異世界召喚に巻きこまれたらスマホがバグって騎士団団長の妻になるそうです

雪那 由多

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俺にだってプライドぐらいあると思います

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 果物が入っていた籠を空っぽにしてクッションを置き、そこにもふを置いて風呂場からバスタオルを持ってきてかけてやる。
 これで寒さはしのげるだろうと目の届く机の上に置いて俺は部屋のトラップを一つずつ解体して行く。
 視界に広がるマップに描かれたトラップマークを頼りに引出の取っ手の剃刀を外し水差しに含まれた下剤を飲まないようにコップで水差しに蓋をしておく。家具も倒れやすいように前のめりになってるし、バスタブには体が渇いたカエルが住み着いていた。
 剃刀、下剤は悪質だなあと思うも家具はここまで倒した努力を認めるべきか、きっと嫌いだから選んだカエルをわざわざ捕まえてここまで連れて来た事を誉めるべきかと十代のお嬢さん方の間違った努力にはあきれてしまうが、カエルなんか見つけてもふが食べたら俺の方がトラウマになる。逃げれないようだけど可愛そうなので水を少し張っておく。
 そんな事をしているうちにクラエスがやってきたようで、俺がカエルと戯れている所に開けっぱなしのドアでも一応ノックをして存在を教えてくれた。

「何をしてるんだい?」
「ああ、侍女さん達が頑張ってカエルを放ってくれたみたいでね。庭に帰す前に少しご挨拶をね」

 ひょいとバスタブを覗くのを見れば驚きに目を瞠り、俺がそれを楽しそうに見ているのを見れば咳払いをして何とでもないと言う様驚きの瞳を隠すのだった。

「侍女達にやらせる」
「あと机の上の物も処分して置いてもらいたいな」

 指をさした方で見つけた危険物と

「そこの家具の下に挟んでる奴も抜きたいから手伝ってよ」

 言いながら随分と前ノリになっているあからさまに怪しげなチェストにクラエスはベットに倒れ込みたいと言う様にふらふらとベットに近寄った所で

「ああ、そこ、さっきガラスの破片が散らばってたから。危ないから近寄らないで」

 言えば今度こそ固まって、ふらふらと近くの壁を叩きつけていた。

「我が邸でなんて言う事が……」
「まぁ、証拠として水差しも何か入ってるから一応調べといて」

 言えば顔を青くしながらセリムと呼ぶ。
 隣の部屋で待機していたのか直ぐに「はい」と返事があり、ドアの所から顔をのぞかせていた。

「悪いがこの水差しの成分を調べてほしい。後この危険物と、バスタブのカエルを頼む。家具が倒れそうだから注意しろ。
 当分この部屋に侍女達を入れるな。責任もってお前がアトリの身の回りの管理をしろ」
「承知しました」

 新米執事とは言えやはりありえないとセリムは驚きを隠せないままだが、まずは倒れると危ないので三人がかりで家具を斜めにしている原因の本を抜きだすのだった。

「って言うかさ、食べ物に何か薬入れたり、こうやって知識の書たる物を下敷きにするなんて品性を疑うよな」

 元の世界では週刊誌を枕にして涎を垂らしていた俺が言うのもなんだけどね。

「アトリには本当にすまないとしか言えない。
 私が保護すると言ったのに全然守れてなく申し訳ない」
「初日の洗礼にしては随分と盛り沢山な歓迎だけどね。
 クラエスが迅速にうごいてくれてるから被害は最小限で済んでるよ」

 セリムの仕事を見守りながらこの部屋にバツ印がなくなったのを満足げに頷く。

「それにしてもアトリはよくこの嫌がらせに気付いたな」
 
 許された上に褒められたと思ったのかとたんにキラキラ成分をまき散らしながら俺の手を取り怖かっただろうと握りしめてくるのはクラエスの人間性と言う事にして手を握られるのは慣れようと自分に言い聞かせながら

「まあ、異世界から来たからかな。
 あの女の子が聖女様と言う、俺達の世界にない特性が発生したぐらいだ。知ってるか?俺達の世界は魔法なんて物はないんだ。なのに別段特別じゃない俺にもトラップの位置がわかるような何らかの恩恵はあったみたいだし、何よりクラエスと会話ができる。何気なく話をしていたけどこれは十分な恩恵じゃないかな?」

 にこりとほほ笑みながら真っ直ぐ俺を見下ろすクラエスを見上げれば、可愛らしい事に顔を真っ赤にして反らされてしまった。
 ヤバい、これは癖になるなと年下をからかいたくなる趣味が発生しそうだと自分に注意を促す。
 クラエスは顔を赤らめながらも俺の手を引いて別の部屋へと案内してくれる。
 その部屋にはソファがあり、俺を隣に座らせてセリムに食後のお茶もゆっくりできなかったからと持ってくるように指示を出して

「こうなると確実に早めにアトリをグランデルに嫁がせなくてはならない。
 使用人にも判らせなくてはならないし、お披露目して周囲にも認知させなくてはならない」

 そんな事でどうにかなるのかなあ何てキラキラ成分をまき散らしながらも俺の目を真剣に見つめ

「この際だから婚約とかは省略して明日陛下に結婚の書類を提出しようと思う」

 半年ほどの猶予期間もなくいきなりの結婚とは、まあ、今日からこの家で厄介になる身なので明確な理由があるのはしょうがない。だからと言って喜んでよろしくおねがますとえないのは俺の男としてのプライドだ。
 少しだけ顔が引きつってしまうのは男と言うだけではなく出会って数日めの相手と結婚する事と納得してもらいたい。

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