幽霊祓い

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第1章 日本旋廻 恐山決戦 前編

第69話 蛇

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「クククッ、人間にしてはなかなかやるではないか・・・」

「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 くそっ、なんでなんだよ。この改造霊、術まで使用しやがる。誰か助けに来てくれ・・・。こんなの、俺に祓えるわけがない。そう思った時、偶然にも、木陰から5帝・馬渕  那起が現れた。

「ん?お前も祓い師か?よいよい、ここで殺してやろう」

「凪澤に祓い師を殺すためなら改造霊を祓ってもいいという許可をもらっている。だから、邪魔になるお前を祓う、高積こうせき

「凪澤様が!?き、貴様、祓い師では無いのか?」

「馬渕さん、どういうことですかッ?」

「まだ、分からないのか?俺はお前らの敵なんだよ、祓い師。蛇術・暗不噛みじゃじゅつ  くらふがみ

馬渕さんの術によって、2匹の緑色の蛇が現れ、草むらに隠れた。そして、2匹は勢い良く草むらから飛び出て、馬渕さんが高積と呼んだ改造霊に噛み付いた。2匹の蛇に食われる高積を憐れむような目で見ながら、馬渕さんはこちらに近づいてきた。

「いつから皆を裏切っていたんですか?動機は?」

「動機?そんなものは存在しない。ただ、凪澤の方が面白いと感じただけだ」

「馬渕さん、あなたは本当にそれでいいんですかッ?」

「5帝の座など、所詮、肩書きにしか過ぎない。人を守るために存在するGEAは不平等だ。人は救うのに幽霊を救っているか?」

「いや、祓っていますね」

「そうだろ?幽霊は祓われたらそこで終わりだ。どうだ、理不尽だと思わないか?凪澤はそういうことを主張しているんだよ。と、まぁ、そんなことはどうでもいい、次は幽霊が上に立つ番だ」

「そうですか、なら仕方がない。伝達術・伝達紙でんたつじゅつ  でんたつがみ

祓い師には、2種類存在する。術も最初から使える者とそうでない者だ。後者は体内で霊気を作れるようになるブレスレットを付け、簡単に使える伝達術と仏術を習う。そして、霊職部隊れいしょくぶだいと呼ばれるGEAの組織に入る。伝達術とは名の通り、情報を伝達する術である。この術はかなり優秀で、伝達する範囲さえ指定すれば、自動で対象者を認知、伝達内容が書かれた紙が届く。

「こちら、霊職部隊隊長・前田  広まえだ  ひろです。5帝・馬渕  那起がGEAを裏切りました。彼を見つけ次第、死刑対象者とすることを願います。範囲、恐山全体にいる祓い師」

俺がそう言うと紙が色んな方向へ飛んで行った。

「伝達術か、面白いじゃないか。だが、前田、ここで死んでもらうぞ。蛇術・大蛇へびじゅつ  だいじゃ

恐山での戦いが始まって約1時間。GEA特殊部隊霊職部隊隊長・前田  広が死亡。周囲に待機していた霊職部隊の隊員も全員、死亡。
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