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似た者姉弟4
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「飲みたい気分だなぁ」
俊樹を送っていった帰りに珍しい千尋の希望で、飲みに来ていた。
いつも男達と行くようなお店ではなく、先輩がしている少し小洒落た創作料理を出す店に連れてきた。
個室の席に案内され各々頼んだ飲み物で乾杯をする。
車で来たため、武史はノンアルコールだ。
(千尋と二人で飲むのは初めてかもな)
普段あまり飲まない千尋にしては珍しい。話題はずっと俊樹の結婚の話だ。
それだけ嬉しかったのだろう。ずっと笑顔で武史に話し続ける千尋を、武史は愛しいそうに見つめながら聞き役に徹していた。
「これで、私も安心できる」
ある程度お腹が満たされた頃、酒で頬を赤くしながらポツリと千尋が呟いた。
「心配していたの、両親がいないことであの子が結婚出来ないんじゃないかって」
俊樹は付き合っている頃から既に向こうの親に面識があったようで、結婚の挨拶に行った際も特に反対もされなかったようだ。
「肩の荷降りたか?」
武史の言葉に最初はキョトンとしていた千尋だったが、何度か自分の中で反芻している内に何か気づいたようだ。
「そっか……。気付かなかったけど、重荷になっていたんだ」
そう言うと千尋はポロポロと涙を流す。
「え?なんで?」
千尋自身も意外だったようで慌てて目元を拭うが、止めどなく涙が溢れてくる。
「無理に止めるなや。個室やから、俺以外見えんわ」
テーブルの向かいから手を伸ばし、千尋の頭を撫でる。
武史の優しい手に導かれるように、千尋は涙が止まるまで泣き続けた。
「タケちゃんの前では私、泣き虫になるみたい」
帰りの車で千尋は窓の外を見ながら話す。
泣きすぎて真っ赤な目を見られたくなかったからだ。
「めっちゃ嬉しいわ。千尋が泣けるということは俺に心許しとるっていうことやけんな」
顔を見なくても分かるくらいニコニコとした声で武史は心の内を伝える。
千尋はずっと聞きたかったことを初めて武史に問いかけてみた。
「タケちゃんは、私のどこが好きなの?」
想定外の質問だったようで、一瞬返事に困った様子の武史だった。
そのことに千尋は勝手に傷つく。
「ちょっと寄り道していいか?」
「うん」
武史が連れてきたのは海だった。柳田のことを武史に告白した場所だった。
前は朝方だった。今は夜。以前と状況が違うからか、全然違う場所のように思えた。
「暗いから気をつけや」
武史より差し出された手に千尋は自分の手をそっと重ねる。
乾いている砂に二人は並んで座り込む。手は繋いだままだった。
聞こえるのは波音と、隣の人の呼吸だけだ。
「さっきは直ぐに答えんくて悪いな」
「ううん」
武史は千尋の手を握りしめたまま、答える。
「さっきの質問の返事に困ったんは、どっちの意味か考えたからや。
純粋に好きなところあげろ、って言うことなんか、惹かれたキッカケを聞いとんのか。どっちなんや?」
「……後者だよ」
武史は頷くと千尋に質問の答えを返した。
「分からん。気づいたら好きやった。
好きになってから千尋のこと見ると、好きなところはいっぱいあるんやけど、そこが無くても惹かれとった」
武史は照れくさそうに笑う。
「さっきみたいに俺の前で泣いてくれるんも、仕事には妥協せん姿勢も、俺のために料理作ってくれるんも好きや。
やけど千尋がそれをやらんくても嫌いになるか、言うたら違う。
千尋という全てが好きなんや」
千尋は武史の言葉をどういう風に受け止めるか迷っていた。
「タケちゃんは……なんでそんなに真っ直ぐなの?」
「自分の心に正直に生きとるだけや。人間、いつどうなるか分からんからな」
そう言って武史はあることを話し出した。
高校の時、クラスメートが実習中に亡くなったこと。
ずっと漁師になりたくて祖父に連れられてよく船に乗っていたから、それまでは海が怖いと思ったことはなかった。
だけど実習中、船が転覆して一人が亡くなった。
その時初めて海が怖いと思った。
「それでも、海は嫌いになれんかった。どうしても漁師になりたかった。
ただ、生死隣り合わせの仕事やと言うことも嫌という程実感したんや。
やけん、生きている間は自分の気持ちに正直に生きよう思ってな。いつどうなるかわからんけん」
