24 / 26
第一章「眠れる魔物と魔法使いの少女」
第23話 竜は目覚めて全てを喰らう
しおりを挟む
スピカがその名を告げるとともに足下の四色の魔法陣が輝きを増す。四つの円がスピカの元に集い、一つになる。放たれた四色の光が螺旋を描き、一つの巨大な光の柱となって彼女の体を包み込む。
「……マジかよ」
「馬鹿な!?」
「……こいつは想像以上だ。まさかそんな奴を抱えていたとは」
魔法使いたちは一様に彼女の言葉に耳を疑った。
魔物を取り込むのは一人一体。しかもそれは生涯に一度のみ。強力な魔物ほど魔法使いに備わる魔法の力は強くなる。しかし、それを取り込むためには一度魔物を倒さねばならない。
故に逆説的に魔法使いとしての力――備わる属性の数や特性の特殊性、魔法の威力など――が高い程、倒した魔物は強力な物と言うことになる。つまり、魔法使いがその身に宿す魔物はその者の強さの証でもあるのだ。
「あり得ねえ……何で、どうしててめえが。お前みたいな小娘が!」
だが、当然魔法の力を使わずにそのような魔物を倒すことは困難である。だからこそ、魔法使いとなる者は己の身の丈に合った魔物を倒し、魂を喰らってその力を高めようとする。スピカの様に人の魂を喰らわない方針の者は、アルトのように総じて力は低めとなるはず。しかし、その常識を逸脱した強大な魔法の力。怪力に頑強さ、回復力を備えた特性。魂喰いをしない彼女にしてはあまりに全てが規格外だ。
「何が化け物だ……」
しかし、こう考えれば納得がいく。彼女は魂を喰らうつもりはない。それは、喰らう必要がないとしたら。魂を喰らうまでもなく、元々その力が極限に至った存在であったのなら――。
「あんたこそ、正真正銘の化け物じゃないか!」
町で平和に暮らしているような、どこからどう見ても普通の少女。戦いの駆け引きも知らず、相手を殺すことを善しとしない。己の力を高めようとする魔法使いから見れば「甘い」と言える存在。しかし、彼女は告げた。己の内に眠る魔物の名を。最も倒すことが困難と言われる魔物の王者たるその御名を。
「スピカ……」
光の中にスピカの姿が溶け込み、その姿を変異させていく。
細い少女の腕は、その怪力に見合った太さと鋭き爪に変化する。
魚のような鱗が全身を覆う。
広げた翼は天空を舞う鳥のごとく。
伸びた尾はあたかも地を這う蛇のように。
「……最後まで、見届けてやるよ」
光が収まり、その巨体が現出する。堂々としたその姿に空気が張り詰める。
その身は高く、天を突くようにそびえ立ち、聞く者全てを畏怖させる咆哮を轟かせる。
裂けた口、伸びた角、人の様に知性を持ち炎の息吹を放つ。四つの属性全てを象徴するものを備え、全ての魔物の頂点に君臨する存在。
――人はその名を、畏敬を込めて竜と呼んだ。
「――ふ」
竜が口を開く。低く、威厳に満ちたその声は少女のそれではない。
「我の意識が表出したと言うことは、あの娘が使ったと言う事か」
目覚めた竜はゆっくりと首を動かし、周囲を見渡す。そして、最初にエニフと目が合った。
「まずは貴様だ、死の臭いのする女よ」
「なっ――!?」
いきなり竜は口を開く。その喉奥から燃え盛る火炎が見えた。
「“大地は鋭き槍となる”」
即座にエニフは身を守るために魔法を放つ。魂喰いで強化され、無数の槍が大地から一斉に竜へとその刃を向ける。
「下らぬ児戯よ」
身じろぎ一つせず、それをその身に受ける。だが、強化された魔法ですら竜の鱗には傷一つつけることはできない。そのいずれもが小枝のごとくあっさりと折れていく。
「そ、そんな馬鹿な……」
「消えよ」
竜が容赦なく炎をエニフ目掛けて吐き出す。
「――――っ!」
何かを唱えるがまるで意味をなさない。竜の息吹は業火となって一瞬で彼女を飲み込んでいく。
「はは……何だよ、この馬鹿げた威力は」
アルトは目の前の光景に戦慄を覚える。エニフの立っていた場所には何も残っていない。竜の一息で地は抉れ、巨大な穴が穿たれ、そこには地面すら残されていなかった。
続いて竜は、火蜥蜴と化したジュバを目に留める。手下を喰い、肥大化したその体すら超える巨大な姿。頭上から鋭い眼光に射抜かれ、ジュバは言葉を失う。
「その血の臭い……貴様、喰ったな?」
「ひっ……」
それはジュバの、あるいは取り込んだ火蜥蜴の生物的な本能によるものか。目の前の存在に身がすくみ、すぐにでもその場から離れなければ命の危険があると魂がそう告げていた。
「生きるために喰らうは生物としての常。だが、貴様は己の欲得で人を喰らった。その精神はもはや人に非ず」
「あり得ない……あり得ないあり得ないあり得ないっ!」
半狂乱となってジュバが叫ぶ。目の前にいる存在は規格外の存在。それ以上に、あり得ない事実に身の震えが止まらない。
「どうして、意識がある! 取り込まれた魔物は死んでるはずじゃないのか!」
「人が竜に問いを投げるか……まあいいだろう」
そして、竜は衝撃の一言を放った。
「我は生きてあの娘の中にいたということだ」
「な……」
「生きている……だと。生きたままの竜を取り込んだって言うのか!?」
「然り。死に瀕したあの娘を、我は自らを封印することによって生き永らえさせた。我こそがあの娘の命そのものなのだ」
――私は魔法使いになった過程が人と違うの。
スピカの言葉をアルトは思い出す。魔法使いは通常、魔物の命を奪い、その肉体を取り込むことで魔法の力を得る。だが、スピカはその逆だ。
スピカはかつて死にかけ、その命は、その身に取り込まれた竜の生命力で生かされているというのだ。
「馬鹿な……竜が、人間を認めたとでも言うのか。誇り高い竜が、人間の中に封じられることを自分から選んだって言うのか!?」
驚愕するジュバに向けてドラゴンの足が一歩前へと踏み込む。それは大地に轟き、山は震えて動物たちが騒ぎ立つ。
「然り、故に我が死ねば、あの娘が死ぬ。我はそれを望まぬ、故に貴様を倒す。理解したか、人間よ」
「よ、よせ……お前は人を殺せないんじゃなかったのか!」
「それはあの娘の信念。我には関係のないことだ。」
「あの小娘……いったい何者なんだ!?」
「語る必要はない……だが、これだけは言えよう。あの娘が我をあえて呼んだ。あの心優しき娘が破壊の化身ともいえる我をだ」
竜の語気が強くなる。その眼に怒りと、そして憐みをたたえて咆哮する。
「その意味と、その覚悟を思い知るがよい! 獣と成り果てた人間よ!」
「うわああああ!」
火蜥蜴の全身が奮い立つ。炎がその勢いを増し、辺りに燃え広がって竜の全身を取り囲む。
「どうだ、いくらドラゴンでも魂喰いした俺の炎なら……」
「愚か」
竜が翼を広げる。一つ目の羽ばたきで突風が巻き起こり、二つ目の羽ばたきで炎を吹き飛ばす。空中に舞いあがった炎は風に煽られながらその勢いを小さく消してゆく。
「多少、火を扱える程度の蜥蜴の力が竜に通じると思ったか」
「く、くそっ!」
「力とはこう使うのだ」
竜の体が青い光を放つ。その身に秘めた魔力が放出され、大地から無数の氷の槍がジュバ目掛けて飛び出す。
「ぐぇああああ!?」
あまりにもあっさりと、その鱗を突き破る。全身を貫かれ、悶絶する。
「ま、魔物が……魔法をだと」
「愚かな。理を知る者は人のみに非ず」
「この化け物が!」
力を振り絞り、刺し貫く氷を砕きながらジュバが走り出す。全身から血を噴きながら猛進するジュバの牙がその体をとらえる――否、そうではない。竜はそれを避けようともしていない。
「どうした。その程度の顎の力では竜の鱗は貫けぬぞ」
「あ……あが……」
鱗に遮られ、牙が通らない。口の中を通して伝わる感触は鋼鉄を遙かに上回る。
「蜥蜴ごときが、身の程を弁えよ!」
「ぐえっ!?」
頭上から振り下ろされた前足が一撃でジュバを叩き落とす。地面に押さえつけられ、必死に抵抗するがそのあまりの力の前になす術がない。
「……いつ見ても不快だ。圧倒的な力で敵を虐げるというのは」
「た、たすけ……」
「では、竜からの問いだ。貴様はそう言った相手に何と返した?」
「ひっ!?」
竜の顎が開く。その奥に見える紅い輝きにジュバの目が見開かれる。
「己の成したことをその身で受けよ!」
「うわああああ!?」
紅蓮の炎が吹き出す。猛烈な勢いと文字通り圧倒的な火力に、押し潰されるようにしながら全身に炎が回る。
「ぎゃあああああ! 熱い熱い熱い熱い熱い熱い!」
火蜥蜴は炎への耐性がある。しかしそれでもその熱に身が溶解し、その威力の前に体が崩壊を始める。
「何故だ、どうして俺が! 俺はジュバ様だぞ! 大金を手に入れて、魔法使いになって。全部これからだったはずだ。何であんな小娘に!」
断末魔を叫びながらジュバの姿が炎の中に消えていく。火蜥蜴の姿は影も形も残らずにその全てが吹き飛ばされる。
「あ……ご……はっ……」
そのあとには人間の姿に戻ったジュバが倒れていた。その右手の紋章は黒ずみ、光をもう放つことはない。棲獣化した状態でその身が滅ぼされると、元の姿に戻る。その際、表に出ていた魔物の部分が滅びを迎えたために、二度と魔物になることはできなくなり、魔法の力も完全に失うことになるのだ。
「――さて」
遂にその目がアルトに向けられる。竜の視線を真正面から受け止めた。スピカは確かに言った。「何も覚えていない」と。当然だ。目の前にいるのはスピカではないのだから。
「あの娘と、我が存在の関係を知った者を生かしておくわけにはいかん」
「――っ!」
アルトの身が業火に包まれる。火の魔法を発動するがその支配権を得られない。竜の方が明らかに格が上だ。
「ふん……跡形もなく消えたか」
アルトのその身を燃やし尽くしたのを見届け、竜が翼を広げる。そして飛び去ろうと羽ばたき始める。
「……ここはバルム王国か。まだ先は遠いようだ」
「――待てよ!」
炎の中からアルトが飛び出す。再生したその身は五体満足で蘇るものの、あまりに強大な存在に勝ち目はまるでない。
「スピカを返せ……この化け物!」
だが、それでもアルトは怯まない。炎に乗って竜の頭上から現れ、その拳を額に叩きつける。
「……なるほど、不死鳥の特性か」
「うわっ!」
頭を激しく振ってアルトを振り落とす。そして地面に叩きつけられた彼の脚を容赦なく踏み潰す。
「ぐああああああっ!」
「不思議な奴よ。敵わぬとわかっていながら我に挑むとは」
脚が不自然に曲がる。骨が粉々に砕かれ、立ち上がれない。いかにアルトが蘇る時に全快しているとは言え、一度死ななければ回復することができない。竜は瞬時にそれを見抜いていたのだ。
