのです。
「おい中村、くだらねーことするんじゃねーぞ!」
一佳くんったら!いきなり、中村さん達に向かってそう凄んだのです。
「なによ、私が何をしたって言うの!?」
「分かっているんだ、おめーが同じクラスの女子に七海をハブるように言いふらしてるって!」
「どこにそんな証拠があるのよ!」
中村さんも負けていません。一佳くんも後には引かず睨み返します。
「やめて、いち……ふじわ……わああああっ!」
私は慌てて一佳くんの背中を握りしめました。これ以上揉めたらどうなることか……
「……ったく、こんなことだと思った。一佳が関わると余計にこじれるだろう?」
気がつくと、薫ちゃんが一佳くんのそばに立っていました。
「は、何?俺はただ……」
「慌てて出て行ったから、心配して来てみたら……お前は昔から変わらないな。」
潤くんもあとから来て、クスクスと笑っています。
「どういうつもりか知らないが、七海は私らの友達だ。泣かせるような真似をするなら、私らが黙っちゃいないが?」
薫ちゃんがドスの聞いた声で中村さん達を脅しました。普段のおっとりした彼女から想像できません。
「まあ、当分忙しくて、昼休みに弁当食ってるヒマも無くなるんだけどね。七海、俺らと行こうぜ。」
潤くんも私を慰めるみたいにポンと頭を撫でてくれました。
「つか、影でコソコソつまんねーことするなら、俺も黙っちゃいないから。」
潤くん、にこやかにそう言い放つけど、いつもと違って笑顔が怖いです!教室に残っていた子達が全員ブルッと震えあがりました。
やっぱり、この三人はタダモノじゃありません……
その日から、教室の移動は元通り友達が一緒に行ってくれるようになりました。そして、私は行事委員会の控室である第二準備室でお弁当を食べました。一佳くんや潤くん、薫ちゃん、他の委員も一緒です。て言うか、忙しくてゆっくり食べる余裕は無くなったのですが……
「どう、その後、クラスの中で?」
薫ちゃんがそっと尋ねました。
「うん、今までどおりになったよ。良かったけど、なんだか上辺だけの付き合いって寂しいね……」
「いいじゃん、クラスの中で誰かと一緒にいたいなら、俺がいてやるし。」
「え、え?」
意外な一佳くんの言葉に私は呆然として思わずうろたえてしまいました。
「ダメだよ、一佳が関わるとロクなことにならないだろ?」
可笑しそうに潤くんがからかいます。
「そうだ、何か困ったことがあれば、私や潤を頼ればよい。」
「うん、ありがとう、薫ちゃん、潤くん。」
「つか、俺も頼れよ。」
「ありがとう、一佳くん。」
ムッとして一佳くんが私を睨みました。一佳くんと一緒にいるとワル目立ちしそうですが……一佳くんが私を心配してくれる気持ちはなんだかとても嬉しかったのですよ!
委員会のメンバーには高校三年生もいて、本来なら高三が委員長などに就くのですが、今年はなぜか高二が三役を占めています。
「俺らは影でいいよー!」と先輩達は苦笑いでした。ほとんどの先輩が部活動も兼任し、受験勉強もしながらで、とても精力的です。部活に入っていない私などいくらでもこき使ってください!と逆にお願いしてしまいました。
五月半ばの体育祭に向けて、準備は順調に進みました。入場門と退場門も一週間掛けて出来上がり、とても迫力ある仕上がりになったのです。
「一佳、七海、連絡会に行こう!」
放課後、潤くんが私達を呼びに来ました。今日は他の委員会との連絡会です。本来は薫ちゃんが出る予定なのですが、今日はどうしても家の用事があると言うので私が代理で出ることになったのです。
「私、会計の予算を出してから行くから、先に行ってて。」
「分かった。めんどくせーな。委員長が一人で決めてくりゃいいじゃん。」
「そう言わないで。実際に動くのは副委員長なんだから。」
一佳くんはブツブツ文句を言いながら潤くんと教室を出て行きました。
慌てて会計のプリントを整理していたら、スッと影が差しました。何?と思い顔を上げると、同じクラスの中村さんと小山さんが前に立っていたのです。
「山城さんって、木谷瀬くんとずいぶん親しげなのね?」
「え?委員会で仲良くしてもらっているけど……」
「調子に乗るんじゃないわよ。」
プイと横を向いて、二人は教室を出て行きました。調子に乗る?いったい何のことだろう?
