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第二部
魔族について
しおりを挟むギルドに行くといつも以上にせわしない感じだった。人の行き来が盛んで皆受付で何かを叫んでいる。忙しいときに来てしまったか?ダメなら出直そうかな。
「あ!あんたら白猫団だよね!?ちょっとこっち来てよ!!」
今日は帰ろうかと思った瞬間兎耳の小柄な少年に声をかけられる。この子よくギルドにいる時に俺達の受付やってくれる子だわ。近くでみるとめっちゃ美少年だな。まあフィルの方がかわいいけど。
「ちょっとあんたらのせいで大変なことになっているんだけど!取り合えずギルド長が呼んでいるから早く来て!」
「え?ああ、」
ぐいぐいと手を引かれるままに兎耳の少年についていく。状況はわからないけどギルド長に会えるならラッキーだよね。俺達も聞きたいことがあるし。
ウサ耳少年に連れられて階段を上りその奥にあると家具の整えられた部屋に案内された。結構豪華な内装だしここは応接室じゃないかな?そして机を挟んだソファーにサンタクロースみたいな真っ白なひげを生やした爺さんが座っていた。たぶんあれがギルド長だ。
「ふぉっふぉ、急に来てもらって悪かったのう。わしはここのギルド長のダルガフ・アルディートじゃ。今日来てもらったのはお主らがダンジョンで遭遇したモンスターとやらについてじゃ」
向かい側のソファに座るように促されたので遠慮なく腰を下ろす。うわっ、このソファー座り心地めっちゃいい。絶対高い奴だわ。
「なんでも1層のボス部屋にモンスターが出現したらしいとな。今までそのようなことは1度もなかったからギルド中が騒ぎになっているのじゃよ。ボス部屋は安全じゃなかったのかとな」
ああ、下の騒ぎはそういうことなのか。ボス部屋安全神話が崩れて不安に思った冒険者達が押し掛けているのか。そりゃ今までモンスターが出ないと思っていたところに即死級のモンスターが出るって言われたら目を剥きますわ。実は攻略済みのボス部屋はあの世への停留所でしたーとかやってられんよな。
「モンスターかどうかはわかりませんが、自分は魔族だと名乗ってましたよ」
「なんじゃと?」
ギルド長が驚きの声を上げる。お、これは魔族のこと知っているっぽいぞ。
「その者は自分が魔族だと名乗ったのか?」
「はい、魔族の貴族だと言ってました」
「しかも貴族というのか」
ううむ、とギルド長は小さく唸り声を上げる。やっぱり魔族はやばい感じですね。どうやばいのか是非とも教えて欲しい。
「魔族とはなんなんですか?」
「かつてこの世界の全てを支配した種族じゃ。卓越したスキルとレベルを持っており次々と国を攻め滅ぼし最後には全ての者が奴等に従属を強いられた」
ギルド長がそういう。やっぱり魔族はグリアノがちらりと漏らした情報通り世界を滅ぼした種族らしい。リディアちゃん、とんでもないな。よく俺達勝てたよ。
「長い間我々は魔族に虐げられていた。属国という扱いではない、奴等は我々のことを食らったのだ。魔族にとって他種族は家畜でしかなかったのだ」
確かにリディアも血袋どうこう言って黄昏の旅団の人達の血吸っていたもんな。え、魔族って皆あんな感じなの?尻的な意味で食われるのはごめんだけどカニバリズムはもっと嫌です。
「長い間我々は絶望の底にいた。ただ緩慢に喰い殺されるのを待つだけの日々、しかし1人の英雄によって状況が一変する。その者を我々にレベルとスキルの存在を教え戦う環境を整えると全種族を率いて魔族に戦いを挑んだのじゃ」
おお?なんか雲行きのいい話になってきたぞ?1人の英雄が仲間と共に魔族に戦いを挑むって俺の夢見てた勇者みたいな話だな。わくわくしてきた。
「そして我々が勝利し魔族は滅びた。魔族の持っていたオーブによりスキルとレベルを知ることがわかり今では誰もが教会に配置されたオーブを見ればスキルとレベルを知ることができるというわけじゃ」
ああ、あの教会のオーブって元々魔族の物だったんだ。ってことは元手一切かかってないし教会マジで丸儲けじゃね?ずるっ。
「あれ?じゃあ魔族は滅びたんですよね?じゃあなんでリディアはいたんだろう。生き残り?」
「これは最近わかったことなのじゃが、ダンジョンの最奥にはどうやら魔族が眠っとるようじゃ。白猫団が出会ったのもその類ではないかと思われる」
え、ダンジョンに魔族が眠ってる?
