27 / 42
第27話 新しいペット
しおりを挟む
「ふんふふんふふ~ん♪」
「アリスちゃん、何をしてるんですか~?」
「あ、歩実さん! 見ての通り、テュテレール達の整備と……新しいロボットを作ってます!」
北海道から帰って来た翌日。私は、家の地下に用意された整備室に籠っていた。
私達が《絶氷城》に行っている間に、協会の人がダンジョンに残っていた私の素材や道具を運び込んでくれたみたいで、ようやく本格的な整備が出来るようになったの。
向こうのダンジョンで焼き付いた、テュテレールとポワンのエネルギー回路の修理と強化。
それが終わり次第取り掛かるのが、新しいロボットだ。
"新人かー"
"今度はどんなの作るの?"
「ふっふっふ、一つはねー、北海道のダンジョンで探索者への指示とか偵察に使ったドローン。あれを改造して、ポワンくらい自律して動けるようにするんだ」
今回の件で痛感したけど、ダンジョンってやっぱり広すぎる。
《機械巣窟》では私のスキルで機械系モンスターやトラップの位置を全部割り出せてたから良かったけど、他の場所では索敵係が必要だと思うんだよね。
「赤外線と、熱源探知と……テュテレールと合体したら、空も飛べるようにしようかな?」
『アリス……それではドローンのサイズが大きくなりすぎるだろう』
整備のため、大きな作業台の上で横になっていたテュテレールが、どこか慌てた様子で起き上がる。
もう、心配性だなぁ、テュテレールは。
「だいじょーぶ! この子との合体に合わせて、テュテレールのアイアンコートが翼状に変形するようにコードを組むから!」
『…………』
"何それカッコイイ"
"出来たら見てみたいw"
「ふっふっふ、それはまた完成したらのお楽しみ」
ゴーグルを装着して、溶接なんかに使うバーナーでドローンを炙る。
私のスキル、《機巧技師》の力なら、道具がどんなものであれある程度狙った形に変形させることが出来るんだけど、専用の道具を使った方が精度が高いのは変わらない。
みるみるうちに形を変え、四つのプロペラとブースターを持つ、速度特化のロボットが出来上がっていく。サイズは、鷹くらいかな?
その過程を、歩実さんは興味深そうに眺めていた。
「ほえ~、アリスちゃんの作業風景は初めて見ますけど、凄いですね~……これが広まったら、世の技術者は全員廃業しなきゃならないでしょう」
「えへへ~。まあ、テュテレールは私が技術者としてお仕事するのは反対みたいだから、やらないけど」
「ん~? それはまた……なんでですか~?」
『照月歩実、あなたの方が、その理由を分かっているだろう。ダンジョンよりも、地上の方が危険なこともある』
「……なるほど、確かにそうですね~」
テュテレールの意味深な言葉に、歩実さんも納得したように頷く。
……地上の方が危険なこと? なんだろう?
"まあ、世の中物騒だもんねえ"
"このご時世だしな"
"だからこそ、アリスちゃんの配信があまりにも癒し成分過多で好きなんだが"
"分かる"
「待って、もしかして分かってないの私だけ!?」
視聴者のみんなも何か察したみたいなのに、私だけ危険っていうのが何のことか分からないんだけど!
なんか、これだと私が能天気なおバカさんみたいじゃん!
"アリスちゃんはそのままでええんやで"
"可愛いからね"
「むぐぐぐ……なんか納得いかない……」
「あははは、それで、アリスちゃん。ドローンは一つ目って言ってましたけど、他にはどんなロボットを作るんですか~?」
私が頬を膨らませて不満を表明していると、歩実さんが強引に話題を元に戻して来た。
納得いかないままだけど、そこを追求しても何も答えてくれないだろうから、素直に応じることにする。
「ポワンが前衛、この子が索敵とサポートだから、後衛火力型の子を作る!」
"おー、後衛か"
"確かにそれならバランス取れる"
"あれ、その場合アリスちゃんの位置は?"
"ばっかお前、アリスちゃんは地上待機だろ"
「え……私は万能型だよ。前にも出るし後ろからも攻撃する!」
"えー……"
"無理でしょ"
"まあ、上層で遊ぶ分にはいいんでない?"
"まあ、そうね"
"無理しないようにね"
「絶対に見返してやるんだからぁ!!」
ロケットパンチ君とバットを取り出して宣言したら、みんな揃って全否定してきた。
いいもんいいもん、今度こそ、私だって探索者としてやっていけるって証明してやるんだから!
「さて、それじゃあ……」
出来上がったロボットたちの前で、私はふんす、と胸を張る。
今回は、みんなの性能を高めたのみならず、簡単な言語モジュールと会話型AIも搭載してる。
テュテレールみたいに感情豊かな"心"はないけど……Dチューブのコメントと連動してあるから、そこから集めた会話データを元に成長していってくれたら嬉しいな。
「行くよ、《機械巣窟》上層部! 今度こそ、二級ライセンスに恥じない力を見せつけてあげる!」
"おー"
"一応超級探索者なのに、上層攻略でここまで気合い入れるとはこれいかに"
"まあ、テュテレールなしじゃ仕方ないね"
"言うてポワン達も普通に深層クラスとやり合える性能もうあるんじゃ……?"
"しっ、それ言ったらアリスちゃん泣いちゃうでしょ!!"
みんなが好き放題コメントしてるのをどうにかスルーしながら、私はポワンや新たに出来たロボット達を引き連れて、整備室を飛び出していく。
そんな私の背中を、テュテレールと歩実さんが微笑ましげに見守っていた。
「ぶっちゃけ、もうアリスちゃんが探索者を目指す必要なんてないと思いますけど……いいんですか~?」
『アリスの目標だ、私はそれを尊重したい。それに……我々ロボットが、いつまでもアリスの傍にいられるとも限らない』
「テュテレール君、それって……」
『もちろん、仮定の話だ。……それでは、行ってくる。西城茜にも、念のため連絡しておいてくれ』
「……分かりました。行ってらっしゃいです、テュテレール君」
「アリスちゃん、何をしてるんですか~?」
「あ、歩実さん! 見ての通り、テュテレール達の整備と……新しいロボットを作ってます!」
北海道から帰って来た翌日。私は、家の地下に用意された整備室に籠っていた。
私達が《絶氷城》に行っている間に、協会の人がダンジョンに残っていた私の素材や道具を運び込んでくれたみたいで、ようやく本格的な整備が出来るようになったの。
向こうのダンジョンで焼き付いた、テュテレールとポワンのエネルギー回路の修理と強化。
それが終わり次第取り掛かるのが、新しいロボットだ。
"新人かー"
"今度はどんなの作るの?"
「ふっふっふ、一つはねー、北海道のダンジョンで探索者への指示とか偵察に使ったドローン。あれを改造して、ポワンくらい自律して動けるようにするんだ」
今回の件で痛感したけど、ダンジョンってやっぱり広すぎる。
《機械巣窟》では私のスキルで機械系モンスターやトラップの位置を全部割り出せてたから良かったけど、他の場所では索敵係が必要だと思うんだよね。
「赤外線と、熱源探知と……テュテレールと合体したら、空も飛べるようにしようかな?」
『アリス……それではドローンのサイズが大きくなりすぎるだろう』
整備のため、大きな作業台の上で横になっていたテュテレールが、どこか慌てた様子で起き上がる。
もう、心配性だなぁ、テュテレールは。
「だいじょーぶ! この子との合体に合わせて、テュテレールのアイアンコートが翼状に変形するようにコードを組むから!」
『…………』
"何それカッコイイ"
"出来たら見てみたいw"
「ふっふっふ、それはまた完成したらのお楽しみ」
ゴーグルを装着して、溶接なんかに使うバーナーでドローンを炙る。
私のスキル、《機巧技師》の力なら、道具がどんなものであれある程度狙った形に変形させることが出来るんだけど、専用の道具を使った方が精度が高いのは変わらない。
みるみるうちに形を変え、四つのプロペラとブースターを持つ、速度特化のロボットが出来上がっていく。サイズは、鷹くらいかな?
