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7.神具喪失の代償(マリア視点)
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リルアお姉様が神具を壊したとして追放処分を受けてから一ヶ月が経過しました。
お姉様は隣国の山中に捨てられたらしいですが、結界解除後は山中には魔物が大量に巣食うように非常に危険な場所になっていると聞きます。
リルアお姉様の魔道士としても一流なので、簡単にやられるとは思えませんが心配でなりません。
そして、現在の状態ですが――。
「マリアー、ケーキを買ってきたんだ。一緒に食べよう」
「いえ、結構ですわ。それどころではないので」
「んだよ、つれないな。僕と君は夫婦になるのだぞ。ほらほら、ここには誰もいないし、スキンシップを――。熱っ! 熱っぢぃぃぃぃぃ!!」
「魔物避けの結界防壁を張るための魔力を溜めていましたの。触れるとちょっと熱いですわよ」
公爵家のボンクラ息子もといミゲルはわたくしに数え切れないほどのちょっかいを出してきます。
迷惑この上ないことなのですが、どうやらこの男はわたくしに気があるらしく、恐らくお姉様を嵌めて追放処分にした理由はこれです。
この男、「将来の公爵夫人になれて、本音を言えば嬉しいだろ?」などと宣ったことから、その疑いは確信へと変わりました。
「くっ、君はニコニコ笑っているだけの聖女で良いのだ。祈るための神具はもうないのだから」
「そうですわね。神具が無くなったせいで、国は荒れていますわ。だからこそ、少しでも被害を減らさなくては。……なぜ、神具は壊されてしまったんでしょうねぇ? ミゲル様……!」
「ひいっ――! こ、こ、怖い顔をするな。し、神具は、リルアがこ、壊したのだ! ぼ、ぼ、僕はこの目で見た! り、り、リルアが魔法で神具を壊すところを!」
この男はぬけぬけとそんなことを。
リルアお姉様は神具破壊など下らないことをなさる人じゃない。
許されるのなら、ミゲルをこの場でバラバラにして差し上げたい。
でも、今ここでこの方を感情のまま倒すような真似をしてもお姉様の名誉を回復することは出来ません。
耐えなくてはなりませんね……。口惜しいですが……。
「ミゲル様、笑っているだけの聖女って必要ですの? わたくし、お姉様の代わりとして全ての魔力を以てしてこの国を守ることしか考えておりませんわ」
こうして、わたくしはせめて山から聖地への魔物の侵入を伏せごうと、大聖堂の外へと向かいました。
「そ、そ、外へ行くのだな。お、おい! 今日はお前らしかいないのか。マリアを警護しろ!」
憲兵をわたくしの護衛に?
いつもは公爵家の私設兵を使うのに……。そういえば、お姉様の追放処分を実行したのもこの方たちだったみたいですわね。
わたくしは彼らの用意した馬車に乗りました。
「……マリア殿、心配召されるな。リルア殿は無事である」
「――っ!? お、お姉様は無事ですの!? どこで何をしていますの!? どういうことですの!?」
「う、うぐぅ~~。く、苦しい……!」
「はっ――!? す、すみません。つい……」
憲兵の方々は先月の出来事を語ってくれました。
憲兵たちは何故かお姉様が急に神具を壊した犯人にでっち上げられて、山中に捨ててこいと命令されたそうです。
しかし、そこで隣国のエムルエスタ王国の王太子であるサイラス殿下と出会い――お姉様は殿下に保護してもらったのだとか。
「ちょうど隣国から秘密裏に手紙が届いていましてな。リルア殿は元気だと伝えてほしいと書かれていました」
「ぐすっ……、お姉様、よくぞご無事で」
よかった。
お姉様がお元気ならマリアはそれだけで幸せです。
本当にホッとしました。
「しかしながら神具を直す方法も探ってもらっているのですが、こちらは全然駄目みたいです。そもそも、神具は魔法を吸収する特殊な金属で出来ており――」
「――っ!? ちょっと待ってください! 今、なんと言いましたか?」
「ええーっと、神具を直す方法に感じては全然駄目みたいです、と」
「違います。そのあと、ですわ」
「神具は魔法を吸収する特殊な金属で出来ているのですが――」
……もしかして、これはミゲルの嘘を証明することが出来るのでは?
