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スタイリッシュな鼻血の吹き方をどなたかご存じありませんか?
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バックヤード何てお嬢様達からしたら一生縁のない場所なのできょろきょろと興味深く、そして少しの不安を抱えながら足を進めて行く。本の性質上日の当たらない場所だけどこの部屋には窓すらなかった。ゆったりとした少し古めかしいソファー広いテーブル、そして貴重な本が並べられた決して一般の人が目にする事が出来ない場所に辿り着けば、教養の深い令嬢達はここに並ぶ本の貴重さに興奮を隠せずにいるのだった。
「セイカ様はなんでこのような場所をご存じなので?」
「それは、内緒です」
普通なら絶対足を運ぶ事の許されない場所。だけど先ほどの司書とのやり取りは何度も足を運んでいる事ぐらいは気づいたのだろう。確かに普通には入れない場所だけど、ある一定の条件をクリアすればここに入る事がゆるされるのだ。
例えばある晴れた日の昼休み、ずぶぬれになった少女がしくしくと泣いていれば手を差し伸ばさない紳士はいるのだろうか?
老いても司書は紳士だった。
こっそり少女を招き入れタオルを渡し、部下から代わりのドレスを借りて落ち着くようにハチミツの入ったホットミルクを渡してくれる。
何があったかと問うても少女は口は開かず涙を流さずに泣く姿を哀れに思い、この部屋への招待を与えるのだった。
この部屋では静かに本を読む事。決して図書室の方に人がいる事を気づかれてはいけない。貴重な本を守る為だけの部屋、おしゃべりを楽しむ場ではない。が……
「それよりも一体本日はどうなされたのです?その、あまり元気が無いようでしたので」
淑女らしく言葉を選ぶ。こんな異世界じゃなければ「今日元気ないね?どうした?」そんな簡単な会話なのに貴族とは丁寧に話さないといけないなんて面倒、なんて言わないけどまだるっこしいとやっぱり面倒と思うも
「殿下に最近の私の言動は目に余ると言われまして……
父にも報告をしたようで、家の者の見張りが付いていたようで……」
「まあ、自業自得って奴ですね」
バケツで水をかけられたり教科書を破られたり、持ち物を失くされたりと多々あった事は総て家に筒抜けだった事を教えられたようだ。
「ましてや私のお昼、どれだけひっくり返したか判ってますか?
貴族だからあまり実感はないと思いますが、作物が実る季節は一年を通して決められた時期にしか生育をしないし収穫できません。
平民の農家が一年のうち大半をかけて育てた物を美味しく食べて戴く為に料理人が丹精込めて作られたお料理をゴミのように捨てる方を貴いとはとても呼べません」
私は立ち上がって本棚から一冊の本を取り出した。
こう言った貴族の学校では決して見る事の出来ない農業の作付けの本。
これには土づくりから種の実生の仕方、作付け、栄養の与え方、季節や聞こうと言った事細かな日記のような内容が何万と言う種類ごとにびっしりと何冊にも分れて書かれている。
「この国の安定した農業はこう言った、貴族から平民になられた方が記した記録から成り立ちます。周辺の国と比べて大国とは言えないこの国で何一つ無駄が出ないように、そして安定した供給が出来る様にと百年ほど前の方の努力でこの国は飢餓や飢饉に強い国になりました。
貴方たちの悪戯はそうやって先人が築いた努力を無にする行為だと言う事を理解してください」
他にもこの国の印刷技術の歴史や布地の作り方、染色の方法の前の染料の作り方などが事細かく書いた本を渡した。いわゆる第一次産業の部分を貴族の子女が知るはずもなく
「領地を治める方ならきっと知っていると思いますが、家督を継ぐ事のない方には理解できない世界かと思います。ですが、皆さんの領地でもこのように生活を支える仕事をなさっている方は必ずいます。聞かされなく知らないだけでしょうが、その煌びやかなドレスを纏う以上、知らないと言う言い訳は聞きたくはありません」
そう言って私は失礼しますと言って部屋を出ようとするもふと思い出す。
「今度の花の日は皆様お時間空いてますか?」
