拝啓、異世界の術者(マーリン)へ

waduka

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秘密の双子と賢者の石(1)

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 一方その頃、キリウとシェンユは特上車両に紛れ込んでいた。
 タバコを吹かしていた部下の男達が窓を開けており、そこから入り込んだのだ。
 しかし。
「なんだ!こんなところにコウモリだと!?」
「縁起が悪いな!」
「撃ち落としてしまえ!」
 列車強盗たちに追いかけ回されていた。
「(ちょっとキリウ!このままじゃ私達の計画がパアですわ!どうするの?)」
「(これはどう見ても俺のせいじゃねえだろ!とにかく今はコウモリのふりをするぞ!)」
 人間にはキーキーとしか聞こえない声で二人は相談し合っていた。
 扉を開けられたコンパートメントの一室にはそんな二人と部下を、横目で見るフンと鼻で一蹴する一際目付きの悪い男がいた。
 その柄の悪い男はこの強盗団のボスだった。
 先日捕らえられた反逆集団の仲間を開放するため、ごろつきを雇い今回の強盗を画策したのだ。
 男は持っていた銃をある人物に向けていた。
 銃を向けられた眼鏡の男は腕を後ろ手に縛られ床に座らされじっとしていた。
 列車強盗の男は高笑いしだした。
「ハッハッハッハッ!どうだ上級貴族共!魔物ばかりに気を取られ下層の人間に足元を掬われる気分は!!」
「何が目的だ!」
 眼鏡の男のそばにいた角刈りの男が聞いたが、列車強盗の男は怒鳴り返した。
「勝手に喋るんじゃねえ!クソ人間が!」
パン!
 銃声。
「うっ」
 角刈りの男の足が貫かれた。
「おいおい。ちょっと足を撃っただけで大げさだなぁ?怪我すんのは初めてか?だがな、俺らが受けた痛みはこんなもんじゃねえんだよ!」
「貴様ら、アーメノルドの残党か」
 眼鏡の男が納得したように頷いた。
 その表情は冷静そのもので、怒りも同情も見えないその顔は無関心だった。
「残党?アーメノルドはまだ終わってねえ!」
 キリウとシェンユは天井付近で部下からの網を交わしつつ、眼鏡の男の様子をを伺っていた。
「(あの男、何者ですの?)」
「(あーめのるど?の残党って言ってたじゃねえか)」
「(そっちじゃないですわ!メガネの男の方ですわ。何だか私達やお父様に近いものを感じるような…)」
 シェンユに言われ、キリウも注意深く観察してみた。
 確かに強盗の男やこの部下の男たちの数倍は淀んだ空気を感じる。
「(この中じゃダントツで陰気だけど、人間の中じゃ実は珍しくないのかもしれないだろ。俺らは#こっち_・・・__#に来てまだ数日なんだし)」
「(それもそうですわね)」
「(にしてもうざったい網だな!)」
 キリウ達が話している間も、部下の男はぶんぶんと網を振り回し続けている。
 キリウとシェンユはそれをひらひらと避け続ける。
「うざってえコウモリだな。やっちまうか」
 強盗の男が苛立ちの矛先を二匹のコウモリに向けた。
 それに便乗するかのように、メガネの男も二人を見やった。
 その瞬間キリウとシェンユの背中をぞわぞわぞわっと感覚が通り抜けた。
 “今”じゃない“先”に何か嫌なことが起こる、いや起こされるという予感。
「(っ!?シェンユ!早くここから出るぞ!)」
「(もちろんですわ!キリウ!)」
 二人は口早に交わすと、コウモリの羽を器用に羽ばたかせながら背中合わせになった。
「(キリウ、せーので私が前あんたが後ろからくる敵をやっつけるんですわよ!)」
「なんだこのコウモリ?まだなんか」
「せーの!」
 ビカー!
 バキキ!パシーン!
 閃光がコンパートメントから溢れ車両いっぱいに満ち、何かが壊れた音がした。
 
