フードコートの神様!

sweetheart

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午後2時頃、人波が引いて落ち着いた時間帯。
ベテランのウエイトレスが
窓際に座っている老夫婦のところへ行き、
紅茶と焼き菓子をサービスした。

「お茶代をお支払いしますので……」
「いえ、結構です。いつもご利用いただきありがとうございます」

遠慮する夫婦に、
ウエイトレスは優しく微笑みかける。
その心遣いに触れた夫婦は、
少し驚いた後、嬉しそうに笑顔を交わした。

「なんて素敵なお店なんでしょう」
「ああ、また来よう」

そう言いながら、
二人は手をつないで店内を後にした。
老夫婦の幸せそうな後ろ姿を見送りながら、
私も静かに微笑んだ。

夕方5時過ぎ、
小学校低学年の子どもたちが
宿題を済ませようと集まってきた。
テーブルに広げられた算数ドリルを見ながら、
互いに教え合いながら問題を解いている。

「この掛け算、どうやるんだっけ?」
「えっとね、まず5を3回足すと……」
「あ!分かった!ありがとう!」

単純な計算とはいえ、
分からない部分を助け合う姿勢は、
将来大切になってくる能力だと思う。
私もそっと後ろから見守り、
分からない箇所があれば、
ヒントを与える形で支援した。

夜7時を過ぎると、
家族連れやデート中のカップルなど、
よりプライベートな空間を求めた人々が増え始めた。
食事を終えた後も、ゆっくり会話を楽しむ姿が多い。

「それでさ、来月の旅行のことなんだけど……」
「うん、楽しみだね。どこ行こうか?」

恋人同士の甘い会話や、
夫婦の生活の報告など、
様々な人生模様が垣間見える。
これらの小さなドラマは、
このフードコートという舞台でしか見られない特別なものだ。

深夜0時、閉店間際の慌ただしさが
ひと段落つく頃合い。
最後の客が
レシートを受け取り、扉に向かう。
その後ろ姿を見送りながら、
今日一日を振り返る。

朝から晩まで、
たくさんの出会いと別れがあった。
些細な出来事の中で、
人々の想いや感情が交錯する。
これら全てが、私が見守るべき世界なのだ。

「お疲れ様でした」
「お先に失礼します」

スタッフたちが交代で退勤していく。
一人になったフードコートで、
私は改めて決意を新たにする。

明日もまた、
ここに集う人々の幸せを願い、
微力ながら支えていこうと。

---

朝霧が立ち込める中、
私はフードコートの中央に立っていた。
早朝の静けさは、どんなに時代が変わっても変わらない。

5時30分、初めの店員が到着する。
ベーカリーの石井さんは、
まだ寝ぼけ眼でエプロンをつけながら、
小麦粉の袋を運んでいる。

「おはようございます!」
「おはようございます、今日もよろしくお願いします」

厨房に入ると、
既に火力の強いオーブンでパン生地が焼かれ始めていた。
芳ばしい香りがフロアにも漂い始める。

6時過ぎ、
夜勤明けの警備員が巡回している。
彼は丁寧に各店舗の鍵を確認し、
安全状態をチェックしている。
その姿は、このフードコート全体を守る番人のようでもある。

7時、
最初の客となる常連の老人が現れた。
彼は決まってクロワッサンとコーヒーを注文し、窓際の席で新聞を読みながら朝食を取る。
いつもの習慣を守る姿は、
この街の安定性を象徴しているようだ。

午前中、フードコートは徐々に活気を帯びていく。
休日ということもあり、家族連れや観光客が多く見受けられる。
子どもたちの歓声と、
彼らを見守る親たちの微笑み。
そこには紛れもない幸福が漂っていた。

昼時、ランチタイムを迎え、
混雑はピークを迎える。
会社員、学生、買い物客……
様々な人々が思い思いの食事を選んでいる。

「あの、このステーキランチってどれですか?」
「こちらになります。本日の肉厚ステーキをどうぞ」

レストランのウェイターと客のやり取りに耳を傾けながら、
私も今日の運勢を占うような気持ちで見守っている。
時に笑顔が咲き、
時に悲しみが溢れることもあるだろう。
それでも、
この場所は常に温かく迎えてくれる。

午後3時頃、
一息ついた空気が流れる。
テスト期間中の高校生たちが
机を並べて勉強しており、
互いに分からない問題を教え合っている。
その姿は、かつての自分の学生時代を思い出させる。

「この公式ってどう使うんだっけ?」
「えっとね、まずこれを展開して……」

真剣な表情で取り組む若者たちの姿には、
未来への希望が感じられる。
彼らの前途が明るいものであるよう、
心から願わずにはいられない。

夕方5時、
下校途中の中学生たちが
アイスクリームを買いに寄る時間帯。
夏の暑さを乗り切るために、
この一時は格別な価値を持つ。

「今日の分、奢ってやるよ!」
「マジ? サンキュー!」

仲間との絆を確かめ合う瞬間は、
何物にも代えがたい財産だ。
彼らが大人になった時に、
今日の思い出が支えとなればと願うばかりである。

夜8時を過ぎると、
家族連れが次々と帰宅していく。
一方で、デート中のカップルや
同僚との食事会などで賑わう場所も少なくない。
それぞれの関係性によって、
過ごし方も違う。
ただ、どの関係においても大切なのは、
食を通じたコミュニケーションだということだろう。

深夜12時、最後の客が帰路につく。
スタッフたちが後片付けに追われ、
明日への準備を整えている。
今日も一日、様々な人々の生活と交差することができた。

「お疲れ様でした」
「ありがとうございました」

挨拶を交わす人々の表情は、
充実感に満ちている。
私も彼らに敬意を表しながら、
今日という日の終わりを見届けた。

フードコートは単なる食事処ではなく、
人と人との縁が結ばれる場所。
時には偶然の出会いから、
生涯の友情が生まれることもある。

この場所で交わされる会話や笑顔、
時には涙までも含めて、
すべてが明日への糧となっていくのだ。

私はそう信じて、
明日もまたこの場所に立ち続ける。

---

夜明け前の薄明かりの中、
私は静かに佇んでいた。
昨日と同じように、
今日も多くの人々が訪れるのだろう。
そう思うと、なぜか胸が温かくなる。

7時30分、朝一番の店員が出勤してきた。
パン屋の新人アルバイト・佐藤くんは、
まだ少し緊張した面持ちでエプロンを巻いている。

「佐藤くん、おはよう! 昨日教えた通りに焼いてみて」
「はい!頑張ります!」

指導役の先輩に励まされながら、
彼は初めて一人で生地を成型し始めた。
その手つきはぎこちないが、
一生懸命さが伝わってくる。
いつか彼も、自信を持って焼けるようになる日が来るだろう。

8時過ぎ、最初の客である常連の老人が現れた。
杖をついたゆっくりとした足取りで入ってきた彼は、
いつものようにクロワッサンとコーヒーを注文した。

「おはようございます。今日もクロワッサンですね?」
「ああ、そうだよ。ありがとう」

店員との短いやり取りを楽しみながら、
彼は窓際の席に腰掛けた。
朝日が差し込むその場所は、
老人にとって一日の始まりを感じられる大切な時間なのだ。

午前中、フードコートは徐々に活気を帯びていく。
今日は祝日ということもあり、
家族連れや観光客が多く見受けられる。
休日の特別な食事ができることへの期待が、
人々の表情に表れていた。

「ねえ、今日はどれ食べようか?」
「あれがいい! アレが食べたい!」
「そうね、じゃあ両方とも頼んで分けましょうか」

幼い子どもの無邪気な笑顔に、
私は心が和む。
彼らが幸せそうに食事をする姿を見るだけで、
この仕事を続けてきて良かったと思える。

昼時、混雑は最高潮に達した。
会社員、学生、買い物客……
様々な人々が思い思いの食事を選んでいる。
行列ができている店舗もあり、
どこも忙しそうだ。

「お待たせしました! ご注文は以上でしょうか?」
「はい、ありがとうございます」

料理が届いた時の客の嬉しそうな顔を見るのが、
私たちにとって最大の報酬なのかもしれない。

午後3時過ぎ、
一段落した時間帯。
休憩を取っていたスタッフたちが
それぞれ食事やティータイムを楽しんでいる。
彼らの談笑する声が聞こえてくると、
私も安心する。
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