聞けばよほど耳に痛い話だったようで余計にしょぼんとしてしまっていたけど、婚約者に指摘されて家族にも出かけず家で勉強する様にと言われたのか予定はないと言う。
「花の日には私と一緒にこちらの世界に来た方とお茶会をしています。
よろしければ一度ご一緒してみませんか?」
そんな私の誘いに皆さんは戸惑いを色を隠せずにいる。さんざん意地の悪い事をしておいてこうやって誘われる事は想像してなかったのだろう。
「天鳥様と仰ってとても素敵なお兄様なのです。
一度お話してみませんか?きっと素敵な助言を頂けると思います。
もちろんお断りされても構いません。私達そこまでの仲でもないので……」
少しだけ悲しげな顔を見せれば
「そんな事!ただ私達はセイカ様の事を誤解していただけです!」
「そうですわ!私達はお話しする機会がなく、これを期に是非お話しさせてくださいませ!」
「宜しければ招待状を是非頂きたいと思います。お願いできましょうか?」
「私達はお友達にだってなれますわ!」
あっという間に取り巻きの方達は陥落。これはゲームどおりなのでチョロイと歓喜する顔の裏でニヤリと笑ってしまうのは仕方がない。そして
「聖女様がそうおっしゃるのでしたらお断りするわけにはまいりませんわ。
当日までにはお父様を説得して是非お茶会には参加させていただきます」
王太子殿下の婚約者も陥落できた。
節なんてない細く白い指先で黄金の巻気の毛先をくるくると遊び、少し恥らいながら毛先を唇に寄せる。顔は本棚の方に、でも視線だけはちらりちらりとせわしなく私の様子を見る。なんて、なんて……
『可愛いツンデレなのぉぉぉ!!!』
友情エンド確定のこのシーンを手に入れる為のスチルを実体験何てなんて殺傷力!鼻血が出ないのが不思議なくらい可愛いエヴィリーナ様の本領発揮と言うかここから主人公顔負けの可愛い顔をバンバン披露する事から真のヒロインはエヴィリーナではないかと騒がれた時もあった。
女の子キャラならエヴィリーナが一押しなのよね。そして続編ではそんな彼女とR-18的な百合百合も出来ると言うのに……
『お願い!そんなエヴィリーナ様を私に見せて!!!』
心の中で血の涙を流す私はまだ知らない。
既に天鳥さんがR-18に乗ってBLコース爆心中な事を。
そうすると女の子は百合コースに乗っかるなんて情報がスクショの隅で切られていた事を、この世界の成人基準が十六歳で既に私達は成人だと言う事を、私はまだこの世界の強制力をナメていた。
「セイカ様はなんでこのような場所をご存じなので?」
「それは、内緒です」
普通なら絶対足を運ぶ事の許されない場所。だけど先ほどの司書とのやり取りは何度も足を運んでいる事ぐらいは気づいたのだろう。確かに普通には入れない場所だけど、ある一定の条件をクリアすればここに入る事がゆるされるのだ。
例えばある晴れた日の昼休み、ずぶぬれになった少女がしくしくと泣いていれば手を差し伸ばさない紳士はいるのだろうか?
老いても司書は紳士だった。
こっそり少女を招き入れタオルを渡し、部下から代わりのドレスを借りて落ち着くようにハチミツの入ったホットミルクを渡してくれる。
何があったかと問うても少女は口は開かず涙を流さずに泣く姿を哀れに思い、この部屋への招待を与えるのだった。
この部屋では静かに本を読む事。決して図書室の方に人がいる事を気づかれてはいけない。貴重な本を守る為だけの部屋、おしゃべりを楽しむ場ではない。が……
「それよりも一体本日はどうなされたのです?その、あまり元気が無いようでしたので」
淑女らしく言葉を選ぶ。こんな異世界じゃなければ「今日元気ないね?どうした?」そんな簡単な会話なのに貴族とは丁寧に話さないといけないなんて面倒、なんて言わないけどまだるっこしいとやっぱり面倒と思うも
「殿下に最近の私の言動は目に余ると言われまして……
父にも報告をしたようで、家の者の見張りが付いていたようで……」
「まあ、自業自得って奴ですね」
バケツで水をかけられたり教科書を破られたり、持ち物を失くされたりと多々あった事は総て家に筒抜けだった事を教えられたようだ。
「ましてや私のお昼、どれだけひっくり返したか判ってますか?
