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初恋と今4
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『武史先輩!どういうことですか!?さっきの電話』
割れた破片を片付け、自分の部屋に戻った武史は携帯の電源を入れる。
案の定、さくらから鬼のように着信があった。
「悪かった。……千尋には何か連絡したんか?」
『してないですよ!したほうがいいんですか?』
「いや!するなや!……頼む」
その反応で全て察した様子のさくらは電話の向こうで爆笑している。
苦虫を潰したような顔で笑いがおさまるのを待って、先程の経緯を話す。
『やっと自覚したんですね!武史先輩、普段あまり表情出さんのに、ちーちゃんにだけはめっちゃ出とったし!』
ゲラゲラ笑いながら話すさくらの言葉で思わず苦笑する。
鈍感なさくらに気付かれているくらいなら、秀樹にもバレバレだっのだろう。
『でもちーちゃん、武史先輩のこと全然そういう目で見よらんから大変ですね』
「……わかっとるわ。待つんは嫌いやないけん、じっくりいくわ。何かあっても親戚やからどうとでもなる」
『頑張ってくださいね!秀樹とも口裏合わせときます』
「頼むわ」
その次の日、仕事終わりに家に帰ると秀樹が居た。
「遅かったやん」
なんでいるのか意図が分からず、戸惑う武史に千尋が袋を渡す。
「秀樹くんとお風呂行く約束してたんでしょ?これ、着替えね。気をつけて行ってきてね」
「千尋ちゃん、コーヒーご馳走さま!」
そう言って立ち上がった秀樹とよく分からない表情の武史を千尋は見送った。
武史に車を出させた秀樹は、助手席でニヤけた顔を向ける。
「さくらから聞いたわ。何があったんや?」
「……いつものところでええか?」
おう、と短く返事をした秀樹はからかう。
「千尋ちゃんに武史と風呂屋行く、って言ったら準備してくれたわ。ちゃんとパンツまで入っとるよ」
「そりゃ洗濯してくれとるけんな」
ニヤニヤが止まらない様子の秀樹と反対に武史は仏頂面になる。
地元のスーパー銭湯につくまで武史の顔を秀樹は面白そうに見つめていた。
「んで、いつ気づいたんや?」
体を洗い、二人で並んで露天風呂に入る。
「何がや?」
「千尋ちゃんに対する気持ちや」
秀樹に隠し事は出来ないと思った武史は一つため息をついて話しだした。
「……自覚したんは2週間前や」
「千尋ちゃん、何か抱えとるやろ?それも知ってなんか?」
気付いていたことに驚きはなかった。仲間内でも敏い秀樹のことだ、何かしら気付いているとは思っていた。
「全て聞いた上でや。ただ、千尋は前の男を吹っ切れてないけん、今すぐどうこうする気持ちもないわ」
「待つんか?似合わんな」
今までの恋愛遍歴を知っている秀樹は笑い声をあげる。
武史は空を見上げながら話す。
「傷つけたくないんや。あいつは無理する質やけん、今俺が気持ち伝えたらしんどいやろ。やっと少しずつ過去に折り合いつけとるところやしな」
「ま、お前がええなら何も言わんけどな。武史にしては珍しいよな、直球でいかんのが」
「らしくないんは自覚しとるわ。まぁ、別に一緒に住んどるし、下手に千尋に手出す人間もおらんから焦りはないしな」
親戚とは言っていたが、周りから千尋は武史の女という認識されていた。
八百屋やスーパーに行っても、「武史の奥さん」と言われることが多い。
一度千尋に嫌じゃないか聞いたことがあるが、あっけらかんとして答えた。
「別にいいよ。近所の人にもタケちゃんの奥さんなら、ってオススメの食材とか地元のレシピとか教えて貰えるからラッキーだよ。
でもタケちゃんが迷惑なら否定しとくよ?」
時々、千尋が知らないはずの地元の郷土料理が出るのを不思議に思っていたが、そういうことか、と合点がいった。
「別に迷惑やないけん、そのままでええわ」
本当に夫婦になれたらいいのに、と思ったことは千尋には秘密だ。
「千尋ちゃんが武史のこと何とも思わんかったらどうするんや?」
真剣に聞く秀樹の目を見て武史は答える。
「そん時はそん時や。まぁ親戚やから縁は続くから多少気まずいかもしれんが……。
好きになったもんはしゃーないやろ」
淡々と話す武史を秀樹は見つめ返す。
武史も秀樹の視線を真正面から受け止める。
フッと息を吐いた秀樹は、バカだなぁと呟く。
「武史なら付き合いたいって子他にいるのに。千尋ちゃんの抱えとる問題の根は深そうやけん、苦労するぞ」
「覚悟の上や。それでも千尋がええんや」
「ならしゃーないな」
武史の決意を理解した秀樹はそれ以上言葉を重ねることはなかった。
ただ、嬉しそうに親友の顔をニコニコ見つめていた。
「なんや?」
