デーモンロード 〜強欲の悪魔、異世界へ征く〜

逸志てま

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第一章

第一話:異世界への召喚

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「ここは───」


 召喚陣を潜ると、私は洞窟の中にいた。
 いや、洞窟というより石室に近い。
 石造りの棺桶のような物が置かれ、その前には御供物だろう花や山菜が供えられている。
 花の様子を見るに、どうやら最近供えられた物のようだ。


「召喚者がいないだと───?」


 私が乗っていた召喚陣が消えていく。
 悪魔の召喚には召喚者が必要だ。
 陣の種類にもよるが、概ねは召喚者と悪魔が契約を結び、何らかの対価を悪魔に支払うことで力を貸すというのが基本だ。

 しかし、通常感じられるはずの召喚者との繋がりすら感じることができなかった。

 “召喚”という形で来た以上、召喚者は必ずいるはずだが───。


「まぁいい、一先ず外に出るか」


 召喚者がいないのなら都合が良い。
好きにさせて貰うとしよう。
 自身の身体を見ると、受肉している。
 これなら仮に召喚者が居たとしても、受肉している以上は契約に縛られることもない。

 私は自身の身体の動きを確かめながら石室の外へ出る。
 地上へはそこまで距離もなく、数分歩いたら外に出ることができた。


「森……か。まずはここがどの国のどこに位置しているのか把握する必要があるな」


 辺り一面緑豊かな森林が覆っており、清んだ空気が鼻腔をくすぐる。
 樹齢1000年はあろうかと思われる大木も見受けられた。
 気持ちの良い空気に当てられ、黒翼を広げて伸びをする。


「くぅ~。気持ちいい。悪魔界は荒廃した土地しかないから新鮮だ」


 昔、人間界に行ったときを思い出すなぁ。
 そんな感傷に浸りながら、悪魔界では見られない景色を見ることが出来て良い気分になっていたところに、無粋な邪魔が入る。


「ハァ…ハァ…ハァ…………っ!?」


 十歳前後だろうか。
 綺麗な銀髪のショートヘアとは裏腹に薄汚れた衣服を身にまとった幼い少女が息も絶え絶えにこちらへ駆けてくる。

 そして、私の姿を見て驚愕し固まってしまった。

 あっ、翼を出したままだった。


「あ……あなたは……」

「驚かせて申し訳ない。少し道に迷ってしまってね。良ければここが何処にあるか教えていただけないかな?」


 私は紳士的に礼をし、穏やかな口調で少女に質問する。
 彼女はそんなことは耳に入ってないと言わんばかりに目を大きく開いてこちらに畏怖の念を抱いているようだ。


「堕天使様……」

「え!?」


 予想外の返事に変な声を出してしまった。
 確かに黒翼は堕天使っぽいかもしれないが、神秘が薄れた現代においてそんな反応をされるとは思っていなかった。
 せいぜいコスプレした変な人だろう。

 しかも、ルー君と同じ堕天使に勘違いされるなんて、まるで彼の同類のように思われているみたいじゃないか。


「いや、私は堕天使ではなく悪───」

「ガァァァアアアアアアアァァァァァァ!!!」


 私が言い終わる前に、大地を揺るがすような咆哮と共に巨大なヤギが森の奥から現れる。
 禍々しいねじ曲がった双角。
 筋骨隆々とした肉体は白い体毛で覆われ、手には3メートルはある大鉈を担いでいる。

 そして、背には膜を張った黒光沢の羽が広がっている。
 上級悪魔グレーターデーモン
 この世界において、“災厄”と呼ばれる存在がそこに立っていた。


「シネェェェェェェェェェ!!!」


 大ヤギが巨大鉈を少女へ振り下ろす。
凄まじい膂力で放たれた鉈は豪風を撒き散らしながら一筋の閃光となって猛スピードで迫る。
 振り返った少女が死を意識する暇もなく、彼女の意識を断つ─────



 ─────刹那。
 大ヤギの頭部と四肢が


「……え?」


ドオォォォォン!!!

 頭と四肢を失った大ヤギの巨体が地面へ倒れる。
切断面から血がドクドクと流れ、森の大地を鮮血に染めていく。

 少女は困惑した様子で死体となった大ヤギに目を向けていたが、彼はまるで何事もなかったかのように先ほどと同じ口調で語りかけ始めた。





「───悪魔なんだ。そこのところ間違えないで頂きたい」




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