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第1走者
Run in the ココどこ?(2)
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巨大蟻は数を生かして巨大ムカデを取り囲んで攻撃しようと試みるが、体格差と機動力の差で巨大ムカデの尻尾に薙ぎ払われる。それでも巨大蟻たちは何度でも立ち上がって襲い掛かる。まるで怪獣同士の戦いを見るかのようだ。巨大ムカデが1匹を牙で押さえ付けて尻尾の先にある毒針を突き刺すと、巨大蟻は断末魔を上げてもがき苦しみやがて動かなくなった。
こんな恐ろしい武器を隠し持っていたとは。オレは声を漏らさないように口元を押さえながら、体をもたげて巨大蟻たちを威嚇する巨大ムカデを眺め背筋に嫌な汗が流れるのを感じていた。
巨大ムカデの圧勝と思われた戦いは、一瞬の隙をついた巨大蟻の攻撃でその行方に暗雲が立ち込める。巨大蟻が口から吐き出した液体が、牙で抑え込もうと襲い掛かった巨大ムカデの顔に掛かったのだ。これには襲い掛かろうとしていた巨大ムカデも堪らず悶える。その嫌い様から察するに酸のようなものなのかも知れない。好機を見逃すことなく2匹の巨大蟻たちは巨大ムカデの脚や胴体に噛み付いた。
一転して窮地に立たされた巨大ムカデだが、体格差にものを言わせて転げ回って巨大蟻たちを蹴散らすと一方の巨大蟻に素早く襲い掛かり絡みついて締め上げた。締め上げられる巨大蟻が苦し紛れに吐いた液が巨大ムカデの体に掛かるが構わず必死に締め上げる。巨大ムカデの片目が白っぽく変色しているのが分かる。巨大蟻の吐き出した液体のせいだ。その時、もう一方の巨大蟻が背後から首元に噛み付くと、巨大ムカデは堪らず締め上げるのを止めて転げまわった。
既に両者とも脚や触覚がもぎ取られボロボロになっていた。最後は押さえ付けた巨大蟻に毒針を突き刺す巨大ムカデに、もう一方の巨大蟻が液体を吐きかけたが、巨大ムカデは構わずそのまま巨大蟻を捉えるとじわじわと絞め殺し、自らもそのまま動かなくなった。
「し、死んだのか……」
巨大ムカデの瞳からは既に生の輝きは感じられない。オレは目の前で繰り広げられた壮絶な戦いに、ランでは味わったことのない心臓の高鳴りを覚えていた。暫くすると最初に絶命した巨大蟻が僅かな煙を残し霧散するように姿を消した。最初は何かの見間違いかと思ったが、後を追うように残りの巨大蟻たちの亡骸も消え去り、最後に巨大ムカデがまでも姿を消した。
恐る恐る近寄って見ると巨大蟻と巨大ムカデが消え去った跡に、紫色の小さな宝石の欠片のような物が落ちているのに気付いた。これは拾った麻袋に入っていたものと同じ宝石だ。あの生物たちが落としていった物らしい。宝石の大きさはまちまちで、色も赤紫色から青紫色までの違いがある。
化物が落としていった物と思うと気色悪いが、あの倒れていた巨躯の男が拾っていたということは何らかの価値がある物なのかも知れない。もしかすると敗者復活に必要なポイント的な物なのだろうか。そう思い拾った宝石を麻袋に入れているとひと際大きな宝石と一緒に落ちていた赤黒く細長い棘のような物を見付けた。これはきっと巨大ムカデの毒針に違いない。どうしたものかと考えたが、オレの毒針を直接触れずに上手く麻袋へ入れて持ち帰ることにした。
そこからまた左手で壁を触れながらのランが始まった。
巨大蟻と巨大ムカデの壮絶な戦いを見たせいだろうか。その後に現れた巨大ナメクジや巨大ダンゴムシには大して恐怖は感じず、盾で蹴散らしながらオレはそのまま走り続けることが出来た。巨大ナメクジと巨大ダンゴムシは盾で殴り殺すことも可能だった。これらも巨大蟻と巨大ムカデのように霧散して僅かな煙を残して消えたが、紫色の宝石は残すこともあれば何も残さないこともあった。弱すぎる敵を倒してもポイントにならないという意味なのだろうか。
走っているうちに気付いたが視界の端に表示される数字は随分と増えており、いつの間にか『11.111』なっていた。ゾロ目だ。わけもなく少しだけ嬉しくなる。
化物たちからは何とか逃げ果せたが、困ったのはたまに作動する落とし穴や壁から突き出す槍などの罠だ。これにはかなりヒヤヒヤさせられた。幸いにもかすり傷を何度か負う程度で乗り切り、オレは命からがら逃げるように走り続ける。
ひたすら進み続け視界の端の数字が『17.000』を表示した辺りで、ひょっとするとこの迷路にはゴールなど存在しないのではないのかと疑い始めた。そうだとしても不思議はない。実際、その先にゴールがあるだろうと考えたことに何の根拠もなかったのだし。
ちょうどその矢先、先程からチラホラと見掛けた蜘蛛の巣が明らかに多くなってきたことに気付く。しかも、よく見るとゴルフボールくらいの大きさで、全身に毛の生えた明らかにヤバそうな蜘蛛が蠢いているではないか。オレは盾を頭に被るようにして張り巡らされた蜘蛛の巣の下を足早に進んだ。
ところが蜘蛛の巣の数はますます多くなる。通りのあちらこちらに掛かる蜘蛛が腕や足に絡みつく。途中で引き返すことも考えたが、それではここまで稼いだ距離が無駄になる。オレは盾ではなく槍でもあればもっと便利だったろうに、などと無いものねだりをしつつも必死に手にした盾で蜘蛛の巣を払って奥へと進んだ。やがて明らかに増えていった蜘蛛の巣が急に少なくなった。
「どうにか抜けたけか。それにしても蜘蛛の巣が絡みまくってるな……」
ひとり文句を言いながら盾に纏わり着く蜘蛛の巣を絡め取って壁に拭っていたとき、前方に広がる明らかに異様な光景に気付いた。そこだけ天井にも全く蜘蛛の巣は全く見当たらず、代わりに左奥の壁面に直径1メートルを超える巨大な繭のような物が1つへばり付いているではないか。そして、目を凝らすとその更の闇の中にはここまで越えて来たのと同じような、大小数多くの蜘蛛の巣が張り巡らされているのが見えた。
あの中にきっと何かいる。直感的に誰もがそう考えるであろう光景だが、それは巨大な繭の前後に張り巡らされた蜘蛛の糸の多さからも窺えた。だが、オレに用意された選択肢は1つ。全速力で突っ走るしかない。あそこから何かが這い出して来たとしても、それよりも早く奥の蜘蛛の巣エリアを駆け抜けることだ。
オレは左手に盾を構え一気に駆け抜けた。
やがて足音に反応するかのように繭が不気味に蠢き始めた。やはり何かいる。だが、既に繭の真横を通過しようとしているオレは、そのままスピードを緩めずに蜘蛛の巣へと突っ込んだ。盾で薙ぎ払うぶん速度は落ちるが闇雲に前へと進むと、やがて蜘蛛の巣で霞んでいた視界が鮮明になってくる。
蜘蛛の巣エリアを越えたところでオレは足を止めた。正確には頭で考えて止めたわけではなく、視界に跳び込んできた前方に蠢く存在に驚き勝手に止まったのだが。
そこにいたのは脚から脚までの大きさが1メートルにも及ぼうかという大蜘蛛だ。驚きのあまり思考が定まらないオレは、ガツガツと音を立てて捕まえた何かを捕食している大蜘蛛を眺めその場に佇んだ。しかし、すぐに大蜘蛛がこちらに気付いて動き出すと同時にオレも自然に盾を構えていた。引き返えそうと背後に視線を送るが、その時はじめて大量のゴルフボール大の蜘蛛たちが、背後の蜘蛛の巣が真っ黒に染まるほど群がっているのに気付き思わず小さく悲鳴を上げた。
正面には大蜘蛛、背後には蜘蛛の群れ。
退路を断たれたオレは自らを奮い立たせるように、大声を上げながら半ばヤケクソで正面の大蜘蛛を目掛けて突き進んだ。大蜘蛛も十分に気色悪く怖かったのだが、背後の蜘蛛も決して小さいものではない上に100匹は下らない大群だ。大きな1匹と小さな100匹以上。どちらも嫌だが100匹はビジュアルの段階で生理的に無理があり過ぎる。
大蜘蛛は思ったよりも素早い動きでオレの動きに反応すると、警戒するように横歩きで移動しながら大きな腹を股の間から突き出して勢いよく糸の塊を放った。オレのすぐ後ろを跳んできた糸の塊が物凄い勢いで壁にぶつかり弾けた。あんなものをまともに喰らったら、盾で受け止めたとしてもタダじゃ済まない。
よく見ると通りの向こうは突き当りになっておりそこには階段がある。オレは狙いを定めさせまいと蛇行しながらも足を止めずに階段を目指して走った。
階段は下り階段だった。ここが巨大な塔のような場所なのであればこの下り階段は良い選択になり得るのだろうが、もしも地下迷路のような場所であった場合は更に深みへハマる可能性もある。そんなことを思っていると、大蜘蛛の放った糸の塊が頭のすぐ上をかすめるように飛んで壁に当たって弾けた。
今は背後から迫る大蜘蛛から逃げるのが最優先だ。オレは何段もとばして転げ落ちるように石造りの階段を駆け下りた。途中で左に折れ曲がった階段を下りて下層へと着くと、その先に鉄製で両開きの巨大な扉があった。扉の向こうに何があるのか恐怖心はあったが、今はそれよりも大蜘蛛への恐怖が勝っていた。扉は見た目の割に軽々と開く。オレは分厚い鉄製の扉を片方だけ開けると、その隙間へ体を滑り込ませすぐさま扉を閉じた。
扉はまるで2度と開かないのではないかと思わせる、恐ろしく重々しい音を立てて閉まった。すぐに扉に耳を付けて気配を窺うが、自分の鼓動が煩くて上手く聞き取れない。暫くそそまま耳を澄ますが何も聞こえて来ない。どうやら大蜘蛛は階段を下りて来てはいないようだ。オレは深く息を吐き思わずその場へへたり込んだ。
視界の端の表示は『17.928』を示していた。
こんな恐ろしい武器を隠し持っていたとは。オレは声を漏らさないように口元を押さえながら、体をもたげて巨大蟻たちを威嚇する巨大ムカデを眺め背筋に嫌な汗が流れるのを感じていた。
巨大ムカデの圧勝と思われた戦いは、一瞬の隙をついた巨大蟻の攻撃でその行方に暗雲が立ち込める。巨大蟻が口から吐き出した液体が、牙で抑え込もうと襲い掛かった巨大ムカデの顔に掛かったのだ。これには襲い掛かろうとしていた巨大ムカデも堪らず悶える。その嫌い様から察するに酸のようなものなのかも知れない。好機を見逃すことなく2匹の巨大蟻たちは巨大ムカデの脚や胴体に噛み付いた。
一転して窮地に立たされた巨大ムカデだが、体格差にものを言わせて転げ回って巨大蟻たちを蹴散らすと一方の巨大蟻に素早く襲い掛かり絡みついて締め上げた。締め上げられる巨大蟻が苦し紛れに吐いた液が巨大ムカデの体に掛かるが構わず必死に締め上げる。巨大ムカデの片目が白っぽく変色しているのが分かる。巨大蟻の吐き出した液体のせいだ。その時、もう一方の巨大蟻が背後から首元に噛み付くと、巨大ムカデは堪らず締め上げるのを止めて転げまわった。
既に両者とも脚や触覚がもぎ取られボロボロになっていた。最後は押さえ付けた巨大蟻に毒針を突き刺す巨大ムカデに、もう一方の巨大蟻が液体を吐きかけたが、巨大ムカデは構わずそのまま巨大蟻を捉えるとじわじわと絞め殺し、自らもそのまま動かなくなった。
「し、死んだのか……」
巨大ムカデの瞳からは既に生の輝きは感じられない。オレは目の前で繰り広げられた壮絶な戦いに、ランでは味わったことのない心臓の高鳴りを覚えていた。暫くすると最初に絶命した巨大蟻が僅かな煙を残し霧散するように姿を消した。最初は何かの見間違いかと思ったが、後を追うように残りの巨大蟻たちの亡骸も消え去り、最後に巨大ムカデがまでも姿を消した。
恐る恐る近寄って見ると巨大蟻と巨大ムカデが消え去った跡に、紫色の小さな宝石の欠片のような物が落ちているのに気付いた。これは拾った麻袋に入っていたものと同じ宝石だ。あの生物たちが落としていった物らしい。宝石の大きさはまちまちで、色も赤紫色から青紫色までの違いがある。
化物が落としていった物と思うと気色悪いが、あの倒れていた巨躯の男が拾っていたということは何らかの価値がある物なのかも知れない。もしかすると敗者復活に必要なポイント的な物なのだろうか。そう思い拾った宝石を麻袋に入れているとひと際大きな宝石と一緒に落ちていた赤黒く細長い棘のような物を見付けた。これはきっと巨大ムカデの毒針に違いない。どうしたものかと考えたが、オレの毒針を直接触れずに上手く麻袋へ入れて持ち帰ることにした。
そこからまた左手で壁を触れながらのランが始まった。
巨大蟻と巨大ムカデの壮絶な戦いを見たせいだろうか。その後に現れた巨大ナメクジや巨大ダンゴムシには大して恐怖は感じず、盾で蹴散らしながらオレはそのまま走り続けることが出来た。巨大ナメクジと巨大ダンゴムシは盾で殴り殺すことも可能だった。これらも巨大蟻と巨大ムカデのように霧散して僅かな煙を残して消えたが、紫色の宝石は残すこともあれば何も残さないこともあった。弱すぎる敵を倒してもポイントにならないという意味なのだろうか。
走っているうちに気付いたが視界の端に表示される数字は随分と増えており、いつの間にか『11.111』なっていた。ゾロ目だ。わけもなく少しだけ嬉しくなる。
化物たちからは何とか逃げ果せたが、困ったのはたまに作動する落とし穴や壁から突き出す槍などの罠だ。これにはかなりヒヤヒヤさせられた。幸いにもかすり傷を何度か負う程度で乗り切り、オレは命からがら逃げるように走り続ける。
ひたすら進み続け視界の端の数字が『17.000』を表示した辺りで、ひょっとするとこの迷路にはゴールなど存在しないのではないのかと疑い始めた。そうだとしても不思議はない。実際、その先にゴールがあるだろうと考えたことに何の根拠もなかったのだし。
ちょうどその矢先、先程からチラホラと見掛けた蜘蛛の巣が明らかに多くなってきたことに気付く。しかも、よく見るとゴルフボールくらいの大きさで、全身に毛の生えた明らかにヤバそうな蜘蛛が蠢いているではないか。オレは盾を頭に被るようにして張り巡らされた蜘蛛の巣の下を足早に進んだ。
ところが蜘蛛の巣の数はますます多くなる。通りのあちらこちらに掛かる蜘蛛が腕や足に絡みつく。途中で引き返すことも考えたが、それではここまで稼いだ距離が無駄になる。オレは盾ではなく槍でもあればもっと便利だったろうに、などと無いものねだりをしつつも必死に手にした盾で蜘蛛の巣を払って奥へと進んだ。やがて明らかに増えていった蜘蛛の巣が急に少なくなった。
「どうにか抜けたけか。それにしても蜘蛛の巣が絡みまくってるな……」
ひとり文句を言いながら盾に纏わり着く蜘蛛の巣を絡め取って壁に拭っていたとき、前方に広がる明らかに異様な光景に気付いた。そこだけ天井にも全く蜘蛛の巣は全く見当たらず、代わりに左奥の壁面に直径1メートルを超える巨大な繭のような物が1つへばり付いているではないか。そして、目を凝らすとその更の闇の中にはここまで越えて来たのと同じような、大小数多くの蜘蛛の巣が張り巡らされているのが見えた。
