不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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10 飛竜来襲

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 俺はドワーフの鉱山にちょくちょく顔を出すようになっていた。
 もともと車いじりとかDIYとかちょっとした工作なんかが好きだった。
 それもあってか、彼らの鍛冶仕事を見ていると楽しいのだ。

「なるほど、リーフスプリングを使っていしゆみを作ってるのか」

 彼らは自動車をパーツを巧みに利用して色々なものを作る。
 今回はクロスボウをホビットたちの注文で作っているのだ。

「うむ、この素材は実に良い。しなやかで粘りがある」

「しかしこれは連中に扱えるのかな。
 弦を引くのにすごい力がいるだろ?」

「大丈夫じゃ。
 このフックに弦を引掛けて、このハンドルを回せば軽い力で引ける」

「なるほどなぁ。
 けど、こんなのを使う場面ってあるのかな。
 この大きさだと、狩には使えないだろうし」

 ホビットたちは普段はもっと軽い手製の弓を使っていて、それで鹿やウサギなどを狩っている。缶詰やレトルト食品などはまだまだあるが、やはり新鮮な食材の方がホビットたちの好みに合っているようで、畑で作物を作ったり獣を狩ったりあれこれやっているのだ。
 ちなみに、妖魔のあふれたこの世界でも、鹿やウサギやカラスなどは健在で、むしろ人類が栄えていた頃よりも数が増えた。
 

「奴らが言うには、ここ最近、大型の空飛ぶ妖魔を良く見かけるんじゃと」

「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな。
 この弩でその妖魔を追い払おうってことかな?」

 ホビットたちはあまり戦闘向きの体格じゃないが、彼らなりに役に立とうとしているのだろう。無理はしないで欲しいが、その気持ちはうれしい。

「らしいの。
 こいつをお前さんの館の屋上に設置して使うんじゃと」

 弩を固定するための台まで用意されている。展望台にある望遠鏡の台座のようなもので、弩の向きが自在に変えられるようになっている。

「なるほど、考えたなぁ」

「まぁ、砦なんかにゃ普通にある武装じゃよ。
 注文は、こいつが四つと、金属の矢が千本。
 矢はこの筒を使えばすぐ作れる」

 彼はホームセンター跡で見つけた五ミリくらいの径のアルミのパイプを指さす。それに鉄の矢じりを付けて、カラスの羽を矢羽にしている。


「このついでに、俺にも何か作ってくれよ」

「ふん、そうじゃのぉ……」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「「「領主様、準備ができました!」」」

 庁舎の屋上。
 屋上の四隅には一基ずつ台座付きの弩が設置されている。
 あらかじめ割り振られた場所にホビットたちが緊張した面持ちで整列している。

「よし!
 弦を引いて、矢を装填しろ」

 ホビットたちは弩の弦をフックにかけて、ハンドルを回す。
 カリカリと弦が引っ張られていっぱいまでくるとカチリといって固定された。
 所定位置に矢が装填される。

「「「装填完了です!」」」

「よし!
 構えっ…………。撃てっ!」

 ビュンと音を立てて、それぞれの弩からそれぞれの方向へ矢が発射された。

「ふん、悪くないな。よし、交代!」

 全てのホビットたちが弩を扱えるように順番に訓練が続けられた。
 もともと狩などをしていたせいか、彼らはなかなか筋が良かった。
 あっという間に矢を撃ち尽くしてしまう。

「あとで矢の回収をするのがたいへんだな……」

 俺たちが弩の運用方法や改善点などを話し合っていると、ポチが屋上に上がってきてガゥガゥと何かを訴える。下にいる魔狼たちもなにやら騒がしい。

 ポチの吠える方を見ると、小さい点が遠くの空から近づいて来るのが分かった。

「何だあれ?」

「領主様!」

 目の良いホビットがその点の正体に気づいて、叫び声を上げた。

「ワイバーンです!」

「なにぃ!!
 ワイバーンとか神話の世界の生き物だろうが!」

 小さい点に見えていたものが、あっという間に大きくなり、それは確かにワイバーンの形になった。首の長いトカゲのような胴体に大きな翼。ドラゴンの一種らしく、飛竜とも言われるモンスターだ。
 ワイバーンは俺たちの姿を確認すると、さらに速度を上げた。

「うわっ!
 お前ら、早く逃げろ!」

「「「キャァァァ!!」」」

 俺たちは庁舎内に降りようと塔屋に向かった。
 しかし、ワイバーンは俺たちよりもずっと速かった。庁舎の屋上をすれすれに通過しつつ、塔屋の上に設置されていた高架水槽を尻尾でひっかけて吹っ飛ばした。

 バアァァン!!

