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第五十一話
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一週間後にはアイリーン殿下の誕生日。
宣言されていたとおり、殿下はエゼルスタ王国との友好関係は維持したいという願いを込めて、私やミリムの故郷であるエゼルスタで人気の曲を演奏することとなりました。
私はアイリーン殿下にピアノを教えた身ですから、出席します。
ただ、残念ながらミリムが出席することは許されませんでした。
アイリーン殿下は構わないと仰って下さったのですが、当然のことながら彼女は私とアルフレート殿下の結婚式を延期させた原因ですから。許される道理はないのです。
「アルフレート様、アイリーン様の誕生日パーティーで渡して頂けませんか? わたくし、お金も何も所持していませんので、アルビニアの言葉で詩を書いてみましたの。アイリーン様のお誕生日をお祝いする詩ですわ」
「そうか。妹も喜ぶだろう。渡しておく」
ミリムの変化に一番驚いたのはアルフレート殿下かもしれません。
人が変わったかのように落ち着いて、他人を思いやるようになりましたから。
それに彼女は素直に物事を覚えようと熱心に勉強するので、知識面での成長も著しいのです。
「業が深いな。アーゼル夫妻は……。よく考えたら、君の妹なのだ。出来が悪いはずがない」
「教育しないだけでなく、我慢することすら教えずに好き勝手させていましたから。私が気付いた時には手遅れで、何を言っても聞かなくなりました」
もはや縁を切ってしまいましたが、父と母はミリムに対する教育どころか簡単な躾すらしていませんでした。
欲しがるものを何でも面倒くさがって与えていたので、彼女は泣けば何でも手に入ると勘違いしていた節があります。
「まぁ、アイリーンにはぶつくさ文句を言われたが、悪く思わないでくれ。君にも、君の妹の今後にとっても、この方が良いのは間違いない」
「はい、わかっています。ミリムの将来のことまで考えてのことだということは……」
いくらアイリーン殿下が許そうとも、ここでミリムを出席許せば彼女にとってマイナスにしかならないことは明白でした。
私はアルフレート殿下の判断は間違っていないと思います。
「では、明日また。アイリーンにピアノの指導をしてくれて感謝する」
「いえ、私など大したことも教えておりません。アイリーン殿下の物覚えが良いのです」
「ははは、僕もあいつも先生の腕が良いと意見は一致しているよ。君の演奏もまた聞かせてくれ」
こうして、アルフレート殿下は笑いながら、部屋から出ていきました。
穏やかな時間の流れがこんなにも尊いものだとは。楽しそうに部屋に置かれているピアノを触っているミリムを眺めながら、私はそんなことを思っていました。
「ねぇ、お姉様。アイリーン様がお誕生日で演奏される曲を弾いて頂けませんか? わたくしが何か悪いことをして出席ができないことは何となく分かっています。ですが、どうしてもどんな曲か気になるのです」
「もちろん、構いませんよ。エゼルスタにいたときは何度も弾いて見せた曲ですが」
ミリムは自分が何か悪いことをしたから軟禁のような生活を強いられている、ということは何となく理解しています。
記憶がなくともそういったことは感じ取ったのでしょう。
アイリーン様の披露する曲はもちろん実家にいる頃に何度となく弾いている曲です。
ミリムがきちんと聞いていたのかどうかは分かりませんが……。
「では、弾きますね――」
ポロンと鍵盤に触れて、私は演奏を開始しました。
流水を意識して、指を滑らせるように鍵盤を叩く。
美しいエゼルスタの湖を表現するように――。
「……とても素敵な曲ですわぁ」
ミリムも気に入ってくれたのか、感嘆の声を上げました。
やはり、覚えていないみたいですね。
ここから一気にクライマックス。盛り上げます――。
「えっ? こ、この曲、わたくし、し、知っている? あ、あ、あううううう、あ、頭が、頭が、い、痛い………………!」
「み、ミリム!?」
突然、ミリムが頭を押さえて苦しみ始めました。
ま、まさか、記憶が戻りかけているのでしょうか?
