2 / 21
第一章
第一話:異世界への召喚
しおりを挟む
「ここは───」
召喚陣を潜ると、私は洞窟の中にいた。
いや、洞窟というより石室に近い。
石造りの棺桶のような物が置かれ、その前には御供物だろう花や山菜が供えられている。
花の様子を見るに、どうやら最近供えられた物のようだ。
「召喚者がいないだと───?」
私が乗っていた召喚陣が消えていく。
悪魔の召喚には召喚者が必要だ。
陣の種類にもよるが、概ねは召喚者と悪魔が契約を結び、何らかの対価を悪魔に支払うことで力を貸すというのが基本だ。
しかし、通常感じられるはずの召喚者との繋がりすら感じることができなかった。
“召喚”という形で来た以上、召喚者は必ずいるはずだが───。
「まぁいい、一先ず外に出るか」
召喚者がいないのなら都合が良い。
好きにさせて貰うとしよう。
自身の身体を見ると、受肉している。
これなら仮に召喚者が居たとしても、受肉している以上は契約に縛られることもない。
私は自身の身体の動きを確かめながら石室の外へ出る。
地上へはそこまで距離もなく、数分歩いたら外に出ることができた。
「森……か。まずはここがどの国のどこに位置しているのか把握する必要があるな」
辺り一面緑豊かな森林が覆っており、清んだ空気が鼻腔をくすぐる。
樹齢1000年はあろうかと思われる大木も見受けられた。
気持ちの良い空気に当てられ、黒翼を広げて伸びをする。
「くぅ~。気持ちいい。悪魔界は荒廃した土地しかないから新鮮だ」
昔、人間界に行ったときを思い出すなぁ。
そんな感傷に浸りながら、悪魔界では見られない景色を見ることが出来て良い気分になっていたところに、無粋な邪魔が入る。
「ハァ…ハァ…ハァ…………っ!?」
十歳前後だろうか。
綺麗な銀髪のショートヘアとは裏腹に薄汚れた衣服を身にまとった幼い少女が息も絶え絶えにこちらへ駆けてくる。
そして、私の姿を見て驚愕し固まってしまった。
あっ、翼を出したままだった。
「あ……あなたは……」
「驚かせて申し訳ない。少し道に迷ってしまってね。良ければここが何処にあるか教えていただけないかな?」
私は紳士的に礼をし、穏やかな口調で少女に質問する。
彼女はそんなことは耳に入ってないと言わんばかりに目を大きく開いてこちらに畏怖の念を抱いているようだ。
「堕天使様……」
「え!?」
予想外の返事に変な声を出してしまった。
確かに黒翼は堕天使っぽいかもしれないが、神秘が薄れた現代においてそんな反応をされるとは思っていなかった。
せいぜいコスプレした変な人だろう。
しかも、ルー君と同じ堕天使に勘違いされるなんて、まるで彼の同類のように思われているみたいじゃないか。
「いや、私は堕天使ではなく悪───」
「ガァァァアアアアアアアァァァァァァ!!!」
私が言い終わる前に、大地を揺るがすような咆哮と共に巨大なヤギが森の奥から現れる。
禍々しいねじ曲がった双角。
筋骨隆々とした肉体は白い体毛で覆われ、手には3メートルはある大鉈を担いでいる。
そして、背には膜を張った黒光沢の羽が広がっている。
上級悪魔。
この世界において、“災厄”と呼ばれる存在がそこに立っていた。
「シネェェェェェェェェェ!!!」
大ヤギが巨大鉈を少女へ振り下ろす。
凄まじい膂力で放たれた鉈は豪風を撒き散らしながら一筋の閃光となって猛スピードで迫る。
振り返った少女が死を意識する暇もなく、彼女の意識を断つ─────
─────刹那。
大ヤギの頭部と四肢が消えた。
「……え?」
ドオォォォォン!!!
頭と四肢を失った大ヤギの巨体が地面へ倒れる。
切断面から血がドクドクと流れ、森の大地を鮮血に染めていく。
少女は困惑した様子で死体となった大ヤギに目を向けていたが、彼はまるで何事もなかったかのように先ほどと同じ口調で語りかけ始めた。
「───悪魔なんだ。そこのところ間違えないで頂きたい」
召喚陣を潜ると、私は洞窟の中にいた。
いや、洞窟というより石室に近い。
石造りの棺桶のような物が置かれ、その前には御供物だろう花や山菜が供えられている。
花の様子を見るに、どうやら最近供えられた物のようだ。
「召喚者がいないだと───?」
私が乗っていた召喚陣が消えていく。
悪魔の召喚には召喚者が必要だ。
陣の種類にもよるが、概ねは召喚者と悪魔が契約を結び、何らかの対価を悪魔に支払うことで力を貸すというのが基本だ。
しかし、通常感じられるはずの召喚者との繋がりすら感じることができなかった。
“召喚”という形で来た以上、召喚者は必ずいるはずだが───。
「まぁいい、一先ず外に出るか」
召喚者がいないのなら都合が良い。
好きにさせて貰うとしよう。
自身の身体を見ると、受肉している。
これなら仮に召喚者が居たとしても、受肉している以上は契約に縛られることもない。
私は自身の身体の動きを確かめながら石室の外へ出る。
地上へはそこまで距離もなく、数分歩いたら外に出ることができた。
「森……か。まずはここがどの国のどこに位置しているのか把握する必要があるな」
辺り一面緑豊かな森林が覆っており、清んだ空気が鼻腔をくすぐる。
樹齢1000年はあろうかと思われる大木も見受けられた。
気持ちの良い空気に当てられ、黒翼を広げて伸びをする。
「くぅ~。気持ちいい。悪魔界は荒廃した土地しかないから新鮮だ」
昔、人間界に行ったときを思い出すなぁ。
そんな感傷に浸りながら、悪魔界では見られない景色を見ることが出来て良い気分になっていたところに、無粋な邪魔が入る。
「ハァ…ハァ…ハァ…………っ!?」
十歳前後だろうか。
綺麗な銀髪のショートヘアとは裏腹に薄汚れた衣服を身にまとった幼い少女が息も絶え絶えにこちらへ駆けてくる。
そして、私の姿を見て驚愕し固まってしまった。
あっ、翼を出したままだった。
「あ……あなたは……」
「驚かせて申し訳ない。少し道に迷ってしまってね。良ければここが何処にあるか教えていただけないかな?」
私は紳士的に礼をし、穏やかな口調で少女に質問する。
彼女はそんなことは耳に入ってないと言わんばかりに目を大きく開いてこちらに畏怖の念を抱いているようだ。
「堕天使様……」
「え!?」
予想外の返事に変な声を出してしまった。
確かに黒翼は堕天使っぽいかもしれないが、神秘が薄れた現代においてそんな反応をされるとは思っていなかった。
せいぜいコスプレした変な人だろう。
しかも、ルー君と同じ堕天使に勘違いされるなんて、まるで彼の同類のように思われているみたいじゃないか。
「いや、私は堕天使ではなく悪───」
「ガァァァアアアアアアアァァァァァァ!!!」
私が言い終わる前に、大地を揺るがすような咆哮と共に巨大なヤギが森の奥から現れる。
禍々しいねじ曲がった双角。
筋骨隆々とした肉体は白い体毛で覆われ、手には3メートルはある大鉈を担いでいる。
そして、背には膜を張った黒光沢の羽が広がっている。
上級悪魔。
この世界において、“災厄”と呼ばれる存在がそこに立っていた。
「シネェェェェェェェェェ!!!」
大ヤギが巨大鉈を少女へ振り下ろす。
凄まじい膂力で放たれた鉈は豪風を撒き散らしながら一筋の閃光となって猛スピードで迫る。
振り返った少女が死を意識する暇もなく、彼女の意識を断つ─────
─────刹那。
大ヤギの頭部と四肢が消えた。
「……え?」
ドオォォォォン!!!
頭と四肢を失った大ヤギの巨体が地面へ倒れる。
切断面から血がドクドクと流れ、森の大地を鮮血に染めていく。
少女は困惑した様子で死体となった大ヤギに目を向けていたが、彼はまるで何事もなかったかのように先ほどと同じ口調で語りかけ始めた。
「───悪魔なんだ。そこのところ間違えないで頂きたい」
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる