ダンジョン孤児の配信生活~探索者でもないのに知らないうちに全国配信されて有名人になっていました~

ジャジャ丸

文字の大きさ
8 / 42

第8話 災害対策

しおりを挟む
「テュテレール、どうかした? どこか痛い?」

『いや、問題ない。機能正常』

 現在、私はセーフハウスでテュテレールをベッドに寝かせ、修理している真っ最中。途中でちょっと反応が鈍くなっていたことに、こてんと首を傾げていた。

 どこか悪いところを見落としたのかな? 心配だし、もう一度フルメンテしよう。

“しかしこの絵面、自分が解体されてるみたいでちょっと落ち着かないなw”
“だがそれも解体してるのがアリスちゃんだと思うとこれはこれで”
“ご褒美です”
“通報した”

 ……配信は、テュテレールの目で見たものがそのまま地上に放送されてる。

 だから、まるで自分が解体されてるみたい、って感想は分かるんだけど、それがご褒美ってどういうこと?

『……不健全な書き込みを検知、削除する』

「あっ」

 意図を聞き出す前に、コメントがなくなっちゃった。
 どうしよう、余計に気になる。

「ねえ、今一瞬だけ見えたご褒美ってどういう意味?」

『アリスが知る必要はないと判断する』

“アリスちゃんにはまだ早いね”
“うんうん”

「むぅ~」

 また私だけ除け者にして! 私、そんなに子供じゃないもん!

「いいもん、そんな意地悪するなら、テュテレールに合体機能つけちゃうんだから」

『待て、アリス。落ち着いて話し合おう』

「待たないも~ん、それに、テュテレールだって強くなるし、良いこと尽くめでしょ?」

『自律行動可能なロボットを、わざわざ一個体に集結させるのは非効率。戦闘中の合体は大きな隙を晒すことにも繋がり、戦闘中以外での合体は追加兵装で十分である』

「非効率でもテュテレールが強くなるなら十分だよ。それに、色々理由を付けてるけど、本当はみんなの前で合体とかするの恥ずかしいと思ってるんでしょ!」

『…………』

 テュテレール的には、外装フレームがロボットにとっての服で、内装を剥き出しにするのは裸になるのに近い感覚みたい。

 そして、合体しようと思ったら、やり方にもよるけど確実に内装の一部は剥き出しになるからね。敵の前で裸になるのは嫌! みたいな感じなんじゃないかな。

“えっ、テュテレールにも恥ずかしいとかあるんだ”
“なにそれ可愛くない?”
“アリスちゃんだけでなくテュテレールも可愛いじゃったか”

『私はロボットだ、そのような感情はない』

「じゃあ、合体機能あっても大丈夫だよね?」

『…………』

「ふふふ、大丈夫、ちゃんと恥ずかしくないようにやるから」

 そんなことを言いながら、私はテュテレールの調整を続ける。

 即席の武器ならパパッと作って終わりでもいいけど、テュテレールは大切な家族だ。ちゃんと時間をかけて、丁寧に作業を進める。

“しかし、もうじき迷宮災害が起きるって言われてるのにここは平和だな……”
“アリスちゃん、避難しなくて大丈夫なの?”

「避難? しないよ。だって迷宮災害って、普段は深層に引きこもってるモンスターの素材を集める絶好の機会だもん」

 私の言葉に、みんな一斉に“えっ”と呟く。
 どうしたんだろう、私変なこと言ったかな?

「深層のモンスターが強いのは、上層、中層、下層って戦い抜けた上で、更に罠だらけ敵だらけの深層に攻め込まなきゃいけないからだよ。向こうから攻めてくるなら、いくら数が多くてもやりようはあるの」

 モンスターにとって、このダンジョンは自分達の家で、身を守る盾なのかもしれないけど……災害の時は、モンスター達自らその優位を捨ててくれる。

 だから、普段と違ってこっちが罠を張って待ち構えればいい。

「今回の災害ではどんな素材が集まるかな~、楽しみだね、テュテレール」

『油断は禁物だ、アリス。我々は常に万全の準備で挑まなければならない』

「分かってるよ。深層に繋がる道に色々と仕掛けはしておいたから、準備の方は大丈夫だし、油断もしてないよ。だけど、深層の素材を使って武器を作れば、私も自力で戦えるようになるかもしれないでしょ? わくわくしちゃって」

 ポワンっていう護衛も作ったけど、やっぱり私自身が戦ってモンスターを倒せるようにならないと、テュテレールは中層で探索者をするのを認めてくれないだろうからね。

 そのためだけに、テュテレールに素材を集めて貰うのは気が引けたけど……災害の中でなら私も罠を作って貢献出来るから、自分用の武器に使う素材を確保するにはちょうど良い。

「えへへ、楽しみだな~」

“俺、迷宮災害を楽しみだなんて言う子初めて見た”
“奇遇だな、俺もだ”
“いやまあ、武闘派な配信者ならいないことはない、かな?”
“ちなみに、テュテレール君的には勝算どれくらいなの?”

『私が単独で迷宮災害に対処する場合、勝率は六十七パーセント。だが……』

 視聴者のみんなからの質問に、テュテレールは律儀に答える。

 そして──メンテナンスを終えたテュテレールはベッドから起き上がり、先の答えに付け足すように堂々と断言した。

『アリスの支援があれば、百パーセントだ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...