中村さんも小山さんもいわゆる『キレイどころ』で、派手で目立つ人たちです。中村さんは去年行事委員会を受け持ちながら、潤くんが出てこなくなってから委員会活動を放置してしまったそうで、それなのに今でも潤くんにまとわりついているようです。
何となく、嫌な気持ちになりながら、連絡会のある会議室に急ぎました。
次の日、教室を移動しようとして、選択授業が一緒の鈴木さんに声を掛けたら、急に困った顔をされました。
「山城ちゃん、ごめん、私、一緒に行けない……」
「え、なんで?」
「ホント、ごめんね!」
鈴木さんはノートを抱えて教室を飛び出して行きました。私、彼女に嫌がられるようなことをしたかな?悶々としながら、私もノートを持って選択授業のある教室に向かいました。次の時間もやはり今まで一緒に行動していた子に嫌がられてしまいました。
お昼休み、いつものメンバーでお弁当を食べようと席を移動したら、その場にいた子達に同じように困った顔をされました。
「七海ちゃん、ごめん、しばらく別な人とお弁当を食べてくれない?」
「え、なんで?」
「あの人たちに睨まれるとやりにくいから……」
千夏ちゃんやこのみちゃんは口を閉ざしました。ふと向けた視線の先に、中村さんと小山さんが居たのです。二人は冷たい目で私を嗤っていました。
これって、ハブられているのでしょうか?……もしかして、潤くんと仲良くしているからなの?
千夏ちゃん達と食べることは出来ません。窓際の自分の席に座り、お弁当を広げました。悔しいけど、今は嵐が過ぎるのを待つしかありません。中村さん達の気が済んだらまた元のようになれるかもしれない。
「アンタ、一人でメシ食う気?」
ハッとして顔を上げたら、一佳くんがムッとして立っていました。
「う、うん、今日は一人……」
「ふん、薫の言った通りだな。」
一佳くんはいきなり私のお弁当箱の蓋を閉め、そしてバンダナにしまい込んで、あごをしゃくりました。
「行こうぜ。」
「え、え?」
「メシなら俺……や、薫や潤と食おう。」
私のお弁当箱を持って、スタスタと教室を出て行こうとします。
「待って、ちょっと!」
「なんか、文句ある?」
「……文句は無いです!」
焦りました。また、中村さん達が怖い顔で私を睨んでいるのです。
「おい中村、くだらねーことするんじゃねーぞ!」
一佳くんったら!いきなり、中村さん達に向かってそう凄んだのです。
「なによ、私が何をしたって言うの!?」
「分かっているんだ、おめーが同じクラスの女子に七海をハブるように言いふらしてるって!」
「どこにそんな証拠があるのよ!」
中村さんも負けていません。一佳くんも後には引かず睨み返します。
「やめて、いち……ふじわ……わああああっ!」
私は慌てて一佳くんの背中を握りしめました。これ以上揉めたらどうなることか……
「……ったく、こんなことだと思った。一佳が関わると余計にこじれるだろう?」
気がつくと、薫ちゃんが一佳くんのそばに立っていました。
「は、何?俺はただ……」
「慌てて出て行ったから、心配して来てみたら……お前は昔から変わらないな。」
潤くんもあとから来て、クスクスと笑っています。
「どういうつもりか知らないが、七海は私らの友達だ。泣かせるような真似をするなら、私らが黙っちゃいないが?」
薫ちゃんがドスの聞いた声で中村さん達を脅しました。普段のおっとりした彼女から想像できません。
「まあ、当分忙しくて、昼休みに弁当食ってるヒマも無くなるんだけどね。七海、俺らと行こうぜ。」
潤くんも私を慰めるみたいにポンと頭を撫でてくれました。
「つか、影でコソコソつまんねーことするなら、俺も黙っちゃいないから。」
潤くん、にこやかにそう言い放つけど、いつもと違って笑顔が怖いです!教室に残っていた子達が全員ブルッと震えあがりました。
やっぱり、この三人はタダモノじゃありません……
その日から、教室の移動は元通り友達が一緒に行ってくれるようになりました。そして、私は行事委員会の控室である第二準備室でお弁当を食べました。一佳くんや潤くん、薫ちゃん、他の委員も一緒です。て言うか、忙しくてゆっくり食べる余裕は無くなったのですが……
「どう、その後、クラスの中で?」
薫ちゃんがそっと尋ねました。
「うん、今までどおりになったよ。良かったけど、なんだか上辺だけの付き合いって寂しいね……」
「いいじゃん、クラスの中で誰かと一緒にいたいなら、俺がいてやるし。」
「え、え?」
意外な一佳くんの言葉に私は呆然として思わずうろたえてしまいました。
「ダメだよ、一佳が関わるとロクなことにならないだろ?」
可笑しそうに潤くんがからかいます。
「そうだ、何か困ったことがあれば、私や潤を頼ればよい。」
「うん、ありがとう、薫ちゃん、潤くん。」
「つか、俺も頼れよ。」
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