「不死鳥の特性を持つ者は我としても面倒だ。さて、どうするか……」
「……やってみろよ」
「む?」
「殺せるもんなら殺してみろ。全部耐えて蘇ってやる! あいつのためにもてめえに殺されてたまるか!」
それでも、アルトは必死に立ち上がろうとする。あまりに危険な存在を前に体は震え、本能は逃げろと叫んでいる。だが、それでも背を向けることだけはしない。
「……問おう。なぜ、そこまであの娘に執着する」
「……決めたんだ。あいつにもう一度会った時には笑顔にしてやるって」
「なんだと?」
激痛で今にも倒れてしまいたい。それでも、似た者同士の魔法使いとして、男として、どうしても退けなかった。
「自分を化け物って言って、寂しそうにしている女の子を一人にしたくないって。笑顔にしてやりたいって……ああ、上手く言えねえ! 惚れた女を守りたい気持ちに理屈なんか要るか!」
「……ククク。はっはっはっは!」
突然、竜が笑い始めた。何が愉快なのか。アルトは呆気にとられるばかりだった。
「まさか、あの娘に惚れる輩がいようとはな。いや、これは興味深い」
「……あいつのことを自分だけが知ったような口ぶりで語るんじゃねえよ」
「魔物の王者に対してのその不敬。だが、根性は認めてやろう。小僧、お前はあの娘のことを知りたいというのか?」
「ああ、知りたいよ。どんな食べ物が好きで、趣味が何で……白馬の王子様に憧れてるくらいしか俺は知らないものでね」
竜の口角が上がる。その言葉にどこか満足のいくものがあったというのか。
「良かろう。その答えに免じて今は娘を返そう」
竜の身が黄色い光を放つ。アルトの身に魔力が注がれ、折れた骨が修復されていく。
「……治ってる」
「餞別だ。だが忘れるな。あの娘を知るということは、その宿命を共に背負う事。逃れることは決してできない――それでも貴様は、あの娘と共にいられるかな?」
「……上等だ。受けて立つぜ」
竜の体が光に包まれていく。そして、その体が徐々に大きさを減じていく。
「我が名はドゥバン。貴様の名を聞いておこう」
「……アルト=アンカーだ」
「アルト=アンカーよ。次に会う時、貴様が娘の隣にいることを願おう」
光が収まる。破壊の権化はもはやそこになく、一人の心優しい少女が意識を失って残されるのだった。
「舐めるなよ化け物。ずっといてやるさ。いつまでも……な」
そして、静まり返った山の中でアルトはそう一人呟くのだった。
◆ ◆ ◆
身体が動かせない。苦しい、声が出せない、息ができない。目の前が真っ暗になっていく。自分が死に向かっているのが分かる。
「……いや……だ」
まだ恋もしていない。大切な人が隣にいて、小さな教会で純白のドレスを着て、みんなに祝福されて。そんな未来を夢見ていたのに。
まだ見たいものがある。まだ知りたいことがある。心残りがいっぱいある。
「死に、たく……な、い」
私の上に影が落ちた。竜が私を見下ろしている。ああ、私、食べられちゃうんだな――そう思った瞬間に、私の意識は一度切れた。
――お前を死なせはしない。
何かが私を暗い闇の底から引っ張り上げる感じがした。少しずつ目の前に光が溢れてくる。
――私がお前の命となろう。
痛みが引いていく。少しずつ、死が遠ざかっていく。それと同時に自分の中に異質なものが満たされていくのがわかった。そして、それがみんなの命を奪ったものと同質のものであることも。
嫌だ、こんな力欲しくない。私は普通の女の子でいたいのに……!