「とあるダンジョンを攻略したパーティが最奥で人型のモンスターと交戦したと言っていた。見たことのないスキルを多用し単体であるが恐ろしく強かったという。なんとか倒し切ることは出来たがパーティの半数以上が死亡、さらにそのモンスターを倒した瞬間ダンジョンも崩れ去ったという」
ふぅーと息を吐きながらギルド長がそういう。えっと、つまりダンジョンのラスボスはかつて世界を滅ぼした魔族だと。え、やばっ。ダンジョン攻略めっちゃハードじゃん。
「これは我々の推測なのだがダンジョンとは魔族産み出す物なのかもしれん。そうであるならばダンジョン内で死体が消えることも説明がつく。養分として取り込んでいるのだ。ダンジョンとは魔族に効率よく糧を与えるための仕組みなのかもしれん」
「え、じゃあダンジョン行くの不味いんじゃないですか?」
口をパカッと開けた食虫植物の中に飛び込むようなものだろ?絶対よくないじゃん。ダンジョンめっちゃ危険だわ。
「いやもう遅い。この数百年、多くのダンジョンに人が出入りしている。今更人の流れを止めた所で僅かな差でしかない。
中には何もせずとも崩れ去ったダンジョンもあるという。我々が何もせずとも魔族は復活するじゃろう。
だがこれは好機でもある。ダンジョンを攻略したパーティによれば最奥で魔族は眠っていたとのことじゃ。つまりダンジョンを攻略すれば魔族を屠る機会を得られる」
ギルド長の声に力が篭る。はー、なるほど。ダンジョンを攻略すれば先制攻撃のチャンスが貰えると。でも途中で力尽きれば魔族の養分になってしまう。ハイリスクハイリターンな話ですね。
まあなんとなく話はわかった。魔族は昔世界を滅ぼした好戦的かつ他種族を餌とか言っちゃうヤバめの奴らでダンジョンで育成されていると。ほっとくと復活しちゃうからダンジョン攻略して倒しちゃいたいって感じか。
あ、でも待って。まだわからんことがあるぞ。
「あれ?じゃあなんで1層にリディアがいたんだろう?いるとしたら最奥なんですよね?」
魔族は最奥でスヤァしているんだろ?なんであんな初見殺しみたいな場所にいたんだ?
「それについてわからんからお前達を呼んだのじゃ。まだダンジョンが残っておることからあのダンジョンの魔族ではないのだろう。お前達が出会ったのは本当に魔族だったのか?」
ギルド長がじーっとこちらを見てくる。ああ、なるほど。やっぱり魔族があそこにいることはおかしいのね。俺達が呼ばれたのは魔族に遭遇したのか確認するためってことか。
「自分は魔族の貴族だ、とは言ってましたね」
「ふむ、しかも貴族とな」
「貴族ってなんですか?」
魔族にも貴族階級があるのだろうか。
「レベルが100超えた者は貴族と呼ばれるようじゃ。魔族といえどそこまでレベルを上げる者は少数だと聞く」
ああ、なるほど。レベルで呼び方が変わるのか。リディアは魔族でも強い方だったのね。そんなのにいきなり当たるなんてついてない。
「お前達、今のレベルがいくつあるかわかるか?」
「俺とライドが36でフィルが23です」
「なんと。その若さでそれだけレベルを持つとは素晴らしい。将来有望な若者達じゃ。じゃがそれでも貴族を倒せるとは思えん」
まあ確かにレベルが下の相手からは一切ダメージを受けませんとかいうチートすぎるスキル持ってたもんな。俺も相対的な自己犠牲がなかったら絶対勝てなかったわ。
「うむ、今回のことはよくわかった。敵を倒し黄昏の旅団の者を救ってくれたことについて礼を言おう。特例でお前達全員のランクを1つ上げることとする。ご苦労であったのじゃ」
にっこりとギルド長が笑みを浮かべる。俺達が魔族の貴族を倒したとは信じてないのかもしれないがそれでも実力は認めてくれるらしい。
やった!ということは俺はBランクになるってことだね!おおっ、Bランク!なんかBランクになると凄いって感じがするわ。またひとつSランクに近づきましたね。
えっと、ライドはFだからEになるんだな。フィルは俺の持ち物という扱いだからランクはないね。フィルの奴隷扱いももういいんじゃないかな。そろそろ解放してあげたい。
俺達はギルドを後にした。
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