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第11話 お姉ちゃんが出来ました
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「わーい、大漁だ~!」
迷宮災害発生から、およそ三時間後。私達は、無事に鎮圧に成功した。
後に残されたのは、二千体にも及ぶ大量の機械モンスター達が残した残骸だ。
そのまま放っておくと一日くらいでダンジョンに吸収されて消えちゃうから、急いで回収しなきゃね。
「本当に……たったこれだけの人数で……迷宮災害……終わった……夢でも見てるの……? あは、あはは……」
でも、一緒に戦ってくれた茜さんの様子がおかしい。
なんだかボーッとしたまま変な笑い声あげてるし……疲れちゃったのかな?
「茜さん、これ」
「へ!? えっと……これは……?」
「オレンジジュース。とっても美味しいので、飲むと元気になれますよ」
テュテレールが事前に頼み、茜さんが持ってきてくれた、お昼ごはんのハンバーグセット。
それに一緒についていたジュースを差し出すと、ハイライトが消えていた瞳に光が戻る。
「ありがとう……あなた、怖いだけじゃなくて優しいのね」
「えっ!? 私、怖いですか!?」
「そりゃあだって、数千のモンスターを実質一人で撃破したんだもの、特級探索者でもそこまで出来る人はほぼいないわよ?」
少なくとも私は無理、と茜さんは頭を振る。
「私も一人じゃないですよ? テュテレールがいてくれましたから」
「そのテュテレールを作ったの、あなたなんでしょ? なら、あなた一人と変わらないわよ」
「変わります! テュテレールは私の家族ですから!」
ぷんぷん、と怒りながら、私は茜さんの勘違いを訂正する。
確かに、テュテレールはロボットだし、法律上は私の武器って扱いになるのかもしれない。
でも、私にとってテュテレールは育ての親で、大切な家族だ。武器なんかじゃない。
『────』
「あはは、ポワンのことも忘れてないよ、私のこと、たくさん運んでくれてありがとう」
『────』
すり寄ってきたポワンの頭……頭? を撫でると、満足して離れていく。
うーん、ポワンにも、テュテレールみたいにお喋り出来る言語モジュールを付けてあげようかな?
さすがに、テュテレールくらいハッキリと自律行動出来るレベルの人工知能は難しいけど、簡単な会話くらいなら……。
「……家族、か」
「? 茜さん?」
「ううん、大切な家族がいるのっていいことよね」
また少し、茜さんが遠い目をしたかと思えば、私の頭を撫で始めた。
さっきとは違う、どこか寂しそうな表情。
それを見て、私は自分から茜さんに抱き着いた。
「えっ、ちょっと、どうしたの?」
「えーっと、その……茜さん、お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
私の問いかけに、茜さんは目を丸くする。
それでも構わず、私は言葉を重ねた。
「私、お姉ちゃんがいたらなって思うことがよくあって……その、茜さんがご迷惑じゃなかったら、ですけど……」
自分でも、もう少しマシな言い訳はないのかって思うところだけど、咄嗟に出たのはそんな理由だった。
それを聞いた茜さんは、呆れたように溜め息を溢す。
「全く、そんな理由で初対面の私をお姉ちゃん扱いなんて、めちゃくちゃ強いのにバカなのね。悪い人に引っ掛かりそうで心配だわ」
「あう……ごめんなさい、茜さん」
しょんぼりと顔を俯かせながら離れると、そんな私を茜さんがまた撫でた。
びっくりして顔をあげる私に、茜さんはにこっと微笑む。
「お姉ちゃん、なんでしょ? 呼ぶならちゃんと呼んでよね」
「……! うん、茜お姉ちゃん!」
もう一度ぎゅっと抱き着くと、茜お姉ちゃんはぽんぽんと私の背中を叩く。
えへへ、お姉ちゃん……嬉しい。
“なんだこの尊い空間”
“茜ちゃんがデレた”
“可愛いと可愛いが合わさり最強に見える”
“テュテレール君的にはオーケーなんだろうか”
『探索者協会が公開している西城茜のプロフィールに、おかしな点はない。先程の戦闘においても、特級探索者の名に恥じない能力を示していた。以上のことから、西城茜とアリスが友好を深めるのは、今後のためにも有意義であると判断する。それより……アリス』
私が茜お姉ちゃんと抱き合っていると、テュテレールから声をかけられた。
『そろそろ、回収作業の続きをするべきだろう。あまりゆっくりしていては、内部の戦闘に気付いて調査に来た他の探索者に素材を奪われてしまう』
「あ、そうだったね!」
ダンジョンにおいて、落ちていた素材は原則拾った人の所有物だ。
もちろん、目の前で他人が倒したモンスターの素材をかっさらうのはダメだけど、倒した後にすぐ回収せず放置していた場合、それに対して優先権は主張出来ないの。
今回みたいに、大規模な戦闘でたくさんのモンスターと連戦になった場合、終わったらすぐに回収しに行かないと、横取りされても文句は言えない。
「お姉ちゃん、急ごう! 手分けして拾うの!」
「手分けはいいけど、集めた素材はどこに持っていけばいい? 全部換金する?」
「? お姉ちゃんの好きにしていいよ?」
「好きにって、あなたの素材なんだから、好きにするわけには行かないでしょ?」
「私じゃなくて、私達の素材だよ。だから、お姉ちゃんが集めた分は、お姉ちゃんが自由に使っていいよ」
そう伝えると、お姉ちゃんはまたしても驚いた表情で私の顔をまじまじと見つめてきた。
うん? どうしたんだろ?
「いや、今回の戦闘はほとんどあなたとテュテレールがやったんだから、そんな無条件に貰うわけには……」
「私達もお姉ちゃんに手伝って貰えて助かったから、お互い様だよ。どうしてもっていうなら、集めた後でちゃんとはんぶんこしよっか」
『この後、アリスの探索者免許を受け取りに地上へ向かう予定だ。山分けの相談も含めて、上層入り口付近に集合しよう』
「あ、いいね。それじゃあお姉ちゃん、そういうことで!」
「えっ、ちょっと、まさか本当に半分にするつもり!? ねえ、待って、ちょっとー!!」
素材の回収を急ぐべく、テュテレールと一緒にその場を後にする。
お姉ちゃんが叫んでるのが聞こえてきたけど……まあ、その辺りは集めてからでも出来るし、後にしようっと。
迷宮災害発生から、およそ三時間後。私達は、無事に鎮圧に成功した。
後に残されたのは、二千体にも及ぶ大量の機械モンスター達が残した残骸だ。
そのまま放っておくと一日くらいでダンジョンに吸収されて消えちゃうから、急いで回収しなきゃね。
「本当に……たったこれだけの人数で……迷宮災害……終わった……夢でも見てるの……? あは、あはは……」
でも、一緒に戦ってくれた茜さんの様子がおかしい。
なんだかボーッとしたまま変な笑い声あげてるし……疲れちゃったのかな?
「茜さん、これ」
「へ!? えっと……これは……?」
「オレンジジュース。とっても美味しいので、飲むと元気になれますよ」
テュテレールが事前に頼み、茜さんが持ってきてくれた、お昼ごはんのハンバーグセット。
それに一緒についていたジュースを差し出すと、ハイライトが消えていた瞳に光が戻る。
「ありがとう……あなた、怖いだけじゃなくて優しいのね」
「えっ!? 私、怖いですか!?」
「そりゃあだって、数千のモンスターを実質一人で撃破したんだもの、特級探索者でもそこまで出来る人はほぼいないわよ?」
少なくとも私は無理、と茜さんは頭を振る。
「私も一人じゃないですよ? テュテレールがいてくれましたから」
「そのテュテレールを作ったの、あなたなんでしょ? なら、あなた一人と変わらないわよ」
「変わります! テュテレールは私の家族ですから!」
ぷんぷん、と怒りながら、私は茜さんの勘違いを訂正する。
確かに、テュテレールはロボットだし、法律上は私の武器って扱いになるのかもしれない。
でも、私にとってテュテレールは育ての親で、大切な家族だ。武器なんかじゃない。
『────』
「あはは、ポワンのことも忘れてないよ、私のこと、たくさん運んでくれてありがとう」
『────』
すり寄ってきたポワンの頭……頭? を撫でると、満足して離れていく。
うーん、ポワンにも、テュテレールみたいにお喋り出来る言語モジュールを付けてあげようかな?
さすがに、テュテレールくらいハッキリと自律行動出来るレベルの人工知能は難しいけど、簡単な会話くらいなら……。
「……家族、か」
「? 茜さん?」
「ううん、大切な家族がいるのっていいことよね」
また少し、茜さんが遠い目をしたかと思えば、私の頭を撫で始めた。
さっきとは違う、どこか寂しそうな表情。
それを見て、私は自分から茜さんに抱き着いた。
「えっ、ちょっと、どうしたの?」
「えーっと、その……茜さん、お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
私の問いかけに、茜さんは目を丸くする。
それでも構わず、私は言葉を重ねた。
「私、お姉ちゃんがいたらなって思うことがよくあって……その、茜さんがご迷惑じゃなかったら、ですけど……」
自分でも、もう少しマシな言い訳はないのかって思うところだけど、咄嗟に出たのはそんな理由だった。
それを聞いた茜さんは、呆れたように溜め息を溢す。
「全く、そんな理由で初対面の私をお姉ちゃん扱いなんて、めちゃくちゃ強いのにバカなのね。悪い人に引っ掛かりそうで心配だわ」
「あう……ごめんなさい、茜さん」
しょんぼりと顔を俯かせながら離れると、そんな私を茜さんがまた撫でた。
びっくりして顔をあげる私に、茜さんはにこっと微笑む。
「お姉ちゃん、なんでしょ? 呼ぶならちゃんと呼んでよね」
「……! うん、茜お姉ちゃん!」
もう一度ぎゅっと抱き着くと、茜お姉ちゃんはぽんぽんと私の背中を叩く。
えへへ、お姉ちゃん……嬉しい。
“なんだこの尊い空間”
“茜ちゃんがデレた”
“可愛いと可愛いが合わさり最強に見える”
“テュテレール君的にはオーケーなんだろうか”
『探索者協会が公開している西城茜のプロフィールに、おかしな点はない。先程の戦闘においても、特級探索者の名に恥じない能力を示していた。以上のことから、西城茜とアリスが友好を深めるのは、今後のためにも有意義であると判断する。それより……アリス』
私が茜お姉ちゃんと抱き合っていると、テュテレールから声をかけられた。
『そろそろ、回収作業の続きをするべきだろう。あまりゆっくりしていては、内部の戦闘に気付いて調査に来た他の探索者に素材を奪われてしまう』
「あ、そうだったね!」
ダンジョンにおいて、落ちていた素材は原則拾った人の所有物だ。
もちろん、目の前で他人が倒したモンスターの素材をかっさらうのはダメだけど、倒した後にすぐ回収せず放置していた場合、それに対して優先権は主張出来ないの。
今回みたいに、大規模な戦闘でたくさんのモンスターと連戦になった場合、終わったらすぐに回収しに行かないと、横取りされても文句は言えない。
「お姉ちゃん、急ごう! 手分けして拾うの!」
「手分けはいいけど、集めた素材はどこに持っていけばいい? 全部換金する?」
「? お姉ちゃんの好きにしていいよ?」
「好きにって、あなたの素材なんだから、好きにするわけには行かないでしょ?」
「私じゃなくて、私達の素材だよ。だから、お姉ちゃんが集めた分は、お姉ちゃんが自由に使っていいよ」
そう伝えると、お姉ちゃんはまたしても驚いた表情で私の顔をまじまじと見つめてきた。
うん? どうしたんだろ?
「いや、今回の戦闘はほとんどあなたとテュテレールがやったんだから、そんな無条件に貰うわけには……」
「私達もお姉ちゃんに手伝って貰えて助かったから、お互い様だよ。どうしてもっていうなら、集めた後でちゃんとはんぶんこしよっか」
『この後、アリスの探索者免許を受け取りに地上へ向かう予定だ。山分けの相談も含めて、上層入り口付近に集合しよう』
「あ、いいね。それじゃあお姉ちゃん、そういうことで!」
「えっ、ちょっと、まさか本当に半分にするつもり!? ねえ、待って、ちょっとー!!」
素材の回収を急ぐべく、テュテレールと一緒にその場を後にする。
お姉ちゃんが叫んでるのが聞こえてきたけど……まあ、その辺りは集めてからでも出来るし、後にしようっと。
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