――これ以外に方法がない。
心臓を抉り出されたはずの左胸から痛みが消えた。同時に右手に熱を感じる。意識がはっきりした瞬間に飛び込んできたのは、私の右手の甲で光る魔法使いの証。
――いつか、全てから解き放たれる日が来る。その日まで、我が命がお前を生かそう。
竜の姿は消えていた。左胸の穴は塞がっている。失ったはずの心臓は鼓動を痛いほどに強く打っている。
「……う、そ」
心臓から魔力が全身に満たされていく。それは世界中の魔法使いが求めるであろう全ての属性を司る力。
恐る恐る私は近くにあった瓦礫を手に取った。力を込めるとそれは粉々に砕け散った。
「ひっ……」
体に負った傷も火傷も癒えている。竜の備えた怪力と頑強さ、そして尋常ならざる回復力。それが意味することは一つ。
私は死ぬところだった。そして、私は竜に助けられ、その竜は今私の中にいる。
「いや……」
村の人を、営みを。私から全てを奪い去った竜という存在。それに生かされ、一体化してその力を得てしまったという事実。
「いやああああああ!!」
――その日、私は全てを失い。化け物になった。
「……マジかよ」
「馬鹿な!?」
「……こいつは想像以上だ。まさかそんな奴を抱えていたとは」
魔法使いたちは一様に彼女の言葉に耳を疑った。
魔物を取り込むのは一人一体。しかもそれは生涯に一度のみ。強力な魔物ほど魔法使いに備わる魔法の力は強くなる。しかし、それを取り込むためには一度魔物を倒さねばならない。
故に逆説的に魔法使いとしての力――備わる属性の数や特性の特殊性、魔法の威力など――が高い程、倒した魔物は強力な物と言うことになる。つまり、魔法使いがその身に宿す魔物はその者の強さの証でもあるのだ。
「あり得ねえ……何で、どうしててめえが。お前みたいな小娘が!」
だが、当然魔法の力を使わずにそのような魔物を倒すことは困難である。だからこそ、魔法使いとなる者は己の身の丈に合った魔物を倒し、魂を喰らってその力を高めようとする。スピカの様に人の魂を喰らわない方針の者は、アルトのように総じて力は低めとなるはず。しかし、その常識を逸脱した強大な魔法の力。怪力に頑強さ、回復力を備えた特性。魂喰いをしない彼女にしてはあまりに全てが規格外だ。
「何が化け物だ……」
しかし、こう考えれば納得がいく。彼女は魂を喰らうつもりはない。それは、喰らう必要がないとしたら。魂を喰らうまでもなく、元々その力が極限に至った存在であったのなら――。
「あんたこそ、正真正銘の化け物じゃないか!」
町で平和に暮らしているような、どこからどう見ても普通の少女。戦いの駆け引きも知らず、相手を殺すことを善しとしない。己の力を高めようとする魔法使いから見れば「甘い」と言える存在。しかし、彼女は告げた。己の内に眠る魔物の名を。最も倒すことが困難と言われる魔物の王者たるその御名を。
「スピカ……」
光の中にスピカの姿が溶け込み、その姿を変異させていく。
細い少女の腕は、その怪力に見合った太さと鋭き爪に変化する。
魚のような鱗が全身を覆う。
広げた翼は天空を舞う鳥のごとく。
伸びた尾はあたかも地を這う蛇のように。
「……最後まで、見届けてやるよ」
光が収まり、その巨体が現出する。堂々としたその姿に空気が張り詰める。
その身は高く、天を突くようにそびえ立ち、聞く者全てを畏怖させる咆哮を轟かせる。
裂けた口、伸びた角、人の様に知性を持ち炎の息吹を放つ。四つの属性全てを象徴するものを備え、全ての魔物の頂点に君臨する存在。
――人はその名を、畏敬を込めて竜と呼んだ。
「――ふ」
竜が口を開く。低く、威厳に満ちたその声は少女のそれではない。
「我の意識が表出したと言うことは、あの娘が使ったと言う事か」
目覚めた竜はゆっくりと首を動かし、周囲を見渡す。そして、最初にエニフと目が合った。
「まずは貴様だ、死の臭いのする女よ」
「なっ――!?」
いきなり竜は口を開く。その喉奥から燃え盛る火炎が見えた。
「“大地は鋭き槍となる”」
即座にエニフは身を守るために魔法を放つ。魂喰いで強化され、無数の槍が大地から一斉に竜へとその刃を向ける。
「下らぬ児戯よ」
身じろぎ一つせず、それをその身に受ける。だが、強化された魔法ですら竜の鱗には傷一つつけることはできない。そのいずれもが小枝のごとくあっさりと折れていく。
「そ、そんな馬鹿な……」
「消えよ」
竜が容赦なく炎をエニフ目掛けて吐き出す。
「――――っ!」
何かを唱えるがまるで意味をなさない。竜の息吹は業火となって一瞬で彼女を飲み込んでいく。
「はは……何だよ、この馬鹿げた威力は」
アルトは目の前の光景に戦慄を覚える。エニフの立っていた場所には何も残っていない。竜の一息で地は抉れ、巨大な穴が穿たれ、そこには地面すら残されていなかった。
続いて竜は、火蜥蜴と化したジュバを目に留める。手下を喰い、肥大化したその体すら超える巨大な姿。頭上から鋭い眼光に射抜かれ、ジュバは言葉を失う。
「その血の臭い……貴様、喰ったな?」
「ひっ……」
それはジュバの、あるいは取り込んだ火蜥蜴の生物的な本能によるものか。目の前の存在に身がすくみ、すぐにでもその場から離れなければ命の危険があると魂がそう告げていた。
「生きるために喰らうは生物としての常。だが、貴様は己の欲得で人を喰らった。その精神はもはや人に非ず」
「あり得ない……あり得ないあり得ないあり得ないっ!」
半狂乱となってジュバが叫ぶ。目の前にいる存在は規格外の存在。それ以上に、あり得ない事実に身の震えが止まらない。
「どうして、意識がある! 取り込まれた魔物は死んでるはずじゃないのか!」
「人が竜に問いを投げるか……まあいいだろう」
そして、竜は衝撃の一言を放った。
「我は生きてあの娘の中にいたということだ」
「な……」
「生きている……だと。生きたままの竜を取り込んだって言うのか!?」
「然り。死に瀕したあの娘を、我は自らを封印することによって生き永らえさせた。我こそがあの娘の命そのものなのだ」
――私は魔法使いになった過程が人と違うの。
スピカの言葉をアルトは思い出す。魔法使いは通常、魔物の命を奪い、その肉体を取り込むことで魔法の力を得る。だが、スピカはその逆だ。
スピカはかつて死にかけ、その命は、その身に取り込まれた竜の生命力で生かされているというのだ。
「馬鹿な……竜が、人間を認めたとでも言うのか。誇り高い竜が、人間の中に封じられることを自分から選んだって言うのか!?」
驚愕するジュバに向けてドラゴンの足が一歩前へと踏み込む。それは大地に轟き、山は震えて動物たちが騒ぎ立つ。
「然り、故に我が死ねば、あの娘が死ぬ。我はそれを望まぬ、故に貴様を倒す。理解したか、人間よ」
「よ、よせ……お前は人を殺せないんじゃなかったのか!」
「それはあの娘の信念。我には関係のないことだ。」
「あの小娘……いったい何者なんだ!?」
「語る必要はない……だが、これだけは言えよう。あの娘が我をあえて呼んだ。あの心優しき娘が破壊の化身ともいえる我をだ」
竜の語気が強くなる。その眼に怒りと、そして憐みをたたえて咆哮する。
「その意味と、その覚悟を思い知るがよい! 獣と成り果てた人間よ!」
「うわああああ!」
火蜥蜴の全身が奮い立つ。炎がその勢いを増し、辺りに燃え広がって竜の全身を取り囲む。
「どうだ、いくらドラゴンでも魂喰いした俺の炎なら……」
「愚か」
竜が翼を広げる。一つ目の羽ばたきで突風が巻き起こり、二つ目の羽ばたきで炎を吹き飛ばす。空中に舞いあがった炎は風に煽られながらその勢いを小さく消してゆく。
「多少、火を扱える程度の蜥蜴の力が竜に通じると思ったか」
「く、くそっ!」
「力とはこう使うのだ」
竜の体が青い光を放つ。その身に秘めた魔力が放出され、大地から無数の氷の槍がジュバ目掛けて飛び出す。
「ぐぇああああ!?」
あまりにもあっさりと、その鱗を突き破る。全身を貫かれ、悶絶する。
「ま、魔物が……魔法をだと」
「愚かな。理を知る者は人のみに非ず」
「この化け物が!」
力を振り絞り、刺し貫く氷を砕きながらジュバが走り出す。全身から血を噴きながら猛進するジュバの牙がその体をとらえる――否、そうではない。竜はそれを避けようともしていない。
「どうした。その程度の顎の力では竜の鱗は貫けぬぞ」
「あ……あが……」
鱗に遮られ、牙が通らない。口の中を通して伝わる感触は鋼鉄を遙かに上回る。
「蜥蜴ごときが、身の程を弁えよ!」
「ぐえっ!?」
頭上から振り下ろされた前足が一撃でジュバを叩き落とす。地面に押さえつけられ、必死に抵抗するがそのあまりの力の前になす術がない。
「……いつ見ても不快だ。圧倒的な力で敵を虐げるというのは」
「た、たすけ……」
「では、竜からの問いだ。貴様はそう言った相手に何と返した?」
「ひっ!?」
竜の顎が開く。その奥に見える紅い輝きにジュバの目が見開かれる。
「己の成したことをその身で受けよ!」
「うわああああ!?」
紅蓮の炎が吹き出す。猛烈な勢いと文字通り圧倒的な火力に、押し潰されるようにしながら全身に炎が回る。
「ぎゃあああああ! 熱い熱い熱い熱い熱い熱い!」
火蜥蜴は炎への耐性がある。しかしそれでもその熱に身が溶解し、その威力の前に体が崩壊を始める。
「何故だ、どうして俺が! 俺はジュバ様だぞ! 大金を手に入れて、魔法使いになって。全部これからだったはずだ。何であんな小娘に!」
断末魔を叫びながらジュバの姿が炎の中に消えていく。火蜥蜴の姿は影も形も残らずにその全てが吹き飛ばされる。
「あ……ご……はっ……」
そのあとには人間の姿に戻ったジュバが倒れていた。その右手の紋章は黒ずみ、光をもう放つことはない。棲獣化した状態でその身が滅ぼされると、元の姿に戻る。その際、表に出ていた魔物の部分が滅びを迎えたために、二度と魔物になることはできなくなり、魔法の力も完全に失うことになるのだ。
「――さて」
遂にその目がアルトに向けられる。竜の視線を真正面から受け止めた。スピカは確かに言った。「何も覚えていない」と。当然だ。目の前にいるのはスピカではないのだから。
「あの娘と、我が存在の関係を知った者を生かしておくわけにはいかん」
「――っ!」
アルトの身が業火に包まれる。火の魔法を発動するがその支配権を得られない。竜の方が明らかに格が上だ。
「ふん……跡形もなく消えたか」
アルトのその身を燃やし尽くしたのを見届け、竜が翼を広げる。そして飛び去ろうと羽ばたき始める。
「……ここはバルム王国か。まだ先は遠いようだ」
「――待てよ!」
炎の中からアルトが飛び出す。再生したその身は五体満足で蘇るものの、あまりに強大な存在に勝ち目はまるでない。
「スピカを返せ……この化け物!」
だが、それでもアルトは怯まない。炎に乗って竜の頭上から現れ、その拳を額に叩きつける。
「……なるほど、不死鳥の特性か」
「うわっ!」
頭を激しく振ってアルトを振り落とす。そして地面に叩きつけられた彼の脚を容赦なく踏み潰す。
「ぐああああああっ!」
「不思議な奴よ。敵わぬとわかっていながら我に挑むとは」
脚が不自然に曲がる。骨が粉々に砕かれ、立ち上がれない。いかにアルトが蘇る時に全快しているとは言え、一度死ななければ回復することができない。竜は瞬時にそれを見抜いていたのだ。
「不死鳥の特性を持つ者は我としても面倒だ。さて、どうするか……」
「……やってみろよ」
「む?」
「殺せるもんなら殺してみろ。全部耐えて蘇ってやる! あいつのためにもてめえに殺されてたまるか!」
それでも、アルトは必死に立ち上がろうとする。あまりに危険な存在を前に体は震え、本能は逃げろと叫んでいる。だが、それでも背を向けることだけはしない。
「……問おう。なぜ、そこまであの娘に執着する」
「……決めたんだ。あいつにもう一度会った時には笑顔にしてやるって」
「なんだと?」
激痛で今にも倒れてしまいたい。それでも、似た者同士の魔法使いとして、男として、どうしても退けなかった。
「自分を化け物って言って、寂しそうにしている女の子を一人にしたくないって。笑顔にしてやりたいって……ああ、上手く言えねえ! 惚れた女を守りたい気持ちに理屈なんか要るか!」
「……ククク。はっはっはっは!」
突然、竜が笑い始めた。何が愉快なのか。アルトは呆気にとられるばかりだった。
「まさか、あの娘に惚れる輩がいようとはな。いや、これは興味深い」
「……あいつのことを自分だけが知ったような口ぶりで語るんじゃねえよ」
「魔物の王者に対してのその不敬。だが、根性は認めてやろう。小僧、お前はあの娘のことを知りたいというのか?」
「ああ、知りたいよ。どんな食べ物が好きで、趣味が何で……白馬の王子様に憧れてるくらいしか俺は知らないものでね」
竜の口角が上がる。その言葉にどこか満足のいくものがあったというのか。
「良かろう。その答えに免じて今は娘を返そう」
竜の身が黄色い光を放つ。アルトの身に魔力が注がれ、折れた骨が修復されていく。
「……治ってる」
「餞別だ。だが忘れるな。あの娘を知るということは、その宿命を共に背負う事。逃れることは決してできない――それでも貴様は、あの娘と共にいられるかな?」
「……上等だ。受けて立つぜ」
竜の体が光に包まれていく。そして、その体が徐々に大きさを減じていく。
「我が名はドゥバン。貴様の名を聞いておこう」
「……アルト=アンカーだ」
「アルト=アンカーよ。次に会う時、貴様が娘の隣にいることを願おう」
光が収まる。破壊の権化はもはやそこになく、一人の心優しい少女が意識を失って残されるのだった。
「舐めるなよ化け物。ずっといてやるさ。いつまでも……な」
そして、静まり返った山の中でアルトはそう一人呟くのだった。
◆ ◆ ◆
身体が動かせない。苦しい、声が出せない、息ができない。目の前が真っ暗になっていく。自分が死に向かっているのが分かる。
「……いや……だ」
まだ恋もしていない。大切な人が隣にいて、小さな教会で純白のドレスを着て、みんなに祝福されて。そんな未来を夢見ていたのに。
まだ見たいものがある。まだ知りたいことがある。心残りがいっぱいある。
「死に、たく……な、い」
私の上に影が落ちた。竜が私を見下ろしている。ああ、私、食べられちゃうんだな――そう思った瞬間に、私の意識は一度切れた。
――お前を死なせはしない。
何かが私を暗い闇の底から引っ張り上げる感じがした。少しずつ目の前に光が溢れてくる。
――私がお前の命となろう。
痛みが引いていく。少しずつ、死が遠ざかっていく。それと同時に自分の中に異質なものが満たされていくのがわかった。そして、それがみんなの命を奪ったものと同質のものであることも。
嫌だ、こんな力欲しくない。私は普通の女の子でいたいのに……!
――これ以外に方法がない。
心臓を抉り出されたはずの左胸から痛みが消えた。同時に右手に熱を感じる。意識がはっきりした瞬間に飛び込んできたのは、私の右手の甲で光る魔法使いの証。
――いつか、全てから解き放たれる日が来る。その日まで、我が命がお前を生かそう。
竜の姿は消えていた。左胸の穴は塞がっている。失ったはずの心臓は鼓動を痛いほどに強く打っている。
「……う、そ」
心臓から魔力が全身に満たされていく。それは世界中の魔法使いが求めるであろう全ての属性を司る力。
恐る恐る私は近くにあった瓦礫を手に取った。力を込めるとそれは粉々に砕け散った。
「ひっ……」
体に負った傷も火傷も癒えている。竜の備えた怪力と頑強さ、そして尋常ならざる回復力。それが意味することは一つ。
私は死ぬところだった。そして、私は竜に助けられ、その竜は今私の中にいる。
「いや……」
村の人を、営みを。私から全てを奪い去った竜という存在。それに生かされ、一体化してその力を得てしまったという事実。
「いやああああああ!!」
――その日、私は全てを失い。化け物になった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる