雷のサンダー ある銀級魔法使いの冒険

珈琲党

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29 改造人間

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 依頼を受けて三日目、アマンダとケイトが街中に潜伏している改造人間を見つけたという。さすが暗殺組織にいただけのことはあって、仕事が早い。


「それで、その改造人間ってどんな奴だ? 姿を見たんだろ?」

「ああ、見た。
 そうだなぁ……。虫っぽい感じだったかな」

「そう。
 全身が硬そうな殻に覆われていて、鎧を着てるみたいにゴツゴツした感じ。
 それで頭にはデカい目があって、触角もあったよね」

 彼女たちの説明によると、どうやらショッ〇ーの改造人間と同じようなものらしい。おおざっぱな外観は人型だが、細かなディティールが虫という奴だな。蜘蛛人間とかカマキリ人間とか、そういうのが頭に浮かんだ。
 俺たちが追っている改造人間は、羽根が生えていて空も飛ぶらしい。

「他には?」

「う~ん。あごにかなり鋭い牙が生えてる。毒をもってるかもね」

「なるほどなぁ。
 それで、奴はどこにいるんだ?」

「夜はあちこち飛び回ってるけど、朝になると下水道の中へ帰っていくよ」

「いつも同じ場所なのか?」

「そう。柵の鍵が壊れてるところがあって、そこから出入りしてる」

「組織の手の者は動いているのか?」

「何人も送り込まれてるけど、誰も帰ってこないみたい」

「よし分かった。明日の朝、現地に行ってみよう。
 上手くすれば、それでケリがつくと思う」

「魔法で下水道ごと吹っ飛ばすのか」

 アマンダがちょっとうれしそうな顔をする。肉体派のくせに派手な魔法が好きなのかもしれない。

「いや、それだと内密にっていう契約に反するだろうが。
 それに、派手な割には確実じゃないしな」

「だったらどうするんだよ?」

「内緒」

「おい!」

「まぁ待て。現地に行ったら説明するから。
 ここだと人の目と耳が多すぎるからな」

「うっ。そうだな」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌朝。
 俺たちはアマンダの案内で現地までやって来た。

「あそこだ」

 下水道の入口は川に面していて、鉄の柵で塞がれている。

「ケイト、奴はもう帰ってるのか?」

 ケイトは一足先に現地に入って、下水道の入口を見張っていた。

「うん、ちょっと前にあそこから入って行ったよ」

「もう出てこないかな」

「一度入ったら夜までは出てこないよ」

「よし。じゃあやってみるか」

 俺たちは入口の柵の前までやって来た。

「ああ、確かに鍵が壊れてるな。
 とりあえず周囲を警戒していてくれ」


 空気の流れは入口から奥へ流れている。害虫退治には絶好のコンディションだ。
 俺は杖を取り出すと、体の前に構えてしばし精神を統一する。そしておもむろに目をカッと見開いて、杖の頭を入口の方へ向けた。

 シューッというタイヤの空気が抜けるような音と供に、細かい霧が下水道の中へと流れ込んでいく。

「なんだそれは?」

 アマンダが拍子抜けしたような顔で聞く。

「殺虫剤の魔法だ」

「殺虫剤だと?」

「人畜無害で虫だけに良く効く毒みたいなものだ」

「相手は改造人間だぞ」

「でも半分くらいは虫だろ? だから半分くらいは効くんじゃないかな」

 話をしながらも殺虫剤を流し続ける。魔法を発動している限りは、殺虫剤はほぼ無限に湧き出してくるのだ。次々と下水道の奥へ流れ込んでいく。

 一時間ほどすると、下水道の奥の方が何やら騒がしくなってきた。

「出てくるよ!」

 ケイトが俺たちに注意を促す。

「少し下がるか」

 俺たちは最初にいた場所まで下がって様子をうかがう。

「ぐえぇぇぇ……、な、何だこれは⁉」

 異形の魔物が苦しそうに叫びながら、ヨロヨロと這い出してきた。
 確かに虫っぽい見た目をしている。コイツが改造人間で間違いなさそうだ。その改造人間は四肢を不自然な方向へ曲げてもがいている。
 思った以上に殺虫剤が効いたらしい。

「これならいけそうだな」

「おぅ!」「よっしゃー!」

 アマンダとケイトがほぼ同時に駆け出して、改造人間に迫る。
 それに気づいた改造人間は、口から何かを発射した。どうやら毒牙を飛ばしたようだ。アマンダはそれを刀で華麗に弾く。
 ケイトがアマンダの体の陰からパッと飛び出すと、一気に距離を詰めて手刀で一閃した。
 一瞬の後、改造人間の首がポロリと落ちた。

「やったな!」

「うぅぅ……」

 なぜかメルキアが不満気にうめき、ガックリと肩を落とした。

「全然出番なかった。魔法撃ちたかったのにぃ」

 新しく手に入れた杖の威力を試したかったらしい。

「まぁ、そういう時もあるさ」

 アマンダが改造人間の首を片手にぶら下げて戻ってきた。
 それは、もはや人間の首とは似ても似つかないものだった。

「うわぁ、普通にデカい虫って感じだな」

 俺は手渡された首をマジックポケットにしまった。

「よし! これで任務達成だ。とっとと帰るか」

「……」

 アマンダが何かすっきりしない様子だ。

「どうした? 中が気になるのか?」

「ああ、軽く確認だけしておきたいんだ」

「そうだなぁ……。気は進まんが、入ってみるか。
 カーシャ、灯りの魔法を頼む」

「はい」

 カーシャがワンドを振ると、彼女を中心に辺りがぼぉっと明るく照らされた。

 皆で下水道に入る。
 ここも以前にムカデ退治に入ったところと同じく、真ん中に広い水路があり両脇に点検用の通路がある。俺たちはケイトを先頭に、通路を慎重に進んだ。

 しばらく奥へ進むと、改造人間の住処と思われる場所が見つかった。
 そこには原形をとどめていない人間の死体の山が出来ていた。

「ひぇっ!」「うぷっ」「うげぇぇ……」

 その惨状にカーシャだけじゃなく、メルキアやアマンダまでもがダメージを受けた様子だった。

「あ! これって……」

 ケイトが何かをつまみあげた。それは冒険者プレートだった。

「同業者もやられていたのかよ」

 冒険者プレートは一つだけではなく、いくつも現場から見つかった。とりあえず、ざっと探して見つかった分だけ回収することにした。

「被害者多数ってことだな。
 もう確認はいいだろう。引き返すぞ」

 さすがに誰も反対しなかった。





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