千尋はただ、武史の話を聞いていた。気軽に返事ができる内容では無い。だからこそ、聞くしか出来なかった。
俊樹を送っていった帰りに珍しい千尋の希望で、飲みに来ていた。
いつも男達と行くようなお店ではなく、先輩がしている少し小洒落た創作料理を出す店に連れてきた。
個室の席に案内され各々頼んだ飲み物で乾杯をする。
車で来たため、武史はノンアルコールだ。
(千尋と二人で飲むのは初めてかもな)
普段あまり飲まない千尋にしては珍しい。話題はずっと俊樹の結婚の話だ。
それだけ嬉しかったのだろう。ずっと笑顔で武史に話し続ける千尋を、武史は愛しいそうに見つめながら聞き役に徹していた。
「これで、私も安心できる」
ある程度お腹が満たされた頃、酒で頬を赤くしながらポツリと千尋が呟いた。
「心配していたの、両親がいないことであの子が結婚出来ないんじゃないかって」
俊樹は付き合っている頃から既に向こうの親に面識があったようで、結婚の挨拶に行った際も特に反対もされなかったようだ。
「肩の荷降りたか?」
武史の言葉に最初はキョトンとしていた千尋だったが、何度か自分の中で反芻している内に何か気づいたようだ。
「そっか……。気付かなかったけど、重荷になっていたんだ」
そう言うと千尋はポロポロと涙を流す。
「え?なんで?」
千尋自身も意外だったようで慌てて目元を拭うが、止めどなく涙が溢れてくる。
「無理に止めるなや。個室やから、俺以外見えんわ」
テーブルの向かいから手を伸ばし、千尋の頭を撫でる。
武史の優しい手に導かれるように、千尋は涙が止まるまで泣き続けた。
「タケちゃんの前では私、泣き虫になるみたい」
帰りの車で千尋は窓の外を見ながら話す。
泣きすぎて真っ赤な目を見られたくなかったからだ。
「めっちゃ嬉しいわ。千尋が泣けるということは俺に心許しとるっていうことやけんな」
顔を見なくても分かるくらいニコニコとした声で武史は心の内を伝える。
千尋はずっと聞きたかったことを初めて武史に問いかけてみた。
「タケちゃんは、私のどこが好きなの?」
想定外の質問だったようで、一瞬返事に困った様子の武史だった。
そのことに千尋は勝手に傷つく。
「ちょっと寄り道していいか?」
「うん」
武史が連れてきたのは海だった。柳田のことを武史に告白した場所だった。
前は朝方だった。今は夜。以前と状況が違うからか、全然違う場所のように思えた。
「暗いから気をつけや」
武史より差し出された手に千尋は自分の手をそっと重ねる。
乾いている砂に二人は並んで座り込む。手は繋いだままだった。
聞こえるのは波音と、隣の人の呼吸だけだ。
「さっきは直ぐに答えんくて悪いな」
「ううん」
武史は千尋の手を握りしめたまま、答える。
「さっきの質問の返事に困ったんは、どっちの意味か考えたからや。
純粋に好きなところあげろ、って言うことなんか、惹かれたキッカケを聞いとんのか。どっちなんや?」
「……後者だよ」
武史は頷くと千尋に質問の答えを返した。
「分からん。気づいたら好きやった。
好きになってから千尋のこと見ると、好きなところはいっぱいあるんやけど、そこが無くても惹かれとった」
武史は照れくさそうに笑う。
「さっきみたいに俺の前で泣いてくれるんも、仕事には妥協せん姿勢も、俺のために料理作ってくれるんも好きや。
やけど千尋がそれをやらんくても嫌いになるか、言うたら違う。
千尋という全てが好きなんや」
千尋は武史の言葉をどういう風に受け止めるか迷っていた。
「タケちゃんは……なんでそんなに真っ直ぐなの?」
「自分の心に正直に生きとるだけや。人間、いつどうなるか分からんからな」
そう言って武史はあることを話し出した。
高校の時、クラスメートが実習中に亡くなったこと。
ずっと漁師になりたくて祖父に連れられてよく船に乗っていたから、それまでは海が怖いと思ったことはなかった。
だけど実習中、船が転覆して一人が亡くなった。
その時初めて海が怖いと思った。
「それでも、海は嫌いになれんかった。どうしても漁師になりたかった。
ただ、生死隣り合わせの仕事やと言うことも嫌という程実感したんや。
やけん、生きている間は自分の気持ちに正直に生きよう思ってな。いつどうなるかわからんけん」
千尋はただ、武史の話を聞いていた。気軽に返事ができる内容では無い。だからこそ、聞くしか出来なかった。
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