わたくしの頭の中に一つの手段が浮かびました――。
お姉様は隣国の山中に捨てられたらしいですが、結界解除後は山中には魔物が大量に巣食うように非常に危険な場所になっていると聞きます。
リルアお姉様の魔道士としても一流なので、簡単にやられるとは思えませんが心配でなりません。
そして、現在の状態ですが――。
「マリアー、ケーキを買ってきたんだ。一緒に食べよう」
「いえ、結構ですわ。それどころではないので」
「んだよ、つれないな。僕と君は夫婦になるのだぞ。ほらほら、ここには誰もいないし、スキンシップを――。熱っ! 熱っぢぃぃぃぃぃ!!」
「魔物避けの結界防壁を張るための魔力を溜めていましたの。触れるとちょっと熱いですわよ」
公爵家のボンクラ息子もといミゲルはわたくしに数え切れないほどのちょっかいを出してきます。
迷惑この上ないことなのですが、どうやらこの男はわたくしに気があるらしく、恐らくお姉様を嵌めて追放処分にした理由はこれです。
この男、「将来の公爵夫人になれて、本音を言えば嬉しいだろ?」などと宣ったことから、その疑いは確信へと変わりました。
「くっ、君はニコニコ笑っているだけの聖女で良いのだ。祈るための神具はもうないのだから」
「そうですわね。神具が無くなったせいで、国は荒れていますわ。だからこそ、少しでも被害を減らさなくては。……なぜ、神具は壊されてしまったんでしょうねぇ? ミゲル様……!」
「ひいっ――! こ、こ、怖い顔をするな。し、神具は、リルアがこ、壊したのだ! ぼ、ぼ、僕はこの目で見た! り、り、リルアが魔法で神具を壊すところを!」
この男はぬけぬけとそんなことを。
リルアお姉様は神具破壊など下らないことをなさる人じゃない。
許されるのなら、ミゲルをこの場でバラバラにして差し上げたい。
でも、今ここでこの方を感情のまま倒すような真似をしてもお姉様の名誉を回復することは出来ません。
耐えなくてはなりませんね……。口惜しいですが……。
「ミゲル様、笑っているだけの聖女って必要ですの? わたくし、お姉様の代わりとして全ての魔力を以てしてこの国を守ることしか考えておりませんわ」
こうして、わたくしはせめて山から聖地への魔物の侵入を伏せごうと、大聖堂の外へと向かいました。
「そ、そ、外へ行くのだな。お、おい! 今日はお前らしかいないのか。マリアを警護しろ!」
憲兵をわたくしの護衛に?
いつもは公爵家の私設兵を使うのに……。そういえば、お姉様の追放処分を実行したのもこの方たちだったみたいですわね。
わたくしは彼らの用意した馬車に乗りました。
「……マリア殿、心配召されるな。リルア殿は無事である」
「――っ!? お、お姉様は無事ですの!? どこで何をしていますの!? どういうことですの!?」
「う、うぐぅ~~。く、苦しい……!」
「はっ――!? す、すみません。つい……」
憲兵の方々は先月の出来事を語ってくれました。
憲兵たちは何故かお姉様が急に神具を壊した犯人にでっち上げられて、山中に捨ててこいと命令されたそうです。
しかし、そこで隣国のエムルエスタ王国の王太子であるサイラス殿下と出会い――お姉様は殿下に保護してもらったのだとか。
「ちょうど隣国から秘密裏に手紙が届いていましてな。リルア殿は元気だと伝えてほしいと書かれていました」
「ぐすっ……、お姉様、よくぞご無事で」
よかった。
お姉様がお元気ならマリアはそれだけで幸せです。
本当にホッとしました。
「しかしながら神具を直す方法も探ってもらっているのですが、こちらは全然駄目みたいです。そもそも、神具は魔法を吸収する特殊な金属で出来ており――」
「――っ!? ちょっと待ってください! 今、なんと言いましたか?」
「ええーっと、神具を直す方法に感じては全然駄目みたいです、と」
「違います。そのあと、ですわ」
「神具は魔法を吸収する特殊な金属で出来ているのですが――」
……もしかして、これはミゲルの嘘を証明することが出来るのでは?
わたくしの頭の中に一つの手段が浮かびました――。
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