「なんでもないわ」
そう言いながら秀樹は久々に恋をしている親友を応援しようと決意した。
割れた破片を片付け、自分の部屋に戻った武史は携帯の電源を入れる。
案の定、さくらから鬼のように着信があった。
「悪かった。……千尋には何か連絡したんか?」
『してないですよ!したほうがいいんですか?』
「いや!するなや!……頼む」
その反応で全て察した様子のさくらは電話の向こうで爆笑している。
苦虫を潰したような顔で笑いがおさまるのを待って、先程の経緯を話す。
『やっと自覚したんですね!武史先輩、普段あまり表情出さんのに、ちーちゃんにだけはめっちゃ出とったし!』
ゲラゲラ笑いながら話すさくらの言葉で思わず苦笑する。
鈍感なさくらに気付かれているくらいなら、秀樹にもバレバレだっのだろう。
『でもちーちゃん、武史先輩のこと全然そういう目で見よらんから大変ですね』
「……わかっとるわ。待つんは嫌いやないけん、じっくりいくわ。何かあっても親戚やからどうとでもなる」
『頑張ってくださいね!秀樹とも口裏合わせときます』
「頼むわ」
その次の日、仕事終わりに家に帰ると秀樹が居た。
「遅かったやん」
なんでいるのか意図が分からず、戸惑う武史に千尋が袋を渡す。
「秀樹くんとお風呂行く約束してたんでしょ?これ、着替えね。気をつけて行ってきてね」
「千尋ちゃん、コーヒーご馳走さま!」
そう言って立ち上がった秀樹とよく分からない表情の武史を千尋は見送った。
武史に車を出させた秀樹は、助手席でニヤけた顔を向ける。
「さくらから聞いたわ。何があったんや?」
「……いつものところでええか?」
おう、と短く返事をした秀樹はからかう。
「千尋ちゃんに武史と風呂屋行く、って言ったら準備してくれたわ。ちゃんとパンツまで入っとるよ」
「そりゃ洗濯してくれとるけんな」
ニヤニヤが止まらない様子の秀樹と反対に武史は仏頂面になる。
地元のスーパー銭湯につくまで武史の顔を秀樹は面白そうに見つめていた。
「んで、いつ気づいたんや?」
体を洗い、二人で並んで露天風呂に入る。
「何がや?」
「千尋ちゃんに対する気持ちや」
秀樹に隠し事は出来ないと思った武史は一つため息をついて話しだした。
「……自覚したんは2週間前や」
「千尋ちゃん、何か抱えとるやろ?それも知ってなんか?」
気付いていたことに驚きはなかった。仲間内でも敏い秀樹のことだ、何かしら気付いているとは思っていた。
「全て聞いた上でや。ただ、千尋は前の男を吹っ切れてないけん、今すぐどうこうする気持ちもないわ」
「待つんか?似合わんな」
今までの恋愛遍歴を知っている秀樹は笑い声をあげる。
武史は空を見上げながら話す。
「傷つけたくないんや。あいつは無理する質やけん、今俺が気持ち伝えたらしんどいやろ。やっと少しずつ過去に折り合いつけとるところやしな」
「ま、お前がええなら何も言わんけどな。武史にしては珍しいよな、直球でいかんのが」
「らしくないんは自覚しとるわ。まぁ、別に一緒に住んどるし、下手に千尋に手出す人間もおらんから焦りはないしな」
親戚とは言っていたが、周りから千尋は武史の女という認識されていた。
八百屋やスーパーに行っても、「武史の奥さん」と言われることが多い。
一度千尋に嫌じゃないか聞いたことがあるが、あっけらかんとして答えた。
「別にいいよ。近所の人にもタケちゃんの奥さんなら、ってオススメの食材とか地元のレシピとか教えて貰えるからラッキーだよ。
でもタケちゃんが迷惑なら否定しとくよ?」
時々、千尋が知らないはずの地元の郷土料理が出るのを不思議に思っていたが、そういうことか、と合点がいった。
「別に迷惑やないけん、そのままでええわ」
本当に夫婦になれたらいいのに、と思ったことは千尋には秘密だ。
「千尋ちゃんが武史のこと何とも思わんかったらどうするんや?」
真剣に聞く秀樹の目を見て武史は答える。
「そん時はそん時や。まぁ親戚やから縁は続くから多少気まずいかもしれんが……。
好きになったもんはしゃーないやろ」
淡々と話す武史を秀樹は見つめ返す。
武史も秀樹の視線を真正面から受け止める。
フッと息を吐いた秀樹は、バカだなぁと呟く。
「武史なら付き合いたいって子他にいるのに。千尋ちゃんの抱えとる問題の根は深そうやけん、苦労するぞ」
「覚悟の上や。それでも千尋がええんや」
「ならしゃーないな」
武史の決意を理解した秀樹はそれ以上言葉を重ねることはなかった。
ただ、嬉しそうに親友の顔をニコニコ見つめていた。
「なんや?」
「なんでもないわ」
そう言いながら秀樹は久々に恋をしている親友を応援しようと決意した。
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