その過程を、歩実さんは興味深そうに眺めていた。
「ほえ~、アリスちゃんの作業風景は初めて見ますけど、凄いですね~……これが広まったら、世の技術者は全員廃業しなきゃならないでしょう」
「えへへ~。まあ、テュテレールは私が技術者としてお仕事するのは反対みたいだから、やらないけど」
「ん~? それはまた……なんでですか~?」
『照月歩実、あなたの方が、その理由を分かっているだろう。ダンジョンよりも、地上の方が危険なこともある』
「……なるほど、確かにそうですね~」
テュテレールの意味深な言葉に、歩実さんも納得したように頷く。
……地上の方が危険なこと? なんだろう?
"まあ、世の中物騒だもんねえ"
"このご時世だしな"
"だからこそ、アリスちゃんの配信があまりにも癒し成分過多で好きなんだが"
"分かる"
「待って、もしかして分かってないの私だけ!?」
視聴者のみんなも何か察したみたいなのに、私だけ危険っていうのが何のことか分からないんだけど!
なんか、これだと私が能天気なおバカさんみたいじゃん!
"アリスちゃんはそのままでええんやで"
"可愛いからね"
「むぐぐぐ……なんか納得いかない……」
「あははは、それで、アリスちゃん。ドローンは一つ目って言ってましたけど、他にはどんなロボットを作るんですか~?」
私が頬を膨らませて不満を表明していると、歩実さんが強引に話題を元に戻して来た。
納得いかないままだけど、そこを追求しても何も答えてくれないだろうから、素直に応じることにする。
「ポワンが前衛、この子が索敵とサポートだから、後衛火力型の子を作る!」
"おー、後衛か"
"確かにそれならバランス取れる"
"あれ、その場合アリスちゃんの位置は?"
"ばっかお前、アリスちゃんは地上待機だろ"
「え……私は万能型だよ。前にも出るし後ろからも攻撃する!」
"えー……"
"無理でしょ"
"まあ、上層で遊ぶ分にはいいんでない?"
"まあ、そうね"
"無理しないようにね"
「絶対に見返してやるんだからぁ!!」
ロケットパンチ君とバットを取り出して宣言したら、みんな揃って全否定してきた。
いいもんいいもん、今度こそ、私だって探索者としてやっていけるって証明してやるんだから!
「さて、それじゃあ……」
出来上がったロボットたちの前で、私はふんす、と胸を張る。
今回は、みんなの性能を高めたのみならず、簡単な言語モジュールと会話型AIも搭載してる。
テュテレールみたいに感情豊かな"心"はないけど……Dチューブのコメントと連動してあるから、そこから集めた会話データを元に成長していってくれたら嬉しいな。
「行くよ、《機械巣窟》上層部! 今度こそ、二級ライセンスに恥じない力を見せつけてあげる!」
"おー"
"一応超級探索者なのに、上層攻略でここまで気合い入れるとはこれいかに"
"まあ、テュテレールなしじゃ仕方ないね"
"言うてポワン達も普通に深層クラスとやり合える性能もうあるんじゃ……?"
"しっ、それ言ったらアリスちゃん泣いちゃうでしょ!!"
みんなが好き放題コメントしてるのをどうにかスルーしながら、私はポワンや新たに出来たロボット達を引き連れて、整備室を飛び出していく。
そんな私の背中を、テュテレールと歩実さんが微笑ましげに見守っていた。
「ぶっちゃけ、もうアリスちゃんが探索者を目指す必要なんてないと思いますけど……いいんですか~?」
『アリスの目標だ、私はそれを尊重したい。それに……我々ロボットが、いつまでもアリスの傍にいられるとも限らない』
「テュテレール君、それって……」
『もちろん、仮定の話だ。……それでは、行ってくる。西城茜にも、念のため連絡しておいてくれ』
「……分かりました。行ってらっしゃいです、テュテレール君」
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる