夏の始まりは〇〇の終わり。

佐十条 三光

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夏の始まり 事の始まり

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「起きなさい!ほら!もう6時過ぎてるのよ!」
今日もいつもみたいに起こされる朝。でもなんだかいつもより眠い。6時?いつも7時起きなのに。なんで今日はそんな早いのさ。
「マモル!今日は8日よ!家族旅行の日でしょ!」
8日?家族旅行?あ、そうだ。今日は家族で静岡に行くんだった。
「…今起きるよ。うるさいなぁ、お姉ちゃんは。」
僕はまだ眠たくて、面倒くさがるように答えた。旅行は別に楽しみではなかった。大好きなテレビゲームが3日間も出来なくなるんだから。
「うるさいですって?あんたのために起こしてあげてるんでしょう。生意気な弟で困るわぁ。」
お姉ちゃんは少し怒ったような言い方で、ついでにため息もついた。
「いつまでもそんなんだと中学校にもいけないわよ。お姉ちゃんを見習いなさい!」
自慢げに話すお姉ちゃん。いつまでもこんななのはお姉ちゃんがいるからだよ。つい甘えてしまうのさ。
「いいよーだ。あと1年もしないうちに自動的に中学校行けるし。お姉ちゃんだって僕と3つしか変わらないじゃないか…」
「もぉー。うるさいわねぇ。まぁとにかく早く起きなさいよ!ハグしちゃうわよ~。」
お姉ちゃんは少しふざけながら言った。全く、面倒くさいお姉ちゃんだ。

僕はお姉ちゃんの事が大好きだ。口に出すのは勿論恥ずかしいから言ったことはないと思う。顔だって可愛いし、大人っぽいし、優しいし、頭もいいし、運動もできるし…。お姉ちゃんがいるから旅行も仕方なく行く。まぁ実際は行かざるを得ないんだけどね。

なんだかんだで静岡に着いた。
ホテルに行く前に富士山の近くの広い公園へ行く。僕は早く寝たいのに。
「みてーっ!富士山よ!これが見れればもうお母さん帰ってもいいわ!」
お母さんは富士山が大好きで毎年来ているのにこのリアクションだ。だから家族旅行は嫌なのさ。
「おっ!ここら辺なら魚釣るのに良さそうだな。よし、マモル!釣竿を車から下ろしてくれー!」
これも毎年同じだ。お父さんの魚釣り。僕はこれに付き合わされて終わりさ。釣りなんて何が楽しいのやら。
「マモル。釣りって云うのはな…。」
お父さんが釣りについて語ってくる。これも毎度のことだ。
「あれ?そういえばお姉ちゃんは?」
僕はお父さんの話から逃げるためにお母さんに聞いた。本当に心配していた訳でもなく、とりあえず言っただけだった。
「お姉ちゃんは見たいものがあるからってどっか行っちゃったわよ。」
「へぇー。」
少し残念そうに答えた。
その時風が少し強く吹き、被っていた緑色の帽子が近くの森に飛んでいってしまった。
「あぁー。帽子が!」
「何やってるのよ。取りに行って来なさい!この間買ったばっかりなんだから無くしても買わないわよ。」
お母さんは富士山の写真を撮りながら僕の方を見ずに答えた。
「息子より富士山ですか…。」
僕は呆れて、小さな声で呟いた。

森の方に行ったらちょうどお姉ちゃんと会った。
「あ!お姉ちゃん。何処に行ってたの?」
僕は少し嬉しそうに聞いた。
「なんでもいいでしょう。あんたこそ何やってるのよ。」
少し機嫌が悪いようにも見えたが気にしないでいた。
「僕は帽子を探しに…。あ、ここら辺に僕の帽子落ちてなかった?」
「帽子?あんた帽子なんて被ってたっけ?」
やっぱりなんだか怒っているようだ。
「う、うん。緑色の帽子…。知らない…よね?ありがとう。ごめん。」
僕は残念そうに答え、これ以上お姉ちゃんと話していると怒鳴りだしそうだったからしゅんとしてしまった。
「知るわけないでしょう。そんなの。じゃあ私は戻るから。あんたも早く帰りなさいよ。」
お姉ちゃんはいつもと少し違っていた。まるで何かに取り憑かれたかのように…。
日が暮れるまで探したが結局帽子は見つからず、疲れ果てながらもホテルに行った。
あぁー。帰ったらお母さん怒るだろうな…。

「え!?無かったですって!?もう知らないわよ。少なくてもあと2年は我慢しなさい。まぁ自分の不運さを悔やむことね。」
まったく。家(うち)の母親は小学生に向かって残酷なことを言う。嫌なお母さんを持ってものだ。
ホテルに帰ってからは温泉に入り、夕食を食べ、毎週見ているテレビ番組を見ていた。僕は途中、トイレに行きたくなった。
「あぁー。いい所なのに…。ちょっとトイレ行ってくるね。」
「はーい。じゃあもう野球に変えていいかー?」
家と違ってテレビが1つしかなく、毎日見ている野球が見れなかったお父さんは、このチャンスを見逃さず、僕が返答をする前にチャンネルを変えた。
「おっ!巨人勝ってるじゃないか~!今日こそ行けるだろ!」
お父さんは一応巨人ファンだが、別にすごい推している訳ではなく、野球の試合ならどこのチームでもいいらしい。
お姉ちゃんは相変わらず機嫌が悪く、すでに寝ていたようだった。

部屋を出て、ちょっと行ったところにトイレがある。部屋にも付いているが少し汚いからこっちに行った。
用を足し、スッキリした所で部屋に戻った。ノックしても誰からも返答がないので、もう寝てしまったのかと思い、ドアを開けた。僕は心臓が止まるぐらいの勢いで人生最大ともいえる驚きを感じた。いや、あれは驚きでは無かったのかもしれない。僕は一瞬にして声が出なくなり、体も固まってしまった。どんな事が起きていたかって?言葉に出して言いたいことではないが、別に難しいことではない。
お姉ちゃんが全身真っ赤に塗りたくられた状態で1人ベットの上に仰向けの状態で寝ていた。お姉ちゃんの腹部には包丁のような刃物が刺さっており、とてつもなく酷いものであった。僕は目を疑った。自分に見えている現状が上手く頭に行かなく、わけがわからないという状態だったのだ。僕は初めて体の震えが止まらなくなり、この時初めて本当の恐怖を味わった気がした。
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