 上級車両と繋がっていた後部車両のドアを壊しアドニスが顔を出した。
「なんだてめぇへぶ!」
「僧侶様っ痛っ!」
 変身を解いたシェンユがボスの顔を思いきり叩き、キリウがアドニスの顎を蹴り上げた。
「まじか」
 志津江はキリウの二撃目をはらい、他の人質の周りの強盗達を倒していく。
 キリウは志津江に払われるがまま着地し、ぽかんと志津江を見た。
 そして志津江に聞く。
「お前、なんだ?」
「強盗の一味じゃないって事は確か。蹴られたお兄さんもね。君たちは何者かな?」
 強盗の男はシェンユの一撃であっさり伸びていた。
 自身も強く異世界の事をまだよく知らない志津江には、一緒に強盗を倒した双子の異質さがわからなかった。
「えっと、俺らその…」
「どうしたのキリウ?一体何が」
「お嬢さんもきょうだいかな?どこも怪我したりしてない?」
 志津江の強さを目の当たりにしたキリウはまだうまく体を動かせないでいた。
 そこへトコトコと、周りを確認しながらシェンユが来たのだ。
「(キリウ、騎士団が居ますわ。それにさっきのメガネの男に変身を見られたかもしれない。早くここを出ないと)」
「(でも)」
「(どうしたんですの!いつもの横暴で行動力のあるキリウはどこに!?)」
「(…悪い)」
「(はぁ。仕方がないですわね。ここはわたしに任せてくださいまし)」
 テレパシーで瞬時に会話を終えたシェンユは一歩前に出て、その大きな目をうるませた。
「お姉さん、わたくしたちワケアリで…」
「ワケアリって…」
 キリウがそんな言い訳で上手くいくのかと言いたそうにシェンユの肩を叩くが、振り返ったシェンユはシッときつくキリウを睨みつけた。

 とりあえず目の前に居た双子を保護した私は、アドニスさんの様子を伺った。
 キリウの蹴りは喰らったものの寸ででダメージは逃がしたようで、すぐに起き上がりボスと戦っていた。
 強盗のボスは左頬にもみじ型の跡を付けながら暴れまわっていた。
「くそーーーー!」
 怒り狂ってはいるが列車強盗を企てただけの事はある。
 手の銃を失わないようにしつつ、狡猾に人質のお偉いさんや、私の手元の双子を狙ってくる。
「俺たちの痛みをお前らにも味合わせてやる!!」
 とうとうその照準がメガネのお偉いさんに定まった。
 パン、パン、パン!
 しかし、その弾丸は目標に届かず。
 アドニスさんが短剣で3発の銃弾を弾き、そのままボスを峰打ちで制圧した。
「人間ってそんなこと出来るの?」
 自分の人並外れた腕力と身体能力を棚に上げ、私は呟いた。
 ただ、アドニスさんは私以上の瞬発力、スピードで、今の動きは私には見えなかった。
「私の取り柄なので」
 私の呟きにアドニスさんが照れて答えた。
 アドニスさんの早業でぐるぐる巻きにされた強盗のボスは峰打ちの衝撃で気絶している。
 両目から流す涙が哀れだ。
 アドニスさんとケリーさんは人質だった偉い人と話している。
 落ち着いて見てみると、そのメガネの男性は印象より若く見えた。
 縛られていたらしい手首をさすりながら、アドニスさんに困ったように笑いかけている。
 ゾ。
 柔和そうな表情と雰囲気だが、私は強烈な違和感を覚えた。
 この感覚は軽い恐怖のようだ。
 なんだこの男は。
 近くに居たくない。
 アドニスさんがこちらを見た。
 次いでその男性もこちらを見る。
 私はとっさに目をそらした。
 すると、コンパートメントをそっと出ようとする双子が目に入った。
「あ、そういえば君たち」
 私は思わず声をかけた。
 双子の肩がびくっとはねる。
(おい、どうすんだよシェンユ!あの女もみんな蹴散らして逃げるか?)
(暴れちゃダメって言ってるでしょキリウ!それに恐らく彼女には今の私たちでは勝てないですわ。それよりも彼女に取り入りましょう)
(取り入る?)
(ええ。まぁ私に任せてくださいまし)
 人形のように可愛いよく似た顔が二つ、女の子は作り笑いを浮かべ男の子は焦ったような顔で振り返った。
「先ほどはありがとうございましたですわ」
 女の子がスカートの裾をもってぺこりと頭を下げた。
 所作も服装も、二人とも上流階級の出のようだ。
 さっき訳ありと言っていたがどういうことだろうか。
「いえいえ。二人だけ?」
「ええ。実は私たち、人を探しているんですの」
「そういえば君たち、さっきコウモリになってなかった?」
 私が問うと、双子がぎくりと言ったのが聞こえた。
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