あの中にきっと何かいる。直感的に誰もがそう考えるであろう光景だが、それは巨大な繭の前後に張り巡らされた蜘蛛の糸の多さからも窺えた。だが、オレに用意された選択肢は1つ。全速力で突っ走るしかない。あそこから何かが這い出して来たとしても、それよりも早く奥の蜘蛛の巣エリアを駆け抜けることだ。
オレは左手に盾を構え一気に駆け抜けた。
やがて足音に反応するかのように繭が不気味に蠢き始めた。やはり何かいる。だが、既に繭の真横を通過しようとしているオレは、そのままスピードを緩めずに蜘蛛の巣へと突っ込んだ。盾で薙ぎ払うぶん速度は落ちるが闇雲に前へと進むと、やがて蜘蛛の巣で霞んでいた視界が鮮明になってくる。
蜘蛛の巣エリアを越えたところでオレは足を止めた。正確には頭で考えて止めたわけではなく、視界に跳び込んできた前方に蠢く存在に驚き勝手に止まったのだが。
そこにいたのは脚から脚までの大きさが1メートルにも及ぼうかという大蜘蛛だ。驚きのあまり思考が定まらないオレは、ガツガツと音を立てて捕まえた何かを捕食している大蜘蛛を眺めその場に佇んだ。しかし、すぐに大蜘蛛がこちらに気付いて動き出すと同時にオレも自然に盾を構えていた。引き返えそうと背後に視線を送るが、その時はじめて大量のゴルフボール大の蜘蛛たちが、背後の蜘蛛の巣が真っ黒に染まるほど群がっているのに気付き思わず小さく悲鳴を上げた。
正面には大蜘蛛、背後には蜘蛛の群れ。
退路を断たれたオレは自らを奮い立たせるように、大声を上げながら半ばヤケクソで正面の大蜘蛛を目掛けて突き進んだ。大蜘蛛も十分に気色悪く怖かったのだが、背後の蜘蛛も決して小さいものではない上に100匹は下らない大群だ。大きな1匹と小さな100匹以上。どちらも嫌だが100匹はビジュアルの段階で生理的に無理があり過ぎる。
大蜘蛛は思ったよりも素早い動きでオレの動きに反応すると、警戒するように横歩きで移動しながら大きな腹を股の間から突き出して勢いよく糸の塊を放った。オレのすぐ後ろを跳んできた糸の塊が物凄い勢いで壁にぶつかり弾けた。あんなものをまともに喰らったら、盾で受け止めたとしてもタダじゃ済まない。
よく見ると通りの向こうは突き当りになっておりそこには階段がある。オレは狙いを定めさせまいと蛇行しながらも足を止めずに階段を目指して走った。
階段は下り階段だった。ここが巨大な塔のような場所なのであればこの下り階段は良い選択になり得るのだろうが、もしも地下迷路のような場所であった場合は更に深みへハマる可能性もある。そんなことを思っていると、大蜘蛛の放った糸の塊が頭のすぐ上をかすめるように飛んで壁に当たって弾けた。
今は背後から迫る大蜘蛛から逃げるのが最優先だ。オレは何段もとばして転げ落ちるように石造りの階段を駆け下りた。途中で左に折れ曲がった階段を下りて下層へと着くと、その先に鉄製で両開きの巨大な扉があった。扉の向こうに何があるのか恐怖心はあったが、今はそれよりも大蜘蛛への恐怖が勝っていた。扉は見た目の割に軽々と開く。オレは分厚い鉄製の扉を片方だけ開けると、その隙間へ体を滑り込ませすぐさま扉を閉じた。
扉はまるで2度と開かないのではないかと思わせる、恐ろしく重々しい音を立てて閉まった。すぐに扉に耳を付けて気配を窺うが、自分の鼓動が煩くて上手く聞き取れない。暫くそそまま耳を澄ますが何も聞こえて来ない。どうやら大蜘蛛は階段を下りて来てはいないようだ。オレは深く息を吐き思わずその場へへたり込んだ。
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