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シャーマン
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そうやって結局は妖を退治してしまった瑠偉たちの元にふいに有朋がやってきました。
「父さん、久しぶり。こんなところまで来るなんて一体何の用?」
「お久しぶりです。叔父さん」
瑠偉と悟が驚いているのを夢幻堂の主はいかにも楽し気に眺めると息子たちをねぎらいました。
「やぁ。そのこがクラハかい。さすがは九鬼本家の跡取りだけはあるね。見事に八咫烏を引き当てるとはね」
有名な夢幻堂の主に褒められて悟は嬉し気に照れているが、瑠偉は胡散臭そうな顔をするばかりだ。
なにしろこの流れからひどい目にあったことが多すぎるのだから。
「父さん。仕事ならちゃんと説明してくれよ。何にも知らされないで危険な場所に放り込まれるなんてまっぴらだからな」
「まったく。私の息子は私をいったいどういう目でみているんでしょうね。あぁ、わざわざ説明しなくて結構ですよ。大体想像がつきますからね。今回は夏休みだし沖縄旅行でもプレゼントしようかなぁと思いましてね」
瑠偉は信じられないという顔をしていますし、クラハにいたってあからさまに有朋を避けているので、さすがに素直な悟だって警戒をします。
「それで叔父さん。どんな妖が出たのさ」
「おいおい。悟まで私の好意を疑るのか。参ったね」
そうは言ったくせに有朋は居住まいを正して命じました。
「沖縄本島に住んでいるユタ・ホゾン・トキを訪ねなさい。詳しいことはユタに教えてもらうとしてブナガヤを探して欲しいんだ」
「ブナガヤと言えば焔の妖ですよね。確か一族揃って幽世の移り住んでいるとききましたけれどもね。元々あまり人前に姿を現す妖でもなかった筈ですしね」
「ほほう。悟くんは物知りだな。瑠偉も少しは見習いなさい。これは妖退治という仕事ではないんだ。ブナガヤの一族から捜索願がでている。次代さまが家出をしたとね」
「家出っていったい何があったんですか?」
「二人ともブナガヤは妖の中でも精霊に近い存在だってことは知っているよね。元々は沖縄の自然の中でひっそりと暮らしてきたんだが人族が増えすぎて住処を幽世に移している。ブナガヤの長の息子がどうやら現世に興味をもって出奔したらしい」
「父さん。それってかなり難しいんじゃないかなぁ。ブナガヤは姿を隠すのが得意で現世に住んでいたときでさえ、その姿を見た者はほとんどいないんでしょう? それなのにどうやって探せばいいんです」
「瑠偉。ユタがいるだろう。今代のユタはかなり優秀なシャーマンなんだぞ。ある程度の居場所はわかる筈さ。それにお前たちには聖獣がついているしな。くれぐれも無事に送り返してくれよ」
さすがの有朋もノエルとクラハのコンビは不安らしく、くれぐれもあいつらに食べさせるなよと言いおいて帰ってしまいました。
「やっぱり父さんがくると、ろくなことがない」
「でも沖縄だぜ。せっかくの夏休みだ。さっさとブナガヤを見つけ出して遊ぼうぜ」
瑠偉はうんざりとした顔をしていますし、悟はいやに張り切っています。
そしてノエルは食べられないと聞いて興味を失くしていますし、クラハはユタに興味があるようでした。
瑠偉が夢幻堂の扉の照準をユタ・ホゾン・トキの自宅にあわせたというのに、着いた場所は深い森の中でした。
濃い緑の気配にノエルとクラハはたちまち元気になっていきます。
こうした自然の豊かな場所には自然の霊力が漂っているので、聖獣たちはとても暮らしやすいのです。
「瑠偉。ここなら無理に妖を食べなくてもお腹はすかないよ」
とノエルが言えばクラハも賛成します。
「あぁ。ノエルの言う通りだ。たっぷりとした濃い霊力が身体に流れてくる。ここでは餌は不要だぞ。主どの」
それはいいとして、どこに向かって進めばよいのでしょうか。
早くユタの家を探さないと、こんなところで夜を迎える訳には行きません。
聖獣たちはお腹がすかないかもしれませんが、瑠偉や悟はそういう訳にはいきませんからね。
「瑠偉。本当にここであっているのか? 人の気配なんてしないぞ」
「そのはずなんだよ。悟。だって確かに照準はユタの家にあわせたんだから」
その時聖獣たちが声をあげました。
「瑠偉こっち」
「主どの。ここだ」
聖獣たちが指し示す方向にはまるで精霊のような少女が佇んでいます。
どう考えても人なんぞ住めそうもない森の奥深くで少女に出会うことがそもそもおかしなことです。
けれども妖でない証拠に少女は深々と頭を下げると瑠偉たちの名前を呼んだのでした。
「瑠偉さま。悟さま。ようこそおいでくださいました。今代のユタを務めておりますヒイナと申します。お部屋にご案内しますからどうぞこちらへ」
そういうなり少女はすたすたと近くでこんこんとわいている泉に向かいました。
泉といってもこぽこぽと水がわいているだけで、その水はたちまち近くの川に流れ落ちていきます。
だというのに少女はその泉を指し示して、ここに入れというのです。
「待ってよ。どこに扉があるっていうの。見えないんだけれど」
悟が困惑をした顔で言うと、ヒイナは驚いた顔をしました。
「お二方は夢幻堂と九鬼の後嗣さまだと伺っております。霊力を目に集めてもう一度ごらんください」
己の未熟さを指摘されて瑠偉達はあわてて霊力を目に集めました。
するとどうでしょう。
聖獣たちの言う通りです。
ちょうど泉が湧き出るその上に小さな空間の裂けめがあり、ちらちらと中が見え隠れしています。
悟が霊力を手に集めてその裂け目を開くと、きらきらとした光の粒子が漏れて、瑠偉達一行はその結界の中に入りこむことができました。
「おい。ここは」
「なんてこった。ここは東京じゃないか。なんで沖縄の森が東京の高層マンションの最上階に通じているんだよ」
「あら、だって私は学生なんですもの。学校にいかなきゃいけないでしょ。だから森とここを繋げているの。こう見えて名門女子校の学生なのよ」
瑠偉と悟は開いた口がふさがりません。
ユタと言えば沖縄で有名なシャーマンです。
そのシャーマンが東京の女子校に通っている学生だなんて!
「もしかしたら君たちって頭が固いのかな。若いくせにもう少し柔軟な考え方ができないとお年寄りになってしまうわよ」
いやいや。
柔軟な考え方とシャーマンであるユタが東京の高層マンションで過ごすとことは全く別でしょう。
そう思ったのは瑠偉だけではなかったようです。
「いや。ここの学校に通っているのはわかったけど、なんで高層マンションのペントハウスなんかに住んでいるの? もう少し自然豊かなところのほうがシャーマンの仕事がしやすいんじゃないのかな?」
悟の質問をヒイナは鼻で笑い飛ばしました。
「いやだわ。自然の精霊の力を借りなきゃいけないほど私の力は弱くないの。それに虫とか蛇なんて苦手なのよね。この如何にも人工的って感じが落ち着くわ」
もはやポカンと立ち尽くしてしまった瑠偉達にヒイナは椅子を勧めました。
「まぁ座りなさいよ。ブナガヤの居所はさっきの場所から半径1キロ以内だわ。あの場所の近くに洞窟があって代々のユタが住んでいたから、まだ住めると思うわよ。探すなら使ってちょうだい。私は使っていないから」
「えっと。君は来ないの?」
「だから虫が嫌だって言ったじゃないの。もしもブナガヤが移動したらまた教えてあげるから、ここから先はあなた達の仕事よね」
おっしゃる通りなのですが何か釈然としない瑠偉たちです。
瑠偉と聖獣たちは先ほどの自然のただなかにある洞窟に住んでブナガヤを探す他なさそうなのですが、都会っ子の瑠偉が洞窟で、なんでシャーマンがペントハウスなのでしょうか?
とっとと行きなさい! と追い返された瑠偉と悟はくだんの洞窟の中をおそるおそる進んでいました。
「ひぇー。何かいる」
「気持ちわるいなぁ。本気でこんなところで眠る気か? 家じゃねえぞここは」
確かに洞窟の奥まったところにすべらかな石を敷き詰めた場所があり、その上には敷物などが敷かれていますが、 その他にある物と言えば水をためる壺、火をくべる囲炉裏。
そして保存用の食糧品いくつか。
たったそれだけです。
「わかった。夜は宿坊に寝泊りしよう。夢幻堂の扉をここに固定しておくからさ。どう考えてもここで眠るのは無理だからな」
と言う訳で、沖縄にいるはずの瑠偉達はその日のうちに高野山の宿坊に帰ってしまいました。
けれどいいのでしょうか?
ブナガヤはもしかしたら夜に活動しているかもしれないというのに……
「父さん、久しぶり。こんなところまで来るなんて一体何の用?」
「お久しぶりです。叔父さん」
瑠偉と悟が驚いているのを夢幻堂の主はいかにも楽し気に眺めると息子たちをねぎらいました。
「やぁ。そのこがクラハかい。さすがは九鬼本家の跡取りだけはあるね。見事に八咫烏を引き当てるとはね」
有名な夢幻堂の主に褒められて悟は嬉し気に照れているが、瑠偉は胡散臭そうな顔をするばかりだ。
なにしろこの流れからひどい目にあったことが多すぎるのだから。
「父さん。仕事ならちゃんと説明してくれよ。何にも知らされないで危険な場所に放り込まれるなんてまっぴらだからな」
「まったく。私の息子は私をいったいどういう目でみているんでしょうね。あぁ、わざわざ説明しなくて結構ですよ。大体想像がつきますからね。今回は夏休みだし沖縄旅行でもプレゼントしようかなぁと思いましてね」
瑠偉は信じられないという顔をしていますし、クラハにいたってあからさまに有朋を避けているので、さすがに素直な悟だって警戒をします。
「それで叔父さん。どんな妖が出たのさ」
「おいおい。悟まで私の好意を疑るのか。参ったね」
そうは言ったくせに有朋は居住まいを正して命じました。
「沖縄本島に住んでいるユタ・ホゾン・トキを訪ねなさい。詳しいことはユタに教えてもらうとしてブナガヤを探して欲しいんだ」
「ブナガヤと言えば焔の妖ですよね。確か一族揃って幽世の移り住んでいるとききましたけれどもね。元々あまり人前に姿を現す妖でもなかった筈ですしね」
「ほほう。悟くんは物知りだな。瑠偉も少しは見習いなさい。これは妖退治という仕事ではないんだ。ブナガヤの一族から捜索願がでている。次代さまが家出をしたとね」
「家出っていったい何があったんですか?」
「二人ともブナガヤは妖の中でも精霊に近い存在だってことは知っているよね。元々は沖縄の自然の中でひっそりと暮らしてきたんだが人族が増えすぎて住処を幽世に移している。ブナガヤの長の息子がどうやら現世に興味をもって出奔したらしい」
「父さん。それってかなり難しいんじゃないかなぁ。ブナガヤは姿を隠すのが得意で現世に住んでいたときでさえ、その姿を見た者はほとんどいないんでしょう? それなのにどうやって探せばいいんです」
「瑠偉。ユタがいるだろう。今代のユタはかなり優秀なシャーマンなんだぞ。ある程度の居場所はわかる筈さ。それにお前たちには聖獣がついているしな。くれぐれも無事に送り返してくれよ」
さすがの有朋もノエルとクラハのコンビは不安らしく、くれぐれもあいつらに食べさせるなよと言いおいて帰ってしまいました。
「やっぱり父さんがくると、ろくなことがない」
「でも沖縄だぜ。せっかくの夏休みだ。さっさとブナガヤを見つけ出して遊ぼうぜ」
瑠偉はうんざりとした顔をしていますし、悟はいやに張り切っています。
そしてノエルは食べられないと聞いて興味を失くしていますし、クラハはユタに興味があるようでした。
瑠偉が夢幻堂の扉の照準をユタ・ホゾン・トキの自宅にあわせたというのに、着いた場所は深い森の中でした。
濃い緑の気配にノエルとクラハはたちまち元気になっていきます。
こうした自然の豊かな場所には自然の霊力が漂っているので、聖獣たちはとても暮らしやすいのです。
「瑠偉。ここなら無理に妖を食べなくてもお腹はすかないよ」
とノエルが言えばクラハも賛成します。
「あぁ。ノエルの言う通りだ。たっぷりとした濃い霊力が身体に流れてくる。ここでは餌は不要だぞ。主どの」
それはいいとして、どこに向かって進めばよいのでしょうか。
早くユタの家を探さないと、こんなところで夜を迎える訳には行きません。
聖獣たちはお腹がすかないかもしれませんが、瑠偉や悟はそういう訳にはいきませんからね。
「瑠偉。本当にここであっているのか? 人の気配なんてしないぞ」
「そのはずなんだよ。悟。だって確かに照準はユタの家にあわせたんだから」
その時聖獣たちが声をあげました。
「瑠偉こっち」
「主どの。ここだ」
聖獣たちが指し示す方向にはまるで精霊のような少女が佇んでいます。
どう考えても人なんぞ住めそうもない森の奥深くで少女に出会うことがそもそもおかしなことです。
けれども妖でない証拠に少女は深々と頭を下げると瑠偉たちの名前を呼んだのでした。
「瑠偉さま。悟さま。ようこそおいでくださいました。今代のユタを務めておりますヒイナと申します。お部屋にご案内しますからどうぞこちらへ」
そういうなり少女はすたすたと近くでこんこんとわいている泉に向かいました。
泉といってもこぽこぽと水がわいているだけで、その水はたちまち近くの川に流れ落ちていきます。
だというのに少女はその泉を指し示して、ここに入れというのです。
「待ってよ。どこに扉があるっていうの。見えないんだけれど」
悟が困惑をした顔で言うと、ヒイナは驚いた顔をしました。
「お二方は夢幻堂と九鬼の後嗣さまだと伺っております。霊力を目に集めてもう一度ごらんください」
己の未熟さを指摘されて瑠偉達はあわてて霊力を目に集めました。
するとどうでしょう。
聖獣たちの言う通りです。
ちょうど泉が湧き出るその上に小さな空間の裂けめがあり、ちらちらと中が見え隠れしています。
悟が霊力を手に集めてその裂け目を開くと、きらきらとした光の粒子が漏れて、瑠偉達一行はその結界の中に入りこむことができました。
「おい。ここは」
「なんてこった。ここは東京じゃないか。なんで沖縄の森が東京の高層マンションの最上階に通じているんだよ」
「あら、だって私は学生なんですもの。学校にいかなきゃいけないでしょ。だから森とここを繋げているの。こう見えて名門女子校の学生なのよ」
瑠偉と悟は開いた口がふさがりません。
ユタと言えば沖縄で有名なシャーマンです。
そのシャーマンが東京の女子校に通っている学生だなんて!
「もしかしたら君たちって頭が固いのかな。若いくせにもう少し柔軟な考え方ができないとお年寄りになってしまうわよ」
いやいや。
柔軟な考え方とシャーマンであるユタが東京の高層マンションで過ごすとことは全く別でしょう。
そう思ったのは瑠偉だけではなかったようです。
「いや。ここの学校に通っているのはわかったけど、なんで高層マンションのペントハウスなんかに住んでいるの? もう少し自然豊かなところのほうがシャーマンの仕事がしやすいんじゃないのかな?」
悟の質問をヒイナは鼻で笑い飛ばしました。
「いやだわ。自然の精霊の力を借りなきゃいけないほど私の力は弱くないの。それに虫とか蛇なんて苦手なのよね。この如何にも人工的って感じが落ち着くわ」
もはやポカンと立ち尽くしてしまった瑠偉達にヒイナは椅子を勧めました。
「まぁ座りなさいよ。ブナガヤの居所はさっきの場所から半径1キロ以内だわ。あの場所の近くに洞窟があって代々のユタが住んでいたから、まだ住めると思うわよ。探すなら使ってちょうだい。私は使っていないから」
「えっと。君は来ないの?」
「だから虫が嫌だって言ったじゃないの。もしもブナガヤが移動したらまた教えてあげるから、ここから先はあなた達の仕事よね」
おっしゃる通りなのですが何か釈然としない瑠偉たちです。
瑠偉と聖獣たちは先ほどの自然のただなかにある洞窟に住んでブナガヤを探す他なさそうなのですが、都会っ子の瑠偉が洞窟で、なんでシャーマンがペントハウスなのでしょうか?
とっとと行きなさい! と追い返された瑠偉と悟はくだんの洞窟の中をおそるおそる進んでいました。
「ひぇー。何かいる」
「気持ちわるいなぁ。本気でこんなところで眠る気か? 家じゃねえぞここは」
確かに洞窟の奥まったところにすべらかな石を敷き詰めた場所があり、その上には敷物などが敷かれていますが、 その他にある物と言えば水をためる壺、火をくべる囲炉裏。
そして保存用の食糧品いくつか。
たったそれだけです。
「わかった。夜は宿坊に寝泊りしよう。夢幻堂の扉をここに固定しておくからさ。どう考えてもここで眠るのは無理だからな」
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