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核弾頭と出会った俺
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20XX年4月1日。
O阪府の郊外にある某私立大学ですべての出逢いはあった。
専門家は『これが元凶』とも言う。
俺、須方 奏生は今でも時々思い出す。
俺が生きたいと素直に言える人間だったら。
生きたいと素直に感じれる人間だったなら。
アイツの本音に気付いてやれたんじゃないか。
アイツは今でも明るく横で笑ってくれたんじゃないか、そんな考えが胸の奥にずっと残っている。
強風に煽られてせっかく咲いたピンクの花弁が何枚か宙を舞っている。
小さい頃は逃げるコレを捕まえようとしたっけな、なんて桜を見上げた。
(いや、ちげえわ。捕まえようとしてたのは父さんと姉さんだったな)
更になんとか桜の花びらを捕まえた姉は、勢い余って道に転んでいた。
擦りむきながらも、取れた花びらを満面の笑みで見せていた姉は今も昔も天真爛漫で眩しい。
高校生位までは、自分もやがてそんな感情溢れる人間になれると思っていたのに。
(20年間泣かない怒らない笑わない面白くもない人間。赤ん坊から変わらないものが20歳になったからって変わるわけないよな)
もちろん感動したこともない俺は部活やサークルも入りたいものがなく、無所属だった。
だから大学3回生にもなって新歓に来ているわけだ。
高校では友人に流されるままテニス部に入っていたが、大学では自分が感情を動かされるものを徹底的に探すと決めているのだ。
専攻も人間学をとっているしバイトは色んな体験が出来ると聞き派遣にした。
「やっぱり浮くなー」
そこそこ広いキャンパスなので相応の生徒数とサークル数なのだが、さすがに二年も通っていると顔見知りも増えてくる。
ある程度親しい友人なら俺の事も知っているが誘われ済みだし、顔見知り程度なら俺が無所属だと知らない。
としても新入生に紛れて新歓のチラシや声掛けがほぼ得られないのであは意味がない。
どうするか悩んだ俺は勧誘を遠巻きに見ることに決めた。
それが冒頭の桜の木の下だというわけだ。
「うーん、やっぱり今年も目ぼしいトコはないか」
腕を組み唸る。
すると不意に頭上で木の音がした。
ガササ。
「なん」
そして見上げる前に人間が落ちてきた。
バッサー。
「セーフ!」
落ちてきた人間は上半身を起こすと大きな声で言った。
青いパーカにジーンズ、そして短髪長身。
空のような男に俺は怒鳴った。
「アウトだよ!ふざけんな、降りろ!」
男が木から落ちてきたことで人が集まってきた。
「わりーわりー」
とても軽い謝罪をしながらそいつはようやく俺の腹の上から降りた。
「立てるか?」
「あぶねーな、空みてえなナリしやがって」
手を引っ張られながら俺は毒づいた。
すると毒づかれたやつは目を輝かせて俺の手を握ってきた。
「すげえ!」
「は?」
「俺の名前空っていうんだけど!え、初対面だよね?え、すご!」
「てめえみたいな非常識なんか会ったことねえわ」
「ウケる!まじ草なんだけど!超運命!」
「ウケ?」
「あごめん!オレ時間ないんだった!」
「え?」
男は握った俺の手に着いた腕時計を見て慌てだした。
ポケットからスムーズに名刺ケースを取り出すと、またスマートに一枚を俺の手に握らせた。
「あ、これ俺の名刺!」
「いや」
「入りたいサークル無かったら連絡して!あ、いや、入りたいのがあっても連絡して!絶対!」
そう叫び残し空は走って校舎棟に消えていった。
あとには俺と名刺を残して。
「須方、大丈夫か?」
友人の藤堂がこわごわ声を掛けてくれた。
「いや、大丈夫、たぶん?なんだったんだあいつ?」
「おれ聞いたんだけど、なんか他大からの編入生?らしい。よくは知らないんだけど」
と、もうひとりの友人上村が教えてくれた。
すると3人目の友人である三上が来て自分でも気付かなかったことを教えてくれた。
「よー!何事かと思ったら須方っちがオコでびっくりしたんだけど!」
「俺、怒って、た?」
さっきの自分を思い出す。
確かにさっきの男を見た途端心がクシャッとして咄嗟に怒鳴りつけた。
初めての怒鳴り声はそんなに大きくなかったが、かすれてもいなかった。
「うんうん。な、藤堂、上ぽん」
「上ぽんやめろ」
「確かに今まで見たことなかったな。あ!でもさっきのは怒って当然だと思うぞ!」
「さっきのは知らんけど、学食で須方っちの定食の肉食っても怒らなかった須方っちがなー、と思って」
テヘヘ、と暴露する三上に呆れた藤堂が肩を落とす。
「須方、三上も怒っていいぞ…」
「いや、三上には腹も立ってないし。ありがと藤堂」
