雷のサンダー ある銀級魔法使いの冒険

珈琲党

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08 お仕置きをする

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 冒険者ギルドに戻ると、例の連中が目をむいて驚いていた。なるほど、鍵を閉めていった犯人はコイツらか。まったく、どうしようもないな。


 受付カウンターに駆除の報告をする。

「洞窟大ムカデの駆除が終わった。
 触角はここに出していいのか?」

「はい、数を数えますので」

 俺はカバンからバサバサと触角を取り出す。
 カウンターの上に触角の山が出来た。

「50対あるはずだ。
 まだ奥の方にいたようだが、これだけ駆除すれば当分は大丈夫だろ」

「は、はい……」

 他の職員もやってきて、忙しく数え始める。数だけではなく、真贋しんがんも確かめているようだ。さすがに偽物なんて作る方がよっぽど手間だと思うがな。なんにしてもギルドの職員は生真面目なのが多い。

「確かに50対あります。ですので報酬は25万ジェニーですね
 触角は素材としてこちらで買い取りもできますが……」

「ああ、頼む」

「完品の触角が一本100ジェニー。
 100本ありますので、しめて1万ジェニーでよろしいでしょうか?」

「それで構わないよ」

「では、駆除報酬と合わせて26万ジェニーですね」

 カウンターに硬貨が積まれた。印刷技術が遅れているのか、製紙技術が未発達なのか、この世界には紙幣は普及していない。

「確かに」

「またよろしくお願いします」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ギルドを出て、カーシャに今日の報酬を渡す。

「5万ジェニーってとこでどうだ?」

 カーシャは金貨を手にしてオタオタしている。

「えぇ⁉ 約束では1万ジェニーでは……」

「今日は大儲けできたからな。追加ボーナスだよ」

「あ、ありがとうございます!」

 カーシャは金貨を胸に抱えて大喜びだ。

「それで、私もサンダーさんの泊っている宿に移りたいのですが……」

「ああ、そうだな、その方が何かと都合が良いだろう。
 引越しを手伝おうか?」

「いえ、このままで大丈夫です。荷物はありませんので」

「えぇ⁉ ずいぶんと身軽なんだな」

 カーシャも俺と同じで、小さな肩掛けカバン一つだけだ。まさかマジックポケットは持ってないと思うが。どうなのだろう。


 大通りから路地に入ったところで、ふと視線を感じて後ろを振り返ると、例の連中が付いて来ているのが分かった。あの目つきの悪い男と、同じくらいの年の男が二人。カーシャも後ろの三人に気が付いて、表情が固くなった。

「なぁ、カーシャはあの連中と親しいんだろ?」

「実は――」

 カーシャが言うには、あの三人とは同郷らしい。
 田舎から出てきた当初は、彼らも真面目にやっていたという。後からこの町にやって来たカーシャもそれなりに面倒を見てもらっていた。
 しかし彼らはしだいに仕事をえりごのみするようになる。あるとき、分不相応な難易度の高い依頼を引き受けてしまい、案の定失敗した。

 その挽回をしようと、次も難易度の高い依頼に手を出す。そしてまた失敗。その次も難易度の高い依頼を受けようとしたところで、ギルドから待ったがかかった。コイツは何回も失敗してるから、この依頼は受けさせられないというわけだ。

 しばらくは雑用レベルの依頼しかまわせないと言い渡されて、腐ってしまったのだという。それからは酒を飲んでは新顔をいびるという、しょうもない日々を送っているのだとか。

 カーシャはなるべく関わらないように距離を置いたが、連中は何のかんのと絡んでくる。仕事まで妨害してくる。挙句に金までせびられるようになり、ほとほと困っていたのだとか。拠点を移そうにも、カーシャの収入では旅費をねん出するどころか、宿代にも困るようになり、ここ最近はギルドに併設されている馬小屋で夜を明かしていたのだという。



「カーシャ、お前はあの連中にまだ恩義を感じているのか?」

「いいえ」

 カーシャはきっぱりと首を横に振った。

「じゃあ、今すぐ火球の魔法で消し炭にしても構わないよな?」

 俺はあえて下種い顔をして見せる。

「えぇ⁉ そ、それは……」

「きれいさっぱりこの世から消えてもらうのが楽だし確実だと思うがな。
 ここで追い払っても、後でしつこく付きまとってくるかもしれないぞ」

「確かにそうですが、もう少し穏便に……」

「しかしなぁ、あいつらが生きている限り金を吸われ続けるだけだぞ。
 元の宿無し生活に戻りたいのか?」

「いえ、戻りたくはないです」

「じゃあ、とりあえず連中と話してみて、それでもダメなら相応のことをしよう」

「わかりました」


 俺は歩くのをやめて、パッと振り返った。
 三人はギョッとして一瞬のけぞるが、それでも俺をにらみつけてくる。
 カーシャは俺の背にしがみついて下を向いて固まってしまった。

「下水道のあれはお前らの仕業だよな?」

 入口を施錠して俺たちを閉じ込めようとしたのは、間違いなくコイツらだ。

「それがどうしたんだよ、オッサン」

 あの目つきの悪い男がニタニタと口をゆがめて笑う。

「いや、別にどうもしない。全く意味のないくだらない嫌がらせだからな。
 ずいぶんとご苦労なことだと思っただけだよ。お前ら暇なのか?」

「ケッ」

 三人は地面につばを吐いて、腰の短剣を抜いた。


「カーシャ。悪いが、これは無理だな。相応のことをするぞ」

「……はい」

「何ごちゃごちゃ言ってる!」
「痛い思いをしたくなかったら、さっさと有り金全部よこせ!」
「カーシャ! お前はこっちに来い」

「嫌よ!」

 カーシャは顔をそむける。

 三人がダッと近づいてこうとした瞬間、

 ドドドッ

 連中のみぞおち目がけて、一発ずつ衝撃の魔法をお見舞いしてやった。地味だが俺が編み出した必殺の技、マシンガンブローだ。近距離ならまず外さないし、発動も瞬時だ。一応死なない程度に手加減してやったが、昨日の晩よりはキツ目にしておいた。今回は強盗未遂だからな。
 三人はしばらく無言で泡を吹きながら苦しんでいたが、そのうち白目をむいてパタパタと仰向けに倒れていく。

 本当は息の根を止めておくべきなんだろうが、こんなしょうもない連中のために手を汚すのは嫌だ。
 でも次はない。次絡んできたらあの世に旅立ってもらおう。

「いくぞ」

 カーシャは三人を見て一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに吹っ切れたのか、むしろ晴れ晴れとした明るい顔になって言った。

「はい、サンダーさん、行きましょう」




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