 辺り一帯にコンクリートの破片などが飛び散り、その衝撃でホビットたちは床に投げ出された。さすがのポチも耳を伏せて床にしゃがみこんでしまった。

「くっそぉ……。無茶苦茶しやがって!」

 映画なんかで描かれているドラゴンのたぐいって、高い知性をもっていたり友好的だったり、なんとなく良いイメージがあったが、こいつはどうも違うらしい。ただの狂暴なモンスターだ。それも邪悪な意志を持った。

 庁舎の上空を通り過ぎたワイバーンはしばらく真っすぐ飛行すると、くるりと方向を変えてまた俺たちを狙う。


「よし、お前がそのつもりなら、俺も全力で行くぞ!」

 俺はドワーフに作ってもらった投げやりを構える。
 ただの単管パイプに見えるが、よく観察すると、先端の円周部分には鋼で作られたギザギザの刃が固定されいる。そして側面には小さな穴が無数に開けられていて、その穴はおろし金の形になっており、かえしの役割もする。対象に突き刺さると、大穴を開けた上で大出血を強いる、なかなか悪辣な仕掛けなのだ。
 しかし、こんなものは重すぎて普通の人間には扱えないだろう。

「名付けて、ヤツメウナギ。
 お前さんの怪力なら問題なく投げられるじゃろ。
 首尾よく命中させられれば、ドラゴンをも倒せるはずじゃ」

 作ったドワーフはそう言っていたが、それは本当なのか冗談だったのか。

 ワイバーンは空中で羽ばたきながら、屋上に立っている俺を真っすぐに見据えて、顔を少し歪める。笑ったのか? なんとなくそう感じた。
 ワイバーンの口の端がぼぅっと光り、それから大きく口を開けた。
 マズい! これはたぶんブレスというやつだ!

 俺は意を決して、手に持った投げやりを全力で投げつけてやった。

「おりゃぁぁぁぁぁぁっ!」
 
 ゴォン! という衝撃波を残し、投げやりが真っすぐに飛んだ。
 一瞬の後、口から単管パイプを生やしたワイバーンが、庁舎の正面駐車場に落ちていった。

 どぉぉん! 地面が揺れる。
 下から魔狼たちの元気の良い鳴き声が聞こえてくる。
 ポチも元気を取り戻したようだ。立ち上がって俺のそばにやって来た。

「お前、無事だったか?」

「わふわふわふ」

「「「「領主様!」」」

 ホビットたちは粉塵をかぶって頭から真っ白になっている。

「お前たち怪我はないか?」

「私たちは大したことはありません。
 それよりも領主様はご無事ですか?」

 本気で体を動かしたせいで、シャツの袖が外れ、ズボンも靴もボロボロだ。

「俺は大丈夫。
 ワイバーンは下に落ちたぞ」


 駐車場へ出てみると、魔狼たちが落ちたワイバーンを囲んでいる。
 普段は騒々しいホビットたちも、今は息をひそめて遠巻きに見ている。

 ワイバーンはまだ息はあるようだったが、起き上がってくる気配はない。ノドの奥に刺さった単管パイプの先から、血がトクトクと流れ出している。

「どれどれ……」

 流れ出る血潮を見ると、どうしても気持ちがたかぶる。こればかりはバンパイアの本能なのか、抑えることができない。
 俺は単管パイプの先に口を付け、流れ出てくる血をのどを鳴らして飲んだ。

「ングングング……。ぷはぁ」

 その瞬間、体の奥から活力が湧き上がり、体が一回りも二回りも大きくなったような感覚があった。頭の奥ではファンファーレが鳴り響き、あらゆる感覚が冴えわたり、めくるめく快感が体を駆け巡った。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
 ふぅぅぅぅぅ……。
 何がなんだか分からんが、すごいなぁ」

 くらくらする頭を振って、俺はようやく正気に戻った。
 周りで見守っているホビットたちに声をかける。

「おいお前ら、ナイフを持ってきてくれ。
 ワイバーンを解体するぞ」

「「「おぉぉぉぉ!」」」

 ホビットたちが歓声を上げた。
 しばらくは新鮮な肉に困らないだろう。

「わふわふわふわふ」

 おこぼれを期待しているのだろう。
 ポチ達はよだれを垂らしながら、尻尾を全力で振っているのだった。








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