そう、何故か腹が立ったのだ。
人生で初めて、あの空という男には。
O阪府の郊外にある某私立大学ですべての出逢いはあった。
専門家は『これが元凶』とも言う。
俺、須方 奏生は今でも時々思い出す。
俺が生きたいと素直に言える人間だったら。
生きたいと素直に感じれる人間だったなら。
アイツの本音に気付いてやれたんじゃないか。
アイツは今でも明るく横で笑ってくれたんじゃないか、そんな考えが胸の奥にずっと残っている。
強風に煽られてせっかく咲いたピンクの花弁が何枚か宙を舞っている。
小さい頃は逃げるコレを捕まえようとしたっけな、なんて桜を見上げた。
(いや、ちげえわ。捕まえようとしてたのは父さんと姉さんだったな)
更になんとか桜の花びらを捕まえた姉は、勢い余って道に転んでいた。
擦りむきながらも、取れた花びらを満面の笑みで見せていた姉は今も昔も天真爛漫で眩しい。
高校生位までは、自分もやがてそんな感情溢れる人間になれると思っていたのに。
(20年間泣かない怒らない笑わない面白くもない人間。赤ん坊から変わらないものが20歳になったからって変わるわけないよな)
もちろん感動したこともない俺は部活やサークルも入りたいものがなく、無所属だった。
だから大学3回生にもなって新歓に来ているわけだ。
高校では友人に流されるままテニス部に入っていたが、大学では自分が感情を動かされるものを徹底的に探すと決めているのだ。
専攻も人間学をとっているしバイトは色んな体験が出来ると聞き派遣にした。
「やっぱり浮くなー」
そこそこ広いキャンパスなので相応の生徒数とサークル数なのだが、さすがに二年も通っていると顔見知りも増えてくる。
ある程度親しい友人なら俺の事も知っているが誘われ済みだし、顔見知り程度なら俺が無所属だと知らない。
としても新入生に紛れて新歓のチラシや声掛けがほぼ得られないのであは意味がない。
どうするか悩んだ俺は勧誘を遠巻きに見ることに決めた。
それが冒頭の桜の木の下だというわけだ。
「うーん、やっぱり今年も目ぼしいトコはないか」
腕を組み唸る。
すると不意に頭上で木の音がした。
ガササ。
「なん」
そして見上げる前に人間が落ちてきた。
バッサー。
「セーフ!」
落ちてきた人間は上半身を起こすと大きな声で言った。
青いパーカにジーンズ、そして短髪長身。
空のような男に俺は怒鳴った。
「アウトだよ!ふざけんな、降りろ!」
男が木から落ちてきたことで人が集まってきた。
「わりーわりー」
とても軽い謝罪をしながらそいつはようやく俺の腹の上から降りた。
「立てるか?」
「あぶねーな、空みてえなナリしやがって」
手を引っ張られながら俺は毒づいた。
すると毒づかれたやつは目を輝かせて俺の手を握ってきた。
「すげえ!」
「は?」
「俺の名前空っていうんだけど!え、初対面だよね?え、すご!」
「てめえみたいな非常識なんか会ったことねえわ」
「ウケる!まじ草なんだけど!超運命!」
「ウケ?」
「あごめん!オレ時間ないんだった!」
「え?」
男は握った俺の手に着いた腕時計を見て慌てだした。
ポケットからスムーズに名刺ケースを取り出すと、またスマートに一枚を俺の手に握らせた。
「あ、これ俺の名刺!」
「いや」
「入りたいサークル無かったら連絡して!あ、いや、入りたいのがあっても連絡して!絶対!」
そう叫び残し空は走って校舎棟に消えていった。
あとには俺と名刺を残して。
「須方、大丈夫か?」
友人の藤堂がこわごわ声を掛けてくれた。
「いや、大丈夫、たぶん?なんだったんだあいつ?」
「おれ聞いたんだけど、なんか他大からの編入生?らしい。よくは知らないんだけど」
と、もうひとりの友人上村が教えてくれた。
すると3人目の友人である三上が来て自分でも気付かなかったことを教えてくれた。
「よー!何事かと思ったら須方っちがオコでびっくりしたんだけど!」
「俺、怒って、た?」
さっきの自分を思い出す。
確かにさっきの男を見た途端心がクシャッとして咄嗟に怒鳴りつけた。
初めての怒鳴り声はそんなに大きくなかったが、かすれてもいなかった。
「うんうん。な、藤堂、上ぽん」
「上ぽんやめろ」
「確かに今まで見たことなかったな。あ!でもさっきのは怒って当然だと思うぞ!」
「さっきのは知らんけど、学食で須方っちの定食の肉食っても怒らなかった須方っちがなー、と思って」
テヘヘ、と暴露する三上に呆れた藤堂が肩を落とす。
「須方、三上も怒っていいぞ…」
「いや、三上には腹も立ってないし。ありがと藤堂」
そう、何故か腹が立ったのだ。
人生で初めて、あの空という男には。
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