もしも、そうならば。ミリムは――。
「あああああああ、そ、そ、そ、そんな……。わ、わたくし、な、なんてことを……。嫌! 嫌! 嫌ァァァァァァァァァァ!」
絶望に満ちた表情で絶叫したミリムは……、そのまま気絶してしまいました――。
宣言されていたとおり、殿下はエゼルスタ王国との友好関係は維持したいという願いを込めて、私やミリムの故郷であるエゼルスタで人気の曲を演奏することとなりました。
私はアイリーン殿下にピアノを教えた身ですから、出席します。
ただ、残念ながらミリムが出席することは許されませんでした。
アイリーン殿下は構わないと仰って下さったのですが、当然のことながら彼女は私とアルフレート殿下の結婚式を延期させた原因ですから。許される道理はないのです。
「アルフレート様、アイリーン様の誕生日パーティーで渡して頂けませんか? わたくし、お金も何も所持していませんので、アルビニアの言葉で詩を書いてみましたの。アイリーン様のお誕生日をお祝いする詩ですわ」
「そうか。妹も喜ぶだろう。渡しておく」
ミリムの変化に一番驚いたのはアルフレート殿下かもしれません。
人が変わったかのように落ち着いて、他人を思いやるようになりましたから。
それに彼女は素直に物事を覚えようと熱心に勉強するので、知識面での成長も著しいのです。
「業が深いな。アーゼル夫妻は……。よく考えたら、君の妹なのだ。出来が悪いはずがない」
「教育しないだけでなく、我慢することすら教えずに好き勝手させていましたから。私が気付いた時には手遅れで、何を言っても聞かなくなりました」
もはや縁を切ってしまいましたが、父と母はミリムに対する教育どころか簡単な躾すらしていませんでした。
欲しがるものを何でも面倒くさがって与えていたので、彼女は泣けば何でも手に入ると勘違いしていた節があります。
「まぁ、アイリーンにはぶつくさ文句を言われたが、悪く思わないでくれ。君にも、君の妹の今後にとっても、この方が良いのは間違いない」
「はい、わかっています。ミリムの将来のことまで考えてのことだということは……」
いくらアイリーン殿下が許そうとも、ここでミリムを出席許せば彼女にとってマイナスにしかならないことは明白でした。
私はアルフレート殿下の判断は間違っていないと思います。
「では、明日また。アイリーンにピアノの指導をしてくれて感謝する」
「いえ、私など大したことも教えておりません。アイリーン殿下の物覚えが良いのです」
「ははは、僕もあいつも先生の腕が良いと意見は一致しているよ。君の演奏もまた聞かせてくれ」
こうして、アルフレート殿下は笑いながら、部屋から出ていきました。
穏やかな時間の流れがこんなにも尊いものだとは。楽しそうに部屋に置かれているピアノを触っているミリムを眺めながら、私はそんなことを思っていました。
「ねぇ、お姉様。アイリーン様がお誕生日で演奏される曲を弾いて頂けませんか? わたくしが何か悪いことをして出席ができないことは何となく分かっています。ですが、どうしてもどんな曲か気になるのです」
「もちろん、構いませんよ。エゼルスタにいたときは何度も弾いて見せた曲ですが」
ミリムは自分が何か悪いことをしたから軟禁のような生活を強いられている、ということは何となく理解しています。
記憶がなくともそういったことは感じ取ったのでしょう。
アイリーン様の披露する曲はもちろん実家にいる頃に何度となく弾いている曲です。
ミリムがきちんと聞いていたのかどうかは分かりませんが……。
「では、弾きますね――」
ポロンと鍵盤に触れて、私は演奏を開始しました。
流水を意識して、指を滑らせるように鍵盤を叩く。
美しいエゼルスタの湖を表現するように――。
「……とても素敵な曲ですわぁ」
ミリムも気に入ってくれたのか、感嘆の声を上げました。
やはり、覚えていないみたいですね。
ここから一気にクライマックス。盛り上げます――。
「えっ? こ、この曲、わたくし、し、知っている? あ、あ、あううううう、あ、頭が、頭が、い、痛い………………!」
「み、ミリム!?」
突然、ミリムが頭を押さえて苦しみ始めました。
ま、まさか、記憶が戻りかけているのでしょうか?
もしも、そうならば。ミリムは――。
「あああああああ、そ、そ、そ、そんな……。わ、わたくし、な、なんてことを……。嫌! 嫌! 嫌ァァァァァァァァァァ!」
絶望に満ちた表情で絶叫したミリムは……、そのまま気絶してしまいました――。
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