貴族だからあまり実感はないと思いますが、作物が実る季節は一年を通して決められた時期にしか生育をしないし収穫できません。
平民の農家が一年のうち大半をかけて育てた物を美味しく食べて戴く為に料理人が丹精込めて作られたお料理をゴミのように捨てる方を貴いとはとても呼べません」
私は立ち上がって本棚から一冊の本を取り出した。
こう言った貴族の学校では決して見る事の出来ない農業の作付けの本。
これには土づくりから種の実生の仕方、作付け、栄養の与え方、季節や聞こうと言った事細かな日記のような内容が何万と言う種類ごとにびっしりと何冊にも分れて書かれている。
「この国の安定した農業はこう言った、貴族から平民になられた方が記した記録から成り立ちます。周辺の国と比べて大国とは言えないこの国で何一つ無駄が出ないように、そして安定した供給が出来る様にと百年ほど前の方の努力でこの国は飢餓や飢饉に強い国になりました。
貴方たちの悪戯はそうやって先人が築いた努力を無にする行為だと言う事を理解してください」
他にもこの国の印刷技術の歴史や布地の作り方、染色の方法の前の染料の作り方などが事細かく書いた本を渡した。いわゆる第一次産業の部分を貴族の子女が知るはずもなく
「領地を治める方ならきっと知っていると思いますが、家督を継ぐ事のない方には理解できない世界かと思います。ですが、皆さんの領地でもこのように生活を支える仕事をなさっている方は必ずいます。聞かされなく知らないだけでしょうが、その煌びやかなドレスを纏う以上、知らないと言う言い訳は聞きたくはありません」
そう言って私は失礼しますと言って部屋を出ようとするもふと思い出す。
「今度の花の日は皆様お時間空いてますか?」
聞けばよほど耳に痛い話だったようで余計にしょぼんとしてしまっていたけど、婚約者に指摘されて家族にも出かけず家で勉強する様にと言われたのか予定はないと言う。
「花の日には私と一緒にこちらの世界に来た方とお茶会をしています。
よろしければ一度ご一緒してみませんか?」
そんな私の誘いに皆さんは戸惑いを色を隠せずにいる。さんざん意地の悪い事をしておいてこうやって誘われる事は想像してなかったのだろう。
「天鳥様と仰ってとても素敵なお兄様なのです。
一度お話してみませんか?きっと素敵な助言を頂けると思います。
もちろんお断りされても構いません。私達そこまでの仲でもないので……」
少しだけ悲しげな顔を見せれば
「そんな事!ただ私達はセイカ様の事を誤解していただけです!」
「そうですわ!私達はお話しする機会がなく、これを期に是非お話しさせてくださいませ!」
「宜しければ招待状を是非頂きたいと思います。お願いできましょうか?」
「私達はお友達にだってなれますわ!」
あっという間に取り巻きの方達は陥落。これはゲームどおりなのでチョロイと歓喜する顔の裏でニヤリと笑ってしまうのは仕方がない。そして
「聖女様がそうおっしゃるのでしたらお断りするわけにはまいりませんわ。
当日までにはお父様を説得して是非お茶会には参加させていただきます」
王太子殿下の婚約者も陥落できた。
節なんてない細く白い指先で黄金の巻気の毛先をくるくると遊び、少し恥らいながら毛先を唇に寄せる。顔は本棚の方に、でも視線だけはちらりちらりとせわしなく私の様子を見る。なんて、なんて……
『可愛いツンデレなのぉぉぉ!!!』
友情エンド確定のこのシーンを手に入れる為のスチルを実体験何てなんて殺傷力!鼻血が出ないのが不思議なくらい可愛いエヴィリーナ様の本領発揮と言うかここから主人公顔負けの可愛い顔をバンバン披露する事から真のヒロインはエヴィリーナではないかと騒がれた時もあった。
女の子キャラならエヴィリーナが一押しなのよね。そして続編ではそんな彼女とR-18的な百合百合も出来ると言うのに……
『お願い!そんなエヴィリーナ様を私に見せて!!!』
心の中で血の涙を流す私はまだ知らない。
既に天鳥さんがR-18に乗ってBLコース爆心中な事を。
そうすると女の子は百合コースに乗っかるなんて情報がスクショの隅で切られていた事を、この世界の成人基準が十六歳で既に私達は成人だと言う事を、私はまだこの世界の強制力をナメていた。
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